休日の昼下がり、かめい君とれいなはまったりとDVDを観ていた。
14歳から16歳までの少女が突然笑いだして死に至り、生きる屍―――ステーシーとして歩きだす、という内容だった。
だが「ゾンビ物」と言い切ってしまえるほど単純なものではなかった。
おかげでDVDを観終わったとき、かめい君は胸が痛くなり、どうしようもなく切なくなった。

「なんか……切ないなぁ…」

かめい君はテレビの電源を落とし目を擦った。
どうやら少しだけ泣いてしまったようだった。

「死んじゃってさ、もう1回殺されるんだよ、好きな人に……」

かめい君はお得意のあひる口をさらに突き出している。
その表情は本当に切なそうで、れいなは思わずかめい君の頭を撫でてやった。
彼は昔から、こうやってドラマや映画に感情移入し過ぎるところがある。

「でも、れなはちょっと良いなって思うよ」

突然の彼女の言葉にかめい君は思わず「え?」と返した。

「好きな人に再殺されるやん、最後。それもなんか、愛なんかなぁって思うっちゃん」

そうしてれいなは優しく微笑んだかと思うと、ふたり分のコップを持って立ち上がった。
流し台に持っていき、水で洗い流す。鼻歌交じりのその姿が、何処となく、主人公の女の子―――詠子と重なった。
詠子は、自分がもうすぐ死ぬことが分かっていながらも、ずっと笑っていた。

「ねぇ絵里」

れいなは洗い物を終え、手を拭きながらこちらに戻ってきた。
普段の学校生活とは違って髪を下ろしているせいか、余計に彼女が詠子に見えてくる。

「れながもしステーシーになっちゃったら、絵里が再殺してくれる?」
「へ……?」
「……なんてねー。なにマジな顔しとぉと?」

れいなはそうして再び笑った。
物語の中の少女たちは、死ぬ前に多幸感に包まれた笑顔を見せる。
学者の云うところの「臨死遊戯状様―ニアデスハピネス」の笑顔は、美しいんだけど、切なかった。
れいなの笑顔は可愛い。だけど一瞬だけ重なってしまったから、かめい君は思わずガバッと抱き締めた。

「んぇ?」

突然の出来事にれいなは体を反らせたが、かめい君は構わずに体重をかけて彼女をベッドに押し倒した。
ボフっという音のあと、かめい君はれいなにキスをした。なんどもなんども、角度を変えて唇を啄ばんだ。

「んっ…ちゅっ…んん……」

れいなの唇は甘くて柔らかい。
それを確かめるようにかめい君はキスをした。
れいなもそれに応えるように唇を突き出し、かめい君の首に腕を回した。

「んっ…え、りぃっ……」

かめい君は名残惜しそうに離れたあと、れいなの前髪を優しく撫でた。

「僕はヤダよ」
「え?」
「れーながステーシーになっても、殺すなんてできないよぉ…」

そう話すかめい君は涙目だった。先ほどのDVDを引きずっているのか、あひる口も健在だった。
れいなは慌ててかめい君の頭を撫でる。

「だから、たとえばの話やん」
「たとえばでもヤなの!れーなはボクのお嫁さんになって、すっごいシアワセな人生を送るの!」

彼の言葉はどこか子どもっぽかった。
どうしてかめい君が今日はこんなに余裕がないのかはれいなには分からない。
単に感情移入しやすい人だから、DVDのせいで揺れているのかもしれない。
だが、ハッキリとれいなには、分かることがあった。
かめい君は真っ直ぐにれいなと向き合い、れいなを好きでいてくれているということが。

「絵里ぃ……」

れいなは絵里の名を呼び、今度は自分からキスをした。
不器用な触れるだけのキスを交わすと、れいなはいつものように笑った。

「ごめん、もう冗談でも言わん」
「ホントにぃ?」
「ホントホント」

れいなはまた笑った。それはニアデスハピネスのような笑顔ではなく、いつもの彼女の笑顔だった。
いたずらっ子のようで、なにか企んでいるような「ニシシ」という笑い方に、かめい君もまた「うへへぇ」と返した。
ああ、やっぱり彼女はこうでなくちゃとかめい君は再びキスをした。

