サイボーグ娘SSスレッドに保管されたSSの保管庫です。一応、18禁ということで。

アタシハ夢ヲ視テイルノ?
 少女は意識の中でそう、呟いた・・・
 夕暮れ、夏休みの一日前、少女は一人楽譜を抱えながら両の手には白い手袋を嵌め家路を急いでいた。
 少女は明日のピアニストを夢見る、近くの音楽学校の生徒だった。
 少女は最後の意識を辿る。
 車の眩し過ぎるほどのライト。
 強烈な匂いがした、薬物がたっぷりと染み込んだガーゼ。
 意識が遠のいて行くとき感じた幽かな男の吐息・・・

アタシハ生キテイルノ?
 少女はすでに崩壊していく己が肉体にそう尋ねた。
 少女の身体は血まみれの寝台の上にあった。
ほんの一時間にも満たない間に少女はそのかわいらしいおしりの穴から体内の器官・内臓をすべて抜き出されたばかりだった。
 注射針を皮膚の下に何本も差し込まれ、薬物が投与され少女の身体は何の痛みも感じていない。
 ただ、ずるりと自分の体内から抜き出される自分の塊を感じていただけだった。
 アタシハピアノが弾キタイ
 少女は眼球から薬物の匂いがする涙を流す。
血色に汚れた体液は、少女の頬をツタイ寝台に新たな染みを作った・・・
 
ゴリゴリと自分の頭が切断される音が響く。
ヤメテヤメテ
 少女は声にならない叫びをあげる。
 しかし、空しくも少女の頭の皮膚はズルリと剥ぎ取られ頭蓋骨までもが円形に外された。
 ゆっくりと脳みそが抜き取られ、特殊な培養液が入った硝子ケースに入れられる。
 
『死ネナイ』
 その苦しみに少女は喘ぐ。
 少女の肉体は、金属血液(リキッドメタル)と特殊な防腐効果のあるコーティング剤で、とても柔らかい金属へと変化していく。
 抜き取られた脳みそも、ICチップを埋め込んだ、腐敗しない生きた機械。
心臓の変わりにマイクロコンピューター・・・
 少女の臓器のすべてが機械と化した。
 不必要な記憶だけ抜き取られ、綺麗に消毒し、飾り立てられた少女の背中には、大きく、立派な翼が移植されていた。

ピアノ・ガ・弾キタイ・・・
 少女はその記憶だけ残されていた。
 少女の身体はどこか、サロンのような場所へと運ばれていく。
そこには、少女と同じ運命を辿った多くの美しい人々が楽器を奏でていた。
 少女は、中央に置かれたグランドピアノの前に降ろされた。
 高価そうなそのピアノはもう、何百年も前から存在する、とても、贅沢なものだった。

サアイクラデモ弾イテゴラン
 誰かが、そう少女に囁きかける。
 ゆっくりと瞳を開く、少女にはその男の姿は映らない。
ポロン、ポロン
 天使のアリアがサロンに流れた。
それに合わせて他の演奏者も奏ではじめる。
 一人、この館の主のみ、極上の音楽にワインを傾け・・・
ワタシノ音楽天使タチヨ、永遠ニ美ヲ奏デテオクレ・・・

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