偶には四人で遊ぼう、という話になった。
そうなると、一番部屋が広い聖君の家で、ということになり、集まった聖君・衣梨奈・鈴木君・里保。
今日はお手伝いさんが不在なので、聖君が「アイスティーとお菓子、取ってくるよ」と立ち上がり、
鈴木君も「僕も手伝うんだろうね」と、男子二人は部屋を出て行った。
二つの足音が遠ざかるのを何気なく聞く衣梨奈と里保。

「里保、今日の英語の自習で出たプリント、全部出来たと?」
「まだじゃ。あれ、持って帰ってでも全部訳さんとあかんじゃろ? 後で香音ちゃんと二人で一緒にするつもりじゃ」

 ̄ ̄ ̄ ̄と、最初はそんな他愛もない会話だった。

「香音ちゃんは英語が出来るから良いっちゃね。聖は勉強は少し苦手なところが残念やと」

はあ、と息を吐く衣梨奈に、自慢気に里保は腕を組む。

「香音ちゃん、ウチが分からない所は、自分のプリントを後回しにしてでも教えてくれるけぇ。すっごい優しいんじゃ」
「 ̄ ̄ ̄ ̄ちょっと待て里保。聖だって優しさなら負けてなかとーよ」

変な対抗心を燃やす衣梨奈。

「聖は一緒に歩く時は車道側を歩いてくれるし、えりのワガママも笑って応じてくれると!」

こんなことを言われて、引き下がる里保ではない。

「それなら香音ちゃんだってウチが掃除当番でゴミ箱運んでいると、持ってくれるし、
 ワガママ言っても『仕方ないんだろうね』とか言いながらも笑ってウチの言うこと聞いてくれるけぇ!」

…………なんだか話がおかしな方向へと行き始めた。

「彼氏力? って言うじゃろ、あれは絶対に香音ちゃんのほうが高いけぇ。聖君のはえりぽんを甘やかしてるだけじゃ」
「ば、ばってん、聖は香音ちゃんのように恥ずかしがり屋じゃなかと、いつでも男らしいっちゃ!」
「そ……そこも香音ちゃんの魅力なんじゃ!」
「香音ちゃんのことだからどうせベッドの中でも乙女全開なんやっちゃろ。その点、聖はちゃんとリードしてくれると」
「えりぽん、それは聞き捨てならんけぇ。香音ちゃんだって男じゃ、すっごい優しくシてくれたんじゃよ!」
「……里保から襲ったんじゃなかとーと?」
「そ、それもあったけど未遂で終わったんじゃ」

…………話はどんどん際どくなっていく。

 ̄ ̄ ̄ ̄そこから、初体験の話になり。

「初めて聖のを見た時、正直『こんなの入らんちゃ』と思ったけん」
「あ・それウチも。正常位でしようとして入らんほどのキノコじゃったよ」

オトコの身体は不思議っちゃ・不思議じゃのぉ、と意見が合う。

「ね・えりぽん、ぶっちゃけ聖君のサイズってどれくらい?」
「えーと……長さがこれくらいで……太さがこれくらいと」

両手を使って説明する衣梨奈、がっくりと机に突っ伏す里保。

「香音ちゃんのはそこまでじゃなかったんじゃ……負けたー!」
「へへーん、勝ったとー!」

何の勝負か分からないが、衣梨奈は無邪気にはしゃぎ、里保は本当に落ち込んでいる。
と・思いきや。
里保は、がばっと体を起こす。

「でもワイルドだった時の香音ちゃんは聖君より大きかったかも。
  ̄ ̄ ̄ ̄うぅん、絶対に聖君より大きかったんじゃ。まさに金棒じゃったけぇ」

頬を赤らめながら、体をくねらせる里保に「金棒ってどういうことっちゃ?」と尋ねてみるも、自分の世界に入った里保は戻ってこない。

「あの時の香音ちゃんはいつもと違ってちょっと強引でゾクゾクしたし、
 それでも優しかったし、ごんぶと絶倫テクニシャンじゃったぁ……」

うっとりしながら呟く里保に、

「聖だって絶倫テクニシャンやけん!」

衣梨奈が反論する。

「えりの身体を気遣ってシてくれるし、初めての時、3回イッたと」

胸を張って自慢する衣梨奈に、里保は首を傾げる。

「? それって3回連続でシたってことけぇ?」
「数え方は知らんちゃ。ばってん聖が1回イク間にえりが3回イッたってことっちゃ」

今でも散々イカされるけん、と胸を張る衣梨奈に、眉を顰めて少し考え込む里保。

「……えりぽん、それって……聖君が遅漏ってことじゃないんかのぉ?」

里保の言葉に、真剣な顔つきになる衣梨奈。

「……やっぱり里保もそう思うと?」
「だってそうじゃない? 女の子が3回イッて、やっと1回なんて」
「えり、聖としか経験ないから標準が分からんと。
 自分が敏感体質やけん、えりが早いだけと考えとったけん。ばってん、薄々そうじゃないかなあ、とは思ったと」
「ウチだって香音ちゃんとしか経験ないけぇ。でも……ねぇ」
「……遅漏だとマズイと?」
「さあ? 知らんじゃけぇ。でもえりぽんも聖君も満足してるなら良いんじゃない?」
「んー、でも聖には、いっぱい気持ち良くなってほしか。 ̄ ̄ ̄ ̄ね、里保。遅漏って治ると?」
「知らんけぇ、そんなこと。 ̄ ̄ ̄ ̄あ・聖君のパソコンで調べてみたらどうじゃ?」

