『24日〜25日を空けておけYO!』

……吉澤さんの絶対服従宣言が、久々に発令された。
れいなクンはスマホを見て、orzのポーズになっているし、さゆみさんも画面を見て固まっている。

「吉澤さん、ひどいっちゃ……聖なる日に、さゆと濃厚で熱い一日を過ごすつもりやったとに……」

ブツブツとなにか呟いているが、さゆみさんは華麗に無視していた。
LINEの女子会のメンバーのパートナーもれいなクン同様らしく、

『えりぽんがショックのあまり、ダイニングテーブルに大きくヒビを入れました』
『里保ちゃんなんて「家族でクリスマスを過ごすために帰国したんじゃけぇ」って泣き崩れているんだろうね』
『春水ちゃんはスマホに向かって「なんでやねん!」ってツッコミを叫んでいます』
『隣の部屋から、バカが「出勤したら特別手当がでるのにー!」って泣き声が響いてきています』
『男性陣の気持ちも分かりますけれど、吉澤さんの命令は絶対ですから……』

春菜の言葉に、さゆみさんは大きく頷く。きっと女性陣全員が同じ行動をしただろう。
さゆみさんは指を動かし、LINEに文字を打ち込む。

『でも24日〜25日、って日を跨いでなにかするのかな?』

その言葉にしばらく誰も返信せず、しばらく経ってから次々とそれぞれの考えが表示される。

『さゆみさんのお誕生日会のようなパーティーじゃないってことでしょうか?』
『吉澤さんがすることってなんだろうね? まさかどれだけお酒を飲めるか対決?』
『徹夜で猥談だったらどうしましょうか……』
『もしくは徹夜麻雀? バカはお金ないから負けたら年を越せないかもしれませんが』
『私、翌日の26日は普通にお仕事なんですけれど……』

次々と不吉な考えが浮かび、女性陣は不安になってくる。
さゆみさんも「どれも嫌だなぁ」と呟いていると、発案者が女子会に入って来た。

『みんな、よしざーのことをなんだと思っているんだYO。しげなのホテル、って知っているやつはいるかYO?』
『セレブも愛用する都内有数の高級ホテルですよね? 親元にいたころに祝賀パーティーに連れて行かれたことあります』
『確か予約が数年先まで埋まっているって聞いたことがあるんだろうね』
『私はそのホテルでピアノを演奏をしたことあります』
『知っているやつがいるなら話が早いYO。聞いて喜べ!
 聖夜にそこのDXスイートルームのフロアを貸し切りできたんだYO!
 当然クリスマス特別ディナー付きだZE!』

その瞬間。マンションのあちこちから黄色い歓声が上がった。
黄色い歓声を上げたのは、当然LINEを読んでいた女性陣。その喜びの声に、悲しみで打ちひしがれていた男性陣が顔を上げた。

「さゆ、スマホを見てなん喜んどると?」
「みじゅき、どうしたっちゃ」
「突然なんやねん野中?」
「可愛げのないアイツが喜んでいる……」

さゆみさんは嬉しさを隠せない様子で、自分のスマホをれいなクンに見せる。

「れーな、吉澤さんが有名高級ホテルでクリスマスパーティーをするって教えてくれたの」
「……本当っちゃ。吉澤さん、今度はどんな手を使ったと?」
「素直に喜ぼうよ。こんな経験、そうそうないんだから」
「ま・そうたいね。あ、れなのスマホにも吉澤さんからのLINEがきたばい。
 同じことが書かれてあると。きっとほかの野郎にも送ってあるっちゃ」
「れーなは嬉しくないの?」
「そんなことはなかとーよ? ただ、さゆが喜んでいるから、れなも嬉しいけん」
「……ばーか」
「にしし」

そんなやり取りが各部屋で行われ。
結局、全員が24日を待ちわびた。
24日の前日、さゆみさんは吉澤さんとマンションの廊下で会い、

「どんなコネを使ったのですか?」

そう聞いてみたら、

「麻雀は偉大だYO」

の一言だけ返ってきた。




同時刻。
豪邸、という言葉一つでは足りないほどの立派な屋敷で、美少年が小さくクシャミをして、それから難しい顔をした。

「若、お風邪を引かれたのでございますか」

側にいた黒服の男が声をかける。

「そうじゃないの、多分だれかが噂したせいなの」

難しい顔を崩さず答える『若』に黒服は「左様でございますか」と言った。

「クリスマスという稼ぎ時に最高級ホテルのDXスイートフロアを貸し切りされたのは大きな痛手なの」

悔しそうに奥歯を噛む『若』に黒服はなにも言わずにただ畏まって片膝をついた。

「我々は若のなさるとおりに動く、ただの駒でございます。若がお決めになったことに、だれも文句は言いません」

恭しくこうべを垂れる黒服を一瞥し、それから前を向いて呟いた。

「あの局面で国士無双をだすなんて……吉澤ひとみ、なかなかの雀士なの」




そして12月24日、当日。
男女それぞれ、おめかしをして吉澤さんが指定した15時にホテルのロビーに集まり、ゆったりとソファに座って無料のソフトドリンクを飲んでいた。
ちなみに指定した肝心の吉澤さんの姿はまだ見えない。
ロビーには巨大なクリスマスツリーがあって、吹き抜けになっている三階近くまでその先端を触れさせようとしている。
他にも一段高くなった場所にスタインウェイのグランドピアノが置かれ、それを緩く、ぐるりと囲むように二階へと続く階段がある。
階段の途中には大きな絵画が設置され、手摺りも金色だったが、どこも成金趣味や下品な感じをさせないのが、高級ホテルの風格だろうか。

「なんか、緊張したきたっちゃ」
「えりぽん大丈夫?」
「聖、オレ場違いやなかと? スーツ着て慣れんネクタイまで締めて、正直落ち着かんと」
「似合ってるし場違いなんかじゃないよ、そんなにソワソワしなくてもいいから」
「ばってん……」

窮屈そうにネクタイを調節する生田クンを聖さんはなんとかなだめようとする。

「あの、よかったらなにか落ち着く曲でも演奏しましょうか?」

美希が控えめに手を上げた。

「野中ちゃん、お願いできるかな。わたしの隣にいるバカも、リクルートスーツ姿でガチガチに緊張しているから」

さくらが呆れた口調で演奏を頼む。
美希は微笑み、

「分かりました。あのピアノをお借りできるかフロントの人に聞いてみますね」
「野中。一曲弾くなら、リクエスト頼むわ。シューマンのトロイメライ。アレめっちゃ落ち着くねん」
「はい、春水ちゃん」

手慣れた動きでフロントまで行って、美希は交渉する。
すると呆気なく許可が下りたのか、ピアノがある場所にスポットライトが照らされた。
ステージに上がり、軽くお辞儀をしてから美希はピアノの椅子に座り、鍵盤の蓋を開けた。
一呼吸置いて。
ゆっくりとした、優しい音色が広がる。
ほかの客も足を止め、美希が奏でる音に聞き入っている。
決して難しい曲ではないが、とても心が込められた音色に、聞いている者の魂に近い部分が安らぎを覚えた。
ソファに座っていたマンションの住人たちは緊張が解き解され、今は深くソファにもたれて目を閉じ、耳を澄ませている。
演奏が終わり、美希が立ち上がってお辞儀をすると、フロントやロビーにいた者全員が深く感動したことを表わすかのように激しく拍手した。
フロント係の者も仕事を忘れたかのように拍手を浴びせている。
大きな拍手の中、美希は照れたように頬をほんのりと赤く染めながらソファへと戻った。

「春水ちゃん、どうでしたか?」
「やっぱ何度聞いても野中のトロイメライは最高や」
「私は春水ちゃんのその言葉が聞きたくてピアノを弾いていますから」

そうやって二人の世界に入ってイチャつき始めた二人を置いておき、
れいなクン一家と生田クン一家は、我が子が興味を示していた巨大なクリスマスツリーへと足を運んだ。

「さっきまで遥も緊張してたみたいやったけん。あとで野中ちゃんにお礼を言わんとあかんちゃね」

遥クンを片手で抱っこして、もう片方の手は聖さんと繋いでいる生田クンが、のんびりとした足取りでツリーに近付く。

「本当にね。さっきまで泣きそうだったのに、今はすっかりツリーを見てるんだから。そういうところ、えりぽんに似ているかも」
「遥はオレに似たっちゃね」

笑顔でそんな会話をする生田クンと聖さんの後ろで、優樹を両腕で抱っこしているれいなクンが隣にいるさゆみさんに耳打ちする。

「場所もわきまえずにイチャつくのは生田もフクちゃんも同じばい」
「うん。結局はバカップルなのよね」

呆れながらも歩みを止めず、そうしてツリーまでやって来た。

「おおーでけーっ!」

遥クンが興奮したように叫ぶ。

「本物のモミの木を使ったツリーだって。遥、見れて良かったね」

近くにあった看板を読んだ聖さんが笑顔で話しかける。
れいなクンの腕にいる優樹も目をキラキラさせながら、

「ちちー、ははー。きれーい」

と喜んでいる。
ツリーには色鮮やかなオーナメントが飾られ、一連の紐になった豆電球が青と白の光を発していた。
れいなクンと生田クンは、我が子を下ろしてやり、二人がツリーに近付いてあちこち触るのを、穏やかな目で見た。

「どぅー、はっぱちくちくー」
「まーちゃん、ほしぴかぴかだぞ」

触ったり眺めたりしていたが、そのうち飽きたのか、優樹がてってこ、と大きなツリーの周りを走りだした。

「どぅー、いっしょにまわろー」
「おー!」

てってこ・てってこ、と周りを走りだす二人。遥クンが優樹を追いかける形になってぐるぐると回りだす。

「まーちゃん、まてー」
「どぅーはやくー」

二人は嬉しそうにおいかけっこを始めた。
そんな二人の両親は、微笑ましく我が子たちを見ている。
ぐるぐるぐるぐる回って。バターになるんじゃないかと思うほど回っていたと思ったら。
突然優樹が足を止めた。

「えっ!?」

遥クンは驚いて止ろうとするが、間に合わず、優樹に衝突した。
そのとき、四人の大人はハッキリと見てしまう、遥クンが優樹の頬に思いきり口付けてしまった瞬間を。
優樹と遥クンはなんとかバランスを取って、倒れるのを防いだが、優樹は遥クンにしっかりと抱き締められている。
少しずつ状況を理解した遥クンは、顔をみるみる赤くさせていく。慌てて優樹を抱き締めている腕を離す。
優樹と遥クン、それぞれの自分の母親に駆け寄り、

「ははー、どぅーがちゅーしてくれたー」
「良かったね優樹」

喜ぶ優樹と、嬉しそうに優樹の頭を優しく撫でるさゆみさん。

「どうしよう、かーちゃん。ハル、まーちゃんにちゅーしちゃった」
「あらあら。どうしよっか?」

真っ赤な遥クンを、楽しそうに抱っこする聖さん。
ちなみに。

「ガルルルル!」

と唸り声を上げて激怒するれいなクンは、生田クンに羽交締めされて動けずにいる。

「生田っ、離せっちゃ! おまえのところの息子を一発殴っちゃる!!」
「まあまあ田中さん、子どものしたことですけん、大目に見てくださいっちゃ」

そんな父親同士の諍いは蚊帳の外で、聖さんは真っ赤な顔で泣きそうになっている遥クンに優しく言う。

「遥、ちゃんと責任を取らないとね」
「せきにん……?」
「そう。優樹ちゃんにキスしたんだから、遥はどうするの?」

聖さんの問い掛けに、真剣な顔をして遥クンは考え込んだ。
しばらくして。
決心がついたように遥クンはきっぱりと言った。

「ハル、せきにんとる。ハルはまーちゃんとけっこんする!」

宣言に近いその言い方に、

「遥クン、うちの優樹をよろしくね」
「どぅー! やくそくだよ、ぜったいだよ!」

大喜びで黄色い声を上げる、さゆみさんと優樹。
そんな二人とは打って変わって、頭から激しく湯気を出して、

「そんなの許さんちゃー!」

とれいなクンが叫ぶが、だれも聞いていない。
鬼の形相をしているれいなクンをまだ羽交締めにしている生田クンは、

「遥。好いた女を守れるくらいに強くならんといけんばい」

厳かに自分の息子に言い聞かせた。
遥クンは生田クンの言葉を噛みしめるように、しっかりと頷いた。

「おーおー、クリスマスイブにプロポーズとはなかなかやるNE」

そんな声が聞こえ、ツリーの近くにいたれいなクン一家と生田クン一家は、全員振り返る。
すると、いつの間にか現れた吉澤さんを筆頭に、残りの住人たちもツリーへとやって来た。

