最終更新: touhou_icha 2012年06月18日(月) 21:06:02履歴
さとりと昼寝EXの続き
「……いや、それどうなんですか、こいし様」
「えー、でも、あの人って結構淡白そうだしさあ」
「……まあ朴念仁とは思いますけど」
食堂から燐とこいしの声が聞こえてきて、さとりはそちらに顔を出した。
「二人とも、まだ起きていたのね」
何の話をしていたのか読み取ろうとする前に、こいしが満面の笑みで近付いてくる。
「あ、お姉ちゃんいいところに来たねー」
「……何というか、凄いタイミングですねさとり様も」
燐の何とも言えない表情と話の概略を教える思考に一瞬たじろいで、さとりは自分の手を握り締める妹を見下ろした。
「……何かしら、こいし」
「あのね」
ぱっ、と楽しげな笑みを浮かべて、こいしはこう告げた。
「あの人を喜ばせる方法、試してみない?」
ぎゅうと枕を抱きしめて、さとりがベッドの上に座っている。
風呂から上がって、入る前に言われた通りにさとりの部屋に訪ねてきて、まず目にしたのがそれだった。
「……どうしました」
尋ねても、枕に隠していても紅いとわかる顔を横に振るだけだ。ご丁寧に、第三の目までさとりの向こうに隠れている。
むう、と軽く唸って、青年は頭をかいた。どうしたらいいものかわからない。
さとりもまた、何も話そうとしない、というより、恥ずかしくて声が出せない、ように見える。
「ああ、もう、すみません失礼します」
「……あっ」
埒があかないと考えて、彼はおもむろに近付き、その手から枕を奪い取る。
「……っ!?」
その瞬間、思考が停止しかけた。
焦れたわけではない。決して焦ったわけでもない。
ただ、枕を取らないと話が進まない、と思っただけだったのだ。
「あ、これは、そのっ」
さとりは慌てて自分の身体を隠すように縮こまる。
だが、隠しきれるはずもない。
「…………どうして、そんな格好してるか、訊いていいっすか」
目を逸らす。逸らさずにどうして平静を保てようか。
首もとまで真っ赤に染めて、さとりはこくりと頷いた。
その身を覆うのは、薄布一枚。正確には、エプロンと呼ばれるそれ一枚だけ、だった。
「……だって、男の人は、こういうの、好きなんでしょう?」
恥ずかしそうに俯きながら、さとりはぎゅっとエプロンの裾を握りしめる。
「……現に、貴方も悦んでるし」
「……それはまあ、すみません」
頭をかきながら、ぼそぼそと呟いた。
ベッドの上で恋人が裸エプロンで待っていたら、どんな男だって反応するだろう。
「……どこから仕入れた情報かも気になりますがね」
「…………こいしとか、お燐とか」
「………………」
二の句が継げない。
「それで、気が付いたら、こうなってたの」
「……わかりました、大体わかりました」
またこいしあたりに玩具にされたのだろう。こいしはさとりを通してこちらまでからかってくるから性質が悪い。
「……戸惑ってるわ、ね」
「そりゃあ、まあ」
目の前にこんな姿を見せられて、動揺しない方がおかしい。
手を出しあぐねていると言った方が正しいかもしれない。今にも襲いかかりたくはあるのだが、さてどうしたものか。
それを読んでか、かあ、と、さとりは顔を赤くして、告げる。
「……いいの、よ?」
「え」
「……私が、どういう思いで、このままでいたか……わかるでしょう?」
彼が来るまでに、確かに時間はあった。もし着替えるなら、そんな時間はいくらでも。
それに気が付いた瞬間、肌を赤く染めたままのさとりを、くいと引き寄せて抱きしめる。
「きゃ、もう……」
「すみません、でも、そんなこと言われて、我慢なんかできない」
口唇を重ね、さとりの手に自分の手を重ねて、彼は囁く。
「いいですよね」
その言葉に、さとりはぞくりとしたように身体を震わせて、ゆっくりと頷いた。
膝の上に後ろ向きに乗せられて、さとりは少し不安げに背後の彼を振り返るように見上げた。
「こんな体勢がいいの?」
「いやまあ」
「……いいのね」
じと目で睨むと、彼は少し困ったような顔をした。
「もう、『そんな様子も』、だなんて、何思ってるの……」
「可愛いんですから。仕方ないでしょう」
そう言いながら、エプロンの脇の部分に手を伸ばしてくる。
「んっ」
普段と違う状況だからか、ただ触れられているだけでも、随分と恥ずかしい。
「……そんな、触り方……っ!」
「普通のつもりですがね」
彼の手が、柔らかく揉みしだいてくる。そういうわけではないはずなのにいらやしく思えて、さとりは身を捩った。
エプロンはそこまで余裕のあるものではないから、エプロンに彼の手の形が浮かび上がっていて、さとりの羞恥を煽る。
彼も同じことは感じていて、柔肉の感触を楽しみながら、視覚的にも楽しんでいるようだった。
(何というか、随分と、エロいな……)
「やあ、そんなこと……っ」
目を閉じて、さとりはそれから目を逸らそうとした。
それでも、彼の感じているものを遮断することは出来ないから、どうしても自分の格好を意識させられることになる。
胸の先端に彼の指がかかり、こね、摘み、押しつぶすように指の腹で撫でてきた。
「や、んん、んうっ……あ、うう……」
決して豊満ではない、と自分では思っている胸を、彼の指が好き放題に弄ぶ。
