(81-103)ifマンション 小悪魔聖ちゃんと小田と誰か…



小田ちゃんの部屋から帰ってきた聖さんは、あの二人がその後どうなったか、ドキドキワクワクしながら連絡を待っていた。
だーさく見守り隊のはるなんから絶対にその後の連絡が来ることはわかりきっていたことだからだ。

先程の黒いセクシーな服装のまま、椅子に座ると、自分の携帯を机に置いた。

今日は遥クンはえりぽんと一緒に修行の旅で海外に、朱音ちゃんは真莉愛ちゃんの所に
お泊まり…つまり鞘師家に預かってもらっているため、今は聖さん一人だったのだ。


『ミギャァ〜!!!』

突然外から聞こえてきた猫の悲鳴…否、猫旦那こと田中クンの叫び声がマンションに響き渡る。
田中クンはある家の前にたどり着くと、近所迷惑も毛頭も考えず、ドアをガンガン叩き出した。

「おい!生田!いるんじゃろ!さっさと開けんかい!」
「えりぽんはまだ海外ですよ。」

あまりの田中クンの勢いに何事かと思った聖さんはとりあえず、田中くんを玄関に招き入れた。

「田中さん、一体どうしたのですか?」
「生田が送ってきたあの服!さゆが実物を見た瞬間、拒否したと!」
「あれ?さゆみさんはあの服、納得したとえりぽんから聞いていますけど。」
「あんな恥ずかしい服、一体どこで着るのよ!」

そう言いながら、さゆみさんが玄関に入ってきた。

「聖、今着ていますけど…」

『え!?』という表情で、改めて田中夫妻はしげしげと聖さんを見つめた。
さすがに聖さんも恥ずかしくなり、二人に部屋に上がってもらうことにした。

「流石にフクちゃんは胸があるからそういった服は似合うけどね…」
「いえいえ、さゆみさんはパーフェクトボディーの持ち主なので、とても似合うと思いますよ。」
「れーなもそう思うっちゃ!」

さゆみさんのネガティブな言葉に聖さんは即座に否定し、ほめたたえると、れいなクンはうんうんと大きくうなづきながら同意していた。

「それに思っていたよりも生地はかなりいいものですし、縫製も丁寧なので、ノンブランドですが、すごくいい服だと思っています。」
「フクちゃんがそういうのなら…」
「フクちゃんのそういった目は信用できると思うとよ。以外に生田もいいセンスしとるたい。」

聖さんに言われて、さゆみさんも徐々に抵抗感を無くし、黒い服を着てみようかという気になってきた。

「でも…本当にどこで着ればいいのよ。」
「決まっとると!家で着ればたっぷり堪能できるとたい!」
「それはれいなだけでしょ!どーせ着てもすぐ脱がせてしまうくせに!」
「ウフッ…ごちそうさまです。」

田中クンとさゆみさんはいつものように言い争っているのを聖さんは笑顔で見守っていたが、頭の中にある考えが思い浮かんだ。

「ならば、ホテルの一室をお借りして、パーティーでもしませんか?夜のパーティーなら、充分にドレスとして使えます。
 この黒いドレスがない方は、ホテルの貸衣装のドレスを借りれば問題ありませんわ。」
「そこまでしなくても…」
「と…なると、男性陣も最低限、タキシードは必要になりますが、もしくは…燕尾服のレベルですね。」
「「え…燕尾服って何?」」
「さゆみさんが恥ずかしければ、女性陣だけ…という方法もありますけど、それですと、田中さんが悲しみますよね。」
「流石はフクちゃん!れーなの気持ちしっかりわかっているっちゃ!」
「あのね…」
「しゃゆの黒いセクシーなドレス、ハァハァ…」
「さゆみさんのセクシーなドレス姿、ハァハァハァ…」
「なんでれーなとフクちゃんの意見がそこで合うのよ。ちょっとおかしいんじゃないの?」

さゆみさんの黒いドレス姿を想像して思わず興奮してしまい、妄想の世界でハァハァしている二人に初めは呆れかえっていたが、
流石に身の危険も感じ始め、背筋がゾッとしてきたので、何とか話題をそらそうとした。

「そう言えば、元々のドレスは3着あったわけでしょ。さゆみとフクちゃんと…後の一着は何処に?香音ちゃんは断固拒否したはずよね。」
「言われてみれば、生田もどうしたかれなも聞いておらんけん、わからんと…」

さゆみさんの問いかけに田中クンも生田クンから何も聞いていなかったので、答えることができなかった。
そんな二人に聖さんは微笑みながら答えた。

「もう一着の黒いドレスは、さくらちゃんにプレゼントしました。」
「「小田に??」」
「ええ…それで、小田ちゃんの身体にちょっと火を付けてきたのですけどね…石田クンとの進展を進める意味で…」

