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れいなは家庭科準備室の前でノックするのを躊躇っていた。
自分を奮い立たせて此処に来たは良いものの、結局、なにを言うべきか、答えは見つからなかった。
分からないままでも、とにかく進もうと思った。
だけど、具体的にどうすれば良いかは考えていなかった。
良くも悪くも、短絡的だと思うが、それでもれいなは頭を振って「よしっ」と声に出す。

だが、結局ノックする直前で手を下げる。
第一声、なんて言うのが良いのだろう。「こんにちは」とでも言おうか?
じゃあ次は? ダメっちゃ、続かん……そして数分経ってまたノックしようと試みる。
この行動をもう何回繰り返しただろう。
れいなもイチイチ気合を入れるが、なかなか実行できない。
放課後で他の生徒に見られることは少ないが、それにしてもさすがにこれ以上は不審人物極まりないとれいなも思う。

「……よしっ」

もう何度目かの「よし」を呟き、れいなが手を上げると、右手の方から声が走ってきた。

「なにしてはるんですか、田中さん」

れいながそちらを向くと、思った通りの人物が立っていた。
できれば逢いたくなかったのだが、もう逢ってしまったものは仕方ない。
れいなは手を下げて、光井愛佳に向き直った。

「ちょっと、先生に用事があって」
「……亀井先生、今日の午後から出張ですよ」

愛佳のその言葉にれいなは思わず「は?!」と声を出す。

「明日から研修会ですし、今日は現地でその準備で出張って聞いてませんか?」

れいなは愛佳の言葉を噛み砕く。
研修会?準備?なんの話だろうかと理解しようとするが追いつかない。
そんな話、先生言ってたっけ?とれいなは頭をかく。
そもそも、最近、絵里となにを話しただろうかとれいなは眉を顰めた。
ここ1週間は特に、家庭科の授業にも出席せずにサボっていたせいか、絵里の顔をまともに見ていない。
だからこそ、今日この場所に来たのに……

とにかく、此処に絵里が居ないことが判明した以上、この場に居ても仕方がない。
れいなは愛佳に「ありがとうございます」と頭を下げ、教室へと戻ろうとする。
そのとき、れいなは後ろから追いかけてきた声に立ち止まらざるを得なくなった。

「心配かけるなって、言いましたよね」

愛佳のその言葉に、れいなは振り向く。
真っ直ぐに彼を見つめると、彼も正面かられいなを射抜く。
何処かで見たことのあるようなその視線は、いつだったか、れいなを万引きと誤認した店長に向けたものと似ていた。
思わずドキッとしてしまうような、熱く、そして真っ直ぐで怒りさえも携えたその瞳から、れいなは逃げない。

「僕はそんなに、良い人やないんですよ……」

熱をもったその言葉にれいなは揺れる。愛佳の声はほんのわずかではあるが、震えていた。
放たれた言葉は意味へと急ぐが、れいなはそのしっぽを掴むことが出来ない。
なんの意図があるのか探ろうとするが、愛佳の瞳が捉えているのは、紛れもなくれいなであり、それ以外にはない。
本当に彼の瞳に映っているのは、たぶん、れいなではないのだろうけども。

れいながなにか言おうと一瞬口を開くが、その前に愛佳は一歩踏み出す。
二歩、三歩と進み、れいなと肩を並べたとき、彼はそっと呟いた。

「泣かせるんやったら、亀井先生は僕がもらいます」

れいながその言葉を理解したとき、愛佳は既に一歩踏み出していた。
慌てて右手を伸ばし、彼のグレーのセーターの袖を掴む。
少し伸びそうになるが、いまはそんなことを気にしている場合ではない。

「…なんですか?」
「な、なんですかって……」

愛佳の瞳は揺れていない。だが、先ほどよりも失望感を携えている。

「そのままですよ。デート誘って、告白して、OKもらえれば付き合います」
「ちょ…そんなん…」

分かっている。最初から、彼の気持ちなんか百も承知だった。
それなのに、こんなにも動揺してしまうのはなぜだろう。
心の片隅では、愛佳は絶対に絵里に告白しないと、自信でもあったのだろうか。