「吉澤さん、いつやって来たのですか?」とさゆみさん。
「と言いますか、今までどこに……」と聖さん。

吉澤さんは、頭を乱暴に掻きながら、

「梨華ちゃんも誘うつもりでギリギリまで待っていたんだけれど、
 仕事が終わらないから行けない、って断られたんだYO。よしざーブロークンハート」

がっくりとうな垂れる姿を見、住人たち全員が、

「吉澤さん今夜は盛大に飲むんだろうな」

と心の中で呟いた。
当の吉澤さんは、垂れていた頭を上げて、意気揚々とエレベーターへと向かう。

「チェックインは済ませたし、もうメシの準備もできているらしいから行くZE! GO! GO!」

こうして全員、ホテルの最上階である35階まで、DXスイートフロア直行の専用エレベーターに乗り込んだ。
DXスイートルームに宿泊する者だけが使える、フロアに付属しているレストラン。
そこからはなんとも言えない芳しい香りが漂っており、石田クンは誘われるようにふらふらと足を運ぶ。

「みっともないから、もっとちゃんと歩きなさいよ」

石田クンの後ろから恥ずかしそうにさくらが毒を吐くが、鼻をヒクヒク動かしている石田クンには聞こえていない。
はあ、とため息をついて後に続こうとしたところで。

「女性陣は待てYO」

声が上がる。
発言者は全員の足を止めさせて、言葉を続けた。

「よしざーからのクリスマスプレゼントに着替えろYO。優樹ちゃんとまりあちゃんのも用意してあるYO」
「吉澤さん、それって女性限定でっか?」

尾形クンが挙手して尋ねると、

「そうだYO。野郎どもはよしざーと一緒に先にレストランに入るZE。プレゼントは大広間にあるから、女性陣は着替えるんだYO」

きゃー、嬉しいー、やったー! そんな明るい声が女性陣から上がる。

「なんか女性だけってズルいですたい」

生田クンが唇を尖らせて言うが、吉澤さんは、そんな生田クンに不敵な笑みを見せた。

「そう言うなYO。生田、オメーも絶対喜ぶZE」
「……はあ?」

首を捻る生田クンを意に介さず、吉澤さんは先陣を切ってレストランに入る。
男性陣だけ先にレストランに入り、女性陣は全員嬉々としながら「どんなプレゼントだろうね」ときゃいきゃい騒ぎながら大広間へと消えていった。
女性陣が着替えている間、男性陣は吉澤さんが指定するテーブル席へと座る。
どうやらマンションの部屋割りでテーブルも割り振っているようだが、石田クンだけは現在着替え中の春菜とさくらと相席らしい。
吉澤さんは一番窓際に近いテーブルを占領し、煌めき始めた夜景をバックに椅子にふんぞり返っている。
タバコは口にしていないが、ブランデーグラスに少量だけ入れたヘネシーXOを揺らしながら口に含む姿は『王道的な悪のドン』だと、
全員の心が一致したが、命が惜しいのでだれも口にはしなかった。
吉澤さん以外は、食前酒のキールをアミューズ・ブーシュである生ハムとフルーツのヨーグルトソース掛けと共にチビチビ口にして女性陣を待っている。

「お。着替えたようだYO」

吉澤さんの言葉に全員が振り返り。

『おおぅっ!』

轟くようなどよめきの声が男性陣の口から叫び出た。
さゆみさんを筆頭にして、やって来た女性陣は戸惑いがちにレストランに入って来る。
ピンク・濃いピンク・緑・ハニーイエロー・ラベンダー・紫・エメラルドグリーン・薄いピンク、と色は違うものの、同じ服装である。
モコモコの生地に大きな白いボタンが付き、服の縁は白のモコモコ生地で縁取られている。
ノースリーブに太ももが限界ぎりぎりまで見え、それぞれ服の色に合わせた三角帽子を被っていて……つまりは全員がミニスカサンタ服なのである。
赤ん坊の真莉愛だけは風邪を引かないよう、ベビータオルにくるまれていたが。
この姿になって喜んでいるのは優樹と真莉愛だけで、残りは恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張ったり、二の腕をなるべく隠そうとしている。

「メシより先にこっちを食べたいっちゃ、ハアハア」
「田中さん同感ですたい、ムラムラ」
「ワシもじゃ、カノンチュワン」
「俺もですわ、ハナヂデソウ」
「ぼ、僕ちょっと、トイレ」
「まーちゃん、すっげーかわいいぞ」

男性陣がぎらぎら興奮しているのを、それぞれのパートナーが睨みつける。

「どぅーどぅー。まーかわいい?」
「おう! まーちゃんかわいい!」

微笑ましい会話をしているのはこの二人だけで、吉澤さんが、

「じゃあそれぞれテーブル席に座れYO」

と促しても、レストランの入口でもじもじしている。
さゆみさんが控えめに口を開く。

「あの吉澤さん……この衣裳のどこがプレゼントでしょうか……? これ、コスプレですよね?」
「ん? 言ってなかったYO。これは『よしざーから野郎どもへのプレゼント』だYO。実際に大喜びじゃん。野郎どもー! 嬉しいかー!?」
『はーい!!』

吉澤さんの問い掛けに元気に返事する男性陣。女性陣はいまいち腑に落ちなかったが、それでもテーブル席に座り、そしてディナーは始まった。
ディナーはフレンチで、スープ・前菜・魚料理・肉料理・デザートで構成されている。
本来はコース料理が決まっているのだが、吉澤さんがどんな応酬をしたのか謎だが、メニューに書いてある料理をなにをどれだけ頼んでもOK、とのことである。
メニューを読みながら、それぞれがそれぞれの反応をする。

「れな、そんなに食えんから、魚料理はパスすると。取り敢えずスープはカリフラワーのポタージュで」
「じゃあ、さゆみは北海こがねと鶏ネックのスープにしようかな。れーな、それぞれ別のを頼んで半分こすれば食べれるでしょ?」
「まーはイチゴたべたい」
「ウェイターさん、肉料理を全部持ってきてほしいけん。牛フィレもエゾ鹿も仔牛も和豚も食いたか」
「えりぽん、野菜も食べないとダメよ」
「とーちゃん、どれをくったらつよくなれるんだ?」
「ワシはアメリカでは食えない国産の食材を使ったやつにするわい。そうなると魚料理は天然真鯛と赤座海老のポワレかのぉ」
「あたしは北海道産ホタテと黒トリュフのリゾットにしようかな。それなら真莉愛も食べれそうだし」
「ぱぴ♪」
「春水ちゃん。冬は大会も多いのですから、調整しないとダメですよ」
「分かっとるって。衣装着たときにお腹がぽっこりやったら参加資格をはく奪されるわ。
 俺は、肉料理は止めて魚料理を二品頼むことにするか。デザートも一番カロリーの低そうな洋ナシのシャーベットがええな」
「ぼ、僕は、フォアグラとキャビアとトリュフを使った料理、全部お願いします!」
「あんた……その貧乏人丸出しの注文の仕方、恥ずかしいから止めなさいよ……。
 ……飯窪さん、なぜわたしとバカを交互に見て微笑んでいるんですか?」
「んー、別にー? 私は前菜を冬野菜とノルウェーサーモンのテリーヌとズワイガニと野菜のマセドワーヌのサラダにしようかな」
「よしざーには酒に合う料理をガンガン持って来いYO」

こうしてオーダーを終え、料理が運ばれてくる。
途中でそれぞれのワイングラスに、やや甘口のスパークリングワイン、バロン・ド・セヤック・ブリュット・ロゼが注がれる。
吉澤さん以外はスパークリングワインを少しだけ飲む。
前菜が終わったところで、一人のウェイターが吉澤さんに近付いてきた。

「吉澤様、こちらオーナーからのささやかなプレゼントでございます」
「お? ピンクのドン・ペリニヨンじゃん。なかなか粋なやつだYO。
 ん? メッセージが添えられてある……『次は負けないの』か、おもしれーじゃん。
 そーいや乾杯がまだだったYO。これ、みんなのシャンパングラスに配って」
「かしこまりました」

シャンパングラスに繊細なピンク色の液体が満たされる。
全員のシャンパングラスに行き渡ったのを確認してから、吉澤さんは「ほら、全員立てYO」と促す。

「じゃあ改めて。メリークリスマス!」
『メリークリスマス!!』

シャンパングラスを掲げて全員がそれを口に含む。味わい深い本物のシャンパンに、脳が甘美に揺らいだ。
デザートには、家族のテーブルはブッシュ・ド・ノエルを選び、楽しく一つのケーキを取り分けてはフォークで突いている。
デザートはほかにも、フォンダンショコラ・ド・ノエル、イチゴとピスタチオのムースがあり、各々が紅茶と一緒にそれらを美味しく食べた。
満腹中枢を幸福に刺激され、全員が肩の力も抜けて椅子にもたれながら幸せな溜息を吐いている。
「おーっと。忘れるところだったYO。男性陣はよしざーの席まで来いYO」
言われた通り、れいなクン、生田クン、鞘師クン、石田クン、尾形クンが吉澤さんの席に集まる。
そして。

「はい、これNE」

と、それぞれに個室の鍵が渡された。

「部屋割りは各テーブルにいるメンバーで一部屋NE」

この言葉に一名を除いた男性たちの目が怪しく光る。吉澤さんは頬づえをつきながらニヤニヤ笑い、

「飯窪に時間外勤務を頼むやつがいるなら、特別によしざーが払ってやるYO」
「じゃ! れなは頼むけん!」
「オレも遥を任せるたい!」
「ワシもじゃ!」

がっつくように言いだす男三人に。
さゆみさんは顔を引きつらせ、聖さんは頬をピンクに染め、香音さんは真っ赤になって俯いた。
下衆の極みのような笑いをしながら、吉澤さんは春菜に声をかける。

「というわけで飯窪、時間外勤務を頼めるかYO?」
「はい、お任せください!」

春菜は朗らかに返事した。

「じゃあ、そういうわけで……」
「って、ちょっと待った、待ってください!」
「なんだYO、石田?」

慌てる石田クンを鬱陶しそうに見る。

「あの、さっき、同じテーブルの人が同じ部屋に泊まる、みたいなことを言いませんでした!?」
「言ったけDO?」

さらりと返した吉澤さんの言葉に、「はあっ!?」とさくらが大声を上げて立ち上がった。

「ODAちゃんまでなんだYO? なにか問題でもあるのかYO?」
「アリですよ、大アリです。僕と同じテーブルは、はるなんと小田ですよ!?」
「だからそれにどんな問題があるんだYO?」
「いやいや、たくさんあるでしょう」
「そこまで言うなら仕方ないNE、もう一部屋用意してもらうYO」
「お願いします」
「で・その部屋に飯窪を泊まらせれば問題ないだRO?」
「ちょっと待ったちょっと待ったちょっと待った。……吉澤さん、どんな思考回路をしているのですか?」
「どんなってこんな。問題があるのなら、ちゃんと言ってくれないと分からないYO」

悪代官が山吹色のお菓子や町娘を献上されたら、きっとこんな顔をするのだろう、そう思わせるような表情で吉澤さんは返答を求める。
顔を赤くして言葉に詰まる石田クンを見飽きたのか、吉澤さんはスマホを取り出した。

「フロントに電話して飯窪用の部屋を至急作ってもらうYO」
「私はそれでも良いですよ」

春菜も吉澤さんに同意する。

「わたしは良くありません!」

さくらが立ち上がったまま春菜に顔を真っ赤にして反論する。

「なんでわたしがバカと、お、お、同じ部屋で……」
「僕だってなんでこいつと、ふ、ふ、二人きりで……」
「じゃあどうするの? ホテル側だってベッドメイクとか色々準備するだろうから、早く連絡しないといけないと思うけれど」
「飯窪さん、この状況を楽しんでいませんか?」
「んー、実はちょっとだけ楽しんでる。私はどちらでも良いよ。だから小田ちゃんとあゆみんの考え次第かな」
「ほらほら、早くしろYO」