そう言いながら聖さんは、机の上で着信音が鳴り響くスマホを手にして、送られてきたLINEを目にしたとたん、『あらあら…』と、呟いた。

「結局…石田クンは何事もなく、小田ちゃんの部屋を追い出されたそうです。残念…聖、物足りなかったんだけどな。
 キスも石田クンに譲るつもりだったからしてないし…小田ちゃんの反応が良かっただけに、すっごく悔やまれる。
 やっぱり躊躇しないで、最初から『アレ』を使えば良かった。」

聖さんはそう言いながら、視線を冷蔵庫に向けた。
田中クンとさゆみさんはその雰囲気に背筋がゾッとしたが、恐る恐る聞いて見た。

「「『アレ』…って、何?」」
「この前、みんなで温泉行きましたよね、シゲ山の…あそこの温泉と山ブドウのジュースが本数限定ですけど通販していまして、数本がですが手に入れました。
 こんなことなら始めから小田ちゃんに飲ませれば良かったかな…って。山ぶどうジュースも炭酸で割ればわからないだろうし、
 石田クンが来た時はおそらく緊張で喉がカラカラだろうから、それに乗じて、温泉水を渡せば、一気に飲み干したでしょうね。
 そうすれば…その後どうなるかは想像は出来ますわ。」

聖さんの言葉に田中クンもさゆみさんもあまりの過激な言葉にこの場からそろそろ退散しようかと、お互いの目を見合わせて、小さくうなずき合った。

「そろそろれーな達はおいとますることにするけん。」
「フクちゃん、長々とお邪魔してごめんなさいね。」
「いいえ、こちらこそ楽しかったです。そうだ…先程のお話ですが、どなたかのお部屋をお借りして…いえ、ここを提供しても、聖は構いません。
 そうすれば男性陣は略装で構いませんし、さゆみさん、聖、さくらちゃんはそのまま…野中ちゃんはピアニストてすし、アメリカやヨーロッパに何度も行っているので、おそらくドレスは何着かあるでしょうから、
 借りられそうな方はそちらから…それでも足りない場合、レンタルしましょう。食べ物は、各一軒毎に1〜2品目と、宅配をたのめばかなり豪華になりますわ!」

聖さんの暴走についについていけなくなった二人は、挨拶もそこそこに、生田家を退散した。

「さゆみさん!絶対にしましょうね!聖との約束ですよ!」

あわてて出ていく二人に対して、その背中に聖さんが大声で叫んでいた。




「「ハァハァ…」」

生田家から逃げるように、自分達の家に戻って来た二人は、しばらく玄関で息を切らしていると、優樹ちゃんが出迎える。

「ちち、はは、お帰りなさい。」
「ただいま。急に飛び出してごめん。」
「優樹、さゆの綺麗なドレス姿、見とうない?」
「ははのキレイな格好、まさ見たい!」

れいなクンは愛娘を抱き上げると、チラチラさゆみさんを見ながら、娘を味方につけた。
さゆみさんは『仕方がない…』という表情で奥の部屋に姿を消した。

数十分後、さゆみさんは例の黒いドレスを身に纏って父子の前にあらわれた。

「ははキレイ…」
「さゆ、凄く似合っていると!」

さゆみさんが黒いドレスに着替えてくることを予測していた二人はそう呟くと、同時にスマホのカメラを連写する。
すると、さゆみさんも最初は恥ずかしがっていたが、れいなクンとまーちゃんに乗せられて、段々とさまざまなポーズを決めていた。




まーちゃんが写真を撮るのにちょっと飽きてきたところで、さゆみさんも疲れてきたのか、床に座ってポーズをとっていたのもやめて、普通に立ち上がった。
それを見ていたれいなくんはスマホを机の上に置く。

「さゆ…お疲れ様。すっごく疲れたやろ?これからベットで休むといいっちゃ。」

そう言いながら、れいなクンはさゆみさんをお姫様抱っこする。
しかし、流石はさゆみさん。れいなクンが考えていることは解りきっていた。

「どーせ、これから寝かさないつもりでしよ。考えていることはバレバレよ。」
「何だ…わかっていれば話も早いっちゃ。なら、さっさと始めようと。そのドレス姿を見てからもう我慢出来んと。」

れいなクンはそのままベッドまでさゆみさんを運ぶと、あっという間に脱がしてしまい、愛の営みをはじめてしまったとさ。



オマケ(笑)