愛佳は丁寧にセーターかられいなの手を解き、ひとつ息を吐いて伝える。

「自信ないんですか?」
「は…?」
「僕が告白することで、亀井先生が揺れると?」

愛佳の言葉にれいなは目を見開く。だが、食ってかかるほどの力はなかった。
揺れているのは、絵里ではなく、自分自身だった。
元を辿れば、最初に揺れたのは、絵里が愛佳と食事に行ったのを見たあの夜からだった。
あの夜、不甲斐ない自分に崩れ落ち、自信のないままに、絵里を手放しかけた。
だからこそ、もう、絶対に離さないと決意し、必死にもがいてきたのに。

「…月曜は出勤するそうです」

愛佳の声にれいなはふと我に返った。
顔を上げると、愛佳は窓の外から、遠く、青空を見つめていた。
その瞳には、なにが映っているのか、れいなには判別できない。

「ちゃんと、伝えて下さいね」

それだけ伝えると、愛佳はれいなに背を向けて歩き出した。
なにかを言うべきだったのかもしれないが、結局れいなはなにも言えず、その背中を見つめていた。
廊下の角を曲がったとき、れいなは愛佳に深く頭を下げた。あの人は、どうしようもなく大人だと、目頭が熱くなった。
愛佳がその瞬間、「……すみません」と呟いたことを、れいなは、知らない。




絵里は研修会場の近くのホテルに宿泊していた。
最終的に準備を終えたのは23時過ぎであり、絵里は慌ててシャワーを浴びて、寝る準備を始めた。
髪を乾かし終え、「はあ」とひとつ息を吐くと、ベッドの上の携帯電話がチカチカと光っていることに気付く。
絵里は勢い良く立ち上がりベッドへと飛び込むと、受信相手を確認した。
しかし、明日の研修会の最終確認メールだと分かると、絵里は深くため息をつき、そのままベッドに寝転がる。
ホテルの白い天井が自分に迫ってくるようで、妙な圧迫感を覚える。

「ばかぁ……」

どうせメールが来ないことは分かっていたが、それでも絵里は期待していた。
なにかしらのリアクションを、彼女がしてくれることを。

なんとなくネガティブになりそうなところで絵里は勢いをつけて起き上がり、部屋の電気を消し始めた。
明日は絶対に遅刻できないと、モーニングコールをセットし、携帯電話でアラームもかける。

「よーし。起きる!」

絵里は自分にそう言い聞かせ、ベッド脇の電気を消し、潜り込んだ。
冷たいシーツに一瞬だけ体が冷えるが、名前の通り、亀のように丸くなっていると、少しずつ暖かくなる。
ふっと目を閉じると、昨日のことが思い起こされた。

昨日の放課後、絵里は悩んだ末にれいなと話すことにした。
彼女が授業を休んでいる理由に、身に覚えがありますか?と聞かれれば即座には答えられないけれども、
身に覚えがありませんとまでは言えない。
自分が研修の準備で忙しいことを言い訳に、その理由を聞くことから逃げていることだって分かっている。
だけど、もう、逃げることはしない。
れいなはいつも真っ直ぐに、絵里に応えてくれるのだから。

絵里は作業の手を止めて立ち上がった。
隣に座っている愛佳が優しく微笑んだあと、軽く手を上げたので、絵里もそれに応えたあと、教室へと向かった。

別に、会ってなにを話そうとも決めていたわけではない。
だけど、このままで良いことはない。なにも分からなくても、とにかく飛び込もうと、絵里は歩く。
放課後の校舎は静まり返っている。生徒たちは部活へ向かったり、すぐに帰宅したりして、校舎内に人は少なかった。
絵里のクラスのある校舎も例外ではなく、此処に居るのは自分だけのような気がする。
もう帰ってしまったのだろうかと考えているときだった。一瞬だけ、その声が聞こえた。

それは聞きたかった人の、聞きたくなかった声だった。

絵里の心臓が高鳴る。
ぎゅうと締め付けられ、足が震える。
このままこの場にいて良いのか、逃げ出すべきだったのか、分からなくなる。

「はぁっ…あっ、さゆ…さゆ……!」

聞きたくなかった、そんな声―――

絵里は足音を立てないように来た道を戻り、廊下の角を曲がったところで一度息を整える。
震えていることに気付いたのはそのときだった。
れいなとさゆみの関係を、絵里だって知らないわけではなかった。
いつからか、明確な時期を指すことはできないが、あのふたりは絵里に隠れて何らかの関係を持っていた。
別にそれを責める気は絵里にはない。いままでだって、なんども絵里とれいなとさゆみは3人で体を重ねてきた。

