創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

関連ネタ

教会とセクトとカルトの定義


教科書的な定義・分類としては、Steven E. Barkan(2010, 2016, 2021)によれば、宗教は以下のように分類できる。
Church (教会): Ecclesia(エクレシア)とDenomination (デノミネーション)
教会(Church)は、より大きな社会に密接に統合された、官僚的に組織された大規模な宗教組織である。教会組織には2種類ある。ひとつめは、エクレシア (Ecclesia)である。エクレシアは国家の正式な一部であり、国家の国民のほとんどまたはすべてを構成員とする大規模な官僚的な宗教組織である。したがって、エクレシアは国教である。国民はふつうは教会に入信しない。誕生時点で自動的に教会の構成員になる。今日の世界には、サウジアラビアなどの中東諸国のイスラム教、スペインのカトリック教会、スウェーデンのルーテル教会、イギリスの英国国教会など、いくつかのエクレシアが存在する。

明らかなように、エクレシア社会では、エクレシアと国家が強く絡み合っているため、エクレシアと国家をほとんど分離できないかもしれない。中東などの一部のエクレシア社会では、宗教指導者が国家を支配したり、国家に大きな影響力を持っているが、スウェーデンやイギリスなどの他の地域では、宗教指導者はほとんど、あるいは、まったく影響力を持っていない。一般に、エクレシアと国家の密接な関係は、国家の政策と慣行を確実に支持するのに役立つ。このため、エクレシアは、国家が大衆に対する支配を固めるのを助けることがよくあるす。

教会組織の2番目のタイプはデノミネーションである。これは、より大きな社会に密接に統合されているが、国家の正式な部分とはなっていない、大規模で官僚的な宗教組織である。現代の多元主義国家では、いくつかのデノミネーションが共存している。ほとんどの国民は、両親が特定のデノミネーションのメンバーであるために、特定のデノミネーションのメンバーとなっている。彼らはあるデノミネーションに生まれ、他のデノミネーションに改宗したり、宗教を完全に放棄したりしない限り、積極的に信仰を実践しているかどうかにかかわらず、一般的に残りの人生はそデノミネーションのメンバーであると考えている。

[ Steven E. Barkan: "Sociology: Understanding and Changing the Social World" (2010, 2016, 2021) ]
メガチャーチ (The Megachurch)
宗教団体における比較的最近の発展は、毎週末平均で 2,000人以上の人々が礼拝する教会である、いわゆるメガチャーチの台頭である。数十のメガチャーチに、少なくとも10,000人の信者がいる(Priest, Wilson, & Johnson, 2010; Warf & Winsberg, 2010)。ヒューストンにある米国最大のメガチャーチは35,000人の信者がおり、「ギガチャーチ(giga church)」と世荒れている。1970年代には50だった米港のメガチャーチが、今は1300以上となっており、信者総数は400万を越えている。、今日のメガチャーチの半数は南部にあり、北東部は5%である。約1/3はデノミネーションではなく、約1/5が南部バプテストであり、残りがその他のプロテスタントのデノミネーションである。これらのうち1/3のメガチャーチが、世さんの10%以上を国外で使っている。一部のメガチャーチはテレビ伝道師による礼拝やや説教を視聴し、テレビ画面に表示される情報に応じて金銭的貢献を提供するアメリカ人が、地元や時には全米にいるなど、テレビでの存在感は大きい。

従来の小規模な教会と比較して、メガチャーチは、信者が宗教的充足を達成するのを助けることに加えて、信者の実際的なニーズを満たすことに関心がある。これらのニーズとそれらに対処する最善の方法を判断するために、市場調査を実施するメガチャーチもある。予想通り、彼らの建物はどの基準から見ても巨大で、多くの場合、書店、フード コート、スポーツ施設、レクリエーション施設が併設されている。また、デイケア、心理カウンセリング、若者へのアウトリーチ プログラムも提供している。彼らの礼拝は、多くの場合、電子音楽と光のショーを特徴としている。

メガチャーチは人気があるが、規模が大きすぎて、メンバー同士や小さな礼拝所に特徴的な聖職者のメンバーとの緊密な絆を築くことができないと批判されている。メガチャーチの支持者は、メガチャーチがないなら宗教に関与しないであろう人々を、宗教に関与させていると主張している。

Priest, R. J., Wilson, D., & Johnson, A. (2010). U.S. megachurches and new patterns of global mission. International Bulletin of Missionary Research, 34(2), 97–104.
Warf, B., & Winsberg, M. (2010). Geographies of megachurches in the United States. Journal of Cultural Geography, 27(1), 33–51.

[ Steven E. Barkan: "Sociology: Understanding and Changing the Social World" (2010, 2016, 2021) ]
セクト(Sect)
セクトとは、より大きな社会に密接に統合されておらず、その規範や価値観の少なくとも、より大きな社会の一部と衝突することが多い比較的小さな宗教組織である。典型的にはセクトは、セクトのメンバーが、ドミネーションのもともとの見解だとみなすものを復元することを目指してい、より大きな度見ネーションから分離して形成されたものである。セクトは比較的小さいため、通常、ドミネーションや教会のような官僚機構がなく、公式の訓練を受けた聖職者もいない場合が多い。礼拝がより形式的で抑制される傾向がある多くのドミネーションの典型的なものよりも、多くの場合、セクトの礼拝は非常に感情的な体験になる。多くのセクトのメンバーは通常、改宗し、新しいメンバーをその宗派に勧誘しようとする。セクトが多くの新しいメンバーを引き付けることに成功した場合、それは徐々に成長し、より官僚的になり、皮肉なことに、最終的にドミネーションへと発達する。今日のプロテスタントのドミネーションの多くは、メノナイト、クエーカー、その他のグループと同様に、セクトとして始まった。米国のアーミッシュは、おそらく現在のセクトの最も有名な例である。