吉澤さんが威圧的に急かす。そのせいか二人、正常な判断ができなくなった。

「……新しく部屋を作ってもらう必要はありません……」
「僕も同意見です……はるなんと小田と同じ部屋で良いです……」



※ ※ ※ ※ ※



と・いうわけで。

キングサイズのベッドが二つ用意された部屋に。
春菜、優樹、遥クン、真莉愛、そして石田クンとさくらが入った。

「はるなん〜、まーはねむいぃ」
「ハルもねむい……」
「ぱぴ〜……」
「うんうん。みんなで一つのベッドで眠ろうね。きっと良い夢が見れるよ」

真莉愛を抱えながらミニスカサンタの姿のままの春菜は、スカートの裾を優樹に握らせ、優樹は遥クンと手を繋ぎながら、ベッドに直行する。
子ども三人をベッドに横たわらせて毛布をかけてやると、呆気なく眠りの世界へと旅立って行った。

「というわけで、あゆみんと小田ちゃん。ベッド一つは占領するけれど良いかな?」
「子ども優先ですから仕方ないですよね」
「別に反対はしないけどさ」

春菜は子どもたちと同じベッドに入る。毛布の上から掛け布団も被せ、風邪を引かないようにした。
そのことに異存はない。
問題は……。
もう一つの空いているベッドに目をやる。大人二人でも余裕で寝られる大きさである。
そっと相手を盗み見る。すると相手も同じ行動をし、思いきり目が合ってしまったので、瞬時に顔を真っ赤にして激しく顔を逸らした。
春菜は小さくアクビをし、

「あゆみんと小田ちゃんは寝ないの?」

面白そうに聞いてくる。
石田クンは、面白くない、という表情をして、ぶっきらぼうに、

「小田、お前はベッドで寝ろ。僕は床で寝る」
「は? なに言ってるの?」
「良いんだよ。僕はベッドじゃ落ち着いて寝れないからな」
「じゃあ、あゆみんってお布団派なんだね。だってさ、小田ちゃん」
「飯窪さん……わたしの脳に『ものすごくどうでもいい情報』をインプットさせるのは止めていただけませんか?
 ていうか石田、あんたがいくらバカでも風邪を引くわよ」
「エアコンをつけっ放しにして、スーツのジャケットを掛け布団代わりにすれば寝れる。ここは絨毯もフカフカだから、充分だろ」

言いながらジャケットを脱ぎ、締めていたネクタイをほどき始めた石田クン。
さくらはしゃがんで絨毯を触ってみる。

「確かにあんたの煎餅布団より寝心地が良さそうだけど」
「へー。小田ちゃん、あゆみんの布団を知っているんだ」
「……前にご飯を届けに行ったときに、たまたま見えただけですよ、飯窪さん……」
「じゃあ適当に寝るから。間違っても踏んだりするなよな」

それだけ言って、石田クンはずかずかと部屋の奥に行き、本当に適当な場所で横になった。
そしてすぐに聞こえてくる「すぴー」という寝息。

「あゆみん、寝付きが良いんだね。小田ちゃん、私も本当に眠くなってきたから、照明をナイトテーブルのランプだけにして良いかな?」
「あ、はい」

さくらは慌ててベッドに入り、ランプだけ点けて、部屋の照明を落とした。
心にモヤモヤした物があり、寝付けずに寝返りを打つさくらの耳には、春菜のスースーという寝息、
子どもたちの「どぅーどぅー」、「まーちゃん……」、「はむ、はむ」という寝言や衣擦れの音、
そして「……へくしゅっ」と石田クンが度々する小さなクシャミの音が聞こえるだけだった。
石田クンがクシャミをするたびに、さくらのモヤモヤは大きくなる。
さくらはベッドの上でゆっくり上半身を起こした。暗い部屋に目が慣れた頃に石田クンを見て。

そして。

石田クンは体をブルリと震わせて目が覚めた。
まだ夜は明けていないし眠い。それでもトイレに行きたくて目が覚めたのだった。
仕方なく頭を起こすと、なにか違和感がある。
目を擦り、違和感の正体を確かめる。
寝る前にはなかった枕が頭の下にあった。
そして掛け布団代わりにしたジャケットの上から、石田クンの全身を包むように毛布が掛けられてある。
驚いて体を起こしてベッドを見る。
さくらが枕なしで、掛け布団だけで寝ていた。
さくらは時折「くしゅんっ」と小さなクシャミをしている。
石田クンはそんな姿を見て。

「ばーか、女の子に風邪を引かせたら僕が格好悪いだろ」

呟き、自らのジャケットを掴んでベッドに近付く。
掛け布団の上からジャケットを掛けてやると、さくらのクシャミが止まった。
石田クンは静かに微笑み、それから足音を殺しながらトイレへと向かった……。



※ ※ ※ ※ ※



尾形クンは美希の腰に腕を回して歩き、部屋のドアを開けた。

部屋は夜景が一望できる場所にテーブルと二脚の椅子があり、
テーブルにはテリーヌのオードブルと氷がぎっしり詰め込まれたシャンパンクーラーにモエ・エ・シャンドンが冷やされており、
シャンパングラスもあった。そして生クリームの小さなホールケーキまで用意されてある。

「さすがやなあ、至れり尽くせりやん」

美希は小さく笑い、

「春水ちゃん、二人だけのクリスマスパーティーをしませんか?」

そう提案した。

「せっかくディナーでカロリー調整したのに意味ないやん」

口ではそう言いながらも、尾形クンも笑っている。

「クリスマスくらい、そういうこと抜きにしても良いんじゃないですか?」
「それもそうやな、ほんなら仕切り直しをするか」

二人は夜景を目の前にしながら、寄り添って座る。
尾形クンがシャンパンの栓を開け、美希が取り皿にオードブルを取り分けていく。
薄い琥珀色の液体がシャンパングラスに満たされる。

「野中、メリークリスマス」
「Merry X’mas、春水ちゃん」

カチン、と小さくグラスを合わせ、二人はシャンパンを飲む。
美希が取り皿に分けた、サーモンとクリームチーズ・鶏肉・ほうれん草と海老、三種のテリーヌをフォークで食べながら会話する。

「みんなとワイワイも好きやけど、ホンマはこういう野中と二人きりのクリスマスを過ごしたかってんて」
「私もです」
「陳腐な科白やけど、夜景も綺麗だけど俺には野中のミニスカサンタ姿のほうが、よっぽど魅力的やわ」
「春水ちゃん……なんだかオヤジが入っていませんか?」
「……入っとるか?」
「少し」

そこで尾形クンは食べるのを止めて、美希と向き合う。

「しゃーないやん。それだけ俺は野中に夢中やねん」

真摯な瞳で言われ、美希の頬はほんのり赤くなる。
露出している太ももにそっと手を添えられる。

「あ……」

小さく声を出すが、それだけで抵抗はしない。


「めっちゃ可愛い。それに綺麗やで、美希……」

額に一つ、そして両の頬に一つずつ、口付けが落とされる。太ももに添えられている手が、際どいところまで這ってくる。

「春水ちゃ……」

持っていた左手のフォークが床に落ちる。皿はなんとかテーブルに置いた。
首筋に顔を埋められ、自分の吐く息の温度が高くなったと自覚する。
跡がつかない程度に首筋を吸われ、どうしようもない期待で胸が高鳴る。
尾形クンの手は、右手は太ももを撫で回し、左手は衣装の上から胸を優しく揉んでいる。
ここ最近、お互いの仕事のスケジュールが噛み合わず、ご無沙汰だったことも理由だろうか。
もう夜景も料理もお互いの眼中にはなかった。
美希は尾形クンのことしか考えられないし、尾形クンは美希にしか夢中になれない。
尾形クンが首筋に顔を埋めるのを止めて美希の顔を見ると、潤んだ瞳と視線がぶつかった。
美希は泣き顔もかわええな、そう思いながら顔を近付けていく。
ゆっくりと瞳は閉じられ、唇は薄く開かれる。重ねる寸前に、尾形クンも目を閉じた。
ぅん、と小さく美希は啼いた。唇をジュ、と強く吸われ、無意識に尾形クンの背中に腕を回す。
薄く開けていた唇から舌が侵入してくる。美希は躊躇いもなくそれを自分のと擦り合わせる。
擦り合わせ、舐め合い、絡め合う。カラダの奥が熱くなる。送られてきた唾液を当たり前のこととして、コクンと音を鳴らして飲み込んだ。
唇がゆっくりと離される。美希は熱い息を吐いて目を開けた。
真正面に見えるのは愛しい人の顔。その顔がそっと動いて美希の耳に唇を寄せる。

「ベッド、行こか」

美希はなにも言わず、ただ一回、大きく頷いた。
ベッドの縁に座らされ、尾形クンが荒々しく自分のネクタイやジャケット、Yシャツを脱ぐのを、ただぼんやりと見ていた。
上半身裸になった尾形クンのカラダを見て、見慣れているはずなのに、美希はいつもほれぼれしてしまう。
白いけれど贅肉のない逞しいカラダに、学生時代に美術の教本で見た石膏像を連想してしまう。
尾形クンは床にヒザをつき、優しく美希のワンピースのボタンを外していく。背中に腕を回して手慣れた仕草でブラのホックを外す。
尾形クンはワンピースは脱がさずに、器用にブラだけ美希のカラダから抜き取る。
そんなにこの衣装が気に入ったのだろうか、なんて考えていると。
ブラを床に落とした尾形クンは、そのままぺたん、と胡坐をかいた。

「……春水ちゃん?」

美希が小さく呼びかけると、

「なあ、一人でシテるとこ、見せてくれんか?」

即座には理解できないことを言われた。

「…………はい?」
「せやから、美希が一人でシテるとこが見てみたいんや」

もう一度言われた言葉を頭の中で反芻して、噛み砕き。そしてようやく理解した瞬間、あまりのことに顔から火が出そうになった。

「美希は一人でシタことないんか?」
「え、えっと、あの、その……」
「な、頼むわ。見せてーな」

両手を合わせて懇願されると、「嫌です」とは言えなくなる。

「……分かりました。でも、少し手伝ってください」
「ええんか!? けれど手伝うってどうやってやねん?」
「名前を、呼んでください。ベッドの中でのときみたいに」
「そんくらいなら、お安い御用やで。……美希」

名前を呼ばれるだけでカラダが熱くなる。
美希はそろそろと自分の胸に右手を添えた。

「美希はいつもどうやってスルんや?」
「春水ちゃんが……触ってくれるのを、思い出しながら……」
「そうか、ホンマかわええな美希は」

尾形クンは優しく笑ってくれているが、羞恥のほうが大きいので、美希は目を閉じる。
そしてやわやわと乳房を揉み始めた。

「んぅ……」
「美希、めっちゃ綺麗やで」

優しい声を頼りに、美希は少しずつ指を動かしていく。
人差し指が乳輪に触れ、撫で始めたら、口から熱い息が出た。

「美希、先端が勃ってきたで。興奮しとるんか?」
「はあ……はい」

焦らしてすっかり起立した先端をキュ、と摘む。

「んう!」

強すぎる快感に、思わず手を離す。

「感じとるんやな。美希……ほんなら下も触ってみるか?」
「はぃ……」

胸は先端を摘むのを止め、優しく撫でてみる。熱く短い息が何度も出た。
おずおずとショーツの上からスジをなぞってみる。それだけでも気持ち良さがあったが、弱い、と正直に思った。

「美希、下着の中に手を入れてみようや」

首を縦に振ってから、言葉に従う。
恥丘の茂みを掻き分けて、秘密の泉に辿りつく。入口は閉じられていたので、
指を二本使って広げてみると、ぱっくりと簡単に開いた。けれども潤いは少ない。

