「なんで今日はこっちの道なの?」

仕事からの帰り、助手席に座るさゆみにそう聞かれながら、里保はウィンカーを出した。

「たまには、変化も必要かなと思ったので」
「りほりほがそういうこと言うなんて、珍しいね。あ、さゆみとちょっとでもいっしょにいたいから、とか?」
「断じて、違います」

左折して、アクセルを少し踏み込んだ。
不自然に思われない程度に、サイドミラー等で後方車両を確認する。今日は、いないようだ。

「明日ってお昼過ぎからだよね?」

さゆみは少しだけ頬を膨らませたあと、すぐにそう訊ねてきた。
里保は思考を彼女に戻し、スケジュール帳を頭で開く。確か、明日の仕事は14時からの予定だった。

「はい。13時には迎えに行きます」
「じゃあさ、いっしょにお昼食べない?この前、良いお店見つけたんだ」

信号で、停止する。
さゆみが左隣で嬉しそうな表情をしているのが、暗闇でも分かった。
里保は思わず頷いてしまいそうになったが、首を振った。

「たまには昼前まで寝ていて下さい。道重さん、働きすぎですから」
「むぅ……こんな可愛い子のデートの誘いを断るなんて、りほりほは良い度胸してるの」

ブレーキから脚を上げ、ゆっくりと発進した。
なるほど、確かに、さゆみほどの美人の誘いを断るなんて、どうかしていると思う。
だが里保は「すみません。打ち合わせなんです」と努めて冷静に返した。実際、そんな打ち合わせは存在しないのだけれど。

「そうあっさりフラれると寂しいんですけど」

瞬時に頬が紅潮するのを感じた。
全く、この人は私の気持ちを分かっていてこういうことを言うのだろうか。
無自覚だったら最強の天然だ。分かっていて言ったのならば、ただの策士だ。それもまた、彼女らしい。
ゆっくりと車を停める。無事にマンションの前まで着いた。少し、安心する。

「私は、道重さんだけのマネージャーじゃありませんから」
「でも、さゆみだけの恋人でしょ?」

シートベルトを外すと同時に、彼女の体がぐいと近づいてきた。
右手の人差し指が顎にかかる。否応なしに振り向かされて、さゆみと目が合った。深淵の輝きに、言葉を失くす。
頭が真っ白になって、拍動が多くなり、身動きが取れない。この前の、バーと同じだ。その瞳に、どうしようもなく恋をする。

「じゃ、また明日ね」

キスされる、そう思ったが、さゆみは里保の頭を撫でるだけで、すぐにカバンをまとめた。
助手席の扉が開き、冷たい夜風が入ってくる。熱くなった体温には丁度良かった。
おいおいキスされたかったのかよ、と心の中で呟く。期待するな、バカ。恥ずかしい。

「…おやすみなさい、道重さん」
「うん。おやすみ、りほりほ。帰ったら、メールちょうだい」
「いちど会社に戻って遅くなりますので、送りませんよ」
「ホント、りほりほは真面目すぎだから」

そうしてさゆみは笑って車を降りた。
車の前に回って、手を振る。里保も力なく、右手を振り返した。ずいぶん間抜けだなと改めて思う。
さゆみがマンションのオートロックを解除してエントランスへと消えていったのを確認し、里保はケータイを取り出す。
リダイヤルを押すと、3コール目で彼女が出た。

「いま終わった。そっちどう?」
「里保の言っとった意味、分かったよ。こっちにも出たよ、鼠さんがね」

やはり、予想した通りかと里保はバックミラーを確認した。何処までもつづく夜道の向こうを睨み付ける。
数日前から、里保は視線を感じていた。
その視線は妙に粘っこくなく、何処か親近感を覚えたために、相手が「同業者」ではないかと悟った。
道重さゆみのストーカーという線も考えたが、衣梨奈の近辺にもその視線の持ち主が現れていることを考えると、その仮説が消える。

