里保は不満だった。

自分は試合に向けての個人練習、鈴木君は『ダイエット猛烈頑張る期』として、二人の時間が全く取れなかった。
それだけではない。
10kg近くの減量に成功した鈴木君は、可愛らしさと格好良さのハイブリッドな見かけとなり、クラスの、――――否、学校中の女子たちの注目の的になっていた。

里保は面白くない気持ちでいっぱいだった。



今日の体育の時間。
蒸し暑い体育館で、女子はバレー、男子はバスケと、分かれて競技していた。
コートの中、里保はジャンプして鋭いアタックを決め、点を獲得した。体操服のスソで顔の汗を拭い、香音ちゃん今の見てくれたじゃろか、と思い男子のコートを見ると。
男子のほうも試合が白熱しているらしい、鈴木君がドリブルしながらゴールに向かっている。

「聖君!」

ボールを素早くパスする、聖君は跳んで、――――

パシュ!

華麗にゴールを決めた。

「聖君カッコイー!」

見学していた女子が黄色い声を上げる。
ちらり、衣梨奈を見ると、なんでもないように、ボールでトン・トンとトスの練習をしていた。
男子のコートに目を戻すと、そこで試合は終了したらしい、ピーッと笛が鳴った。

「聖君ナイスシュート」
「香音ちゃんもナイスパス」

二人、ハイタッチしてコートから出る。

「ほら次、里保のサーブやけんね」
「うん……」

衣梨奈からボールを渡される。もう一度男子のほうを見た。
その時だった。
コートから出た、汗だくの鈴木君に、一人の女子が駆け寄り、

「はい、鈴木君お疲れ様♪」

そう言って持っていたタオルを渡したのだ。
鈴木君も躊躇いなく受け取り、

「ありがとうなんだろうね」

笑顔でそのタオルで顔を拭いた。

プチン。

里保の中でなにかが切れた。

「――――香音ちゃんのばかあぁぁぁっ!」

持っていたボールを全力で投げつける。

「へぶる!?」

ボールは鈴木君の顔面に、ドゴーン! と当たり、鈴木君は引っくり返る。
そこで里保は踵を返し、体育館から飛び出す。

「香音ちゃん大丈夫!?」
「里保、どこ行くと!?」

聖君と衣梨奈の声が聞こえたが、構わず渡り廊下を駆ける。

一般校舎の廊下に出ても、里保の足は止まらない。
走りながら、里保の目から目尻へ、そして後方へと涙が飛んだ。

ばかばか香音ちゃんの馬鹿! 乙女のくせに乙女心が全く分かってないんじゃ!