「春水ちゃん、もっと名前を呼んで……」
「美希。めっちゃ好きやで美希」

胸の先端を擦る。はあ、と熱い息が出る。
泉の入口に触れてみる。先ほどよりは潤っていたので、指で触れて、そっと掻き混ぜる。

「あん……」
「美希、綺麗やで」
「んううっ」
「お、クチクチいうてきたな。感じとるんやな美希は」

目を閉じている分、耳を集中させ、尾形クンの腕の中にいるときのことを思い出す。

「ホンマかわええな、美希……」

尾形クンの声も熱を帯びてきている。
別の指を使って、触れていなかった蕾に、そっと這わせる。

「んううんっ」
「全身がピンクに染まってきたな。綺麗やで、美希」
「あっ、はぁっ」

喉元を晒して指を動かす。本当に尾形クンに抱かれている錯覚に陥る。

「美希、聞こえるか? クチュクチュってエッチな水音が大きくなっとるで」
「うぐぅ」
「ほんならそろそろ、指、入れてみよか……」
「……はい」

慎重に中指を動かす。泉の入口に当てると、ツプ、と小さく音を立てて、するすると飲み込まれていく。

「あ、あ……」
「美希、無理してへんか?」
「だい、じょうぶ、です……」

入れた指から感じる自分のナカは、少し窮屈だがとても柔らかくて温かい。
よく尾形クンが「ずっと入れとりたいわ」と言っていたことを思い出す。
ゆっくりと入れた中指を動かす。クチュリ・クチュリと、動かすたびに水音が鳴る。
はあ・はあ、と熱い息を吐きながら指を動かし、ナカを擦ってみる。

「あんっ!」

ザラリとした感触と、今まで以上の快感が脳に伝わった。
こうなると指が止まらない。速度を上げて、ナカを擦りだす。

「あっ、んうう、はあっ」
「美希はピアノより、ええ声を奏でるな……あのピアノを弾く綺麗な指が、美希自身を奏でていると思うと、俺めっちゃ興奮するわ」
「あん! は、春水ちゃんも感じてます……?」
「ああ。脳が気持ちええわ」

その言葉にジュワ、と蜜が溢れる。
滑りが更に良くなった蜜壷を、自分が気持ち良いと思う速度で擦る。

「美希、めっちゃかわええで」
「んうっ、あっ、はぁん!」

お腹の部分を擦ると、カラダがブルリと震えた。

「あんっ! 春水ちゃんっ、春水ちゃん!」
「美希、そろそろイクんか?」

問い掛けに壊れた玩具のようにガクガクと首を縦に振る。

「ホンマかわええな……好きや、美希」
「うんんんんっ!」

キュウ、とナカが締まる。

「あぁぁんっ!」

泣くような啼き声を上げて、自分の指が締め付けられるのを感じながら、美希は達した。
コポ、と指を引き抜く。はあはあ、荒い呼吸をしながら、ゆっくり目を開けると、すぐ近くで尾形クンは微笑んでいた。

「美希、お疲れさん」

優しく頭を撫でてくれたかと思うと、隣に腰掛け、耳元に唇を寄せてきた。

「俺の声をオカズにしてのオナニーは気持ち良かったか?」

意地悪な口調で言われた言葉に、美希の顔は恥ずかしさで赤くなる。
引き抜いた左手を掴まれ、てらてら光る中指を、尾形クンは躊躇いもなく自分の口に含んだ。

「あ、あの、春水ちゃん?」
「ん、いつもより酸味が強いな。あんまり感じてなかったんか?」
「そ、そんなことありません、だけど……」
「だけど?」

恥ずかしさが頂点に達したのだろうか、美希は上半身裸の尾形クンに思いきり抱きついた。
そして蚊の鳴くような声で言う。

「春水ちゃんが良いんです……春水ちゃんに直接触れてほしい……」
「そうか、俺がええんか」
「はい」

後頭部を撫でられてから、優しくベッドに押し倒される。

「かわいすぎるで。美希、愛しとる」
「私もです……I love you,forever……」

首に腕を回すと、その顔が近付いてくる。
静かに目を閉じ、綿菓子のように甘いキスを受け入れた。
キシ、と小さくベッドが鳴る。

「あ……はぁぁん……」

胸を吸われ、尾形クンの髪を掻き乱す。
舐められ、転がされ、甘噛みされて。

「あぁぁぁん、はぁぁ……」

美希は声を抑えることもできず、高く啼く。
尾形クンの左手は、もう片方の胸の先端を優しく摘んでクリクリと捏ね回している。
右手は美希の細いカラダの曲線を確かめるように、優しく肌を撫でていた。

「あ、ああ……」

美希は蜜壷からジュワリと蜜が溢れ、下着を濡らしたことを感じる。
たとえ声が聞けても、自分で触れるより、愛する人に直に触ってもらうほうが何百倍も気持ち良い、と実感する。
尾形クンの右手が、美希のおへそを撫で、慎重にショーツに手をかけたので、美希は黙って腰を浮かせて脱がせやすいようにした。
尾形クンは胸の愛撫を止めて、両手を使ってショーツを脱がせる。
蜜を吸って重くなったショーツは、剥されるときに透明な粘性の糸を何本も引かせた。

「トロットロやな」

嬉しそうにそれだけ言って、ショーツを美希の脚から抜き取り、ベッドの下に落とす。
尾形クンが大きく脚を割り開いたので、美希は赤くなった顔を両手で覆う。

「前戯は必要ないかもな」

言いながらも美希の秘所に顔を近付ける。そして躊躇いもなく泉に口付け、溢れる蜜を舌で汲み取り始めた。
舌が蜜壷の入口を刺激する。ヂュルヂュルと音を立てて吸われる。
美希は大きな羞恥と大きな快楽を感じながら、蜜を吐き出し続ける。

「あ、あん、春水ちゃん……」
「さっきよりも甘くてトロリとしとるわ。美希が感じてくれて、俺、素直に嬉しいねん」

話しながら今度は蕾を舐めて、口に含む。泉には指がそっとあてがわれ、静かに中指を飲み込ませ始めた。
くすぐるように入口で掻き回したり、美希が感じるところを緩く擦ったり、ゆっくりと指を抜き差ししたり。
きっと美希自身よりも美希のカラダを知っている尾形クン。どんどんと美希を昂ぶらせていく。

「は、春水ちゃん、春水ちゃん……」

涙が出そうな声で名前を呼ぶ。
尾形クンは顔を上げ、顔を覆っていた手を離した美希と目が合う。

「美希、どうした?」
「……キス、して」
「ん、分かった」

尾形クンはカラダを動かして美希と顔を近付ける。
ちゅ、と重ねるだけのキスをすると、首に腕を回され、顔を引き寄せられる。
美希は舌を出し、深いキスを求める。尾形クンも舌を出して舌を触れさせながら唇を重ねる。

「んぅ、む、ちゅ……」
「はあ……今日はえらい積極的やな」
「だって春水ちゃんが……」
「俺がなんや」

その問い掛けには答えず、美希はキスを続ける。
尾形クンも美希の背中に両腕を回して、キスに集中した。
舌で相手の口腔を犯し、唾液を送り合って、それを飲む。
そんな激しいキスをしばらく行って。
ようやく美希は満足したのか、ゆっくりと顔を離した。

「……春水ちゃんが欲しいです」

小さいながらもはっきりとした口調に。
尾形クンは少しだけ困った顔をして「実はな、」と話しだした。

「今日、ゴム持ってくるの忘れたんや」
「そのままで構いませんよ?」
「すまんな、ちゃんと外に出すさかい」
「ナカでも良いですけれど」
「そんな無責任なこと、できるかいな」

尾形クンは一度カラダを離して、ベルトを緩めてスーツのズボンを下ろしだす。
男根はボクサーブリーフパンツの上からでもしっかりと勃起して形を作っている。尾形クンは窮屈そうにパンツを脱いだ。
下腹にくっつきそうなほどそそり立っているいる男根の根本を掴んで、美希の秘所に擦りつける。

「んううっ!」
「じゃあ……入れるからな」

美希が頷くのを確認してから、尾形クンはゆっくり腰を前進させた。
ぬぷぬぷと飲み込まれていく男根。二人は同時に熱い息を吐く。

「あ……すごい、固くて熱い……」
「美希はとろっとろに柔らかくて温かいな……」

根元までずっぽり入ると、尾形クンは再び美希に覆い被さる。
美希は尾形クンの頬に手を添え、ささやかなキスを捧げ、それから背中に腕を回した。
尾形クンも美希の背中に腕を回し、離れないよう、しっかり抱き締める。

「……動いてええか?」

美希が小さく頷くのを見てから、尾形クンはゆっくりとピストン運動を始めた。
ゴムをつけずにしたのは初めて、と言えば嘘になる。それでも頻度はそう多くない。
1mmもない薄さなのに、ゴムをつけたときとつけないときでは、お互い気持ち良さが格段に違うのは不思議だが、事実である。
きっと素肌同士で触れあっているからやな、尾形クンはそう結論づけて、いつもより感じる美希のナカを擦り続ける。

「あんっ、あああん!」
「美希、そんな可愛い声を出すなや……俺、止まれんくなるわ」
「はあぁぁん……止まらなくて、良い、です、あんっ!」

ばしん! と強くオクに打ち込むと、美希のナカがキュウと締まる。
それが気持ち良くて、尾形クンの動きは段々と速くなっていく。
ぱんぱんぱんぱん! と腰がぶつかり合う音が響く。
美希は蕩けた顔で喘ぎつつも、

「は、春水ちゃん……」

舌を出し、キスをねだる。
尾形クンはそれに応じ、最初から貪るような激しいキスをする。

「んっ、むぅん、あんっ!」
「ちゅる、はあっ、美希……めっちゃ好きやで」
「わ、私もっ! あぁんっ」

ナカがグニグニと動きだす。奥へと引っ張り込むような動きに、美希の限界が近いことを悟る。
尾形クンは腰の角度を少し変えて、美希のキモチイイトコロを重点的に擦った。

「やぁぁん! 春水ちゃんっ、それだめぇっ!」
「なんでや、美希はここが好きやろ」
「だめぇ、イク、イッちゃう!」
「俺もそろそろイクから……一緒に、な?」

慰めるように額に唇を落とすと、美希は涙目になりながらも、しっかりと尾形クンを見た。

「は、春水ちゃん……好き、好きぃ……」
「俺もや。愛しとるで、美希」
「あ、あぁぁぁぁんっ!!」

美希が啼き、ナカが力強く締まる。
そのあまりの心地良さに射精してしまいそうだったが、尾形クンは最後の理性を振り絞って、男根を引き抜いた。

「ぐっ、出る!!」

どくどくと脈打ちながら、美希のお腹の上に、尾形クンは勢いよく白い欲望を吐き出した……。



※ ※ ※ ※ ※



鞘師クンは香音さんの肩を抱いて、部屋の鍵を開けた。

「わあ! 部屋にもちょっとした料理が置いてあるんだ」
「さすがじゃのう、サービスが行き届いとるわい」

ふたりは早速椅子に座り、煌めく夜景を眺めながらテリーヌとシャンパンに舌鼓を打つ。

「お酒はともかく、真莉愛も早く普通の料理が食べれるようになるといいね」
「そうじゃな、大きくなったらどんな物が好きになるのか楽しみじゃ」
「……ハムだったり?」

香音さんがからかうように言うと、鞘師クンの顔が渋くなる。

「ワシはハロ島におったんに、なんで日ハム好きになったのか不思議じゃわい」
「まあでも、野球っていう共通の好きな物があって良かったんだろうね」
「そうじゃのう。真莉愛が小学生になったら、ワシや香音ちゃん同様にリトルリーグに入れさせてもええのぉ」
「真莉愛の将来が楽しみなんだろうね」
「ワシらの子じゃ、きっと活躍してくれるわい」
「そうだね」
「……と、まあ真莉愛の話題は置いといて。香音ちゃん」
「なに?」
「今日だけは恋人に戻るのも悪くないんじゃないかの?」
「はい? どういう意味?」
「真莉愛ははるなんに預けたし、二人で熱い夜を過ごさんか、と言っとるんじゃ」

鞘師クンの言いたいことを理解して、香音さんの頬が赤く染まる。

「せ、せめてケーキを食べてからね、ね?」
「仕方ないのぉ」

慌てる香音さんを見て、鞘師クンは小さく笑って。香音さんのフォークを奪い取った。
そしてフォークでケーキを一掬いする。

「ほれ香音ちゃん、あーん」
「……あーん」

素直に口を開けて、差し出されたケーキを口に含む。

「どうじゃ?」
「……美味しいんだろうね。里保ちゃんも食べたらどう?」

ケーキをもぐもぐ咀嚼している香音さんに。鞘師クンは脈絡もなく突然口付けた。

「ん!? んーっ」

舌がねじ込まれる。ケーキのスポンジ、生クリーム、イチゴに混ざって、鞘師クンの舌で、唾液で口いっぱいになる。
二人の間に白い、生クリームが溶けて混ざった太い唾液が一本落ちた。
香音さんがケーキを飲み込んでも鞘師クンの深いキスは終わらない。
酸素が足りなくなった頭で、香音さんはケーキと鞘師クンのキス、どちらが甘いのか、ぼんやり考え、そして答えは導けなかった。
香音さんの口腔をまんべんなく犯してから、唇が離れる。
鞘師クンは自分の上唇を舐めて、