「Ninthの前におったのはパールホワイト1台。衣梨奈ン家の前にはグレーが1台。そっちは?」
「うちが見たのは黒が1台だけだから、向こうは最大3人、最低でもひとり以上、ってとこかな?」
「やっぱ、あいつが手配した探偵やと?」

里保は深くシートに座り直す。
「同業者」、つまり里保に代わる新たな探偵の雇い主は、間違いなく亀井絵里の叔父だ。
だが、もし仮に、里保や衣梨奈の見た車が、その探偵の所有するものだとして、その理由はなんだ。
亀井絵里を取り戻そうとするならば、絵里やれいなの前に探偵を送り込むのが定石だが、その気配はいまのところない。
むしろ今回の目的は、自分が最初に雇った探偵である里保に対しての調査が主なようだ。だか、なんのために―――?

「里保、聞いとぉ?」
「……聞いてるよ。明日もし見かけたら捕まえて白状させる。これ以上好きにはさせないよ」

里保はそれだけ言うと、思考を閉じるように電話を切った。
ハンドルに凭れるように体を落とすとごきっと首の骨が鳴った。そんなに歳を取っていないのになと苦笑する。
再びケータイが震えた。また衣梨奈からの着信であったなら無視しようと思っていたが、それはさゆみからのメールのだった。


―――今日もお疲れー。ちゃんと寝ないとダメだよ。


そんな一文から始まったメールに、自然と目尻が下がった。だが、最後まで読むことなく里保はケータイを鞄に仕舞い込んだ。
ダッシュボードを開ける。中に入っていた黒い鉄の塊を戒めのように見つめ、閉じた。

「依頼人を裏切ったら、終わり、か」

ふと、義父がそんなことをよく口にしていたことを思い出す。
探偵とは、信頼商売だ。推理力や洞察力よりも必要なことは、信頼を勝ち取る誠意そのものだ。
結果的に、里保はそれを裏切ったことになった。たとえ相手が反社会的な人物だったとしても、いちど受けた依頼を断る理由にはならない。

「やっぱ、向いてないよ、お義父さん」

里保は自嘲気味に笑った。
もう二度と、こんな想いをしないためにも、終わらせるんだ。だれも傷つかせない。私が最後に、けりをつける。
目を閉じるとさゆみの笑顔が瞼の裏に浮かんだが、すぐに振り払い、車を発進させた。暗闇を照らすライトが、あまりにも儚げで頼りなかった。


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今日も綺麗な朝陽が昇った。
連続してカメラのシャッターを切る。紫色に染まった東の空に目を細めた。これだから春は好きだ。
れいなはふうとひとつ息を吐いて、ベランダから室内へと戻る。
ふと、カンパニュラを見るが、日に日に弱っている気がする。滅多に枯れないはずなのに、ここ数日の元気のなさはどうしたものだろう。
れいなは薄い花びらを手で掬い、「疲れたと?」と話しかけた。
植物に話しかけると元気になる、と聞いたことがあった。
別にそれを信じているわけではないが、れいなはふいにそう訊ねた。もちろん、答えが返ってくるわけではない。
用意していたコップの水を根元にかけてやった。静かに土に染み込んでいく水を黙って見る。

鞘師里保はいまごろどうしているだろうかと想像した。
先日、さゆみと広島に旅行しに行った話は聞いている。とにかく里保が可愛いとさゆみが熱弁するものだから、撮影どころではなかった。
りほりほ可愛い、すべてがドストライクと力説するたびに鼻息が若干荒くなっている気がするが、無視している。
その割にふたりっきりになった途端にキスもできないのだから、あれは相当なヘタレだなとれいなは苦笑した。

「れーなぁ?」

間延びした声にれいなは振り返った。
いま起きたばかりの絵里はだらしなく目を擦りながら「おはよー」と声を出す。甘ったるい声に肩を竦めながら、れいなも「おはよ」と返した。
絵里はまだ半分夢の中なのか、なかなかベッドから降りようとはせず、「ふにゅぅ」と枕を膝に抱えた。