あてもなく廊下をひた走る。
校舎中に授業終了のチャイムが響いたが、それでも里保の足は止まらない。

心が苦しい。
苦しい。
――――頭がクラクラする。

前から一組の男女が歩いてくる。
そこで。
里保の体はグラリと横に揺れた。




気がつくと見覚えのない天井が視界いっぱいに広がっていた。

「ここは……」

呟いて、寝ていた上半身を起こす。――――頭がフラフラして気持ちが悪い。
カーテンで仕切られたベッド。枕の上には氷枕があった。

「あ、気が付いた?」

カーテンの向こうから、そんな声が聞こえてカラリ、と開けられる。
そこに立っていたのは。

「……みっしげさん」

里保も知っている、高等部の先輩だった。

「驚いたよ、りほりほ猛ダッシュで走ってきたと思ったら、突然倒れるんだもの。一緒にいたあゆみんに保健室まで運んでもらったの」
「そうだったんですか……」

説明されて状況を把握する。そっか、ここは保健室か。

「保健の先生が言うには、軽い脱水症状だろう、って。先生は出張で出かけちゃったけれど、今日は安静も兼ねて、授業全部お休みして寝てなさい、だって」
「はあ」

まだ頭がぼんやりして、間の抜けた返事しか出てこない。

「はい、スポドリ」

差し出された紙コップを素直に受け取る。
そして一息に中身を飲んだ。――――少し甘い、冷たいスポドリが気持ち良い、体中に水分が浸み渡る感覚だった。

「すみません、みっしげさん。なにからなにまで」
「こんなことぐらい、どうってことないの。ね?」

さゆもの微笑みに、里保も微笑んだ。
あとで石田君にもお礼を言わないとなぁ、そんなことを思いながら空になった紙コップをさゆみに返そうとする。

「みっしげさん、ありがとうござい、ま……?」

カラン、と紙コップが床に落ちた。

あれ……? うち……。

体中に力が入らない。後ろに倒れ、氷枕の上に頭がポフッと乗る。
なにごともないかのように、さゆみは落ちた紙コップを拾う。

「りほりほって疑うことを知らないんだね」

そう話す声は、とても嬉しそうだ。

うちになにをしたんですか!? ――――そう言いたいのに声も出ない。

「そういうところも含めて……りほりほって本当に可愛いの」

頰に手を添えられる。ぞわり、背筋に悪寒が走った。

「本当に、可愛いの……」

近付いてくるさゆみの顔。



――――嫌だ。
――――助けて。
――――香音ちゃん。
香音ちゃん……!

里保は心の中で叫んだ。



さゆみと里保の唇があと1cmで触れる。――――
その時だった。
廊下からバタバタと激しい走り音が聞こえてくる。

「……ちゃーん!」

――――聞きたくて、会いたくて、愛しい人の叫び声。

「りーほーちゃーん!」

そんな声と共に、ガラリ! とけたたましくドアが開く音がした。
ぴたり、さゆみの動きが止まる。

「里保ちゃん、大丈夫!?」

シャッ、と勢いよくカーテンを開いたのは、――――制服姿の鈴木君。
鈴木君は里保とさゆみの態勢を見て。――――険しい顔をした。
さゆみは里保から体を離す。

「早かったね、鈴木」
「道重さん、里保ちゃんになにをしたんですか!?」

里保が今まで見たことないような、険しい顔と声。

「なんにもしてないよ? 痺れ薬の入ったスポドリを飲ませただけなの」

あくまで飄々と答えるさゆみ。
鈴木君の顔の険しさが増した。

「道重さん、出て行ってください」
「嫌だ、って言ったら?」
「それなら、――――」

鈴木君は強引にさゆみと里保の間に割って入った。

「力づくでも出て行ってもらいます」
「鈴木にしては強行手段だね」
「当然です。里保ちゃんは僕の大切な人です。――――里保ちゃんは僕のものだ」

睨む鈴木君と、それを見つめるさゆみ。
しばらくそんな対峙が続く。

「――――分かったの」

くるり、さゆみが体を回転させた。
カーテンに手をかけながら、

「鈴木。大切な人なら、もっと大事にしないといけないの」

それだけ言って。カーテンから出て、鈴木君が開け放したままだったドアを丁寧に閉めて、保健室から出て行った。


保健室に鈴木君と里保の二人だけが残される。

「あ、か……」

痺れる口で喋ろうとすると、

「里保ちゃん、無理しなくていいんだろうね」

優しく言われる。
目だけで「どうしてここに?」と尋ねる。

「石田君が教えてくれたんだよ」

そう言って、サラリと里保の髪を撫でる。

「怖い思いさせちゃってごめんね。あと、体育館でのことも。聖君とえりちゃんに怒られちゃった」

香音ちゃん鈍いよ、乙女心が分からんにも程があるとー! って。
――――そう語る鈴木君の顔は、バレーボールの形をした赤みがほんのりと残っていた。

「――――今日はもう里保ちゃんの側にいる。ずっと離れないから」

そう言って、里保の投げ出されていた左手を、ギュッ、と両手で握った。

鈴木君の手は、冷房の効いた保健室でも、里保にはとても熱く感じた。――――



保健室の旧式の冷房がゴオーと音を立てながら冷気を吐いている。
里保は両手をグーパーさせて、痺れが消えたことを確かめた。

「ん、もう大丈夫じゃよ」

体を起こそうとする里保に、

「もう少し寝てるんだろうね」

タオルケットをかけてやり、寝かせる鈴木君。

「道重さんがどんな薬を飲ませたか、分からないんだからさ」
「……のぅ、香音ちゃん」
「なに?」
「その、みっしげさんと対峙してた時に言ってくれたじゃろ。――――『里保ちゃんは僕のものだ』って」