「んっ……それでね…絵里…」
「んー、なにー?」
「……当たっとぉよ?」

れいなはそういうと絵里の腰の方に手を伸ばし、それを触った。
随分と膨張しているそれはズボンの上からでも分かるほどだった。

「うへへぇ、だってれーな、可愛いんだもん」

かめい君はだらしなく笑うと、れいなの首筋にキスをし、べろっと舌を使って舐め上げた。

「ひゃっ……あ……」

真っ白いれいなの肌に痕をつけるようにかめい君はキスをしていく。
僕のだぞ!って分かるような痕のつけ方は随分と嫉妬深くて子どもっぽくて独占欲が強いと思う。
だが、最近は中等部の工藤君や佐藤君、そして後輩の光井君がライバルだと知り、かめい君は少しだけ焦っていた。

「れーなモテモテだなぁ…」
「ふぇ?」
「まー、かわいいからねぇ、ココとか」

かめい君は服の上かられいなの小ぶりな胸をそっと触った。

「ふぁっ!」

手のひらにすっぽりと収まるそのサイズが可愛らしい。
柔らかい胸をなんどか揉むと、れいなは素直に声を上げ、かめい君の手に手を重ねた。

「あっ……はぁ…えり…絵里ぃ…あっ、もっとぉ……」
「んんー?もっとほしいの?」
「……うん」

服の上からの刺激じゃ足りないのか、れいなは涙目になりながらそう訴える。
素直におねだりする彼女が可愛くて、かめい君は満足そうに笑ってシャツに手をかけた。
一瞬にしてれいなの服を脱がし、いつの間にかブラジャーも取り払われたれいなは、上半身になにも身に纏っていない状態になる。
真っ白いシーツの上、真っ白い肌と、れいなのピンクがかった茶髪が浮かび、かめい君の鼓動は高まる。

「ねー、れーな……」
「あっ……はぁ…なん?」
「れーな、ちょー可愛い。今日のれーなマジヤバい」

そうしてかめい君はれいなの乳房にキスを落とす。
甘くて柔らかい胸は、かめい君によって形を変えられていく。

「んっ!あ、あっ!はぁ……え、えりぃ……はぁっ」

れいなは切なそうに声を漏らし、かめい君の短い髪に指を通したあと、自分の胸に押し付けた。
かめい君もそれに応えるように舌を突き出しては胸を舐め上げ、もう片方の胸を揉みし抱く。
白くてすべすべな肌を指でなぞっていくと、れいなは甘い声を上げた。

「えりぃ…はぁ……あっ…あ、あっ……ん」

かめい君は胸を舐めると、そのまま鎖骨、喉へと辿っていく。
顎に到達したあと、れいなの小さな唇にキスをすると、れいなもそれに応えた。
ちゅっと啄ばむ音のあと、舌と舌とが絡み合い、唾液が往復していく。
空いていた右手でれいなの耳朶を軽く触ると彼女は「んっ!」と反応した。

「やぁ……あっ……ん、あっ…」
「れーな、かわいー」

そうしてかめい君はニッと笑い、れいなの頭を撫でた。彼女の細くて柔らかい髪を指が滑っていく。
れいなのすべてが愛しくて、そのすべてを丁寧に愛したくて、どうしようもない想いが先行して破裂しそうになる。
かめい君は再びれいなの乳房を撫でまわした。主張した突起を弾くと、れいなは「ふぁっ!」と目を瞑って快感に悶えた。

