▲693年11月における勢力図
シーア海戦で勝利したアル国艦隊であったが、ネイゲイは自分の艦隊が損害を受けたことから、戦果をフェザリアードに独占されることを恐れて、一旦全軍をエンパイアコスモス要塞にまで退かせてルッダリザ艦隊の再編を急がせた。
この海上大要塞は、ルドリア時代に建設がはじまり、一時は凍結されていたが、ザグルスが再開させて完成させたものである。
艦隊を駐屯させ、兵士たちを一時的に上陸させることが可能な要塞だが、元々軍港に恵まれたアル国にとって、必ず必要というものではなかった。
にもかかわらずこの要塞が建築されたのは、国主ルドリアとザグルスが、とにかく巨大な要塞というものを好むという、完全な個人的趣向が理由であり、建築の再開も彼の機嫌を取りたい佞臣たちによる進言が大きかった。
その証拠に、反対を述べた者、技術的に不可能と述べた者は、ことごとくザグルスによって処刑されている。
ルーディアとディルセアは、この局面を打開するべく連日軍議を行った結果、「もともとの艦隊戦力で劣っている上、海上要塞に立て込まれては、もはや手のうちようがない、それでも、日を追うほどに戦力差が開くのなら、進軍するしかない……」と、こちらから無謀な出陣を決行するという結論に達した。
その一部始終を、軍議に潜んでいた内通者がアル国に伝える。
内通者の姿が国内から消えたと知ったルーディアとディルセアは、顔を見合わせて笑った。
この軍議そのものが、彼らの仕組んだ罠だったのだ。
ザグルスの個人的趣向によって建造されたエンパイアコスモス要塞だが、技術的な問題から当初予定されていた施設のほとんどが実際には作られず、それでもザグルスの機嫌を取るために虚偽の報告がされた為、完璧な大要塞という名の張りぼての要塞となっていた。
そのことは、既にルーディア達の知るところであり、まともに正面から艦隊戦を仕掛けられるより、自分達の行動の自由を制限する「出来損ないの要塞」にたてこもってくれた方が、ベルザフィリス国には有利なことであった。
こうして、アル国艦隊は、せっかくの艦隊戦力をいかしきれず、要塞にてベルザフィリス国艦隊を待ち構える。
とはいえ、それでも元々の艦隊戦力差は明白であり、「絶対的不利」を、かろうじて「不利」に持っていけるだけであったことも事実であった。
更に、ルーディア包囲網の一環として、シャリアル国軍が国境に迫っているとの連絡もあり、艦隊は地上部隊の支援を受けることもできず、艦隊戦力だけでの決戦を強いられていた。
1月23日、ベルザフィリス国艦隊は、要塞への夜襲を計画して、深夜に密かに要塞に接近する。
この時、ネイゲイは、艦影発見の報告を聞くと、本国からガイナルス艦隊が援軍に来たと勘違いし、「我ドラゴンファントム、援軍感謝する」と光信号を送り、旗艦の居場所を自ら敵軍に教えてしまう。
なぜ彼が艦影を確認もせず援軍と決めつけたのか、ディルセアが援軍が迫っているという偽書状を送っていたという説もあるが、単にネイゲイがそれだけ迂闊で無能な人間であったという説もあり、真相は謎である。
これにより、ベルザフィリス艦隊は一斉に攻撃を開始、ルッダリザ艦隊は不意打ちをくらって緒戦から大損害を出す。
しかし、フェザリアードのサイリオン艦隊が現れると、一転してザルド艦隊は苦戦を強いらるが、この混戦の中で奇跡への布石が生まれる。
風に乗った流れ矢が、甲板から戦局を見ていたフェザリアードの左目を貫き、彼は一時的に戦線から離脱する。
それでも、エンパイアコスモスに取り付くことはできず艦隊は後退。
海戦そのものはまたしてもベルザフィリス国軍の敗北であったが、ルッダリザ艦隊を完全に沈黙させる事には成功、ベルザフィリス国軍はザルド、ムーン両艦隊の残存艦艇を合流させ、最後の艦隊戦を仕掛けることとなった。
決戦は1月26日、後のないベルザフィリス国軍は、全艦隊をもってエンパイアコスモスに総力決戦を挑む。
イェーガは、艦隊特攻を決意すると、ムーン艦隊をベインに託し、自らは機動力に優れたザルド艦隊に移動する。
一方フェザリアードは、目の負傷を理由についに艦隊指揮権まで剥奪され、エンパイアコスモス要塞に駐屯する陸上部隊の指揮を命じられる。