「ワシもケーキを充分に堪能したわい。さ、これで料理は終わりじゃ」

無茶苦茶な理論を言って、香音さんを立ち上がらせて二人はベッドへと歩く。
二人で倒れるようにベッドに横になる。ベッドの上でカラダが小さく跳ね、
それが終わると、鞘師クンは早速香音さんのミニスカワンピースのボタンを外し始めた。

「香音ちゃんは本当に緑色が似合うのう。癒しの色じゃ。
 香音ちゃんのミニスカサンタの姿を見てから、ワシ以外の男が欲情せんか冷や冷やしたわい」
「……買いかぶりすぎなんだろうね」

憎まれ口を叩きながらも、香音さんも鞘師クンの赤いネクタイを手際よく解いた。

「とにかくワシは聖夜という今日に香音ちゃんが欲しい。……ええか?」
「……じゃあ、かのサンタから里保ちゃんにプレゼント、あげるね」

それだけ言うと、香音さんはベッドから起き上がり、鞘師クンを仰向けにさせて馬乗りになった。
香音ちゃん、なにするんじゃ? そう思っていると、香音さんは顔を赤くしながら鞘師クンのYシャツのボタンを外し始めた。

「もしかして、香音ちゃんがリードしてくれるのか?」
「今日だけなんだろうね」

ボタンを外し終え、ズボンのベルトも手際よく外す。
それからゆっくりと、鞘師クンが不器用に外していた自身のワンピースのボタンを外し始める。

「この衣装は脱いだほうがいい?」
「いや、着たままで」

鞘師クンの要望の通り、ワンピースのボタンを外すと、器用に手を後ろに回し、
豊かな胸を包んでいたブラを脱いで、それだけをベッドの下に落とした。
前開きのワンピースから胸が見え隠れし、その妖艶な姿に鞘師クンは生唾を飲み込む。
チラリズムひゃっほい! と心で叫んでいると、香音さんは少しだけ躊躇ったが、意を決したように、ショーツも脱いだ。
全裸にミニのワンピースだけ纏ったその姿に、鞘師クンの男根はむくりと反応する。
香音さんはちょうど鞘師クンの股間の上に跨っていたので、男根の反応は香音さんにも伝わった。

「里保ちゃん、気が早くない?」
「こんな姿を見て反応しない男は不能じゃろうて」

その言葉に呆れたような顔をしたものの、すぐに真面目な顔付きになって、ゆっくりと鞘師クンの顔に顔を近付けていく。

「里保ちゃんは、今日は仰向けになっているだけでいいから……あたしが全部してあげる」

そう言って。鞘師クンに深く口付けた。
ぴちゃぴちゃと舌が水音を立てる。香音さんの舌が鞘師クンの歯列をなぞり、頬の内側を舐め、舌の付け根に溜まっている唾液を掬い取る。
香音さんから送られてくる唾液をコクコクと音を立てて鞘師クンは飲む。それはどんな銘酒よりも鞘師クンを甘く酔わせた。
キスを続けながら、香音さんの手は鍛え上げられた鞘師クンのカラダを這う。
指が胸板に触れ、優しく撫でたかと思うと中心にある乳輪をくるりと触った。

「んっ」

声が香音さんの口腔に吸い込まれる。
くるくる撫でながら触っていたかと思うと、起立している先端を、カリ、と引っ掻かれる。

「ふっ」

目を開けながら口付けている香音さんは、そんな鞘師クンの反応に目を細め、両胸板の先端をいじりだす。
撫でたり摘んだり引っ張ったり。そのたびに鞘師クンのカラダはピクリと動く。
香音さんが唇を離し、長い長いキスが終わる。
ゆっくりと目を開けた鞘師クンに、香音さんは目を猫のようにしながら妖しく微笑む。

「聖ちゃんの言う通りだ、男の人も胸は感じるんだね」

香音さんの頭が動き、鎖骨の窪みに舌を這わせだす。
丹念に舐めてから鎖骨を優しく噛む香音さんに、思わず鞘師クンの片腕が動いて、香音さんを弱く抱き締める。
香音さんの手が胸板の先端をいじるのを止め、抱き締めてきた腕をゆっくりと手に取る。
そして見せつけるように鞘師クンの親指を舐め、口に含んだ。
唾液をたっぷり含んだ口に包み込まれた親指は、チュ・ピチュと音を立てながら吸われたり舐められたり甘噛みされる。
そんな姿を見ていると、鞘師クンのカラダの一部に熱が溜まってくる。
鞘師クンに跨っていた香音さんはカラダの異変に気付き、跨っている場所をずらす。
それから片手で腕を掴んだまま、もう片手ですっかり盛り上がっているスボンの一部を弱くさする。

「ここにも同じこと、してほしいの?」
「う、うん」

鞘師クンがぎこちなく、それでも素直に頷くと、香音さんは「仕方ないなぁ」と言いながらも嬉しそうにズボンのチャックを下ろし、
それからズボンとパンツを一緒にずり下ろした。
勢いよく飛び出した男根は、すっかり天を向いている。
それに手を添えて、

「里保ちゃん、すっかり興奮しちゃってるね」

短い感想を述べてから、躊躇いもなく亀頭に口付けた。
それからサオを唾液をたっぷりつけた舌で舐め、タマを口に含み、やわやわと揉みしだく。そして下から上にスジをツーッと舐めた。
香音ちゃんが口でしてくれるなんて久し振りじゃのぉ、と思いながら快感に酔いしれる。
男根はムクムクと膨張し、先端からは透明な液が出始めている。
香音さんが大きく口を開き、歯を当てないように男根を口に含む。じゅぷじゅぷと飲み込まれていく男根。
そして香音さんは頭を上下に動かし始めた。口に入りきらない根元の部分は手で掴んでリズミカルに擦っている。

「ぐぅ、ううっ」

今すぐにでも暴発しそうなのを堪え、香音さんの奉仕を全身全霊で感じる。
顔を赤くして香音さんを見ていると、香音さんも上目遣いで見てきて、視線がぶつかる。

「ひほちゃん、ひもちいい?」
「うっ! ……そこで喋られると出てしまうわい……香音ちゃん、最高に気持ちええんじゃ」

香音さんは一度口から外し、男根全体を手で擦りながら、

「そっか、ごめんね。で・里保ちゃん、どうする? 最後は手でも口でもあたしは良いよ」

尋ねながら亀頭の先端を強めに擦る。
もう鞘師クンは限界だった。

「香音ちゃんの……香音ちゃんのナカに入りたいんじゃあ」

息も切れ切れに言うと、「分かったよ」の一言で香音さんは中腰になる。

「あたしも……里保ちゃんにしてたら感じちゃった」

恥ずかしそうに言うので、鞘師クンは香音さんの秘部を見る。
確かに粘性の液体が太ももにまで垂れていた。
その光景に大きく生唾を飲む。
鞘師クンが見惚れている間に、香音さんは天を向く男根に自分の秘所をあてがう。

「じゃあ、入れるね……」
「お、おう」

ツプ、と音がして、にゅるにゅると飲み込まれていく男根。

「あ、あん……」
「う、ぐう……」

根元までずっぽり入ったとき、香音さんは肩で息をしていた。

「香音ちゃん、無理しとらんか?」
「だ、大丈夫。ね……動いていい?」

鞘師クンが頷くのを見てから香音さんはゆっくりと動き始めた。
いつもより、ちょっときつめのナカ。抜き差しするたびに襞を擦るような感触が鞘師クンには気持ち良かったし、香音さんも存分に感じていた。

「あ、はあ、うぅん……」

香音さんは上下に動くだけじゃなく、前後に小さく動いたり、円を描くように腰を動かしたりする。
こんなテクもフクちゃんと情報交換したんじゃろうか、と鞘師クンは一抹の不安を覚えたが、
香音さんが健気に腰を振る姿を見ていると、感動に近いものを覚えた。

「なあ香音ちゃん……おっぱい触ってもいいか?」
「え……?」
「そのほうがワシは気持ちええんじゃ」
「分かった、いいよ……」

両腕を伸ばして、手に余る餅より柔らかいそれに指を埋める。
下から持ち上げるように揉んだり、先端を撫でたりする。

「あん、あん……り、里保ちゃん、これだとあたしが気持ち良いよぉ」
「良いんじゃ、一緒に気持ち良くなるんじゃ」

胸を揉まれながらも香音さんの腰の動きは止まらない。むしろ徐々に速くなっている。

「あぁぁん、うぅん、あんっ」

香音さんは顔を真っ赤にして汗を流しながら快楽を貪っていた。鞘師クンも堪えていた射精感が蘇る。
もう長くはもたない、そう判断した鞘師クンは。
思いきり腰を突き上げた。

「きゃぁん!?」

香音さんが悲鳴に近い嬌声を上げる。
気にせず鞘師クンはガンガンと突き上げる。

「ああん! りほちゃぁんっ、ダメっ、おかしくなっちゃう!」
「いいんじゃ、一緒におかしくなるけぇ」
「あ、あたしがする、って言ったのに……あんっ!」
「もう充分に香音ちゃんからは貰ったわい。今度はワシからのプレゼントじゃ!」

ばちん! ばちん! と、激しくぶつかり合う。
揉んでいた胸の先端をキュ、と摘むと、ナカがキュウ、と締まった。
気にせず激しく腰を動かす。ナカがキュウキュウと締まり、ウネウネと奥へと動きだす。

「はぁぁん! だめぇっ、イッちゃう! イク!!」
「ワシからのプレゼントは……ホワイトクリスマスじゃ!」

ばしん! と激しくオクまで突いたら、それが香音さんの限界だったらしい。

「うぁぁぁぁんっ!!」
「くう! 出る!!」

男根が強く締め付けられ、鞘師クンも堪えきれずに白い欲望をドックドックと吐き出す。
鞘師クンの上でぴくぴく痙攣している香音さんの結合している部分から、受け止めきれず逆流した精液が筋となって流れ出した……。



※ ※ ※ ※ ※



生田クンと聖さんは肩を寄せ合い、部屋の鍵を開けた。

「わあ、きれーい!」

一面ガラス張りになっている窓に近付き、煌めく夜景に聖さんは歓声を上げた。
夜景に見惚れている聖さんを、生田クンは後ろから優しく抱き締める。

「聖、今日は楽しかったと?」
「うん。みんなでワイワイ騒ぐクリスマスって楽しいね。明日にでも吉澤さんにお礼を言わなくちゃ」
「オレもたらふくメシが食えて満足ばい。まあ味は聖の作るメシには敵わんっちゃけど」
「えりぽん買いかぶりすぎだって」

楽しそうにクスクス笑う聖さんに愛おしさが込み上げてきて。
生田クンは前を見ている聖さんのアゴを掴んで振り向かせ、そっと口付けた。

「えりぽん……」
「聖……」

聖さんは体ごと生田クンのほうに向きなおり、首に腕を絡ませる。
そして今度は聖さんから口付けた。
重ねるだけのキスはすぐに終わり、お互い目の前の愛しい人を見つめる。
聖夜という特別な日が力添えしているのだろうか、二人は首を傾け、どちらからともなく、深いキスをする。

「ん、んぅ……」
「みずき……聖っ」

聖さんをガラス窓に押し付け、生田クンはキスを続けながら聖さんの衣装のボタンを外し始める。
ボタンを外し終え、前開きのワンピースが呆気なく左右に開く。生田クンは聖さんの背中に手を回し、ブラのホックを外す。
深いキスを続けたまま、露わになった胸を揉み始めた。

「あっ、あぁん、はぁ……」

聖さんの嬌声は生田クンの口腔へと吸収されていく。
豊満な胸の先端を指がかすめたとき、聖さんのカラダがビクンと動く。
生田クンは意に介さず、くりくりとそこを捏ね始めた。

「あ……ぅん、はあっ!」

嬌声に熱がこもり始める。ピン、と指で弾いたら、「きゃんっ」と可愛い声が返ってきた。
胸ばかり攻めていたら、聖さんの脚がガクガクと震え始める。そこでようやく生田クンは唇を離した。

