STSとしてのインテリジェントデザイン>Darwin-to-Hitler, 誤謬・詭弁
Reductio ad Hitlerumとは「アドルフ・ヒトラー(あるいはナチ、あるいはスターリン)がXを支持した。従って、Xは悪である。」という形式の詭弁である。「Xという悪を支持した、あるいはXという悪を行った」から「ヒトラーは悪である」というのは論理としては正しい。しかし、「ヒトラーがXを支持した、あるいはXを行った」から「Xは悪である」というのは詭弁である。しかし、この"Reductio ad Hitlerum"は詭弁だが、これが詭弁であるという理由で、「Xが悪ではない」あるいは「Xの支持者が悪でない」ことも証明できない。
University of ChicagoのLeo Strauss教授が1950年に自著"Natural Right and History"の第2章で述べたのが初出である。
この"Reductio ad Hitlerum"詭弁の派生法則が「ネットの議論が長いほど、ナチやヒトラーとの比較を持ち出す確率が高くなるという"Godwin's Law"である。
この"Reductio ad Hitlerum"詭弁は創造論者やインテリジェントデザイン支持者もよく使うもので、「CA006 1 ヒトラーは自らの見方の基礎をダーウィニズムに置いた」などの例がある。
州議会レベルでのReductio ad Hitlerumの例として知られるのが2001年のルイジアナ州下院決議案である。
焚書でもやりそうな勢いの、"Reductio ad Hitlerum"詭弁の見事な例である。この決議案は2001年5月1日に下院教育委員会を9:5で通過し、5月8日に州下院で65:28でダーウィンとダーウィニズムに関する記述を削除し、反対なし州下院を通過した[ ncse 2001 ]。
自由思考&自由市場を掲げる雑誌reason onlineなどは、インテリジェントデザイン宣伝映画Expelledがダーウィンをナチなどを同等扱いしているというレビュー記事を掲載した:
このような批判レビューが多数あったことについて、インテリジェントデザインの本山たるDiscovery InstituteのRobert Crowtherは、ホロコーストの原因としてダーウィンを非難したのではなく、ダーウィニズムがヒトラーに影響を及ぼしたと主張したのだと反論している。
この反応は、まさに"Reductio ad Hitlerum"詭弁となっている。しかも、これでは、インテリジェントデザイン宣伝映画Expelledは、インテリジェントデザインでも進化論でもなく、Hitlerについての映画だと言っているようなもの。
このようなインテリジェントデザイン宣伝映画"Expelled"の中心テーマに対する批判に対して、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiは次のように記している。
しかし、このような言説に否定的なインテリジェントデザイン支持者もいる。William Dembskiと仲間たちのブログUncommon DescentのDaveScotは次のように述べる:
引用だけでは足りずに、ヒトラーの「我が闘争」に加筆した創造論者もいる。
この例はJohn Lynchが発見したもので、実際にヒトラーが自然選択に言及したのは、創造論者Christine Daoが参照したと思われる英訳版だと:
創造論者たちは、"Reductio ad Hitlerum"を好きすぎるようだ。
Reductio ad Hitlerumとは「アドルフ・ヒトラー(あるいはナチ、あるいはスターリン)がXを支持した。従って、Xは悪である。」という形式の詭弁である。「Xという悪を支持した、あるいはXという悪を行った」から「ヒトラーは悪である」というのは論理としては正しい。しかし、「ヒトラーがXを支持した、あるいはXを行った」から「Xは悪である」というのは詭弁である。しかし、この"Reductio ad Hitlerum"は詭弁だが、これが詭弁であるという理由で、「Xが悪ではない」あるいは「Xの支持者が悪でない」ことも証明できない。
University of ChicagoのLeo Strauss教授が1950年に自著"Natural Right and History"の第2章で述べたのが初出である。
Reductio ad Hitlerum, also argumentum ad Hitlerum, (Latin for "reduction to" and "argument to" and dog Latin for "Hitler" respectively) is a term coined by conservative philosopher Leo Strauss in 1951.[1] According to Strauss, the Reductio ad Hitlerum is an informal fallacy that consists of trying to refute an opponent's view by comparing it to a view that would be held by Adolf Hitler or the Nazi Party.
"Reductio ad Hitlerum"あるいは"argumentum ad Hitlerum"は、保守的哲学者Leo Straussが[ 1951 ]年につくった造語である。Straussによれば、"Reductio ad Hitlerum"は、会話上の詭弁で、論敵の見方をアドルフ・ヒトラーあるいはナチと比較することで、論破しようとするものである。
[ wikipedia:Reductio ad Hitlerum ]
この"Reductio ad Hitlerum"詭弁の派生法則が「ネットの議論が長いほど、ナチやヒトラーとの比較を持ち出す確率が高くなるという"Godwin's Law"である。
この"Reductio ad Hitlerum"詭弁は創造論者やインテリジェントデザイン支持者もよく使うもので、「CA006 1 ヒトラーは自らの見方の基礎をダーウィニズムに置いた」などの例がある。
州議会レベルでのReductio ad Hitlerumの例として知られるのが2001年のルイジアナ州下院決議案である。
WHEREAS, the writings of Charles Darwin, the father of evolution, promoted the justification of racism, and his books On the Origin of Species by Means of Natural Selection: or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life and The Descent of Man postulate a hierarchy of superior and inferior races; and
進化論の父たるチャールズ・ダーウィンの執筆物は人種差別を正当化を擁護し、彼の本「自然選択または適者生存による種の起源について」と「人間の進化」は優等人種と劣等人種の序列を仮定しており
WHEREAS, Adolf Hitler and others have exploited the racist views of Darwin and those he influenced, such as German zoologist Ernst Haekel, to justify the annihilation of millions of purportedly racially inferior individuals.
