とあるデパートの3階、女性専門ファッションショップにて。
田中れいな♂は女装されられている。
そして今。
女装を強要してきた2人のために2人が着る服を選んでいる。

「うーん 迷うっちゃねぇ・・・」

最初は任務を果たしてサッサと試着室に戻ろうと思っていたけど、
あの2人に好きな服を着せられると思うと俄然やる気が出てきた。
案外ハマる。

「うーん・・・えりにはやっぱり清楚な女の子っぽいのかな・・・さゆは・・・なんでもいっか」

下の方にあったTシャツを取ろうとしゃがみ込む。
あっ、これ可愛い。 さゆに買ってあげよう。

もはや、すっかり女の子気分で、スカートがめくれないように丁寧にしゃがむ。
が、スカートの端からチラチラと何かが動いてる。
はっとして周りをキョロキョロする。
とりあえず誰にも注目されてないことを確認してほっと胸をなでおろす。

危ない危ない・・・
すっかり自分が男やってこと忘れとった・・・
女の子以上にスカートがめくれないように注意せんと・・・

「何かお探しでしょうか?」
「!!」
「・・・キョロキョロされてたので・・・」
「あ、いや・・・とくに・・・」

焦りが顔に出ないよう、平然を装って笑顔で振り向く。
男性禁止と忠告してきた店員だ。

「あっ、その・・・先程は申し訳ありませんでした!」
「あ、いえ・・・」
「そちらの服 すごく似合ってらっしゃいますよ とっても可愛いです」
「そ、そうですか?」

えりやさゆ以外に可愛いと言われたことがなかったから、結構嬉しい。
って、ダメダメ! れーなは男なんやから!

スカートに十分配慮して立ち上がる。

「お連れ様は?」
「え?」
「さっき一緒にいらしゃったお二人は?」
「え、えーと・・・下でメシ・・・昼食を・・・」
「そうでしたか ではおひとりでご自分の服を」
「いや その・・・(なんか都合の良い言い訳を)・・・
 こ、今度はれー・・・わ、私が代わりに選んであげようかな、と・・・」
「なるほど では、今持ってらっしゃる服は金髪の方に」
「あ、そーです」
「ですよね とってもお似合いになると思いますよ では、今探してらっしゃるのは黒髪の方の」
「はい 一応・・・」
「でしたら・・・そーですね・・・あちらに似合いそうな服がありますので・・・」

半強制的に手で掴んでいた髑髏の柄のTシャツを棚に戻され、店の反対側に連れて行かれる。
メルヘンゾーンというべきか・・・こういうのはゴスロリと呼ばれてるのだろう。
やっぱりさゆはこういうイメージなのか・・・?
遠くにゴスロリっぽい服を着た店員が見えたけど、かなりうまくまとめてあって普通に可愛かった。
あれならさゆも可愛くなるだろう。

「もう少し抑え目の服でもお似合いになると思いますが、
 あえてこのような感じのゴスロリ風の服を着てみるのもいいと思うんですよw」
「はぁ・・・」
「保田せんぱーい! ちょっと・・・」
「あ、今いくから  すみません、お気に召すものがありますか探してみてください」
「あ はい・・・」

店員はお辞儀をして店の奥に消えてった。

ホントに申し訳なさそうにしてる感じ出すのうまいな
にしても親切な店員さんだなぁ・・・もしかしたら男と間違えたことを気にしてるのかもしれない。
全然間違ってなかったのに・・・

目線を前に戻す。
・・・・・・これがゴスロリか

やはりオシャレなお店だけあって、そこまで派手なわけではないが、結構なものだ。

「まっ、いっか・・・どーせさゆのやし」



「れーな遅いね」
「はぁ、えりはまだいいの れーなにちゃんと服選んでもらえるだろうから
 絶対さゆみの選び始めるころにはやる気なくなってるの」
「・・・だろうねw」
「ったく笑いごとじゃないの さゆみなんてスカートだけ替えればことたりたのに、
 えりがさゆみの服で体拭くから・・・」
「だって、さゆのお汁なんだから当たり前じゃんw」
「はぁ・・・」
「えりぃ? 開けてよか?」
「あ、れーなだ ちょっと待って! 今裸だから周り確認してから開けて」
「!! じ、じゃぁ 服だけ渡すけん///」