里保の言葉に、瞬時に顔を赤くする鈴木君。

「あれはっ、そのっ、い、勢いってやつなんだろうね!」

慌てふためく鈴木君に、クスリと笑う。

「いいんじゃよ。うち、嬉しかったし」
「え、……へ?」
「うちは香音ちゃんのもの。そして、――――香音ちゃんはうちのもの、じゃろ?」

いたずらっこい笑みでそう言うと。
ぽかんとしていた鈴木君も微笑んで。

「――――そうだね、僕は里保ちゃんのもの、だよ」

二人とも笑い合って。
鈴木君が、そっ、とベッドに手をかける。
里保はゆっくり瞳を閉じた。
そして二人の唇が重なった。――――




さゆみはアゴに手を添えながら廊下を歩いていた。

「――――鈴木に伝えるよう、あゆみんに指示したのはさゆみだけど、少し早すぎたの。――――あゆみんにはご褒美とお仕置き、どっちをあげようかなあ」

あーあ、残念だったの、そう呟きつつも、廊下を歩く足取りは、とても軽やかだった。――――




チュ、チュ、と啄むようなキスを何度も交わした。
――――里保の中で、どうしようもなく熱が昂ぶる。
唇を離し、至近距離で見つめ合う。

「ね……シよ?」

熱く囁くと、鈴木君の顔が真っ赤になった。――――そして目が泳ぐ。
ここ学校だよ? とか、まだお昼だよ? とか、そういったことが逡巡している視線で分かる。
里保は体を起こし、鈴木君の首に腕を回す。

「……ねぇ、香音ちゃん」

甘い声で言う。――――鈴木君の理性は陥落したらしい、

「……うん」

真っ赤な顔で頷いた。

鈴木君がベッドに上がる。二人分の重みで、ベッドが、ギシ、と一回だけ鳴った。

「うちを助けてくれたお礼。……香音ちゃんはなにもせんくていいんじゃ」

里保はバサ、と自分の体操着の上を脱いだ。それを床に落とす。――――後ろ手でブラのホックも外し、それも床へ。
鈴木君の右手を自分の胸へと導き、――――里保の右手は鈴木君の股間へと。
ズボンの上から、ゆっくり股間をさすった。
さすり続けると、それはすぐに硬くなって存在を主張し始めた。

「うぁ……」

里保の胸を優しく揉みながら、鈴木君は切なげな声を上げる。
ベッドの上で、はあ・はあ、と二人分の熱い息が上がり出す。
鈴木君の唇を自分の唇で塞ぐ。――――すぐに絡み合う舌と舌。
クチュ・ピチャ、といった水音が響く。送り、送られる唾液。
里保がゆっくり顔を離すと、唾液の太い糸が一本、二人を繋げていた。それは自身の重みで、ぷつん、とシーツに落ちた。
さすっていた手を止め、鈴木君のズボンのベルトを外しにかかる。――――なんとか外して、ボタンも外し、チャックを苦労して下した。

男根は既にパンツからはみ出していた。ひくひくと小さく動いている。
パンツもずり下ろして、男根を外に解放してやる。――――相変わらずの暴力的キノコじゃ、と里保は思った。