「は、はぁ……ぁん」

指は動いたままで、生田クンはおもむろにヒザを曲げて、もう一つの胸の頂を口に含む。

「あ、あぁぁぁん、えりぽぉん……」

聖さんは堪らなくなり、生田クンの髪に指を入れてぐしゃぐしゃに掻き回す。
生田クンの空いている片手は陶磁器のように滑らかな肌を縦横無尽に触っている。
その手が太ももの内側を這いだしたとき、聖さんのカラダはピクンと動き、

「え、えりぽんっ、ちょっと待って」

慌てて胸から口を離させて、見つめ合った。

「聖、どうしたと?」

止められた理由がさっぱり分からない、といった表情の生田クン。聖さんは熱い息を吐きながら、

「続きはベッドで……ね?」

聖さんが提案すると、生田クンはむーっと拗ねた表情をする。

「別にこのままで良かとーやん」
「そんなこと言わないで……えりぽんのしたいこと、なんでもするから……」

聖さんがそう言うと、生田クンの目がキラリと光った。

「その言葉、嘘じゃなかと?」
「う、うん。聖ができる範囲なら……」
「聖にしかできんことっちゃ」

そこで生田クンはテーブルに並べられた数種の料理を見る。その中から、ホールケーキの皿をひょいと取る。
片手にケーキ、もう片手で聖さんの手を取って意気揚々とベッドに向かう生田クン。

「えりぽん、ケーキが食べたいの?」
「半分正解ってところやけん。このケーキを聖が作るメシと同じくらい美味くするっちゃ」
「? 言っている意味がよく分からないよ」
「まーまー。聖は手伝ってくれれば良かと」
「う、ん。協力するよ?」

ベッドの傍で、ナイトテーブルにケーキの皿を置き、生田クンは優しく聖さんをベッドに組み伏せた。

「衣装はばり似合っとるから、脱がんでよか」

聖さんの腕から既に用を成していないブラを抜き取ってベッドの下に落とす。そしてそのままの流れでショーツに手をかけた。
聖さんは少しだけ躊躇ったが、結局はおとなしく腰を浮かせてショーツを脱がせやすくした。
するすると、生田クンは鼻歌交じりでショーツを聖さんの脚から抜き取る。
それから乱暴に自分の着ているスーツ一式とパンツまで脱ぎ捨てて素っ裸になる。
白くて細身ながらも、筋骨逞しいそのカラダに、聖さんは何度でもときめいて恋をする。
生田クンは聖さんの脚の間を割り開いてカラダを入れて、そのまま覆い被さった。

「じゃ、改めて。……聖、好いとぅよ」
「うん……聖も」

短い、重ねるだけのキスをして、生田クンの顔と手は聖さんのカラダ中を這い、軽く口付けていく。
喉を甘噛みし、胸の谷間を舐め、二の腕に口付ける。手は優しく背中や太ももを触る。

「はあ……あん……」

優しい愛撫に鎮火しきっていなかった情欲の焔が灯る。
手が尻を揉み、顔が徐々に下がっていくことに、聖さんは期待を隠しきれない。
おへそをぴちゃぴちゃと音を立てて舐められ、生田クンの顔はさらに下がっていく。
と・思ったら。

「聖に夢中になって忘れるとこやったけん」

突然顔を上げ、ナイトテーブルに腕を伸ばした。
生田クンが持っているのはケーキの乗った皿。それをベッドに置く。
そして指で生クリームの部分を盛大に掬った。

「えりぽん……? あんっ!?」

秘所にたっぷりと生クリームを塗られた。

「これで普通のケーキが何倍も美味くなると」

生田クンの顔が秘所に埋められる。なにをされるか理解した聖さんだったが、慌ててももう遅い。
ぬるぬるとした生クリームの感触に、それを舐め取るザラザラとした舌の感触。

「ああぁぁぁんっ」

高く啼きながら、二重の初めての感触に蜜壷からどろりと蜜が溢れるのが分かった。
蜜もじゅるじゅると吸われ、そしていつもより執拗に秘所を舐められる。

「うん、美味か。おっとここにもクリームが」

ぷっくり膨らんだ蕾を、生クリームと一緒にべろべろ舐められ、強く吸われた。

「んんうんっ!」

思わずシーツを強く掴んでしまう。
本当に生クリームを全て舐め取るつもりなのか、生田クンは聖さんが何度も軽い絶頂に達しても、舐めることを止めない。

「え、えりぽん、もう……」

息も切れ切れに訴えるが、

「まだクリームを舐め終わってなか」

の一言で、いつもより深く蜜壷に舌を突っ込まれたりもする。
生田クンは蜜壷を舌でぐるぐる掻きまわし、溢れ出てきた蜜をじゅうじゅう音を立てて吸う。

「はぁぁぁ……ああん」

聖さんはカラダから込み上げてくるものを感じた。それは抑えようとするが、生田クンが秘所を舐めるたび、どんどんとせり上がってくる。

「あ、ここにも残っとるっちゃ」

生田クンが蕾を口に含んで強く吸い、甘噛みしたその瞬間。

「ああっ!」

バッとなにか吹き出したのが分かった。
聖さんはその感覚で、今までも数回経験した現象だと気付いた。
生田クンは太ももの付け根に舌を這わせ、嬉しそうに言う。

「久しぶりの潮吹きばい。聖、そんなに気持ちよかったと?」

顔じゅうに浴びた潮を、生田クンは舌が届く範囲で舐める。

「これでどんなパティシエにも負けない、最高のケーキになったけん」

また秘所に顔を埋めようとする生田クンの頭を掴んで、

「……えりぽんずるい。聖にも最高のケーキを分けてよ」

顔を赤くしたまま、唇を尖らせてみる。

「ばってん、もうクリームは正直全部舐めてしまったっちゃ」
「そっちは聖には最高のケーキじゃないの」
「へ?」
「えりぽんのも、舐めさせて」
「んー……。じゃあこういうプレイはどうやと?」

カラダを移動させ、聖さんに耳打ちする。
それを聞いた聖さんは、最初は不満そうだったが、生田クンが追加で耳打ちすると、目を輝かせた。

「うんっ! それならやりたい!」
「ケーキは小さめだから、きっとそのプレイで残りはなくなるたい。聖も納得してくれるならオレも満足ばい」

そうと決まれば、と生田クンは早速準備を始めた。
横たわったままの聖さんの胸の谷間に生クリームを塗りつける。
ケーキの側面にも塗られているクリームも指で取って、聖さんの胸を雪景色にした。
今度は生田クン、聖さんの胸下に跨った。

「聖、大きなイチゴがあったと」

クリームがすっかり剥ぎ取られたケーキからイチゴを一つ摘んで聖さんの口に入れる。

「あ・すごく甘いイチゴ。……えりぽんも食べる?」

舌を突き出し見せると、生田クンは笑って聖さんに口付けた。聖さんは舌を使ってイチゴを送る。

「本当やけん、ばり甘くて美味か」
「ふふ、イチゴ味のキスだ」

嬉しそうに笑う聖さんが可愛くて、生田クンは頭を優しく撫でる。長い髪を手で梳きながら、

「じゃあ、クリームが溶けたら大変やけん、始めると」
「うん!」

雪景色になった聖さんの胸の谷間に、生田クンは半勃ちになっている男根を挟む。
ふんにゃりと、どこまでも柔らかいその感触は、クセになりそうだった。そして腰を前後に動かし始める。
生クリームを使ったパイズリである。
ふんにゃり・にゅるにゅる、とした感触が生田クンの男根を包み込む。
聖さんは自分の胸の谷間から男根が見え隠れするのを注視する。

「すごい……えりぽんの、メキメキと大きくなってる」
「はっ、はあっ、だって聖のおっぱいが気持ち良いからやけん」

生田クンは夢中になって腰を動かす。そのたびに男根は血管を浮かび上がらせ、膨張していく。
顔を赤くさせ興奮している生田クンを見ていると、聖さんまで興奮してきた。
先ほどまでさんざん舐められた場所が、じんわりと熱を帯びて再び潤ってきた。

「やば……気持ち良すぎるたい、クセになりそうっちゃ」

生田クンは喉元を晒して動きを加速させる。
聖のナカで動くときもこんな熱心な表情をしているのかな……
いつも自分も気持ち良くて、えりぽんの顔をこんなに集中して見れないし……聖さんはぼんやりと思った。

「くうっ! 聖っ、出る!」
「うん……出して、いっぱい」

聖さんの胸を寄せて狭い隙間を貫通させる。その瞬間、男根が一瞬だけさらに膨張した。
激しい勢いで吐精し、弧を描きながら聖さんの顔に大量に着弾する。
生田クンは肩で呼吸して、まだ小さく残りの精液を吐き出していた。
聖さんは顔にかかった精液を指で掬い、口に含む。

「ふふ。えりぽんの生クリーム、すっごく美味しいよ」

穏やかな笑顔で、指で掬っては口に運ぶ。生田クンはそんな聖さんの姿を、霞みがかった頭で、ぼんやりと見つめていた。
聖さんがあらかた精液を掬い取って舐めたのを見て、生田クンは聖さんのカラダから下りる。
聖さんもカラダを起こして、今度は聖さんがベッドで胡坐をかいている生田クンの股間に顔を埋めた。

「それじゃあ約束通り、えりぽんのケーキ、食べさせてもらうね」
「ん、美味いもんじゃないっちゃけど、どーぞ」

聖さんは笑顔で、溶けかかった生クリームのついた男根のサオをちろりと舐める。
ちゅ・ちゅ、とキスの雨を降らせてはクリームを舐めていく。
スジを焦らすように舐め上げられ、亀頭の先端を、じゅ、と吸われると、吐精したばかりだというのに、ムクリと起き上がった。
愛おしそうにタマを口に含んで舌で転がし、アリのとわたりと呼ばれる部分を指でなぞると、「うっ」と生田クンが小さく唸った。
男根の根本にも舌を這わして溜まっているクリームを舐め取る。そのままカリに向かって唇を滑らせると、ピクピクと男根が躍った。
カリ首を舌でぐるりと舐め回し、亀頭だけを口に含む。頬をすぼめて強く吸うと、髪に指を入れられ、

「あ……聖、ばり気持ちよかとぉ」

うっとりとした声と共に、優しく頭を撫でられた。
褒められたことが嬉しくて、かなり大きくなった男根を口に入る分だけ、じゅぷじゅぷと飲み込む。
舌で舐め回しながら、頭を上下に動かし始めた。口に入りきらない部分は、握って擦る。

「ぐっ、くぅぅ」

実は密かに、聖さんは生田クンが快感に耐えつつも漏れ出てしまう声を聞くのが好きだった。
自分のテクで気持ち良くなってくれている、そう実感できるからである。
じゅっぷじゅっぷ、音を立てて、一生懸命に頭を動かす。擦っている部分もリズミカルに、生田クンが気持ち良いと思う速度で手を上下させる。
メキメキ、そんな音が聞こえそうな速度で男根は巨大化していく。
時折、口から外しては、根元を舐めて亀頭を擦ったり、口は使わず擦るだけにしてみたりする。
そうやってバラエティに富んだ方法を使っていると、亀頭の先端から透明な液体が出てきた。それを愛おしそうに啜る。

「聖、もういいっちゃ、これ以上されると出てしまうばい」
「そう? えりぽんのケーキも美味しかったよ!」

満面の笑顔で言って、口と手を離す。
生田クンは軽々と聖さんの腋を抱えて目線を合わせる。

「今日は久しぶりに対面座位はどうっちゃ?」

聖さんは微笑んでささやかなキスをする。

「えりぽんがしたいことが、聖のしたいことだから」

聖さんの返しに、生田クンは一瞬だけぽかんとして。それから相好を崩した。

「聖のほうが一つ上なのに、聖は可愛すぎると」

子どもにするように、頭を撫でてやる。

「えりぽん、子ども扱いしてない? ……もし本当に子どもだったら、」

するり、と生田クンの首に腕を絡め、そして妖艶に囁いた。

「……こんなこと、しないでしょ?」

生田クンの心臓が大きく跳ねる。可愛い、と思っていたら、こんな艶やかな声を出す、そんなギャップが堪らなく愛おしい。
互いが常に相手にときめき合って、そして何度でも恋をする。それが聖さんと生田クンの関係なのである。