「二度寝せんと。遅刻するっちゃよ?」
「んむぅ……知ってるけどぉ…絵里は眠いんですよ」
「じゃー熱いシャワー浴びて目覚ませば良か」

絵里にそう言うのと同時に、カンパニュラは水をすべて呑み込んだ。
明日には元気になってくれると良いなと思いながら、れいなはベランダをあとにする。
ベッドの上では相変わらず絵里がまだなにか言っていた。春は眠いんですだの、絵里ちゃんはカメだからしょうがないんですだの、意味が分からない。
まあそういうところも可愛いんだけど。可愛いんだけど、この人れなよりひとつ年上やとよね?と改めて確認したくなった。

「れーなって、いっつも早起きだよね」
「そうやっけ?」
「早起きぃー。絵里よりも遅く起きたことないじゃんかー」

絵里は枕を大事そうに抱えながらそう話す。れいなに話しているのか、それとも寝言なのか、一見すると判別できない。
確かにれいなは朝陽の写真を撮るために早起きをする。その習慣は絵里と出逢う前から変わっていない。

「たまには、れーなを起こしたいですよぉ〜」
「いや、ムリやろ」
「んむぅぅぅ〜、むーりーじゃーなーいぃ〜」
「どうでもいいけん、風呂入りぃよ」

駄々をこねる大きな子どもの頭をぽんぽんと撫で、少しだけ強引に枕を奪い取った。
「あぅぁ〜」と絵里が不服そうな声を出すが、渋々ながらにベッドから降りた。

「いっしょに入っちゃろか?」

れいながからかうようにそう言うと、絵里は「いりません」とすっぱりと断った。
なんだ、もう意識が覚醒したのかとれいなは苦笑した。


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「田中さん、お届け物ですよ」

後輩の愛佳のその声に、れいなはパソコンから顔を上げた。

「道重さんの事務所から。この前の写真集の御礼やないですか?」

れいなは立ち上がり、彼女から荷物を受け取った。
差出人は確かにさゆみの事務所、そして受取人は田中れいなになっていた。
「壊れ物注意」のシールが貼ってある荷物をれいなは開封すると、入っていたのは可愛らしいガラス細工だった。

「おお。オシャレやないですか」

愛佳が空の段ボールを潰すのをよそに、れいなはそのガラス細工をじっと見た。
ガラスは鳥を模していて、大きく羽を広げ、いままさに飛び立たんとしている。羽のひとつひとつも丁寧に彫られた精巧な細工だ。
素直に、見事だと思う。キラキラと光を受けて輝いて、眩しい。

「あ、あとお花も届いてましたよー」
「花?」
「なんでしたっけこれ。忘れたんですけど綺麗ですよね」

愛佳は手際良く、届いていた花の梱包を解き、窓際に置いた。
殺風景な事務所が急に華やかになる。窓際に置かれた鉢植えには、淡い紫色の花が咲いていた。
小さくて控えめのそれはなんだか可愛らしい。さて、なんの花だっけ、これ。
れいながその花を見ていると寺田が入ってきた。立ち上がって挨拶すると彼は意味ありげに笑った。
含みのある笑みは嫌いじゃないが、たまに予想の斜め上を行く発言をされることがあるので、怖い。

「雑誌限定やったら、雇ってくれるかもってよ」

確かに彼のその言葉は予想の範疇を軽く超えていたが、不快ではなかった。彼の放つ言葉はあまりにも輝きを放っていた。
れいなは「マジですか?」と震える声で訊ねた。彼はまた、笑った。

「この前の公園の写真送ったら、いちど逢いたいんやて」
「ホントですか?え、マジ、ガチで、冗談じゃなく?」
「お前にウソつくかアホ。日程開けとってくれよー」

寺田はそうしてガシガシと荒っぽくれいなの頭を撫でた。
れいなはぐっと拳を握りしめ、「っしゃー!」と叫んだ。小さな事務所中に響き渡る声に、珈琲を淹れていた愛佳もまた笑った。
ホンマ、正直やなぁあの人と珈琲カップに注ぐ。