「り、ほちゃ……」

手を添えて、シュッシュッと擦る。

「うぅ……」

鈴木君が気持ち良さを我慢するかのような声を出した。
シュッシュッと擦っていると、ますます硬さと太さが増す。先端から透明な液も出てくる。

「香音ちゃん、気持ち良い?」
「う、うん」

恥ずかしそうに頷く。

「――――口でシていい?」

そう尋ねると、慌てたように、

「そ、それはダメなんだろうね!」

と返ってきた。

ワイルドの時はさせてくれたのに、と里保は少しむくれながら、親指で亀頭をグリ、と撫でた。

「うっ」

途端に鈴木君の口から上がる、鋭い声。

「……痛かった? ゴメンね」
「だ……大丈夫、だよ」

その言葉を信じて、竿を強く握ったり、亀頭をクリクリと撫でる。――――透明な液体が、どんどん流れてくる。
その液体を潤滑油にして、シュルシュルと擦る。
鈴木君は、はあ・はあ、と熱い息を吐いて、両手で里保の胸を揉んだ。

「あんっ」

里保の口から快楽の声が出る。

「かの、香音ちゃんはなにもせんでええんじゃ……」
「……触ってたほうが僕も気持ち良いから……」

恥ずかしそうな声が返ってくる。
それなら、と里保は胸を触る手を自由にさせて、自分は両手を使っても収まりきらない男根を熱心に擦る。
やわやわと玉を揉み、男根の根元を強く握った時だった。

「ううっ!」

鈴木君が、堪えきれない、という感じの声を出した。

「……出る?」

控えめに尋ねると、ブンブンと首を縦に激しく振られた。

「我慢せんでいいんじゃ……出して」

その言葉と共に、竿を握る手をスライドさせて、亀頭をギュ、と握った。

「――――ああっ!」

途端、ドピュッ! ドピュッ! と激しく出される白い液体。

男根は脈打ちながら、長く精液を吐き出し、里保の小さな手を真っ白に染めた。――――

額に玉の汗をいくつか浮かび上がらせながら、ふう・ふう、と荒い息を吐く鈴木君。
里保は、手についた精液を舌で掬い取りながら、そんな鈴木君を、陶然とした瞳で見ていた。

鈴木君の男根はビクン・ビクンと動きながらも、まだ天を向いている。――――そして里保は自分でも驚くほどに、今、興奮していることを自覚していた。
なにも言わずにベッドの上で立ち上がる。

「里保ちゃ……?」

そして。鈴木君の見ている前で体操着のスパッツと下着のショーツを脱いで全裸になった。
呆然としている鈴木君を跨ぐ。

「――――動かないでほしいんじゃ」

そう言って腰を下ろした。
クチ、と粘着質な音を立てて触れ合う秘部同士。
ヌプ、と亀頭の先端が里保のナカに入る。

「え、うそ……」

鈴木君が驚いている間にも、里保は顔を赤らめて腰を落としていく。
グニュ・ヌププ、と里保のすっかりトロトロに潤ったナカに入っていく男根。

「〜〜〜っ! 里保、ちゃん……!」

鈴木君は涙目で里保の肩にしがみついた。

男根がすっかりナカに飲み込まれたところで、里保の動きが止まる。
お互いが、ふう・ふう、と熱く荒い息を吐く。
里保は目の前にある鈴木君の肩を、ぽんぽんと、労わるように叩き、