「だからえりぽん、続き、シて?」
「ああ。オレも限界たい」

胡坐をかいている生田クンの上に、慎重に聖さんが乗る。秘所同士を擦り合わせ、お互いが準備万端なことを確認する。
挿入する前に、今度は生田クンが聖さんにキスを捧げた。

「世界で一番愛しとーよ、聖」
「聖もえりぽんのこと、世界で一番愛してる」

二人で微笑み合って、それからゆっくりと聖さんは腰を落とした。

「あん……はぁぁん」
「聖、辛くなかと?」
「だいじょうぶ……ううんっ」

ずぷずぷとナカに飲み込まれていく男根。根元までずっぽりと入ると、聖さんはフルフルと小さく震えていた。

「あっ、はっ、はぁ……」
「聖?」
「心配しないで……軽くイッちゃっただけだから……」
「……さよか」

聖さんが落ち着くまで、生田クンは動かずに、優しく背中を撫で続けた。

「もういいよ。動いて、えりぽん」
「無理はしたらあかんとよ」
「うん」

生田クンはゆっくりと腰を動かし始める。最初は、ぱち・ぱち、と小さな抜き差しだった。

「はあっ、ふぅんっ」

生田クンは片腕で聖さんの腰を支え、空いている手で胸の先端を摘んだ。

「ああんっ! あ、はあぁぁ……ねえ、キス、して」
「ん」

聖さんが舌を出したので、それを自分の口腔に入れ、舌同士を絡め合う。
そうなると、お互い、否が応でも興奮が高まり合う。
生田クンは腰の動きを早くする。胸を手の平を使って揉みしだく。
聖さんは首に回していた腕の力を強める。そしてもっと深く、と言わんばかりに唇を押し付ける。
ぱんぱんぱんぱん! とリズミカルに腰が動く。外から亀頭が見えたと思ったらすぐに根元までずっぽりとナカに入る。

「うんっ、ふっ、ああんっ」

聖さんは耐えきれないように唇を離し、大きく嬌声を上げた。

「聖……もっと感じてほしか、オレで気持ち良くなってほしいっちゃ……」
「あぁんっ、気持ち良いっ! えりぽん、すっごくイイッ」

高く啼きながら、汗を振り乱す。
いつしか聖さんは自ら腰を振っていた。
感じるトコロ、気持ち良いトコロ、そしてもっとオクまで生田クンを感じたい、無意識と本能で、激しく腰を動かす。

「くぅっ、聖のナカ、襞が絡み付いてオレが持って行かれそうばい!」
「あぁぁんっ! えりぽんっ、えりぽぉん!」

聖さんの啼き声と腰同士がぶつかる音が、部屋中に響き渡る。
本能の快楽と原始の愛を求め合って、二人は激しく腰を動かす。もう互いが相手のことしか眼中になかった。
舌を出し合い、舌だけのキスを交わす。お互い赤い顔で、汗を流しながら相手を熱く見つめる。

「うっ! 聖、オレ、もうイキそうっちゃ……」
「聖も……あと少しでイッちゃう……」
「はあっ! 聖のナカ、気持ち良すぎるばい」
「うぅぅん! えりぽんだって聖を、あん!」

ナカがうねうねと収斂する。その動きに、生田クンは限界だった。

「あかんちゃ! イクッ!」

白くて熱い欲望が思いきりナカに放たれる。どくどく脈打つのを感じながら、ナカが強く強く締まる。

「あぁぁぁぁぁんっ!」

ビクンッ! ビクンッ! と二度大きくカラダが跳ねる。
聖さんのカラダは硬直し。そして全身の力が抜けて生田クンに身を任せる。
生田クンも荒い息を吐いて、聖さんを強く抱き締めながら後ろに倒れた。
生クリームを剥ぎ取られたケーキのスポンジだけが、変わらずにベッドの上で、抱き締め合ったままの二人を見つめていた……。



※ ※ ※ ※ ※



れいなクンはさゆみさんに肩を借りながら、部屋の鍵を開けた。

「れーな、お酒弱いくせに飲みすぎ」
「うぃーひっく。れなはタダ飯・タダ酒という言葉に弱いっちゃん」
「それで千鳥足になるまで飲んだら明日は二日酔い確定じゃない。自業自得なんだから看病しないからね」
「そんなぁ。さゆがミニスカナース服を着て看病してほしかー」
「ばーか、だれがイメクラごっこをするもんですか」
「今はミニスカサンタの衣装を着とるのに?」
「これは吉澤さん命令だからなの。『女性陣はこの衣装で聖夜を過ごせYO』と言われたからね」
「吉澤さんの命令は聞けて、れなのお願いは聞いてくれんとー?」
「ああもう! しつこい酔っ払い! 廊下で寝させるわよ!?」
「あう……すまんかったですたい」
「分かればよろしい」

ベッドに大の字になったれいなクンを放っておいて、さゆみさんは煌めく夜景が見えるガラス窓に近付く。

「綺麗……」

うっとりとした声で言うと、ベッドから「夜景よりさゆのほうが綺麗っちゃよー」という酔っ払いの言葉が聞こえたが、さゆみさんは無視した。
傍のテーブルを見ると、冷やされたシャンパンと三種のテリーヌ、それに小さなホールケーキが置いてあった。
さゆみさんはケーキの上のイチゴを無造作に摘んで口に入れる。大きくてとても甘い。
ケーキの乗った皿だけ持って、ベッドに近付く。

「れーな、酔い覚ましにはならないだろうけれど、ケーキ食べる?」
「んー?」

ごろん、と寝返りを打ってさゆみさんのほうを見るれいなクン。

「さゆはなにを食ってると?」
「ケーキの上のイチゴ」
「テーブルのほうに、まだなんかあるけれど、あれはなにっちゃ?」
「お酒とそのおつまみ。れーなはもう今日は飲んだらダメ」

れいなクンは上体を揺らしながら起き上がり、あーんと口を開ける。

「……なに、その仕草」
「食べさせてほしか」
「ばか。自分で食べなさいよ」

ずいっと皿を差し出され、れいなクンは唇を尖らせる。

「はいはい。自分で食べればいいっちゃろ」

指で側面のクリームを掬い。
そのまま口に運ぶのかと思ったら、
クリームのついた指はさゆみさんに伸ばされる。
え? と思うヒマもなかった。
左の頬にべったり、クリームを付けられる。

「ちょ、れー、」

怒ろうと思った矢先に、真剣な瞳のれいなクンに肩を掴まれ、さゆみさんはなにも言えず、動くこともできなかった。
れいなクンの舌がさゆみさんの頬についたクリームを丁寧に舐め取る。

「ん、たしかに美味いケーキばい」
「……れーな、まだ酔ってるの?」
「にしし、さあ? ところで、もうちょっとケーキを食べたいっちゃけれど」

笑いながら言うれいなクンがどこまで本気なのか、本当に酔っているのか、判断がつかなかった。
だからさゆみさんは。

「……好きにしなさいよ」

ぶっきらぼうにれいなクンの意見を了承した。
こういうところが可愛くない性格だとは自覚している。
時折自己嫌悪に陥ることもある。だけれど、れいなクンは気にした様子もなく、

「じゃ、もうちょっと食べるけん」

笑いながら再びケーキを指で掬う。
今度はさゆみさんの右の頬にクリームを付けて、それを猫のように舐め取る。
さゆみさんがなにも言わないことをいいことに、れいなクンはまたケーキを指で掬う。
額・アゴ・鼻、色んな箇所に付けては、それを綺麗に舐め取る。
そして最後にさゆみさんの上唇と下唇、二ヶ所にクリームを付けた。
さゆみさんが自分で舐め取ろうとすればできる場所だ。
舐め取らなかったら、れいなクンがどんな行動を取るのかは子どもでも分かる。
さゆみさんは唇を薄く開く。
だが、それだけだった。
れいなクンの顔が近付いてくる。さゆみさんはゆっくりと目を閉じた。
れいなクンが唇のクリームを舐め取り、開いた隙間から舌が侵入してくる。舌を絡め取られ、じゅう、と強く吸われる。
甘く感じるのはクリームのせいか、れいなクンの優しいキスのせいか。それすらも判断できない。
嗚呼、さゆみも酔っている。お酒に? れーなに? 分からない。両方かもしれない。
さゆみさんはケーキの皿から手を離してれいなクンの背中に両腕を回す。
ケーキは当然落ちた。ぐちゃぐちゃになって、もう食べれないだろう。もしかしたら皿も割れているかもしれない。
だけれども、今はそんなことは些細なことで。
さゆみさんの心はれいなクン一色で塗りたくられる。もう、なにも見えやしない。
ゆっくりと唇が離される。さゆみさんはれいなクンの背中に腕を回したまま、薄く目を開いた。
れいなクンが優しく微笑んでいる。

「ごちそーさん。最後のイチゴ味のさゆの舌が一番美味かったっちゃ」
「……ばか」
「にしし」

れいなクンは笑ってさゆみさんを抱き締める。そして後ろにあるベッドにゆっくりと倒れ込んだ。
ぽす、とベッドが二人を受け止める。
抱き締め合ったまま、至近距離で見つめ合った。

「なあ、さゆ。今日はもう飲まんし食べんちゃ。その代わり、さゆみさんを食べたいっちゃけれど」
「……さゆみに酔わない自信、ある?」
「あ・それは無理っちゃ。もう中毒になっとるけん」
「そう」
「え、ダメ?」
「……中毒になっているのなら、もう好きなだけ食べなさいよ」
「じゃあ遠慮なくいただきます」

くるん、と視界が回転する。れいなクンの背後に天井が見える。
逆光になってよく見えないが、れいなクンの瞳が子どものようにキラキラ輝いている気がする。
それを愛おしい、と思う気持ちがさゆみさんの中にたしかにあった。
……そっか、さゆみもれーな中毒なんだ。
それなら仕方ないの、そう思いながら、れいなクンの顔が近付いてきたので、ゆっくり目を閉じた。
れいなクンは、額・瞼・耳朶・鼻・両頬・アゴ、とキスの雨を次々に降らせてくる。
誘うように唇を開け、舌を出すと、直球でキスされたので、今度はさゆみさんから舌を侵入させる。
れいなクンの口腔をまさぐっていると、舌を絡め取られ、ちゅうちゅうと唾液を吸われる。

「ふうっ」

鼻で息をすると、舌が離されたので、おとなしく自分の口に引っ込めると、今度はれいなクンの舌が入ってきた。
舌を伝って唾液が送り込まれる。それを飲み込んだとき、どんなイチゴやケーキよりも、甘い、と感じた。
唇が離されたので、ほう、と息を吐く。目を開けると視界が滲んでいた。潤んだ瞳で見るれいなクンは、どこまでも優しく笑っている。
優しいだけじゃない。非力だけれど、いざというときは頼もしく逞しい、さゆみさんだけのナイト。
最愛の聖なる騎士は、耳元に唇を寄せてきた。

「さゆ、愛しとーよ」

背骨が甘く痺れる。
れいなクンは耳朶を甘噛みしたり、耳の穴にぴちゃぴちゃと舌を突っ込んだりしながら、さゆみさんの衣装のワンピースのボタンを外していく。
さゆみさんも背中に回していた腕を解き、れいなクンの水色のネクタイを解いてYシャツのボタンを外す。
れいなクンがあまりにも耳を愛撫するので、なかなかすぐにはできなかったが。
顔を赤くしながらシャツのボタンを外し終えると、れいなクンも終わったらしく、耳から唇が離された。
そして前開きのワンピースをぴらりとめくられる。