「忙しくなるなあ、お前も、あの子も」
「ニシシ。嬉しいです、マジで」
「光井、お前もやぞ」

愛佳が珈琲を机上に置いた途端に肩を叩かれた。
へ?と顔を上げる。「肩を叩かれる」なんて、ドラマでは、クビの宣告だが、どうもそんな気配ではない。

「この前のやつ、通ったぞ」
「え、な、なにが?」
「『光と空』。この前の選考通って、新人賞獲ったぞ」
「ホンマですか?!」

今度は愛佳が面食らう番だった。
1ヶ月ほど前、愛佳は写真のコンクールにいくつか作品を出品していた。
カメラマンの登竜門、とまではいかないものの、相応の規模のコンクールであり、れいなも以前、新人賞や奨励賞を受賞していた。

「個展の話も来てるし、忙しくなるぞ」

寺田はれいなと同じように、愛佳の髪をぐしゃぐしゃに撫でた。
ちゃんとボールを取ってこれた御褒美に撫でられた犬のように、愛佳は顔を崩して笑った。

「よぉぉし!がんばります!」
「おお、その意気や!」

小さな事務所ではあるが、コンスタントに仕事をこなせるのは、やはりこの人の技量が大きいのだとれいなは思った。
いくられいなや愛佳に実力があったとしても、それを形にして仕事に結びつけることができなければ意味がない。
寺田は実に、その裁量がうまい。根っからの経営者なのだなとれいなは思う。

「というわけで、今日から早速残業です」
「えええ、マジッすか?」
「マジ。大マジ。だからお仕事がんばって」

寺田にそう言われながらも、れいなと愛佳は顔を見合わせて笑った。
愛佳の淹れてくれた珈琲に口を付けた。猫舌であるせいか、まだうまく飲めない。ほろ苦い味が舌から喉へと通っていく。
良い方向に流れが来ているんだなと思いながら、窓際に活けられた花をぼんやりと眺めた。


 -------


「じゃあ田中、戸締り宜しくな」

スーツを纏い、足早に部屋を出て行く寺田に対し、「はい。お疲れさまでした」とれいなは声をかけた。
ここ数週間、株式会社「U-ACT」は多忙だった。寺田はもちろん、個展の準備をする愛佳も、そして絵里のことで話を進めるれいなも、仕事は山積みだった。
今日もれいなは残業のために、ひとり事務所に残っている。人がいなくなった室内は静寂に満ちていた。
さて、何時に帰れるだろうかとポケットからケータイを取り出した。
待ち受けには、公園で撮影した絵里の写真が設定されている。そんなガラじゃないけど、なんだかこれを見ていると元気が出る。

「大好きやっちゃなー…」

いまさら、自分が彼女にどれほどの想いを寄せているかを実感した。
彼女が好きで、護りたくて、いっしょに居たくて、あの空の向こうまでずっと歩きたいと思った。
青臭くてくだらない感性かもしれないけど、そんな自分も悪くないってそう思えた。
れいなはケータイを机上に置くとぐっと伸びをし、立ち上がった。

21時を過ぎ、街はすっかり闇に覆われている。仕事をしているのはこの事務所だけじゃないかと錯覚するほどだ。
珈琲を淹れようとしたとき、ふいに窓際に飾った花が目に入った。
数日前、道重さゆみの事務所から届いた紫色の花。鉢の中で、小さな星を模ったように咲いた花が、妙に気になった。
れいなは空のカップを置き、再びパソコンに向き合った。
キーボードをなんどか叩き、画面と花を見比べる。なんどめかの検索で、漸くその名前がヒットした。