「……じゃ、動くけぇ」

と言った。
グヌ、と動き始める里保。
ヌチャヌチャと小さく動くだけでも、イッたばかりの鈴木君には過敏に感じるらしく、

「う、うあ……っ」

と声を上げる。

結合部がヌチヌチと音を立てて小さく動くだけでも、お互い昂ぶっていく。

そろそろ大きく動いても大丈夫じゃろか、里保がそう思ったその時。

「り、里保ちゃん! ストップ!」

鈴木君の声が響いた。

「なんじゃ、香音ちゃん」

少々不満声で返す。
至近距離で目と目が合う。

「その、里保ちゃん、大丈夫なの?」
「なにがじゃ?」

的を射ない鈴木君の言葉に、首を傾げる里保。

「その…………今日は安全日?」

恥ずかしそうに小さな声で聞いてきた鈴木君に。
里保は、天気予報を見るかのように、毎朝『例の』アプリをチェックしていて。その今日の結果を思い出す。

「実はそろそろ危険日じゃ」

素直に答える。

「じゃ、じゃあダメ! 生は絶対にダメなんだろうね!」

強い力で里保を押し倒し、ベッドに寝かせる。里保の頭の下で、さっきまで使っていた氷枕がすっかり水となって、チャプンと音を鳴らした。

グズリ、と引き抜かれる男根。
その様子を不満気に里保は見守っている。
こんなに身体が火照っているのに、まさかここで終わりなんじゃ、――――里保の頭の中に一抹の不安が宿った時、

「大丈夫だよ、里保ちゃん」

里保の心を見透かしたように、鈴木君は熱い声で答えた。
そしてズボンの尻ポケットから財布を取り出す。
二つ折りのそれを開き、中から出したモノ。――――それはコンドーム。

「前に聖君が『常に用意しておいたほうがいいよ』ってアドバイスをくれたんだろうね」

財布を仕舞い、ピリリ、とコンドームの封を切る。
里保から後ろを向いて着けようとしたので。

「こっち向いてけぇ、香音ちゃん」
「へ?」
「着けてるところ、見たいんじゃ」

鈴木君は里保の言葉にぽかんとして。それから恥ずかしそうにモゾモゾと体の向きを変えた。
裏表を確認してから亀頭に被せる。それからクルクルと伸ばすようにコンドームを根元まで装着した。

「今度はうちに着けさせてほしいけぇ」
「こ、今度ね」

里保の頭の側に手を置いて、覆い被さる形を取る鈴木君。
そんな鈴木君の首に腕を回す里保。

「……じゃ、いくね」
「うん。きて……」

チュ、と軽いキスを交わしてから。鈴木君は挿入し始めた。
ヌププ……と入っていく男根。

「……はあ」

里保は熱い息を吐いた。
鈴木君が里保を、ぎゅっ、と抱きしめる。――――間近で見る鈴木君の顔は真っ赤で。それでもどこか気持ち良さそうだった。
グチュッ、と音を立てて、鈴木君の動きが止まった。どうやら全部入ったらしい。
結合したまま二人、見つめ合い。――――貪るような激しいキスをする。
キスをしている間に、催促するように、ゆらゆらと動く里保の腰。――――それに誘われるかのように、鈴木君の腰もゆっくり動き出した。
ぱちん・ぱちん、と小さく音が鳴る腰と腰。

