サイボーグ娘SSスレッドに保管されたSSの保管庫です。一応、18禁ということで。

作中設定

  • 概要
 俺の中の「サイボーグでエロ」のイメージ。用語や設定は
既存のサイバーものとかから流用。
エロシーンまでまだ書きあがってません。
  • 設定
・舞台
 21世紀中盤から22世紀前半ぐらい

・シムセンス・ムービー
 この時代の主要娯楽。映画のようなもの。
視聴者はプレイヤーを脳に埋め込んで脳内で再生する。
単に映像や音声だけでなく、物語の登場人物の
知覚情報も記録されていて、見たり感じたものを視聴者も感じることができる。

・イスラエル
 なぜかSF小説によく登場するので出してみた。他意はない。
作中では国有企業オーメル・サイバネティクス社の技術力によって
経済的にも軍事的にも強国になっている。
他国で工作活動を行うものすごく危ない国。

・オーメル・サイバネティクス社
 イスラエルの国有企業。
義手義足や代替臓器のような人工人体から、
シムセンス・ムービー・プレイヤーのような
人体の神経を機械につなぐような技術まで取り扱う技術系企業。

本文

 ぎしり、と 椅子が軋む。少しの間をおいて、またぎしりと鳴る。
その椅子は、分厚い鉄板を切り出したような鋼鉄製の武骨さで、
ストリートクリニックの手術台のように飾り気という概念を完全に喪失していた。
暗くコンクリートが打ちっ放しにされた暗い部屋には窓もなく、中央にその椅子だけがある。
椅子は同じくコンクリートの床にまるで軍用車両にでも使われていそうな太いボルトで固定されていた。
 その軋む椅子の上には椅子の武骨さとはまったく釣り合わない一人の美しい少女が座っている。
上半身は柔肉を包むブラジャー、下半身は細い両足が伸びる下着しか身に着けていない。
薄茶色の肩まで届く細く長い髪と、震える睫、顰められた悩ましげな眉は
少女の繊細で可憐な顔立ちをより一層引き立てていた。
「くっ……」
天井に埋め込まれた真っ白な照明装置を見据えながら、額には汗が浮かび、
今、一滴頬から顎へ流れ、肩へと落ちた。
 ギリリと彼女の肩が軋む。一滴の汗が雫となって落ちた彼女の肩と腕はしかし、
ところどころ不自然に隆起し、時にあからさまな金属の軋む音を立てていた。
 それは本来の彼女の腕ではない。人工皮膚に覆われてはいるが、
間違いなく常人を凌ぐ膂力を与える人工筋肉と微細なテクノロジーが詰め込まれた人工の腕である。
通常であれば、その細い一般的なの少女の腕を模したそれが人造のものであることはわからないだろう。
ましてや生身の人間を凌駕するほどの膂力があるなどとは思いもよらないはずだ。
 彼女のその両腕は、やはり武骨なまるで鋼鉄のドーナツのように太い腕輪で手首を
椅子とつながれていて、それを断ち切ろうとしているために彼女の肩と椅子が軋みをあげているのである。
それが彼女の腕の人工筋肉の不自然な隆起を誘発している。
 「ムダムダ。他国の“鋼鉄のゴリラ”を念頭に置いて作った特製の椅子だからね。
いくら君の鉄腕でも無理すると君のほうが壊れちゃうよ。生身とつながってる根元から、ぽきっと」
彼女と椅子の背後からそんな言葉が投げかけられた。空とぼけた、高く癇に障る調子の男の声。
「まぁ……」カツカツと硬い靴底がコンクリートの床を打つ音が背後まで迫って止まる。
「君がパスコードさえ素直に教えてくれたら、こんなこともせずに済むんだけどねぇ?」
背後から伸びた男の手が、少女の頭の上に揶揄するように乗せられる。
「ふざけないで!」頭を振って男の手を払うと、顔を上げ少女は男を見た。
黒髪の細い身体つきの男。まるで病人のように白い肌の手足は少女とは違い、生身のようだ。
背格好は一般的な成人だが、幼い少年のように無邪気な笑顔と、
狡猾な老人のように悪意に満ちた笑みを混合した不可思議な表情をしていた。
「……いやいや、どう考えてもふざけてるのは君だよ」
 払われた彼の腕が再び彼女の頭に伸びる。
「うあっ……!」
ただし、今度は乱暴に彼女の髪を掴んでその顔を自分の方に向けさせた。
少女の顔は真っ赤に紅潮し、男を鋭く睨み付けているが、しかし瞳の奥に微かな恐怖の気配が浮かぶ。
痛みに思わず呻き声が漏れた。それでも男の笑顔は変わらない。
「君は、どこに忍び込んで、なにをくすねてその頭に詰め込んだか、わかってるの?」
もう一方の腕が、彼女の細いうなじに伸びて、なにかをまさぐっている。
「つまり、誰にケンカを売ったか、ってことなんだけれど」
 彼の指先が首筋に埋め込まれた端子を探り当てた。
「……あ、僕は君を担当することになった拷問吏のハンス。よろしく」
 少女の名は、ジェシカという。
本来の年齢は27歳だが、身体中に埋め込んでいるサイバーウェアとその適応化処置のために
その姿は十代半ばでとどめられている。
暗殺や産業スパイ、密輸など半合法あるいは完全に非合法な仕事を請け負うことで
その高価な身体を活用し、その報酬によって維持して生きている。

