概要

フスハー(正則アラビア語)はアラブ諸国の共通語であり、アラビア文字で書かれる。起源は西暦4世紀ごろのアラビア半島にさかのぼるといわれ、イスラーム文明の出現と拡大にともなって北アフリカにまで使用地域が広がり、現在まで言語として大きく変わらずに使われている。

イスラームの聖典であるクルアーンは古典アラビア語で書かれているが、これはムハンマドがいたヒジャーズ地方のアラビア語をかなり反映していると考えられる。クルアーンの記述によれば、イスラームを伝えるために神が選んだのがアラビア語だったことから、ムスリムはこれを「アッラーの言葉」としてとらえている。クルアーン(コーラン)はアラビア語で詠唱して音韻をふむように書かれ、またアラビア語原典がアッラーが人類に与えたオリジナル版とされるため、翻訳は教義上原則禁じられる。クルアーンの勉強や暗誦は敬虔なイスラム教徒の必須の義務とされるが、クルアーンを学ぶためには必然的にアラビア語を読めなくてはならず、アフリカからトルコ、インド、東南アジアにかけてのイスラム圏では、アラビア語がイスラム知識人層の共通語として通用している。

『マカーマート』のような古典に見られる書き言葉は、とくにオスマン帝国の時代に一時期衰退したが、話し言葉は続けて用いられていた。文語は近代になってより簡単なものとして練り直され、近代以降の新しい概念に対応する新語が大量に追加されることで、現代において使用されている現代標準アラビア語が成立した。こうしてフスハーはアラビア語において公的な面を代表する言語となり、宗教関係のほかに、学術関係や書籍・雑誌・新聞などの文章はもちろん、公的な場での会話やテレビニュースなどの改まった場においても使用されるようになった。公的な言語であるためアラビア語の教育もすべてフスハーで行われているが、逆に言えばフスハーは学校で「習う」アラビア語である。ただし文語でありあくまでも公式な場で使用されるものであるため、日常会話においてフスハーが使用されることはない。

古典アラビア語

古典アラビア語を参照してください。

現代標準アラビア語

現代標準アラビア語(MSA)は、中東から北アフリカにかけて文章における共通語であり、国際連合の公式6言語の一である。印刷物(書籍、新聞、公文書、小児向けよみもの)はおおむねMSAで書かれる。「口語」アラビア語(アーンミーヤ)は日々その地域で話されることによって分化したアラビア語の多くの国家的・地域的変種を指し、また、母語として習得される。これらの変種同士で相互理解不能なほどに異なるものもある。書かれることはあまりないが、特に劇や詩といった分野でのいくらかの文学作品が多くの変種に存在する。文語アラビア語または古典アラビア語は「アラビア語」を公用語とする国々の唯一の公用語であるだけではなく、学校の全課程で教えられる唯一のアラビア語の形である。

現代のアラビア語についての社会言語学的状況は、ダイグロシア(社会的な状況の違いなどにより、一つの言語の異なる二つの変種を用いること)という言語学的現象の優れた例となっている。教育を受けたアラビア語話者は、公の場で現代標準アラビア語によってコミュニケーションを取ることができる。このようなダイグロシア的環境のために、コード・スイッチ(言語の二つの変種を話者が双方向に「スイッチ」する)が頻繁に起こり、時には一つの文の中でも見られる。一例として、異なった出身国の、高等教育を受けた二人のアラビア語話者が会話をすることになり、自身の方言では相互理解不能であったとすると(例: モロッコ出身者とレバノン出身者との会話)、意思疎通のためにMSAへコード・スイッチすることができる。

古典アラビア語に(特に前イスラームから、クルアーンの言語を含むアッバース朝の時代において)深く根付いてはいるが、文語アラビア語は変化しつづけている。古典アラビア語は規範的であるとみなされる。出来不出来の差はあるものの、近代の文章家は(シーバワイヒのような)古典的文法家の示す文法規則に従おうとし、(リサーヌ・アル=アラブのような)古典的辞書に示される語彙を使用しようとする。

しかし、急激な近代化により、古典の作者には理解しがたいであろう多数の語が導入された。それらの語は、他言語からの借用(例: فيلم フィルム)や、既にある語からの新造(例: هاتف 電話 < 話す人)という形態を取った。MSAは他言語や口語アラビア語の文法構造からも影響を受けている。MSAでは並列の際に「それ・それ・それとそれ」という文があるが、古典アラビア語では「それとそれとそれとそれ」とし、主語を先頭にする文が明らかに古典アラビア語よりMSAにおいて著しい。このため、近代共通アラビア語はアラブの外の文献では一般に古典アラビア語と異なるものとして扱われる。

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