「あんっ」

思わず唇を離して出てきた、甘い声。
鈴木君は、里保の入口、お腹の上、最奥と、里保が気持ち良くなれるところを擦っていく。

「ふ、ぁあっ、うん!」

里保の喘ぎに触発されるのか、鈴木君の腰の動きも段々と速くなっていった。

「あぁんっ、はあっ!」

喘ぐ里保を見つめながら、鈴木君は里保の耳にかかった髪をどけてやり、

「里保ちゃん、気持ち良い?」

と耳元で囁いた。
途端、ビクン! と身体を反らせ、小刻みに痙攣する里保。
里保の動きに、鈴木君は腰を動かすのを止め。

「里保ちゃん? ――――イッちゃったの?」

里保は赤い顔で小さく頷き、

「か、軽く……じゃよ」

と呟いた。
鈴木君は破顔して、

「里保ちゃんは本当に可愛いんだろうね」

と、また耳元で囁いた。――――里保の身体がビクリ、と動く。

「やっぱり。里保ちゃんて耳が弱いんだね」

ワイルドver.の時に発見したことを、今のノーマルver.の時の鈴木君も見つけたらしい。
――――里保は恥ずかしさに顔を赤くする。

「ところで……そろそろ動いても大丈夫?」
「うん。――――お願い」

鈴木君は快感を、里保はもっと強い快楽を求めていた。――――
またゆっくり動き出す鈴木君の腰。

「ふぅん……」

鈴木君の腰の動きに合わせて、里保の口から甘い声が出る。
徐々に速くなっていく動き。

「あぅん、あぁっ、あ!」

里保の声も高く大きくなる。
鈴木君は、また里保の耳に唇を寄せ、

「里保ちゃん……可愛いよ、すっごく可愛い……」

再び囁いて、耳を舐めた。

「ああんっ!」

キュッ、と自分のナカが締まるのが分かる。

「好きだよ、里保ちゃん……大好き」

言いながら耳朶を甘噛みしたり、耳全体をしゃぶる鈴木君。

「はあっ! あん! か、香音ちゃんっ、香音ちゃぁん!」

鈴木君を強く抱き締め、里保は昇りつめていく。
ぱん、ぱん! と腰打つ音が保健室に響き渡る。
ベッドがギイギイと悲鳴を上げる。
里保は奪うように鈴木君の唇を唇で塞ぐ。鈴木君も応じて、二人で激しい口付けを交わす。

「ぷはっ!」

酸素を求めて唇を離す里保。その目には涙が溜まっていた。

「かの、んちゃあん……! うち、もう……っ。イッていい? ねえ、――――っ!」
「いいよ……僕も、そろそろっ」

ぱしん! と深く激しく打ち込む。
――――それが里保の限界だったらしい。

「ああぁぁぁんっ!」

背中が反る。足の指が丸まる。ギュウッ、と締め付けるナカ。
里保は泣きながら達した。――――

「うあ、――――イクッ!」

鈴木君は力強く里保を抱き締め、ギュウギュウに締まった里保のナカで、ドクドクと男根を脈打たせながら射精した。――――。





ゴオー、と音を立てて鳴る冷房の冷気が心地良かった。
二人で狭いベッドに横になり、里保は全裸のまま、鈴木君に腕枕をしてもらっている。
里保の目はとろんとして、今にも瞼が閉じそうだった。――――服を着るのも億劫な気分。

「里保ちゃん、服を着ないと風邪を引くんだろうね」
「……うん」

返事はしてみるものの、ベッドから出ようとしない。
里保はコロン、と体の向きを変え、

「香音ちゃんゴメンね、授業をサボらせてしまったんじゃ」

鈴木君の目を見て言う。
鈴木君はなんでもないかのように、

「ま、僕にもそんな日があっても良いんだろうね」

と答えた。
放課後を知らせるチャイムが鳴る。

「さ、帰る準備をしようか。今日は部活も休みだしね」

鈴木君は優しく里保の頭の下から腕を抜いて、起き上がる。
里保も観念して、のろのろと起き上がる。床に落としていた下着と体操着を、手を伸ばして拾い、それらを着る。
着ている間、鈴木君は顔を赤くして、体ごと背けた。
今更恥ずかしがる仲じゃないんじゃ、そう茶々をいれようかと思ったが、乙女な鈴木君も、里保の好きな鈴木君だったので、黙って服を着た。
服を着て、ベッドに腰掛けて足をブラブラさせていると、鈴木君が、

「もういい?」

と聞いてきたので、

「うん」

と答える。ようやく鈴木君は里保のほうを向いた。

「じゃ、帰ろうか」

鈴木君が手を差し伸ばす。里保はその手を取り、――――
――――チュ、と手の甲に口付けた。

「里保ちゃん?」
「ねえ香音ちゃん、一緒に香音ちゃんちに帰るけぇ。そして、――――」

手を繋いで里保は立ち上がる。
そして鈴木君の耳元で甘く囁いた。


もう一回シよ?――――


鈴木君は顔を赤くさせ、口をぱくぱくさせた。
でも。

「……うん」

小さく頷いた。――――。


その日。
鈴木君は家で一回だけじゃなく、五回求められたことは蛇足である。――――。





【ぼくはきみのもの、きみはぼくのもの】 終わり。
 

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