こうして、海の名将不在の海域で両軍が至近距離で入り乱れた大混戦となると、互いの艦に抜刀隊を乗り込ませての壮絶な白兵戦が続き、フェザリアード子飼いの将も次々と戦死を遂げる。
ルッダリザ艦隊はイェーガ率いるザルド艦隊の特攻に近い猛攻撃を受けて次々と沈没、艦隊の性能をいかせないまま旗艦ドラゴンファントムは海の藻屑となり、ネイゲイも戦死する。
だが、イェーガも、エンパイアコスモスへの突破口を開く突撃を仕掛け、艦と運命を共にする。
ベインの乗艦も轟沈し、既に艦隊戦は互いに指揮系統を失い、収拾の付かない乱戦となり、エンパイアコスモスに上陸した部隊と防衛軍の白兵戦がはじまっていた。
フェザリアードは要塞にて最後の指揮をとるが、艦隊を率いてこそ羽ばたく彼も、要塞守備の白兵戦においてはもはや翼をもがれた存在でしかなく、彼の子飼いの将で、最後に残ったセルシアも要塞内の戦いで瓦礫の下敷となり、フェザリアードは艦隊を奪われた悲劇の海将としての名を残しながら、炎上し、崩壊していく要塞と共に果てた。
艦隊の質、量、有数な海将、全てにおいてアル国が優勢であったにも関わらず、戦いはベルザフィリス国の辛勝で幕を下ろした。
- アル国が、自らエンパイアコスモスに篭って行動の制限を作った。
- ルッダリザ艦隊の指揮権をフェザリアードから取り上げた。
- ネイゲイが勘違いから旗艦の場所を敵に知らせ、緒戦で大損害を出した。
- 風にのった偶然の流れ矢によりフェザリアードが地上部隊に回された。
エンパイアコスモス要塞の戦闘に関してだが、これは前述した外伝「鳴鳳の海将」での戦闘描写が史実よりも有名となっている。
指揮官でありながら、その座をイェーガに譲り、自ら友となった兵卒を率いて剣を振るうヒサヴェヌア。
混戦の中、親友ザガの仇フェザリアードを見つけ、彼の片目を射抜くが、その猪突が原因で彼を退かせる為にしんがりを務めたライドルを死なせてしまう。
これが原因で彼らの結束も一度はばらばらになりかけるが、結局は更なる絆で結ばれる。
そして最終決戦の日を向かえ、ヒサヴェヌアとフェザリアードは甲板で壮絶な一騎討ちを繰り広げる。
子飼いの将ベルナがこれに横から割ってはいるが、オリアがそのベルナに踊りかかり、両者は縺れ合って砲台へと流れていく、そこに主砲が火を吹き、二人は一瞬にして蒸発する。
一方、要塞内へ侵入したエレーナだが、セルシアの槍に貫かれて落命、そこに駆けつけたヒサヴェヌアとセルシアは壮絶な戦いを繰り広げるが、爆発で落ちてきた瓦礫によってセルシアも飲み込まれていく。
己を死神と比喩するフェザリアードとヒサヴェヌアは崩れ落ちる要塞で最後の一騎討ちを繰り広げ、悲劇の海将も散っていく。
ただ一人生き残ったリィザは皆を故郷の村に弔うと言い、ヒサヴェヌアに別れを告げて去っていく。
指揮官でありながら、その座をイェーガに譲り、自ら友となった兵卒を率いて剣を振るうヒサヴェヌア。
混戦の中、親友ザガの仇フェザリアードを見つけ、彼の片目を射抜くが、その猪突が原因で彼を退かせる為にしんがりを務めたライドルを死なせてしまう。
これが原因で彼らの結束も一度はばらばらになりかけるが、結局は更なる絆で結ばれる。
そして最終決戦の日を向かえ、ヒサヴェヌアとフェザリアードは甲板で壮絶な一騎討ちを繰り広げる。
子飼いの将ベルナがこれに横から割ってはいるが、オリアがそのベルナに踊りかかり、両者は縺れ合って砲台へと流れていく、そこに主砲が火を吹き、二人は一瞬にして蒸発する。
一方、要塞内へ侵入したエレーナだが、セルシアの槍に貫かれて落命、そこに駆けつけたヒサヴェヌアとセルシアは壮絶な戦いを繰り広げるが、爆発で落ちてきた瓦礫によってセルシアも飲み込まれていく。
己を死神と比喩するフェザリアードとヒサヴェヌアは崩れ落ちる要塞で最後の一騎討ちを繰り広げ、悲劇の海将も散っていく。
ただ一人生き残ったリィザは皆を故郷の村に弔うと言い、ヒサヴェヌアに別れを告げて去っていく。
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