 『こっそり忍び込んで鞄に品物を詰めて逃げる』

 今回の仕事は単純なはずだった。
“品物”は市場未発表の工業用ロボットの制御ソフトウェア。
“鞄”は彼女の頭の中に埋め込まれているロック機能付の生体メモリ。
“忍び込む家”は小さなイスラエルのソフトウェアメーカーのオフィス。
 クライアントからそう聞いていたし、下調べでもその通りだった。
実際にやることも簡単なものだ。オフィスビルのセキュリティシステムを騙して、
忍び込んで『金庫』(貴重なデータが詰まったスタンドアロンのシステム)と直接接続し、
目当てのソフトウェアを脳内にダウンロード。パスコードを設定してロックする。
ただ、今回おかした唯一の失敗は、“忍び込む家”が単なるイスラエルのソフトウェアメーカーではなく、
表向きそういうことになっているイスラエル軍とオーメル社共同の研究機関だったということだ。
 イスラエル軍の電脳化兵士の苛烈さと正気を疑うほどの執念は、一般人の間でさえ知れ渡っている。
彼らを支える国有企業オーメル・サイバネティクス社がいまやサイバー技術の最先端であることも。
 騙したと思っていたセキュリティシステムは、実際には彼女の侵入を捉えていて、
彼女に騙されたふりを装いながら、静かに、軍人並みの武装とシリコンを埋め込んだ警備員をかき集めて
ジェシカを追い込み、捕らえたのである。
 今は、彼女の頭の中に放り込まれた“品物”を無傷で取り出すための鍵であるパスコードを
白状させようとしている段階なのだ。

 彼の指先と視線はしばし彼女の首筋に埋め込まれた端子に注がれた。
「……それは、ただのシムセンス・ムービー・プレイヤーの入力ポートよ」
首筋を撫ぜられる不快さと、不気味な沈黙に耐え切れずジェシカはそう白状した。
「知ってる。……しかも我がオーメル社のプレイヤーの。古いタイプ」
 使用者に擬似的な感覚を誘起させる技術は、21世紀後半になって急速に発展・普及した技術である。
電子データを脳内に埋め込んだプレイヤーを介して五感として“再生”するシムスティム技術は、
この時代においては娯楽としてもありふれたものとなった。
映画の主人公が感じた風や、味わった食べ物の甘さ、空気を震わせ鼓膜を撫ぜる楽器の旋律。
すべての視聴者の五感として再生するシムセンス・ムービーは
シムスティム技術を用いた娯楽の中でも特にポピュラーな娯楽のひとつである。
 「うちの電脳化歩兵たちから聞いた話なんだけどね。君たちみたいな身体のほとんどを
置き換えちゃったサイボーグは特に大好きらしいね。シムセンス・ムービー」
男の手のひらが少女の首筋から腋の下、脇腹、そして下着をかいくぐり股間へと滑り込んだ。
「特に、ポルノ」
両脚もまた、腕と同様に椅子に拘束されていて抵抗はできない。
男の指先は、生身の女ならばあるはずの器官を見つけることはできなかった。
腕同様に、ジェシカの下半身もまた、人工物なのだ。
「セックスできないんでしょ? だから代わりに、シムセンス・ムービーで発散する、と」
ジェシカの頬が、自らの性生活をあからさまに言い当てられてまざまざと紅潮していく。
「我がオーメル社の製品を愛用してくれている君に、感謝を込めていいことを教えてあげるよ」
ジェシカの股間から引き抜かれた男の腕には、今はハンディ・コンピュータが握られていて、
その出力端子には螺旋状のケーブルが取り付けられている。
「なにを……」
そのケーブルの先にあるものは、まさにシムセンス・ムービー・プレイヤーの出力プラグであった。
「君が愛用のそのシムセンス・ムービー・プレイヤーには、未公開の裏コマンドと、重大な欠陥があるんだ」
そのプラグがジェシカのシムセンス・ムービー・プレイヤーの入力端子に差し込まれる。
ジェシカの網膜ディスプレイの端で、埋め込んだシムセンス・ムービー・プレイヤーが
彼女の意図を無視して起動を開始するメッセージが表示された。
「たとえば、シムセンス・ムービー・プレイヤーをこんな感じで外部から操作する裏コマンドとかさ」

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