アドルフ・ヒトラーたちは幾百万の人種的に劣った人々の絶滅の正当化に、ダーウィンの人種差別主義の視点およびダーウィンの影響を受けたドイツの動物学者エルンスト・ヘッケルを利用した。
THEREFORE, BE IT RESOLVED that the Legislature of Louisiana does hereby deplore all instances and ideologies of racism, does hereby reject the core concepts of Darwinist ideology that certain races and classes of humans are inherently superior to others, and does hereby condemn the extent to which these philosophies have been used to justify and approve racist practices.
従って、ルイジアナ州議会はここに、人種差別主義のすべての事例とイデオロギーを遺憾に思い、特定の人種と階級の人間が他よりも本質的に優れているというダーウィニストのイデオロギーの中心的概念を拒絶し、これらの哲学が人種差別行為を正当化し、承認するのに用いられた点で、ここに非難する。
[ HLS01-2652, Copy ]
焚書でもやりそうな勢いの、"Reductio ad Hitlerum"詭弁の見事な例である。この決議案は2001年5月1日に下院教育委員会を9:5で通過し、5月8日に州下院で65:28でダーウィンとダーウィニズムに関する記述を削除し、反対なし州下院を通過した[ ncse 2001 ]。
自由思考&自由市場を掲げる雑誌reason onlineなどは、インテリジェントデザイン宣伝映画Expelledがダーウィンをナチなどを同等扱いしているというレビュー記事を掲載した:
Stein and the film's producers maintain that belief in evolutionary biology makes societies more likely to succumb to totalitarianism. The flick is replete with grim black-and-white shots of Soviet armies, Nazi thugs, Stalin, Hitler, and concentration camps. The filmmakers portray opposition to teaching ID in universities and public schools as a threat to freedom on a par with Communist and Nazi repression. But ID proponents in the academy are not being dragged off to concentration camps by goose-stepping Darwinist thugs?the worst thing they suffer is the loss of their jobs. That's not fun, but it's not the gas chamber either.
Ben Steinと映画の製作者は、進化生物学に対する信仰が全体主義に屈しそうな社会を作ると主張する。映画は、ソ連軍やナチ凶悪犯やStalinやHitlerと厳しい強制収容所の白黒のショットで満ちている。。映画製作者は、共産党員とナチ抑制と同等の自由に対する脅威として大学と公立学校でIDを教えることへの反対を描写する。しかし、学界のID支持者は、ひざを曲げずに脚を高く上げて歩調をとっているダーウィニストによて強制収容所に連行されることはない。最悪でも失業である。それは面白くはないが、ガス室ではない。
[ Ronald Bailey: "Flunk This Movie! -- Ben Stein's new anti-science movie Expelled is all worldview and no evidence." (2008/04/16) on Reason Online ]
このような批判レビューが多数あったことについて、インテリジェントデザインの本山たるDiscovery InstituteのRobert Crowtherは、ホロコーストの原因としてダーウィンを非難したのではなく、ダーウィニズムがヒトラーに影響を及ぼしたと主張したのだと反論している。
Here then is his[David Klinghoffer] first installment.
Darwin’s theory of evolution is enmeshed in a worldview, Darwinism, that emerges clearly in The Origin of Species and, more so, in The Descent of Man. Hitler gave to Darwinism his own evil twist. Yet Hitler without Darwin’s influence, however indirect, would not have been the same Hitler we know from history. Without Darwin’s legacy to draw on, Hitler would have been compelled to frame his appeal to the German people in greatly altered terms.
ダーウィンの進化論は、種の起源において明確に書かれた、そして"Descent of Man"で書かれた世界観たるダーウィニズムに陥る。Hitlerはダーウィニズムを凶悪にねじまげた。それでも、Hitlerは、ダーウィンの影響なしには、それが間接的なものにせよ、歴史上の我々の知るところのHitlerたりえなかった。ダーウィンの遺産にたよらなければ、ドイツ国民に自らの主張を納得させるために、大きく違った表現をしていただろう。
[ Robert Crowther: Expelled does NOT try to "blame Darwin for the Holocaust” (2008/04/14) on Discovery Institute公式ブログ ]
この反応は、まさに"Reductio ad Hitlerum"詭弁となっている。しかも、これでは、インテリジェントデザイン宣伝映画Expelledは、インテリジェントデザインでも進化論でもなく、Hitlerについての映画だと言っているようなもの。
このようなインテリジェントデザイン宣伝映画"Expelled"の中心テーマに対する批判に対して、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiは次のように記している。
Schloss’s critical review of EXPELLED, however, raised his opposition against ID to a new level and frankly upset me for what I perceived as its disingenuousness (the review appeared with official sanction of the American Scientific Affiliation [ASA] on its server here). By offering so many nuances and qualifications, his review missed the bigger picture that many ID propoents really are getting shafted. I confronted Jeff about this and we had an exchange of emails. As it is, Jeff and I go back and had been friends. He contributed to the MERE CREATION volume (1996) that I edited (his essay was a fine piece on altruism and the difficulties conventional evolutionary theory has in trying to account for it). I even had occasion to visit him in the hospital after he had a surfing accident.
