最終更新: kusakidoshoten 2019年07月30日(火) 15:00:46履歴
パロディ 古本屋三等歌
<市場篇> | -- | -- |
どかりと山の本おちた | 山たかくして白いゴミ | もりもりもりあがる大市へ歩む |
相場高くべんたういたゞく | 大市の屋上で御飯をくばる | どうでもこれをおとしたい鬼札 |
よろよろ歩いて和本のほうへ | 山岡さんひとりごというてゐた | こんな本みた けさの支部市 |
現金をふところにして優良市 | ひょいと珍本が出てゐた 棚のむこうがわ | 風は早稲田を さつさうとしてあるく |
あるいてるきんぽうさん 座っているきんぽうさん | 西へ北へ支部市にアカシヤさん | ひょいとのぞいて札多ければ |
市でつかれた 何かおちればいいが | ひとりゐて つきあげられた | 大市越えてまた大市 |
<催事篇> | -- | -- |
炎天をいただいて 並べ売る | 催事の間 雪ふりしきる | しとどに濡れて これは水漏れのシ−ト |
けふも催事 ここもかしこも華やか | つかれた脚へ本が落ちた | まぐれで人が本を買ってゐる |
へらへらとして客をあしらふ | かうしてここに お探しの本 | 売れ筋の 明日は知らない |
労れて催事から戻る いつもの屑本よ | 売れ残った本拭いてゐる | 本があつて本屋といふ 黴くさい風 |
<買物篇> | -- | -- |
しぐれて三日目に本買ひに行く | ひさしぶりに宅買でても つぶしのみ | あわい夢みた今朝出る時は |
死んでしまへば 雑本捨てられる | ごきぶりも付いてきてゐる | どなたかかけてくださつた 電話ありがたし |
サイダ−の泡立ちて消えた書の主 | 傾いた屋根の下には積まれた本々 | 売れる本をまへにして つくづくうれし |
窓開けて埃いっぱいの棚 | 書庫でからだぽりぽり掻いてゐる | 陽だまりに本をひろげる |
ぽろぽろ流れる汗が初版の函に | ひよいと和本から紙魚 | 分け入っても分け入っても黒い山 |
<店篇> | -- | -- |
一握の金をいただきいただいて まいにちの商 | 秋風 座っても座っても | この街 売れなゐ店のつくづくあきし |
凩のふけてゆく 空いてくる店 | 奥付をひらく 落丁めくる | 秋風の本を拾う |
さみしい懐が歩かせる | 寝てゐる犬の年とつてゐるかな | 月末 あるだけの本をうる |
酔へば朝くるしく酔はねば眠れず | 大きな本をツブしたり真夜中 | 店をもたない人がおおくなつた |
明るいところへ出てきたら 恥ずかしい格好だった | どうにもならない生きものが 本の奥に | ぬかるみもうやれるしごとがない |
ふるほんや 死なないでゐる | ならいばらず 本の虫とならうよ | うしろ姿の曲がっていくか |
※これらの山頭火の元歌を全部当てられる方がおられたら、かなりお好きですねッ!
ちなみに1句元歌=『どかりと山の月おちた』・8句『山路きて独りごというてゐた』などなど
山頭火ってパロディの宝庫です・楽しもう!!
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