それなのに、こんなにも胸が締め付けられるのは、自分でも気付かないほどに、れいなのことを愛していたからだと思う。
彼女の笑顔が、彼女の瞳が、彼女の仕草が、れいなをれいなたらしめるすべてが好きだったから。

絵里は息を大きく吸って、天を仰ぐ。分かっていたことではあるが、もう逃げることもできない。
自分を奮い立たせるように息を吐き、絵里は再び教室へと向かった。
室内を覗くと、机に伏して眠っているれいなの頭をさゆみが優しく撫でていた。
その姿を見れば、さゆみがどれほどの想いをれいなに抱いているかなどすぐに分かる。

絵里は締め付けられる胸の痛みを堪えながら、「さゆ……」と呼んだ。
その声にさゆみが振り返り、ふたりは目が合う。さゆみの瞳は一瞬揺れるが、逸らそうとはしない。
絵里はなにか言おうと口を開くが、なんて言うべきか答えを探しているうちになにも言えなくなる。
さゆみもそんな絵里の気配を感じているのか、なにも言わずに絵里に近づく。
ふたりの距離がほぼゼロになったとき、さゆみが口を開いた。

「さゆみは、れいなが好き」

さゆみの口から聞かされる正式な告白。
それは宣戦布告なのだろうかと思うが、様子が変だと気づいたのは、さゆみの肩が震えていたからだ。
絵里が「さゆ…?」と話しかけると、さゆみは顔を上げる。

「好きなの……れいなが。どうしようもないくらいに…」

さゆみは、泣いていた。
その黒くて大きな瞳に涙を溜め、絵里に訴える。自分の想いを、どうにもならない、この感情を。

「さゆ…」
「ごめんなさい…先生、ごめんなさい……」

そうしてさゆみは絵里の腰に腕を回し、泣き始めた。
絵里はそっと、さゆみの背中に手を回し、震える彼女を優しくさすった。
謝る必要なんてないのに。だれかが悪いわけでもないのに。それでもさゆみの涙は止まらない。
真っ直ぐに自分の感情を貫くことで、だれかが哀しむなんて思ってもみなかった。
だけど、それは当たり前といえば当たり前のことであった。
だれかのシアワセはだれかの涙があって成り立っているのだと、絵里は気付く。
だからこそ、どうして良いか、分からない―――

絵里はベッドの中から手を伸ばし、携帯電話を見る。相変わらず新着メッセージはなかった。
「はあ」とため息をひとつ吐き、寝返りを打って天井を見上げる。ギシッと軋むベッドの音に絵里はドキッとする。
目を閉じれば、その瞼の裏にはいつも、彼女の笑顔が浮かんでいた。その彼女の笑顔が、段々と、遠くなっていく気がした。
絵里は右手の人差し指でそっと唇をなぞったあと、を天井にかざす。
この手を、ぎゅっと握りしめてくれたれいなのことを思い出す。
絵里はそっと目を閉じ、右手を自分のシャツの中に入れる。下着を身につけていない肌を右手は滑っていき、胸へと到達する。

「んっ……」

優しく自分の胸を揉むと、甘い声が漏れる。
自分でするのなんていつ以来だろうとボンヤリ思うが、もう手は止められない。
絵里が胸を揉むと、その中心の突起が徐々に硬くなっていることに気付く。
そっと指で触ってみると、体中に電気が走ったような快感に震える。絵里は指の腹で突起を撫でた。

「はぁっ!あっ……」

思わず体を反らすと、ベッドが軋んだ。
薄暗いホテルの室内に、絵里の甘い声が響く。
自分で刺激を与えながら、絵里は再び、昨日の出来事を思い出す。



絵里は家庭科準備室でひとり天井を見上げた。
まだ書類作成は途中だが、もうこれ以上、職員室で作業を続けられる力はなかった。

どうして良いのかが分からない。
れいなは勿論、さゆみのことも大事だった。
ふたりとも大切な存在だから、選ぶことなんてできない。
でも、このままれいなと付き合っていくことで、さゆみが苦しむのなら…と絵里は頭を悩ませる。


