キックボクシング・K-1　競技者用wiki

強くなる近道 力学でひもとく格闘技(リンク先はamazon購入ページ)

個人的評価：☆5(5点満点)

技術論を書くにあたり、何度も参考にさせてもらっている本であり、この本を基礎に様々な動作研究のヒントを得ています。
「☆5」ですが、本来ならば「10」でも「20」でもつけたいくらいです。

競技力向上を少しでも目指している方は絶対に買いましょう。
この本を精読しながらジムワークをこなすことで、自己流で技術探求する何年分もの期間を短縮できます。

では何が凄いのかというと、格闘技の動作をぬかりなく科学していることです。
力学的分析を用いることで「普遍的に良い」動作、すなわち100人いれば100人に当てはまる動作法が書かれています。

その動作法をほぼ完璧に実践できるのならば、少なくとも特定の基本動作においてはプロの日本王者よりも優れた基本技術を身につけることができます。(大袈裟な表現に感じるかもしれませんが、本当です)

中には理論自体が難しく理解困難であったり、実際に行動に移すに当たって、実感のわかない所も多いと思います。
それでも繰り返し読みつつ体を動かしていくことで、徐々に理論の意図が理解できるようになります。そして理解した上で、再び体を動かすことで僅かながら実践できるようになるでしょう。

この本には「正しい動作」への一本道が記されており、その道をただ進むだけで基本動作のスキルは格段に上がります。
そして「何故それが正しいと言えるのか」という理由も綿密に記されており、正しい動作がいかなるものか理解することで、より効率的な練習に取り組むことができます。

まるで宗教のように妄信的に勧めているので不審に思われるかもしれませんが、それだけ皆さんに読んで欲しい本だからです。
私自身、格闘技を始めた頃にこの本に出会い、遂行していれば、どんなに早く上達できたことかと思っています。

もちろん、この本は総論的な理論に留まっており、実際に競技力に活かすまでには相応の「知識」と「努力」が必要になります。
しかしどれだけ競技力が上がろうとも、この本が技術探求における礎となることに違いはありません。

なぜなら、この本は数学でいう「公式」だからです。

例えば、直角三角形において直角を構成する2辺の2乗の和と、斜辺の2乗が等しくなる、という三平方の定理という公式があります。
三平方の定理を使わなければ解けない問題に取り掛かったとして、仮に三平方の定理の公式そのものを知らなかったらどうでしょうか。
恐らく何年かかっても解けないでしょう。

では公式は知っているけれども、それを応用する手段を知らない場合はどうでしょう。
解くこと自体は可能でも、結構な時間を費やしてしまったり、場合によっては間違った解法を用いてしまうかもしれません。

しかし公式も、それを応用する手段も熟知している者ならば、ものの数分で確実に解けてしまいます。

格闘技においても、この本から「公式」を知り、動画や身近な者の動作、または自ら体を動かし「応用する手段」を知ることで、何ら道具を持たない者よりも遥かに早く、正しくスキルを身につけることができるでしょう。

体力増強や体作りに関する基礎的知識も掲載されており、格闘技におけるガイドブックとして非常に重宝される一冊です。