ルフィが絶大な影響力を持つと知ると、彼女に取り入ろうとする者が次々と現れ、それらはルフィ派という巨大な派閥となった。
そのほとんどが、これといった能力を持たず、単に彼女の機嫌をとることだけに長けた者たちであったが、それは逆に後先を考えず、どんな無茶なことでもするという危険な派閥の誕生でもあった。
特に、事あるごとにルフィの行為を糾弾していたシルヴァスやバイアラスたち武官との衝突は激しく、時には暗殺者が彼らの元に送られることすらあった。
当時のルフィの蛮行を残すエピソードが残っている。
彼女は、生粋のサディストであったが、リディとルフィ付きの女官であったシルに対して、特に冷たく当たっていた。
ある記録によると、宴会の席でシルが運んできた飲み物をこぼしたことがあるが、ルフィは笑顔で一切咎めなかった。
ところが、その席からヴェリアが退室した途端、突如シルにグラスを投げつけ、呆然としている彼女に早くそのグラスを拾う様に命令する。
シルが言われたとおりにすると、今度は「私に床に落ちたグラスで飲み物を飲めというのか」と、叱りつけ、折檻したという。
そういった光景を日ごろから見ていたこともあり、バイアラスは、リディに加えて、本来なら将軍でもないシルも自分たちの派閥に誘ったという。
そのほとんどが、これといった能力を持たず、単に彼女の機嫌をとることだけに長けた者たちであったが、それは逆に後先を考えず、どんな無茶なことでもするという危険な派閥の誕生でもあった。
特に、事あるごとにルフィの行為を糾弾していたシルヴァスやバイアラスたち武官との衝突は激しく、時には暗殺者が彼らの元に送られることすらあった。
当時のルフィの蛮行を残すエピソードが残っている。
彼女は、生粋のサディストであったが、リディとルフィ付きの女官であったシルに対して、特に冷たく当たっていた。
ある記録によると、宴会の席でシルが運んできた飲み物をこぼしたことがあるが、ルフィは笑顔で一切咎めなかった。
ところが、その席からヴェリアが退室した途端、突如シルにグラスを投げつけ、呆然としている彼女に早くそのグラスを拾う様に命令する。
シルが言われたとおりにすると、今度は「私に床に落ちたグラスで飲み物を飲めというのか」と、叱りつけ、折檻したという。
そういった光景を日ごろから見ていたこともあり、バイアラスは、リディに加えて、本来なら将軍でもないシルも自分たちの派閥に誘ったという。
706年1月1日、例年通り新年の宴が行われていたが、この時ヴェリアは、これまでの乱れた生活が祟って宴の最中体調を崩し、ルフィに寄り添われて席を立つ。
その姿を見たバイアラスは一つの決意を胸に秘め、1月4日、自宅にシルヴァス、グローリヴァス、リディ、ザロといった個人的に友誼のある有力将軍を招いた。
表向きは新年の宴であったが、これが後に「一月の別離酒」と呼ばれる事件となる。
この席でバイアラスは、ロードレア国を脱出する事を皆に打ち上げた。
バイアラスは天下統一よりも、自分を一兵卒から引き上げてくれたラディアの敵討ちしか興味を持っていなかったが、今のロードレア国では、それはもう望めない。
それならば、ロッド国と戦う為にベルザフィリス国へ行くと彼は述べた。
しばしの沈黙の後、グローリヴァスが最初に同意し、それにシルヴァス、ザロも続いた。
最後まで沈黙を守ったリディは、バイアラスの前に膝を付くと、この瞬間より自分はバイアラス直属の隠密になると告げる。
隠密は、国ではなく個人に忠誠を誓う為、アレス死後、自らの主を持たなかったリディは、この時よりバイアラスを新たなる主とした。
これまで、彼らの出国の原因はヴェリアの堕落にあったと言われていたが、近年の研究ではヴェリアの智謀はいまだ衰えておらず、むしろルフィが作り出した派閥争いによって自分たちの発言力が日に日になくなっていたことへの焦燥が最大の原因ともいわれている。
こうして彼らは家族と自分に忠誠を誓う部下を連れて国境を突破するが、この裏切りに怒ったヴェリアが討伐隊を派遣。
盲目の娘を守るために一行からはぐれたグローリヴァスのみロー・レアルス国へ向かうが、バイアラスたちはかろうじて討伐隊を振り切り、1月26日にベルザフィリス国へ到着する。
この頃ディルセアは、ルーディアの眼帯を貰い、二代目独眼竜という名を継いでいた。
ルーディアは、志を息子ガイヴェルドに、名を軍師ディルセアに継がせ、自らは隠居生活を送っていた。
そのルーディアが、バイアラスとリディを突如自宅に招く。
降伏を認められ、ベルザフィリス国の将となっていた彼らだが、何しろ彼らほど名の通った人材の突然の帰順に、「降伏は偽りであり、すべてはヴェリアの奇策では?」と警戒する者は多く、未だ猜疑の目で見られる日々を送っていた。
互いの存在だけが唯一の支えとなっていたバイアラスとリディは、この招きに応じてルーディアの元へと赴く。
僅かな供と山奥の館に静かに暮らしていたルーディアは、二人を手料理もてなすと、昔話に花を添えた。
直接関わったことはなくとも、同じ時代を生きた者同士、バルディゴス討伐連合軍からディースの戦いまで、それぞれ違う立場で、その戦いをどう見ていたのか、話は盛り上がっていた。
ルーディアの影響力はいまだ絶大であり、「ルーディアが認めたのならば」と、諸将も、次々とバイアラス達への警戒を解いていく。
なお、この時ルーディアは、もしガイヴェルドに将来皇帝となるべき器があれば彼を補佐してほしい、しかし権力という波に飲み込まれる様な器なら、息子を殺してほしいと二人に告げたというが、これは後世の創作説もある。