周りを確認してから目をつむってそっと扉を開ける。

「こ、これ・・・ひゃん!/// え、えり!!」

目をつむってるのを良いことに、ポロンとタマタマから撫で上げられる。
怒って(+ドキドキして)振り返ったけど、えりは既に更衣室の扉を閉めていた。
一つため息をついて壁に寄り掛かる。
今更ながらなんてことをしてたんだと思う。
店員さんは一生懸命接客してるし、買い物客もあれこれと悩みながら服を選んでいる。
なのに、試着室というちょっとしたトイレの個室みたいな場所であんなことを・・・

ふと、試着室に目を向けてみる。
やはり、こんなトコであんなコトしてたなんて考えられない。
もし、バレていたら店内中が、デパート中が大騒ぎになっていただろう。
そしたらきっと警察に補導されて・・・
バレた時のことを考えただけでも胸が痛い。
ってか男がこの店内に忍び込んでるというだけでも十分ヤバい。
しかも女装して、スカートにノーパンだ。

やっぱり店の外で待ってようと決心したとこで試着室の扉が開く。

「ぶっひゃひゃひゃひゃw ちょ れーな!」
「え、えり! 裸!!///」
「いいんだって! 男れーなだけだしw ってか、何あの服!?w」

さっきパンツも見られたくないって言ってたのはどこのどいつだ!!

「でもパンツくらい!///」
「マジであの服さゆに着せるつもり!?w あはははははw」
「だからさゆの服の前にえりが服着んと!!///」

大笑いしてるえりをなんとか試着室に押し戻す。
いくらなんでもオープン過ぎる!
周りの目線が痛い・・・てか、あんまり見られると困る バレたりしたら・・・

試着室に押し込めたのにまだ店内にまで笑い声が響いてる。
・・・ん? 笑い声に交じってさゆの声が聞こえる。

「れーな・・・適当に選ぶくらいだったらさゆみも許してあげるけど、ウケ狙いだけは許さないの」
「え? そ、そんなに・・・変やった?」
「まさか真面目に選んでコレ?」
「・・・いや 適当やけど・・・」
「いくらなんでもゴスロリって・・・」
「や 店員さんが、さっきの黒髪の方だったらあえてゴスロリでも可愛い、って・・・」
「まぁ・・・あえてのゴスロリってのも悪くはないと思うけど・・・」
「そーやろ? れーなもさゆにはゴスロリも案外似合うかもって」
「いや それにしても・・・この服のチョイスはおかしいの
 これじゃ、気の狂ったお姫様みたいなの つーか、ハンカチまで合わせるとか・・・」

さゆがブツブツいってる間に、えりは着替えて試着室から出てきた。
まだ、腹を抱えて笑ってる。
そして遅れること約3分。
満を持して、さゆが出てきた。

うわっ・・・

隣で大笑いする声が・・・
そしてその笑い声が注目を集めたのか、こっちを見たであろう人のクスクス笑いが聞こえてくる。

「あっひゃひゃひゃひゃひゃw」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・ごめん さゆ」

選んだ服の組み合わせなのかなんなのか、
さゆが着てるとこが余計に面白いのかどうなのかはわからないけど、とびっきりだ。

「・・・・・・ぶはっw」
「ムカッ れーなが選んだんだよ!? 絶対許さないの!!」
「あっ、やっぱりさゆみちゃんとえりちゃんだぁ」

突然脇から声をかけられる。
クラスメイトの女子だ。

「え!? 田中くん!??」
「え? あ、いや・・・」
「うへへw 違いますよw この子はれーなの従妹の・・・ほら自己紹介w」
「え、えーと・・・田中・・・レイカ・・・です」
「レイカちゃん よろしくね」

またまた変なことになってきた。
女装がバレたら今後の高校生活がめちゃくちゃになることは間違いない。
それでもバレてしまった方がまだいいような・・・予感がする。
確実にさゆえりは何か仕掛けてくる・・・

予感の通り、両脇の2人は新たな展開に涎を垂らしていた。





つづく
 

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