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＜動物コメント＞
◎自然映像作家　　栗山 定

ピンと立った大きな耳。その先に伸びる黒い毛束が凛とした意志の強さをイメージさせる。カラカルは、インドからアフリカ南部まで主に乾燥したサバンナに暮らす中型の野生ネコだ。オスの頭胴長は80cmほど。美しい赤茶色のしなやかな姿は、一度見たら忘れられない。カラカルという独特の名前は、1761年にかの有名なフランスの博物学者ビュフォンが『博物誌』の中で言及し、トルコ語の『黒い耳』という意味を持つ。
高貴な雰囲気を漂わせているが、カラカルはれっきとした肉食動物で、凄腕ハンターでもある。獲物はダイカーやグリスポックといった小型のアンテロープ、ハイラックス、ネズミ類、鳥類と広範囲に及ぶ。スレンダーな体躯の割に特に後ろ足の筋肉がよく発達していて、中小型の野生ネコの中では最も足が速いと言われている。また、ジャンプ力もかなりのもの。忍者のように静かに獲物に忍び寄り、射程距離の５ｍまで近づくと猛然とダッシュ。飛び立って逃げようとする鳥を３ｍ以上もの垂直跳びで捕まえることもできる。その狩りの腕前は、かつてアジアで狩猟用に飼われていたこともあったほどだ。
活動するのは主に夜間と早朝・夕暮れの薄暮時。昼間活動していたとしても、草むらや背景の色に溶け込んで、見つけるのは至難の業であろう。保護された個体をアフリカ南部で見たことがあるが、奥で草が揺れたと思ったら、いつの間にか目の前を歩いていた。忍者のようなネコである。
最も近縁な種はアフリカゴールデンキャット。こちらは主に森に棲息し、ほぼ棲み分けている。