―せんせぇ…れなから、離れんで


瞬間、れいなの言葉が頭をよぎった。
それは、今日のように、れいなと付き合っていて良いのかと悩んだ夜に、れいなが絵里に渡した言葉だった。
迷いながらも、一緒に歩いていこうと言ってくれたれいなの笑顔が浮かぶ。
もう彼女のその笑顔を、消したくは、なかった。

「れーな……」

そのとき、準備室の扉がノックされた。
絵里はその音を認めるとすぐに立ち上がり、「はい」と返事をした。
まさかと思い、期待に胸を膨らませ扉を開けると、そこには申し訳なさそうな笑顔を携えた彼がいた。

「すみません。あなたの想い人じゃなくて…」

愛佳の言葉に絵里は寂しそうに笑って首を振った。
「珈琲で良いですか?」と、絵里は愛佳に背を向けて準備を始める。
愛佳は後ろ手に扉を閉め、「お構いなく」と言い、絵里の背中を見つめる。
絵里は黙ってマグカップに珈琲粉を入れるが、その手が途中で止まる。
愛佳はその手が震えていることに気付き、そっと近付いた。

「どうして…」

囁くような声で絵里は言った。

「どうして、光井先生なんでしょうね…」

絵里の言葉に愛佳はドキッとする。
その憂いだ瞳の先に、愛佳は映っていない。そこにいるのは、紛れもなくれいなだった。
それが分かっているのに、愛佳はそこから動けない。
絵里の想い人は間違いなくれいなで、れいなもまた、絵里を真っ直ぐに想っていることは分かっている。
だが、いま、彼女から離れてはいけないと、愛佳は黙って絵里を見つめた。

「っ、ごめんなさい…」

絵里は自分の言葉にハッとし、カップをテーブルに置くと、一度その場から離れようとする。
だが、それは叶わなかった。
愛佳はほぼ無意識のうちに右腕を伸ばし、絵里の手首を掴む。

「亀井先生……」

突然のことに絵里は驚くも、その手を振り払おうとはしなかった。
だが、絵里は顔を上げられない。振り返ることは、どうしてもできない。

「なんか、あったんですか?」

優しく愛佳にそう聞かれ、絵里は揺れる。
傍に居てほしいときに、いちばん居てくれる人は彼だった。愛佳はいつでも、絵里の傍で話を聞いてくれる。
愛佳の気持ちはずっと知っている。だから、それに甘えてはいけないといつも思っていた。
それなのに、いま、この瞬間でさえ、彼は絵里を気にかけてくれる。
絵里のれいなへの想いをいちども否定せず、絵里とれいなをずっと見守ってきてくれた愛佳。
分かっている。彼の気持ちは痛いほど知っている。だけど、だけど、だけど―――

絵里は顔を上げ、愛佳を真っ直ぐに見つめた。
瞬間、愛佳は言葉を失う。
大きな瞳に涙を携え、零れ落ちるのを必死に堪えている絵里に、愛佳は射抜かれる。
その姿が、愛佳が初めて恋をした、記憶の迷路に囚われたときに現れる彼女と重なった。

愛佳は下唇を噛み、拳を握り締めた。
理性も、優しさも、誠実さも、確かにそこにあったのに、愛佳はそれを振り払ってしまう。
愛佳が絵里の腕をぐいと引きよせると、絵里の体は愛佳の胸の中におさまった。
そしてそのまま、愛佳は両腕を絵里の背中に回し、抱きしめた。

絵里の香りが広がった。
記憶の中の亀井絵里とは違う香りであることに気付き、改めて愛佳は、彼女と亀井先生は別人なのだと理解する。
絵里は逃げることも抵抗することもせず、ただ黙って愛佳にされるがままでいた。
それが彼女の優しさなのだと愛佳は理解する。その優しさを、敢えて愛佳は踏みにじった。

