「ああ…食った食った。ごちそうさん。」
「お粗末さまでした。」

夕食が終わった後、いつもの通り、石田クンは洗い物、小田さんはテーブル周りの片付けをしていた。

「おい!洗い物は終わった…ん?」

石田クンが台所から部屋に戻ってこようとしたところで、何かを感じたのか動きが止まる。
その直後、小田ちゃんも地面が揺れるのを感じた。かなり大きい!

「きゃっ!」
「おい、大丈夫か!」

石田クンは地震でふらつく小田ちゃんをとっさに抱きしめて、己の体で彼女の身体をかばった。


かなり長い時間揺れていたように感じたが、ようやく地震が収まったのだろう。小田ちゃんも落ち着いてきた。

「ああ、驚いた。かなり大きかったね。ん?ありがとう。もう大丈夫だから離れていいよ。」

そう言われても石田クンはしっかり小田ちゃんを抱きしめるというか、
小田ちゃんの腕にあざができるんじゃないかぐらいの渾身の力でつかんだまま離さない。

「もういいから。大丈夫だから。離して!痛い!…どうして離してくれないの!
 大した地震じゃなかったじゃない。そんなに地震が怖いの?」

小田ちゃんの訴えに、しばらく無言でいた石田クンは小田ちゃんの腕から手をずらし、服をがっちりつかむと、
ようやくつぶやくような小さな声を発する。

「ごめん、でもあの日以来ダメなんだ。あの3.11…ほうぼうの体で高台まで逃げることができたけど、
 そこで見たものは…木々のほかに、流れる家、流れている車。そして、そして…。
 そんな状況が目に焼き付いて、今でも…夜中に飛び起きてしまうこともあって、どうしても忘れられないんだ。
 男のくせに情けないだろ。馬鹿にしてくれてもかまわない…笑っていいよ…」

口にするのも怖いのだろう、小田ちゃんの服を握りしめた手がさらに力を込めているのか、すごく震えている。

「一人じゃないから!みんながいるから!田中さんのところだって!生田さんのところだって!
 鞘師さんのところだって!尾形ちゃんや野中ちゃんだって!かえでぃーや横やんだって!
 飯窪さんやちいちゃんだって!…私だっているから!!悲しいこと言わないで!!!」

そう叫んだ小田ちゃんはほとんど押し倒す勢いで唇を奪う。
始めは何が何だかわからなかった石田クンも思いが伝わったのか、ふっと体の力を抜き、
服が破かんばかりの力で握りしめていた手も外して、小田ちゃんの背中に回した。

「んっ…」

小田ちゃんも背中に石田クンの優しい手や腕を感じて、息が少し漏れる。


しばらくそのままでいた二人だったが、小田ちゃんがそっと上半身を起こし、髪を片耳にかける。

「い、い…あ、亜佑美。もし、落ち着けるためならさ…私のこと、好きにしていいよ。
 あ、亜佑美なら大切な人だからさ、初めてでもいいかな…」

そう言って小田ちゃんは恥ずかしいのかちょっと視線を外した。
始めは驚きの連続でぽかんと口を開けていた石田クンだったが、ふっと優しい表情になると、両手で小田ちゃんの肩を軽くつかんだまま起き上がった。
その時に小田ちゃんの肩が緊張のためか小さく震えているのがわかった。

「あのな…そんな自分勝手な理由でそんなことはできないよ…僕だってお、さ…さくらは大事な人となるんだろうから…」

まったく予想外の言葉を聞いた小田ちゃんはえ?という表情で石田クンを見つめる。
石田クンもその視線を受け止めていた。
それから今度は石田クンのほうから目を閉じて小田ちゃんに顔を近づけていく。
小田ちゃんもそれに応じてそっと目を閉じた。


あともう少しで唇がふれるというところでいきなり二人の携帯が同時に鳴り響く。LINEの着信音だ。

「誰だ!こんなKYは奴は…あ、はるなん。」
「こちらも飯窪さんです。」

どうやら先ほどの大きい地震で仲間内のことを心配した飯窪がifマンション仲間に確認の連絡を送ってきたようだ。

「確かに大きな地震でしたからね。」
「こんなのあとあと!」

そう言って、自分のと小田の携帯も奪い取って、少し離れたところに置き、改めて向かい合ったが、
今までのことをすべての行動を改めて自覚してしまった二人は今となって思いっきり恥ずかしくなってしまい、
顔はもちろん、全身真っ赤になって、お互いの顔も見ることができないまま下を向いてしまう。

LINEにレスをしなかったため、生田クンの怪力で玄関ドアを破壊し、室内に心配した仲間たちが乗り込んで来るまで、ずっとそのままでいました。





大切な人 終わり



あとがき(笑)
だーさくをちょっとだけ、いや…かなり進めてみました。

本当はこの系列のネタを使うのは邪道だとわかっているし、実際自分も3、11ではなく、10.23に出先で震源地直下場所にて震度7を経験している者なので、
どうしようか悩んだのですが、あの二人を強引にくっつけるには、薬ネタかこれぐらいしか思いつかなくて。
(薬ネタに躊躇してしまう理由はいずれ別に書きます。)

もともとのネタは、3・11に地元宮城で仲間との(新旧ハロプロメンバーなど)ボランティアに行こうとした時、
小田ちゃんが飯窪さんたちにのせられて行き用の弁当を持参で強引に同行したときに、高台でその当時の話をして、
小田ちゃんに抱きしめられるという話だったのですが、すごく長くなりそうだったし、
今、ifだーさく同棲で旬だし(笑)、意外にすんなり話ができましたので、あげてみました。
(二人っきりで混浴の露天風呂ネタもあったんですけどね)

時間の流れ的には、石田クンが小学or中学生の時に地震に遭遇。
上京し、高校or大学で小田ちゃんと出会い、付き合う。
別れた後卒業し、それぞれ就職。
たまたま同じ地域担当し、再会、会うたびに喧嘩するけど、実はどちらもずっと気になっている。(笑)
てな感じですかね。

強制で10階に仮引っ越しさせようとした者ですが、その理由は…上は田中家、となりは加賀・横山コンビ(>184で書き込むときに隣を間違えてしまった)と、どちらもなかなか盛んだし(笑)、影響されるか?と思ったので…

公言している「加賀・横山(エロあり)」や「尾形・野中(エロなし・シリアス)」より先になってしまって申し訳ない。

漢方者ならぬ薬者
 


(81-991)石田クンとさくらちゃんの満天の星と桜満開 前編
 

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