Jeffrey ShlossのExpelledに対する批判的レビューは、彼のインテリジェントデザインに対する敵対度を上げた。その陰険さとして私が感じたものに、私は率直に動揺した。多くのニュアンスと条件を並べ立てた、Jeffery Shlossのレビューは、インテリジェントデザイン支持者たちが掲げる全体像をはずしてしまっている。私はこの点をJeffrey Shlossに問い、メールのやりとりをした。実際、Jeffery Shlossと私は友人にたちもどった。私が編集したMere Creation(1996)にも彼は寄稿している(彼の寄稿は、利他主義や通常の進化論が説明できない難点についての、よい評論だった)。彼がサーフィンの事故に遭った時は、私は病院に彼を見舞った。...
[ William Dembski: "Jeffrey Schloss, and Now Richard Weikart’s Reply to Him" (2008/08/07) on Uncommon Descent ]
しかし、このような言説に否定的なインテリジェントデザイン支持者もいる。William Dembskiと仲間たちのブログUncommon DescentのDaveScotは次のように述べる:
Schloss’ criticisms don’t seem even half as naive and ill-conceived as the idea that ID will gain wider acceptance by arguing that Darwinian theory was a necessary factor in the holocaust.このような意見は、極少数であり、基本的にはReductio ad Hitlerumを使うことを選択しているようである。
Jeffrey Schlossの批判は、ダーウィン理論がHolocaustの不可欠な要素だと論じて、インテリジェントデザインへの支持を広げようという考えの半分も、素朴でも間違った考えでもない。
I used to think the major obstacle to getting ID more widely accepted in the science community was its close association with young earth creationism. But you know, at least young earth creationists use scientific arguments to make their case that the creation account in Genesis is how it really happened. Even when I don’t agree with the arguments at all, which is most of the time, it’s still at least an attempt to keep the focus on science and I can respect that.
私はかつて、インテリジェントデザインが科学界に広く受け入れられるための障害が、"若い地球の創造論"との近すぎる関係だと考えていた。しかし、少なくとも、"若い地球の創造論者"たちは、創世記の創造についての記述は実際にどう起きたかについて実証するために科学的な論を使っていることを、私は知っている。私はそれらの論にまったく同意していないが、それでも、彼らが少なくとも焦点を科学から外さないようにしている。
This Darwin/Nazi stuff is pure politics and exceedingly bad politics at that. It’s turning off those who might otherwise have given us a serious hearing like nothing else I’ve seen. Words fail me in describing how ill-conceived it is to associate this with intelligent design
ダーウィンとナチのネタはまったくの政治ネタであり、異常なまでに悪い政治ネタである。これがなければ、真摯に話を聞いてくれたかもしれない人々が、我々を相手にしなくなっている。こんなものとインテリジェントデザインを結びつけることが、どれだけ間違ったことか、とても書きようがない。
[ 19 DaveScot 08/07/2008 10:31 ]
引用だけでは足りずに、ヒトラーの「我が闘争」に加筆した創造論者もいる。
According to From Darwin to Hitler author Richard Weikart, Hitler saw World War II as a Darwinian struggle for existence, and he justified the practice of eugenics by saying that mankind had "transgressed the law of natural selection" by allowing inferior beings to survive and propagate (Mein Kampf, 1925).
Richard Weikartの"From Darwin to Hitler"によれば、Hitlerは第2次世界大戦をダーウィンな生存競争と見ており、劣等なる者の生存および繁殖を容認することによって人類が「自然選択を逸脱している」と言って、優生学の実行を正当化した(我が闘争 1925)。
[ Christine Dao: "Intelligence Expelled" on ICR ]
この例はJohn Lynchが発見したもので、実際にヒトラーが自然選択に言及したのは、創造論者Christine Daoが参照したと思われる英訳版だと:
By reason of this very fact, however, an organization inspired by a veritable revolutionary idea will attract into the body of its membership only the most active of those believers who have been won for it by its propaganda. It is in this activity on the part of the membership body, guaranteed by the process of natural selection, that we are to seek the prerequisite conditions for the continuation of an active and spirited propaganda and also the victorious struggle for the success of the idea on which the movement is based.のみである。
[ Volume Two - The National Socialist Movement -- Chapter XI: Propaganda and Organization via John Lynch ]
創造論者たちは、"Reductio ad Hitlerum"を好きすぎるようだ。
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