そう言って女子二人は立ち上がり、机のパソコンに向かい、電源を入れた。


………………。


部屋の扉前の廊下。お盆に乗せたお茶とかお菓子を床に置き、赤い顔で蹲る男子と青い顔で頭を抱える男子がそれぞれ一名ずついた。

「……どうして女の子って、こういう会話するんだろうね。ていうか里保ちゃん、ワイルドな僕ってなんのこと?」

赤い顔の男子、 ̄ ̄ ̄ ̄鈴木君は呟く。
青い顔の男子、 ̄ ̄ ̄ ̄聖君は今にも倒れそうな顔色で深く沈み込んでいた。

「遅漏だとバレてたしバラされた……僕どうしたらいいんだろう……」
「でも、えりちゃんは不満に思っていない様子なんだろうね。いいんじゃない?」
「よくないよ!」

器用にも小声で叫ぶ聖君。

「えりぽんに掛かる負担を考えたら……僕、嫌われたらどうしよう……!」

それはないんだろうね、とは思ったものの口に出さず、菓子皿のクッキーを一枚齧る鈴木君。
鈴木君がポリポリと食べている間も聖君の苦悩は続く。

「以前にも寝込ませちゃったことあるし……本当にどうしよう……」

ぶつぶつ呟いて、負のループに入る聖君。
そして。
ゆらり、と頭を起こし。

「ねえ香音ちゃん」

二枚目のクッキーに手を伸ばしかけていた鈴木君に声をかけた。

「なんだろうね」
「……ちょっと、見せて」

聖君の沈んだ声に、思わず身を引く鈴木君。

「な、なにをだろうねっ」
「なにって、ナニをだよ」

鈴木君の背中に嫌な汗が一筋、流れた。

「……前に学校のトイレで見せ合いっこしたんだろうね」

ほら途中で田中さんがやってきてさ、と話してみるものの、聖君の虚ろな瞳は変わらない。

「あの時は平常時だったじゃん。今度は……戦闘モードのを見せて」

どばっと嫌な汗が流れる。

「み、見てどうするんだろうね!?」
「比較して調べてみたいんだ。 ̄ ̄ ̄ ̄僕のも見せるからさ」

お互い様だよ、そう言ってふらりと近づく。

「ど、ど、どうやって戦闘モードにするのさ!?」
「 ̄ ̄ ̄ ̄協力するから」

ズボンを掴まれる。

「遠慮するんだろうね!」
「大丈夫。 ̄ ̄ ̄ ̄優しくするから」

そう言って自らのズボンのベルトを緩め始めた。

「いやー! 聖君に犯されるーっ」

廊下でアホな(当の本人たちにとっては真剣な)攻防戦が繰り広げられる。
だから二人は気付いていなかった。

 ̄ ̄ ̄ ̄声のトーンがすっかり大きくなっていたことに。 ̄ ̄ ̄ ̄

そして当然その声が扉一枚隔てた部屋の中にまで聞こえていたことを。

「聖……なにしとると?」
「聖君、ウチの香音ちゃんになにするつもりなんじゃ?」
いつの間にか開いていた扉から怒気を含んだ声が二つ聞こえた。

怒りを身に纏った女子二人が見たものは。
半ベソで必死にズボンを押さえている鈴木君と、己のベルトをすっかり外して鈴木君のズボンを下ろそうとしている聖君の姿だった。

怒りで震えている自分の彼女を見て、我に返る聖君。

「いや、あの、えりぽん、これは……」
「前にもれーなくんを押し倒してたことあったけんね……聖はソッチの趣味もあると……?」

断じて無いよ! そう言いたいのに、喉がカラカラで声が出ない。
その間に鈴木君は聖君から逃げ、里保の背後に隠れている。
里保は鈴木君の頭を撫で、怒りを隠そうともせずに言う。

「聖君……香音ちゃんをソッチの世界に引きずりこもうとした罪は重いけぇね……」

だから違うってば! 心で反論するものの、女子二人の怒りに圧倒されて言葉が出てこない。

「めぇぇぇぇんっ!!」
「聖の馬鹿ぁー!!」

ガスッ!!
コキーン!!☆

脳天に里保の鋭い手刀を、股間に衣梨奈の激しい蹴りを食らった聖君はその場で倒れて悶絶した。

「ぬおぉぉぉぉ……」

頭と股間を押さえて悶えている間に三人はダン! ダン! と激しい足音で階段を下りていく。

「聖! 罰として一週間えりに触るの禁止やけんね!!」
「聖君! 香音ちゃんには一ヶ月は接触禁止じゃあ!!」

そんな怒声が響き、玄関のドアがバタン! と激しく閉められる音がした。
すぐにでも走って誤解を解きたかったが、頭と股間の激しい痛みがそれを許さない。

 ̄ ̄ ̄ ̄聖君が女子二人に「自分はソッチの趣味はない」ということを説明し、理解してもらえたのはそれから二週間後のことだった……。





Girls talk & Boys talk 2 終わり
 

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