「……絵里のいじわるぅ」
「そぉんなことないですよ?」
「もぉ……がまん、できんとに……」

れいなはかめい君を引き寄せると、強引に唇を重ねた。

「絵里の……ほしい…」

涙目でそう訴えられては太刀打ちする術もない。
別に意地悪していたわけじゃないんだけれどなと、かめい君はれいなの額にキスをし、右手を下げていった。
れいなのズボンと下着を同時に下ろすと、彼女はなにも身に纏っていない状態になる。
真っ白い裸体がシーツの海に浮かび、思わず息を呑んだ。どうしようもなく彼女は美しかった。

「れーな、なんかした?」
「え?」
「いや……なんか今日のれーなメチャクチャ可愛いからさ」

れいなの下腹部を指でなぞると、れいなはビクッと反応した。
既に大量の愛液を垂れ流しているそこは充分に濡れ、かめい君を待っていた。
かめい君は指をそっと挿入すると、れいなのそこはぎゅうと締め付けてきた。たったの1本なのにキツいのは相変わらずだった。

「んっ!あ、あっ……わっ…からんけど……はぁ……あっ!」
「うーん……大人になったのかな?」
「って…あっ……高2、やけど…ふぁっ!」

実際の世界では今年で23歳になるれいなだが、この世界では永遠の16歳。
年齢を重ねなくても、内面から醸し出される女性としての色気にかめい君は翻弄される。
ちょっとやんちゃなところも、我儘なところも、可愛らしい胸も、すべてを含めて“れーな”だねってニコッと笑った。

「なに、あっ…考えとぉと……?」
「ん〜?なんもー」
「うそっ…あっ!」

かめい君は中に沈めていた指を引き抜き、再び奥へと沈めた。
ぐちゅっという粘着質のある音が響いたかと思うと、そのままかめい君は親指で外側の蕾を押し付けた。

「やっ!あっ!んん、あっ……あっあぁ…え……えりっ…あっ!」

ぷっくりと膨らんだ蕾を押すと、中に挿入していた指の爪先に温かい新たな液体を感じた。
濡れながらかめい君を待ち侘びているれいなが愛しく、かめい君は片手でベルトを外し始めた。
手慣れた動作でズボンを下ろすと、既にかめい君の大亀様は反り立っていた。

「ふぅっ…えり…絵里ぃ……」
「んー?どうしたの?」

れいなの声に気付いたかめい君は、自分のを挿入する前にれいなを見つめた。
彼女はかめい君の頬に手を伸ばしたかと思うと、そのまま軽くキスをした。

「好きよ……絵里」

ほんのりと赤みを帯びた顔でそんなことを言われ、れいな以上にかめい君は赤面した。
改めて真っ直ぐに言われると照れてしまう。やっぱり、れーながステーシーになったとしても、僕は再殺なんてできないよと笑った。

「いくよ?」

そうしてかめい君はいちど確認すると、れいなは静かに頷いた。
れいなの腰をもち、ゆっくりと中に沈めていく。れいなの中は狭く、傷つけないようにかめい君は中へと進んでいく。
もう数え切れないほどに体を重ねてきたのに、この一瞬の緊張感はなくならない。

「んっ!あぅっ!」
「はぁっ……れーな、痛い?」

れいなの声に我に返るが、れいなはかめい君の右腕にしがみつき、首を振った。
少しだけの息苦しさがあるのだけれど、それでもれいなはかめい君を受け入れる。それが自分なりの愛情だから。

「あああっ!」

すべてを沈めきると、ふたりの距離はなくなった。
かめい君も自分を落ち着けるようになんどか深く呼吸を繰り返し、れいなの髪を撫でた。
額に滲んだ汗をれいながそっと拭うと、「やっぱ……カッコよかよね」と呟いた。

「絵里……最近、カッコ良く…なったかも」
「えぇ?全然なにもしてないけどね」
「れなやって、なんも、しとらんもん」

そうしてふたりは自然と笑い合う。こういう何気ない瞬間が好きだった。
傍から見れば、なんの意味もないような行為や時間を重ねることが、日々のシアワセを形作るものだと、ふたりは知っているから。
かめい君はもういちどキスを落としたあと、腰をギリギリまで引き抜き、再び最奥へと叩きつけた。