「ハナニラ……かな?」

春に白から薄紫の花を咲かせるアルゼンチンが原産の花だ。
日本でもなじみのある花ではあるが、なぜさゆみの事務所はこれを贈ってきたのだろう?
写真集の御礼、というのも分からないでもないが、なぜか引っ掛かる。そもそもなぜ、ガラス細工と花だったのだろう。
れいなは先ほどのホームページをもういちど見返した。ハナニラの開花時期、色の特徴、名前の由来、そして、花言葉―――

それが目に入った直後、事務所の電気が落ちた。
停電?雨も降っていないし雷も落ちていないのに?システムトラブル?でもそんなこといままで……
れいなの中でふと、さまざまな憶測が浮かんでは消える。
さゆみの事務所から贈られてきたハナニラとその花言葉、突然の停電、もうひとつの贈り物のガラス細工。ガラスがキラキラと暗闇で光って綺麗だった。

瞬間、バラバラだったピースがひとつの形を成す。
その仮定が浮かんだ瞬間、ぞわりと、れいなの背筋が凍った。
感じたことのない、圧倒的な真っ黒い闇だ。
れいなは思わず立ち上がる。瞬間、風切り音がした。反射的に逃げる。
背後で派手な音がした。壊れる音だ。それは、現実の崩壊だろうか。夢のような日々を送ってきた、いまという名の、現実の。

「プレゼントは、気に入らなかったか?」

心臓が、鷲掴みにされた。
自分の数メートル先にいる男を、れいなは知っている。久し振りに耳にする声も、不快極まりない。一生、逢いたくない相手だったのに。
れいなは短くなる息を吐きながら、必死に思考を展開させた。どうするのが、いちばん良いのか。
だが、考える暇もなく、男はなにかを振り翳した。
背を向けて、逃げる。また背後でなにかが壊れる音がした。
膝が笑い始めた。頭が真っ白になる。どうする?どうする?どうする?

「お前さえいなければ……お前さえいなければ、すべてうまくいってたんだ!」

男がまたなにかを振りかぶる。
闇の中、蛍光塗料の塗られたガラス細工だけが光っている。
微かに慣れてきた目が、男の持っていた金属バッドを捉えた。
れいなの左肩に激痛が走り、直後、その体は派手に棚と激突した。

「っ―――!!」

鈍い音のあと、棚からカメラのフィルムや写真が舞う。
恐怖が、全身を支配する。目の前にいるこいつから逃げなくてはいけない。
言うことをきかない体に必死に鞭打ち、じりじりと壁際に後退する。痛みと恐怖が羽虫のように這い回る。

「絵里を、連れ戻しにきたと…?」

震える声で、れいなは男に訊ねた。
相手は本気だった。このままでは間違いなく殺されると直感した。

「当たり前だ。オレはあいつの叔父だぞ。唯一の身寄り、唯一の家族だ」

その言葉を聞き、どの口が言うのだと叫びたかった。
散々傷つけて、泣かせて、絵里に傷を与えたのはお前だろう。そんなやつが、家族なんて言葉を口にするな。
だが、情けないことに、れいなは恐怖のあまりに大声を出すこともできなかった。
左肩の痛みが段々と激しくなる。右手しか動かせない。ああ、もう、イヤだ。

「死ねよ、サトウさん。いや……田中れいな」

叔父はバッドを高々と振り上げた。
れいなは歯を食い縛る。迷っている暇はないと、尻ポケットに右手を突っ込んだ。

一瞬の静寂の闇の中、絵里の笑顔が浮かんだ。
だらしなく、夕陽に照らされた公園でくるくる回る、絵里。


―――れーなぁ


舌足らずで、甘ったるい声。
まるで彼女は“春”のようだ。冬の厳しい寒さを知った、強くて暖かな花のようだ。


―――大好きだよ、れーな


彼女がくれた言葉が脳内を駆け巡るなか、れいなはその花言葉を思い出していた。
れいなに贈られてきた淡い色の小さなハナニラの花言葉は、「卑劣」、「恨み」、そして、「哀しい別れ」だった―――





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