数日後、小田ちゃんは仕事帰りで疲れきった表情で家の階までたどり着いた所、ばったり仕事帰りの石田クンにばったり出くわしてしまった。

「よ、よぉ…お疲れ。」
「ふん!」

小田ちゃんは数日前のこともあり、石田クンを無視して家に入ろうとした時、いきなりご近所の飯窪家から二人の若い男性が飛び出してきた。

「ああ…やっと石田さんが帰ってきた。」
「小田さん、すいません。田中さんの指示なので、石田さんをお借りします。」

そう言いながら、若い二人組…尾形クンと加賀クンは石田クンを挟むと、お互いの目を見合わせ、石田クンの腕を抱えあげて、足が宙ぶらりん状態で運んでいく。

「おい!何で小田に許可がいるんだよ!離せ離せ!」
「石田さん、色っぽい小田さんに指一本触れなかった…って、ほんまでっか?凄い理性でんな。春水なら即座に『いただきます!』やけどな。」
「僕が棒立ちしていようものなら、ヨコの方から飛びかかってきて、速攻押し倒されます。」
「普通なら『据え膳食らわぬのは男の甲斐性なし』やけど…まさか、石田さんって…童」

その一言で今まで大暴れしていた石田クンの動きがパタッと止まる。
それを肯定と読んだ尾形クンと加賀クンは顔を見合わせて、悪い笑顔を浮かべた。

「ほな、7階のサウナを押さえてあるさかい。男同士でじっくりと女性に対してのレクチャーしようじゃないかい。」
「それ、俺も聞きたいです!ヨコとの行為がワンパターンにならないようにしないと…」
「嫌だあ〜離せ離せ!おい!小田ぁ!見てないで助けろ!」

喚きながら若手二人に抱えられて、石田クンが連れていかれる様を小田ちゃんはただ呆然と見送ることしか出来なかった。

「あいつのことで、何で私の許可がいるのよ!それにしても、なんちゅう会話をしているわけ?!」

「私たちも小田氏に色々と聞きたいことがあるんだけど…正直に答えてくれるかな?」

急に背後から声がしたので、慌てて振り向くと、そこには…にたァ〜と悪い笑顔の飯窪さんが両腕を組み、仁王立ちをしている。
その威圧感にすっかり怯えた小田ちゃんは慌てて家に逃げ込もうとしたが、いつの間にかあらわれた野中氏と横山ちゃんに遮られたので、
仕方なく壁を背にしてジリジリとこの場から何とか逃げようとしていた。

すると、小田ちゃんの死角から腕がニュッと出て来て、お腹に手がガッチリと組まれて、そのまま持ち上げられた。
慌てて足をバタバタしたが、宙ぶらりんになっており、逃げ出すことができない。

「もう観念して、諦めた方がいいんだろうね。」
「香音さん!ナイスです!」

捕まえてくれた香音さんにお礼を言いながら、飯窪さんは小田ちゃんの側までニタニタしながら近づいてくる。

「私だって小田氏のそういったことにほとんど興味なんか無いんだけど、さゆみさんと吉澤さんの御命令なので仕方なく…」
「嘘つけぇ!興味津々の癖にぃ!」
「あら?バレました?ならば7階の大浴場を予約してありますし、吉澤さんとさゆみさんがお待ちなので、そこでじっくりと聞くことにしましょうね!」
「聖ちゃんは少し遅くなるって言っていたから、こないうちに全て白状した方がさくらちゃんの身のためなんだろうね。」
「嫌だぁ!離してぇ〜離せぇ!」

その叫びも空しく、香音さんはさくらちゃんを抱えたまま、先頭を行く飯窪さんの後ろから歩いていく。
その後にはワクワクしながらついていく野中ちゃんと横山ちゃんがいた。

「「Help me!!」」

ifマンション内に二人の悲しみの共鳴が響き渡った。





if_猫旦那とその妻と小悪魔聖さん〜オマケ付き 終



あとがき

『ifマンション小悪魔聖ちゃんと小田と誰か…』の続きでした。
田中家のドレス騒動のリクエストがありましたので、それに答えられたか不安ですが書いてみました。
でも、田中家の愛の営みは自分にとってはなかなか難しいので、せめてさゆの最新黒いドレスの写真を提供していただいたことから、そのシーンを再現してみました。
まぁ…聖さんの暴走は今に始まったことではないと思うけど、ますます過激な方向へ進んでいる気がする。w
まさかのれーなクンと聖さんの意見が一致するとは…w

そして、ついでと言うわけではないですが、まぁ…だーさくはみんなのオモチャ扱いにとw
これが後々…どこかに繋がっていけばいいなぁ…なんて思っています。
読んで頂きありがとうございました。

by薬者
 

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