「あっ!ん、んっ、あっ……あぁっ!」

濡れているれいなの中は不規則に動き、かめい君のそれに絡み付く。
あまりの締め付けに一瞬で持って行かれそうになるがぐっと堪え、かめい君はれいなの中で暴れた。

「んっ…あっ、はぁっ、えっ…えり……絵里ぃ!」
「れーな…れーなっ……」
「あっあっ!えり……気持ち…ン…よか……はぁっ!」

れいなの中から溢れ出た愛液はかめい君を伝い、シーツを濡らす。
潤滑油となりスピードも上がって行き、その度にパンパンと肌と肌が打ちつけ合う音が響く。

「やぁっ…絵里……もっと…もっとぉ!あぁっ……ああん!」

れいなから催促されたかめい君は困ったように笑ったあと、両手で腰をもった。
ぐんっと腰を打ちつけ、引き抜き、再び打ちつけ、中で掻き回す。
入口から再奥まで、かめい君に支配されたれいなはただ喘ぎ声を漏らした。

「はあっ!絵里!あっあっ!んん、んあっ!ああっ……はぁはぁ…あっ、あっ!」

かめい君に合わせてれいなも腰を振る。
締め付けられたかめい君も限界を迎えようとしていた。
腰をもっていた両手を離し、れいなの顔の横に持っていき、キスをした。

「はぁ…れーな……いっしょに、イこ?」
「ふぁっ…うんっ…ちゅっ……絵里も……れなとぉ……!」

そうしてかめい君はラストスパートをかけた。
ふたりの下腹部から聞こえる水音と肌を打ちつけ合う音、口から漏れる喘ぎ声が室内に浮かんでは消える。
ぐちゃぐちゃに掻き回され、痛みを覚えるが、かめい君の声や温もりに、れいなは自然と快感を覚えた。

「あ…あっあっ!えり……れなっ…もう…はぁっ!やっ…ダメ…あっ、あぁぁっ!」
「れーな…れーな……好き、だよ…うぁっ…」
「絵里…大好き…ああっ!大好きっちゃん、絵里…はぁん!ダメ、イくぅぅ!」

れいなは両腕をかめい君の背中に回し、ぎゅうと抱きしめた。
かめい君が再奥を突くと、それに合わせるようにれいなの全身が痙攣し、絶頂を迎えた。
小刻みにかめい君もれいなを突き、そのまま中にすべてを吐きだした。




れいながそっと目を開けると、隣にはかめい君が眠っていた。
あのまま寝てしまったんだなと苦笑しながら、広いかめい君の胸に頬を寄せた。

「……れながステーシーになっても、165分割にはできんちゃろ?」

165分割にせずに、いっしょに逃げることが、かめい君なりの愛情なのだろうなと考えながら、れいなは再び眠りに就いた。

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絵里が目を開けると、隣にはシアワセそうに眠るれいな君がいた。
彼はぎゅうと絵里に抱きついたまま、離れてくれそうにはない。

もし、絵里がステーシーになったとしたら、れいな君はどうするだろうとボンヤリ思う。
ヘタレな彼のことだから、あの主人公のように165分割にはできないんだろうなと思った。
かと言って、いっしょに逃げるほどの行動力もあるとは思えないけど……

「れーななら、どうする?」

絵里はクスッと笑い、シーツを掛け直してやった。
れいな君はそれに応えないまま「んー…」と寝言を漏らし、絵里に抱きつく。
彼はもしかしたら、愛する人がどんな形になろうとも、最後は血まみれでメチャクチャにされることを望むのだろうか。
実際、自分がステーシーになるなど、あり得ないことなのだけど。

「案外、綺麗に165分割にして、自殺しちゃう?」

眠るれいな君はもちろん、応えることはなかった。
絵里はれいな君の髪を撫で、そのまま眠りに就いた。


人を愛するということは、思ったより、複雑みたいだとボンヤリ思った。





ステーシーズとかめれな おわり
 

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