「お、ブラがフロントホックたい。さゆも期待しとったと?」
「……適当に選んだだけ。ただの偶然だし」
「ふーん」

れいなクンはニヤニヤしながら胸の谷間にあるホックをピンッと外す。ブラは左右に開かれ、形の良い胸が露わになる。

「綺麗っちゃよ、さゆ……」

右手を伸ばし、しっとりと吸いつく肌に指を這わせる。

「あ……」
「さっき、夜景よりさゆのほうが綺麗と言ったのは酔ってたからじゃなかとーよ? 本当にそう思っているからたい」

左胸を包み込むように手の平で覆い、ゆっくりと指を沈める。さゆみさんは自分の鼓動の早い心臓の音が伝わらないか、心配になった。

「ばり綺麗たい、れなだけのさゆ」

れいなクンは右胸に顔を寄せて乳房にキスをする。ちゅ・ちゅ、と軽い音を立てながら、少しずつさゆみさんの興奮を煽っていく。

「は、あ……」

右手がやわやわと胸を揉み、左手がウエストのくびれを何度も撫でる。
乳房にキスをしていた唇は、ふうっ、と胸の先端に静かに息を吹きかける。

「あん……っ」

さゆみさんは喉元を晒す。その間にもれいなクンは舌を出し、ちろちろと乳輪を舐め出した。

「うんっ」

思わずシーツを掴む。すると右手を取られ、れいなクンの顔近くまで運ばれる。
れいなクンは乳輪を舐めるのを止め、右手の甲に唇を落とす。

「シーツを掴むくらいなら、れなのカラダに腕を回してほしか」
「……分かった」

緩慢な動きでれいなクンの両肩に腕を置いた。そのままスーツのジャケットの背中部分を掴む。
掴んでから、ジャケットにシワができるからクリーニングに出さないといけない、と思ったが、ま・いいや、と開き直る。
れいなクンの動きが再開される。
すっかり勃っている胸の頂を、ぱくっと口に含み、赤ん坊のようにちゅーちゅー吸いだした。
ただ赤ん坊と違って、時折舌でつついて刺激を与えるが。

「はぁんっ」

舌でつつかれ、もう片方の胸も手の平で頂を転がされるたびに腰が小さく跳ねる。
れいなクンの左手は、今はお腹へと移動し、指でおへそをいじくっている。

「ぅうん」

ジワリ、ショーツに染みができたことを自覚する。
れいなクンは胸への愛撫を止めて、頭と手、両方を下へと移動させる。
お腹をぺろりと舐めてから、ショーツに両手をかける。そしてゆっくりと下ろし始めた。
粘性の透明な糸が一条、伸びて、切れた。
そのことを指摘すれば、さゆみさんが不貞腐れて続きをさせてくれない可能性もあるから、
れいなクンは無言でショーツを脚から抜き取って、床に落とした。
右手をさゆみさんの秘所に添え、顔と顔を近付ける。

「さゆ、」

名前を呼ぶと、潤んだ瞳で見つめ返される。唇を寄せると、静かに目を閉じてくれた。
ちゅ・ちゅ、と角度を変えて重ねるだけのキスを何度も繰り返す。
さゆみさんが目を閉じたまま熱い息を吐いたのを見てから、右手で秘所の入口を指でなぞった。

「あっ、はあっん」

指を動かすと、オクからごぽりと蜜が溢れる。それを指にまぶして、クチュクチュ、入口を掻き回す。

「うぅぅんっ」

さゆみさんが顔を赤くして快感に耐えるのを、れいなクンは興味深そうに見つめる。
ゆっくりと中指を挿入させると、さゆみさんの腰が跳ねた。
そのままナカを傷つけないように、温かい蜜壷をぐるぐると掻き混ぜる。

「はああん、あっ」

蜜壷は蜜を吐き出し、れいなクンの右手をすっかり濡らした。
さゆみさんの手はれいなクンの頭を掴み、れいなクンが中指で蜜壷を混ぜるたびに、髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き乱す。
中指を少し曲げ、お腹の上を擦ってみる。

「あはんっ、やぁあん!」

さゆみさんは高い声で啼き、頭を振り乱した。

「さゆ、ばり可愛いと」

中指で同じ場所を擦り続けると、さゆみさんは仔ウサギのようにふるふるとカラダを震わせ始める。

「はぁんっ、れーなっ、れーなぁ!」
「イッてもよかとーよ」

蜜壷に人差し指も挿入して、二本の指で強く擦った。

「ああぁぁん!」

ビクン! と大きく震え、それからくたりと脱力してベッドに沈み込んだ。
はあはあ、と荒い息を吐くさゆみさんの頭を優しく撫で、静かに蜜壷から指を引き抜く。
引き抜いた指をぺろぺろ舐めて濃厚な味を堪能していると、さゆみさんがゆっくりと目を開け、そしてれいなクンを睨みつけた。

「恥ずかしいから舐めるのは止めて、って言ってるじゃない」
「ばってん、ばり美味かっちゃん」
「さゆみは美味しいと思わないから。ていうか、れーなに余裕があってムカツク」
「余裕なんてなか」
「え?」

左手でさゆみさんの手を取り、静かに自分の股間を触らせる。

「あ、おっきい……」
「さゆが乱れる姿を見て、興奮せんてことはなかと。正直、パンツが破れそうっちゃ」
「そ、そうなんだ」
「と・いうわけで。服を全部脱ぐけんね」
「い、いいよ」

さゆみさんの承諾を得てから、れいなクンはぽいぽいと脱いでは乱雑に床に落としていく。
全裸になってドラゴン化している股間を見て、さゆみさんは小さく唾を飲み込んだ。
れいなクンは静かにベッドに乗る。

「で、さゆみさん」
「なに?」
「続き、してよかと?」

さゆみさんがその言葉に顔を真っ赤にし、それでも小さく頷いたのを見、れいなクンは覆い被さって、今度は荒々しく唇を貪った。

「ん、んぅ……」
「さゆ、さゆ……」

先ほどの言葉通り、本当に余裕がないらしい、唇を貪り終えると、さゆみさんの乳房に強く吸いつき、赤い華を一輪咲かせる。
舌で唾液の跡をつけながら、さゆみさんの太ももの内側に唇を寄せ、再び強く吸った。

「んっ」

思わず声を上げる。しかし、さゆみさんにとっても、それは甘い痛みであり、不快なものではなかった。
両腕でさゆみさんの太ももを上にして、はあ、と熱い息を吐いてから秘所に顔を近付けてむしゃぶりつく。

「あぁぁんっ」
「はあ……さゆ、んっ」

ドロドロと出てくる蜜を音を立てて吸い、ぷっくり膨らんだ蕾を口に含んで舌で転がす。

「うぅぅぅんっ!」

さゆみさんは啼き声を上げながら腰を跳ねさせる。それでも、れいなクンの愛撫は止まらない。
蜜壷に舌を入れて、ぐにぐにと動かす。

「はぁん!」

舌を動かすたびに、蜜が溢れてくるので、それを一滴もこぼさないよう、丹念に舐め取る。
れいなクンがようやく秘所から唇を離し、顔を上げると、さゆみさんは赤い顔でくったりとしていた。

「さゆ……大丈夫と?」
「う、うん」

弱々しく返事するさゆみさんを見て、激しくしすぎたかな、と反省するが後の祭りである。

「……れーな」

名前を呼ばれ、顔を近付けると、そっと頬に手を添えられた。

「今、もうここで止めようか、考えたでしょ」

心の中を読まれたことに驚き、目を大きくする。

「さゆみは大丈夫だから。っていうか、ここで止められるとさゆみも辛いし。だから……続き、シよ?」

添えられた手を、静かに握る。

「さゆ、分かったっちゃ」

先走り液が出ている男根と、今にも蜜を垂らしそうな秘所を擦り合わせる。

「じゃ……入れるっちゃ」

さゆみさんが頷いたのを確認してから、ずぐぐ……と腰を前に突き出す。
丹念に愛撫を施した秘所は、さほど抵抗なく男根を飲み込んでいく。

「あ、はあん……」
「う、くぅ……」

入れている最中でも、お互い、敏感に反応してしまう。
根元まで入ったのと、先端がオクの壁に当たったのは、ほぼ同時だった。
さゆみさんは荒い息を吐いて、圧迫感を取り除こうと頑張っている。

「さゆ。れなの首にしっかり腕を回してほしか」
「あ……うん」

腕が回され、れいなクンがさゆみさんを強く抱き締める。

「よ、っと」

さゆみさんのカラダを起こし、れいなクンは床に立つ。
駅弁スタイルになり、重力に従って、秘所は男根の根本の根本まで、ずぐぐ、と飲み込んだ。

「あああああんっ」

弱い最奥を強く刺激され、さゆみさんは悲鳴に近い啼き声を上げる。
カラダをふるふる震わせて快感に耐える姿を見、れいなクンは愛しさを覚える。

「さゆ。ばり可愛いと、好いとぅよ」
「れーな……好き、大好き」
「動いてよかと?」
「ぅん」

さゆみさんのカラダを労わるため、最初はゆっくりと小さく抜き差しする。ぱちゅっ・ぱちゅっ、と水音が鳴る。

「うぅぅん、あ、はあっ」
「そんな可愛い顔されると腰が止まらんくなるったい」
「止めなくていいよ……もっと激しく……」
「分かったばい。リクエストにお応えするっちゃ」

れいなクンは腰の動きを大きくする。半分ほど抜き差しして、速度も上げる。

「ああんっ! れーなぁっ!」
「さゆ、さゆ……」

お互いの名前を呼び、興奮を高め合いながら、れいなクンの動きも大胆になってくる。
ばちゅ! ばちゅ! と腰と腰をぶつけ合う。抜き差しもほとんどカリまで引き抜き、思いきり根元まで差し込むような激しさである。
根元まで差し込まれるたびに最奥を強く刺激され、さゆみさんの嬌声は止まらない。

「あぁんっ! はあっ! ふあっ!」

さゆみさんの啼き声が上がるたび、れいなクンの興奮は高まり、結果、腰の速度が速くなる。
ガンガン! とオクを突き、さゆみさんが啼き、ナカが締まり、れいなクンの射精感は高まってくる。
キュ・キュ、と心地良くナカが締まり始め、男根をオクへと引っ張るような動きになってきた。

「れーなぁっ! イク! イッちゃう!!」
「イッてよかと……イキ顔、見せてほしいっちゃ」
「やあぁぁぁんっ! ああーっ!!」

さゆみさんは涙を流しながら絶頂に達した。

「うっ! 出るっちゃ!」

その瞬間、ナカが強く締まり、そのあまりの気持ち良さに、れいなクンは堪えることもできずに白い欲望を吐き出した。
愛液と精液が混ざったものが、床の絨毯にボタボタと大きな染みを作った……。



※ ※ ※ ※ ※



吉澤さんは平然とした足取りで、部屋の鍵を開けた。

夜景が一望できるガラス窓の近くに置いてある料理を一瞥し、それからなげやりな様子でベッドに座りこむ。
何度もチラ見したスマホに、目当ての人からの着信はきていない。
はあ、と大きくため息をついてスマホをベッドに投げ捨てた。
その瞬間。スマホが着信音を響かせた。
慌てて手に取り、電話してきた相手を確かめると、急いで通話ボタンをスライドさせる。

「もしもし? 梨華ちゃん、仕事終わったの? ……え、歩きながら通話してるの? 今どこ?
 ……は? その路線の駅は通勤に使わないじゃん。しかも観光地スポット……って、もしかして、今から来れるの?
 うん、よしざーも会いたいから歓迎するよ。待ってて、今すぐ一階に下りてロビーで待ってるからさ。
 ……うん、ここからの夜景は綺麗だからぜひ梨華ちゃんと見たいと思っていたんだよね……
 シャンパンもケーキもあるよ、ささやかだけれど一緒にクリスマスを過ごそうよ。
 ……うん、よしざーも会いたいよ。
 ……じゃあ一度切るね。場所が分からなかったら遠慮なく電話してよ。……待ってるからさ、じゃあね」

通話の終わったスマホをポケットに押し込み、吉澤さんは足取り軽く、部屋から出て行った……。


Merry X’mas !!





ifマンションのクリスマス  終わり。



〔後書き〕
お粗末様でした。
一応、これが私の最後の娘。小説のつもりです。
まあ、そう言いましても、あかねちんの出産とか、まーどぅーの入園式とかを書きたい気持ちもあるわけでして。
ですが、来年から予想される仕事の激務とプライベートでのオリジナル小説を優先させたいですので、これで引退する気持ちは変わりません。
エロッキスレには本当に沢山お世話になって、沢山の思い出があります。
別スレの作者様から『エロの伝道師』という二つ名をもらったり。←すごくどうでもいい。
まあ私がいなくなっても、第2・第3のifマンション作家さんが現れるのではないかと楽天的に考えております。
敢えて「さよなら」とは言いません。
もしかしたら、またひょっこり復帰するかもしれませんし。
と・いうわけで、敢えて使う言葉は。
「じゃあ、またね!」


ifマンション作者
 兼
鈴木君作者
 兼
石川県民  拝。
 

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