その姿を見たバイアラスは一つの決意を胸に秘め、1月4日、自宅にシルヴァス、グローリヴァス、リディ、ザロといった個人的に友誼のある有力将軍を招いた。
表向きは新年の宴であったが、これが後に「一月の別離酒」と呼ばれる事件となる。
この席でバイアラスは、ロードレア国を脱出する事を皆に打ち上げた。
バイアラスは天下統一よりも、自分を一兵卒から引き上げてくれたラディアの敵討ちしか興味を持っていなかったが、今のロードレア国では、それはもう望めない。
それならば、ロッド国と戦う為にベルザフィリス国へ行くと彼は述べた。
しばしの沈黙の後、グローリヴァスが最初に同意し、それにシルヴァス、ザロも続いた。
最後まで沈黙を守ったリディは、バイアラスの前に膝を付くと、この瞬間より自分はバイアラス直属の隠密になると告げる。
隠密は、国ではなく個人に忠誠を誓う為、アレス死後、自らの主を持たなかったリディは、この時よりバイアラスを新たなる主とした。
これまで、彼らの出国の原因はヴェリアの堕落にあったと言われていたが、近年の研究ではヴェリアの智謀はいまだ衰えておらず、むしろルフィが作り出した派閥争いによって自分たちの発言力が日に日になくなっていたことへの焦燥が最大の原因ともいわれている。
こうして彼らは家族と自分に忠誠を誓う部下を連れて国境を突破するが、この裏切りに怒ったヴェリアが討伐隊を派遣。
盲目の娘を守るために一行からはぐれたグローリヴァスのみロー・レアルス国へ向かうが、バイアラスたちはかろうじて討伐隊を振り切り、1月26日にベルザフィリス国へ到着する。
この頃ディルセアは、ルーディアの眼帯を貰い、二代目独眼竜という名を継いでいた。
ルーディアは、志を息子ガイヴェルドに、名を軍師ディルセアに継がせ、自らは隠居生活を送っていた。
そのルーディアが、バイアラスとリディを突如自宅に招く。
降伏を認められ、ベルザフィリス国の将となっていた彼らだが、何しろ彼らほど名の通った人材の突然の帰順に、「降伏は偽りであり、すべてはヴェリアの奇策では?」と警戒する者は多く、未だ猜疑の目で見られる日々を送っていた。
互いの存在だけが唯一の支えとなっていたバイアラスとリディは、この招きに応じてルーディアの元へと赴く。
僅かな供と山奥の館に静かに暮らしていたルーディアは、二人を手料理もてなすと、昔話に花を添えた。
直接関わったことはなくとも、同じ時代を生きた者同士、バルディゴス討伐連合軍からディースの戦いまで、それぞれ違う立場で、その戦いをどう見ていたのか、話は盛り上がっていた。
ルーディアの影響力はいまだ絶大であり、「ルーディアが認めたのならば」と、諸将も、次々とバイアラス達への警戒を解いていく。
なお、この時ルーディアは、もしガイヴェルドに将来皇帝となるべき器があれば彼を補佐してほしい、しかし権力という波に飲み込まれる様な器なら、息子を殺してほしいと二人に告げたというが、これは後世の創作説もある。
蜉蝣戦記、というより、この時代のロンドーナ大陸東部における特徴として、「元々同じ国だったものが分裂している」という考えがある。
その為「国」を名乗っておきながら、「文化も歴史も違う他国」ではなく、「同じ国の別の区」という考えがこの大陸の人々の心の底に根付いていた。
バルドの国替えがその一例で、国替えといいながら移動したのはボルゾックを代表とする上の人間だけであり、民衆はそのまま動くことがなく、民からすれば、あくまでも「行政官が入れ替わった」という感覚に近かったという。
また、サリーアやフィリスといった国主が簡単に国を託しているのも、彼らにとっては他国に併合されるというより、同じ国内における「都市合併」に近い感覚があった為である。
ベルザフィリス国は、ルディック帝国の区ではなかったものの、この思想は大陸そのものに根付いていた為、彼らの亡命は、他の時代、他の大陸でいう「亡命」とは、若干意味合いが異なる。
だが、バイアラス達が後世において人気が出てしまったため、ヴェリアとルフィを必要以上に悪人として描き、彼らの出奔を「仕方がなかった美談」にすり替えたに過ぎず、実際は単なる裏切り行為だったのではないか、という指摘も僅かながら存在する。
その為「国」を名乗っておきながら、「文化も歴史も違う他国」ではなく、「同じ国の別の区」という考えがこの大陸の人々の心の底に根付いていた。
バルドの国替えがその一例で、国替えといいながら移動したのはボルゾックを代表とする上の人間だけであり、民衆はそのまま動くことがなく、民からすれば、あくまでも「行政官が入れ替わった」という感覚に近かったという。
また、サリーアやフィリスといった国主が簡単に国を託しているのも、彼らにとっては他国に併合されるというより、同じ国内における「都市合併」に近い感覚があった為である。
ベルザフィリス国は、ルディック帝国の区ではなかったものの、この思想は大陸そのものに根付いていた為、彼らの亡命は、他の時代、他の大陸でいう「亡命」とは、若干意味合いが異なる。
だが、バイアラス達が後世において人気が出てしまったため、ヴェリアとルフィを必要以上に悪人として描き、彼らの出奔を「仕方がなかった美談」にすり替えたに過ぎず、実際は単なる裏切り行為だったのではないか、という指摘も僅かながら存在する。
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