「亀井先生…」

愛佳がそう呟くと、絵里は顔を上げる。
涙が溢れたその瞳が輝く。その表情も、記憶の中の絵里に似ているのだが、やはり違うなと愛佳は思う。
愛佳は絵里の頬に手をかけ、そっと瞳を閉じた。想いが、心が、弾けた。

瞬間、時が止まった。

愛佳は絵里のその唇にキスをした。


「ふぁっ!」

絵里の突起は充分に硬くなって肥大化していた。
荒々しく刺激を与えると、絵里の声もそれに比例して大きくなる。
絵里は右手でズボンと下着を一緒に下ろし、太股の内側をなぞり、そのまま下腹部へと持っていく。

―――クチュ

入口を軽くなぞっただけで、そこはビクッと反応した。
熱を帯びているそこは愛液を流し、さらなる刺激を待っている。

「んっ、あっ…あっ、はぁっ…」

絵里が迷わず指を挿入すると、愛液が人差し指に絡み付く。
熱いそれが気持ち良く、絵里はゆっくりと出し入れを繰り返した。

「あっ、あっ…んん、はぁ…はぁ……」

絵里はなんども、この指はれいなの指だと思い込もうとしていた。
れいなの細い指が、絵里の中に入ってきているのだと思いながら、出し入れを繰り返す。

「んっ、れーなぁ…あっ、あっ!」

知ってしまったさゆみとれいなの関係。そしてさゆみの告白。
薄々分かっていたことなのに、絵里は揺れた。どうして良いのか、分からなくなる。

「ふぁっ、れーなっ、あっ!あ…あ……はぁっ」

その後に起こった愛佳との一件。
あのとき愛佳は絵里に触れるだけのキスをしたあと、そのまま強く絵里を抱きしめた。
突然のことに混乱した絵里は、思考を整理しようとしたが、結局は整理が追いつかなかった。

「僕にしときませんか…」

低く囁かれた声に絵里は顔を上げる。
愛佳は苦しそうな顔を見せながらも、必死に絵里に伝えた。

「卑怯やって思われても構いません。だけど…これ以上、あなたが泣くのを見たくはないんです……」

愛佳の真剣な瞳に絵里は射抜かれる。
どれほどの想いで愛佳がキスをしたのかなど、絵里にも分かっている。
だが、絵里は未だ、その気持ちに応えることはできなかった。
どうしても、自分の中で消えない想いが、あるのだから―――


「あぁっ!はぁ…あっ、んっ!れーなぁ…っ!」

絵里は指の速度を上げる。
ぐちゅぐちゅという卑猥な音とベッドの軋む音が部屋に響く。


れーな、れーな、気持ち良いよ。
ねぇ、もっと、ちょーだい。もっと、もっと激しく、シて。
絵里を、絵里をもっと抱いてよ。
ああっ、そこ! れーな、凄く気持ち良いよ、れーな。
れーなっ。れーなぁ……れーなぁっ!


「あぁっ!れーなぁっ!」

絵里の指が最奥を突いた瞬間、絵里の体が震えた。
頭の中で彼女の笑顔が浮かんでは消える。

「はぁ…はぁ……っ」


絵里は息を整えながらも、その指を抜こうとはしなかった。
ビクビクと震える体を感じながらも、絵里はそのまま指を動かした。

「ふぁっ、あっ!」

絵里の細い指が内壁を引っ掻いては暴れる。
途切れた快感が再びやってきたことに絵里の体は正直に反応する。

「あん!はっ…あぁっ……れーな…ぁっ!」

だが、達したばかりで敏感になっている絵里は早くも限界を迎えようとしていた。
絵里はなんども喘ぎながら腰を振る。


好きだよ、れーな。
こんなにも胸が痛むくらいに。
ねぇ、同じくらいに、れーなが絵里のこと、好きだったら良いのにね


絵里は髪を振り乱して悶える。
トロトロに溶けたそこからは愛液が溢れ出し、シーツはもうぐっしょりと濡れていた。

「れーなぁ…れーなっ、やっ!あっ…はぁ……」


お願い、お願い、消さないで。れーなを、あの子の笑顔を―――


絵里の指が自分の弱い部分を的確につくと、絵里は再び絶頂を迎えた。
ビクッと体を震わせベッドに沈むが、その体を抱きしめてくれる人は、いなかった。





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