[ Steven E. Barkan: "Sociology: Understanding and Changing the Social World" (2010, 2016, 2021) ]

カルト (Cult)
カルトとは、より大きな社会の規範や価値観と大きく対立する小さな宗教組織である。カルトはセクトと似ているが、少なくとも 3 つの点で異なる。第1に、カルトは一般に、より大きなデノミネーションから分離したものではなく、主流の宗教的伝統の外に由来している。第2に、カルトは多くの場合、秘密主義であり、改宗者もあまりいない。第3に、カルトの指導者の並外れた個人的資質に基づくカリスマ的な指導者に頼る可能性が、セクトより、少なくともいくぶん高い。

今日のカルトという言葉は、狂った、暴力的な、少数の人々という、否定的なイメージを引き起こすが、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教を含む世界の主要な宗教、およびモルモン教などのデノミネーションは、カルトとして始まったことに留意すべきである。「カルトが人々を洗脳してカルトに参加させる」という考えや、「カルトのメンバーが精神病である」という考えなど、カルトに関するいくつかの一般的な信念にたいして、研究調査は異論を唱えている。統一教会(Unification Church, Moonies)の研究で、Eileen Barkerは「The making of a Moonie: Choice or brainwashing(統一教会信者の成り立ち:選択か洗脳か」(Oxford University Press, 1984)で、統一教会信者は、それ以外の人々と比べて、精神疾患の兆候が多くいわけではないことを見出している。Barker(1984)は、統一教会信者が入信するように洗脳されたという証拠も見いだせなかった。

カルトのもう 1 つのイメージは、暴力的だというものである。実際、ほとんどのカルト信者は暴力的でない。しかし、一部のカルトは最近暴力を振るっている。1995 年、日本のオウム真理教 (Supreme Truth) カルトは、東京の地下鉄のいくつかの路線で致命的な神経ガスを放出し、10人を殺し、数千人以上を負傷させた (Strasser & Post, 1995)。それより2年前、Branch Davidian cultは、テキサス州ウェイコで連邦捜査官と武力衝突した。捜査官たちがその施設を攻撃したとき、火災が発生し、19人の子供を含む80人のカルト メンバーが死亡した。火災の原因は不明のままであえる (Tabor & Gallagher, 1995)。いくつかのカルトが集団自殺を行っている。Heaven’s Gate cultの30人以上のメンバーが、1997 年3月にカリフォルニアで、宇宙から来た異星人と通信しようとして自殺した (Hoffman & Burke, 1997)。約20年前、People’s Temple(人民寺院)カルトの900人以上のメンバーが、カルトのリーダーであるJim Jonesの命令により、ガイアナで自殺した (Stoen, 1997)。

Barker, E. (1984). The making of a Moonie: Choice or brainwashing. New York, NY: Oxford University Press.
Emerson, M. O., Monahan, S. C., & Mirola, W. A. (2011). Religion matters: What sociology teaches us about religion in our world. Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall.
Hoffman, B., & Burke, K. (1997). Heaven’s Gate: Cult suicide in San Diego. New York, NY: Harper Paperbacks.
Stoen, T. (1997, April 7). The most horrible night of my life. Newsweek 44–45.
Strasser, S., & Post, T. (1995, April 3). A cloud of terror—and suspicion. Newsweek 36–41.
Tabor, J. D., & Gallagher, E. V. (1995). Why Waco? Cults and the battle for religious freedom in America. Berkeley: University of California Press. ~^
[ Steven E. Barkan: "Sociology: Understanding and Changing the Social World" (2010, 2016, 2021) ]



その他の定義

Stark and Bainbridge(1987)の定義によれば:
教会 (Church)伝統的な宗教組織
セクト (Sect)伝統的な信条と慣習を持つ、逸脱した宗教組織
カルト (Cult)斬新な信念と実践を持つ、逸脱した宗教組織
となっており、Barkan(2010, 2016, 2021)にある「エクレシアとデノミネーション」という区別はない。

なお、カルトのなかで、
  • そのカルトの構成員あるいは一般社会に対して、危害を加えたか、危害を加える可能性の高いものを破壊的カルト(destructive cult)と呼ぶ

破壊的カルトには;
  • 権威主義的組織
  • 採用時に欺瞞を使用する
  • マインドコントロール技術を使用して人を依存させ、従順にさせる
といった傾向が見られる。

セクトを「確立されたセクト(Established Sect)」と「セクト(Sect)」に分ける場合もある。
Between the denomination and the less tolerant sect, Yinger places the established sect as a more permanent movement that is more inclusive and structured and less alienated than the sect itself. In general, the established sect exhibits a greater accommodation to the secular world. Possible examples might consist of Quakerism, Mormonism, and American Judaism. Here again, depending on greater or lesser organizational complexity, Yinger distinguishes between the proper and the established lay sect. The latter more strongly resists tendencies toward professional leadership and bureaucratic structural development.

Yingerは、デノミネーションと非寛容なセクトの間に、「セクトより包括的で構造化され、疎外されていない、より永続的な運動」Established Sect(確立されたセクト)を位置づけている。一般に、確立されたセクトは、世俗世界により大きな適応している。考えられる例としては、クエーカー教、モルモン教、およびアメリカのユダヤ教が挙げられる。ここでも、組織の複雑さの度合に応じて、Yingerは、Proper Sect(プロパーセクト)とEstablished Lay Sect(確立された信徒セクト)という区別をつけている。後者は、専門的なリーダーシップと官僚的な構造に発展する傾向に、より強く抵抗する。

[ Michael York: "The Emerging Network -- A Sociology of the New Age and Neo-pagan Movements", 1995, p.245 ]





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