「は、あ……っ。んんっ……」
身をのけぞらせると、口付けが降ってきた。重ねた口唇を割って舌が入り込んでくる。
「ん、んんっ。ん……」
シーツをきゅっと掴んで、刺激と快感に耐える。耐える必要はないといつも言われるのだが、やはり恥ずかしい。
(可愛いな)
その想いだけで、さとりの頬に朱が上る。どうしてこう恥ずかしいことばかり想うのだろう。
それが不快でなく、さとりの中に悦びとして返ってくるから、さとりは困るのだ。
「……ね」
「はい?」
「これ、ん、その」
口唇を離して、彼が寝間着にしている甚平を引っ張る。
(……脱いだ方がいいってことかな)
彼の心の声に、こくこくと頷く。服の感触よりも素肌の感触が好きなのもあるにはあるが。
「私だけじゃ、恥ずかしいもの」
「ああ、うん」
(一応、一枚は着てるはずなんだけどな)
意地悪な思考に、さとりはまた紅くなる。
「そ、それは、そのっ」
「すんません、苛めすぎた」
頬に一つ口付けて、彼はさとりを離すと手早く衣服を脱いだ。適当に放って、再びさとりを抱きしめる。
(本当に、随分といけないことしてるみたいだな)
「……そんなこと、思わなくても」
さとりは紅くなった身を彼に委ねる。どこか背徳的なのは、彼女にもよくわかっていた。
火照っている肌に、再び彼の手が這い回る。
「んっ、んん」
それを待ち望んでいるかのような声が出て、さとりは再び顔を赤らめた。
胸から腹、その下まで伸びた手は、一番敏感なところにたどり着いて、粘ついたような音を立てる。
「……もう、結構」
(濡れてるな)
「やっ……」
恥ずかしさを振り切るように、さとりは首を振る。
「あ、貴方が、そんな風に触るから……!」
そう呟いた瞬間、彼の中の情欲が膨れ上がって、さとりは軽く身体を震わせた。
ぞくぞくする感覚と、どこかそれを歓迎するような想いが自分の中で綯い交ぜになって、自分がよくわからなくなる。
(何故心読めるのに、俺を煽るようなことばかり言うかな)
「そ、そんなの、知らない……っっ!」
下腹部に伸びた指が秘所の入り口と淫核を撫で上げ、さとりは上げかけた声を押さえ込んだ。
「っ、んん、っ……や、あっ、はげし……!」
彼の片方の手は胸をまさぐり、もう片方は淫核を刺激して、淫らな音を立てる。
実際に触れられているところは見えないのに、それが逆に羞恥と、何故か情欲を煽った。
強すぎる愛撫から逃げようとしても、彼の力強い腕に阻まれて、まるで拘束されているかのように身じろぎするだけに終わる。
「は、はっ、んあ、ふぁ、んん」
さとりの息が次第に早くなり、熱いものを纏わせ始める。もう、限界は近くに訪れていた。
(そろそろ、かな)
彼の声が、さとりをさらに追い詰める。必死に頷くさとりに、彼の心がまた一つ、歓喜に躍った。
(いいから、そのまま)
イってしまっていい。その言葉が止めになったように、さとりの身体は自身の意識とは関係なく跳ねた。
「や、ああっ、ああん、ん、んん、ああ……!」
何かが弾けるような感覚とともに、さとりはぐったりと彼にもたれかかった。
快感の余韻が身体を震わせ、息は荒いままなかなか戻ってこない。
「ん、はあ……ん、は、あ……」
少し汗ばむ肌に彼の肌の感触が気持ちよくて、さとりは息を整えるように大きくため息をつく。
「……大丈夫?」
こく、と頷いた。それと同時に、すでに大きくなっていた彼自身の感触に気が付く。
(続き、いいだろうか)
再び頷いて、口付けを求める。優しく口付けられた後、さとりは後ろから抱きしめられたまま、前に倒された。
一瞬、何が起こったのかわからなかったような素振りの後、さとりは驚いたような声を上げた。
「え、あ、まさか……」
「その、まさか」
背後から押し倒して、四つん這いになったさとりに、彼は何とも言い難い背徳感を抱いた。
「や、こんな格好……!」
「折角だから」
そう言いながら、彼は覆い被さったまま、エプロンの中に掌を入れて胸を撫で回す。
「や、ん、んんぅ……」
大人しく、さとりはその愛撫を受け入れた。快感に震えながら、潤んだ瞳で彼を見上げる。
そして、まだ荒く、甘く、熱い吐息を漏らしながら、囁き程度の言葉で告げた。
「……そんなに、したいなら、いいの、よ?」
何が、とは聞き返さなかった。ぐう、と唸りを漏らしそうになるのをこらえて、自身をあてがう。
少し焦らすように動かして、十分に濡れているのを確認した。
「や、そんなこと、しないで……」
格好が格好だからか、そう告げることさえどこか艶っぽく見える。
飛びそうになる理性を押さえて、そっと推し進めた。
「ん、ふ、ぁ、ひゃう……」
甘い声が、理性を音を立てて削っていく。
ゆっくりと進めるつもりだったが、耐えきれなくなりそうでそのまま一気に中まで突き入れた。
「ああっ!」
嬌声を上げてシーツを掴むさとりの手を、上から押さえ込むように手で包み込む。
「あ、ああっ、は、っ、ふぁ……!」
辛いのか、さとりは上体をシーツに押しつけてしまっていた。腕で支えられないのだろう。
「ふぁ、だ、だって、強い、ん、だもの」
「すみません、優しくします」
そう言いながら、彼は動こうとするのをやめて、さとりが落ち着くまで待つことにした。
「ふ、ああ……ん、んん」
「大丈夫?」
「だ、だいじょう、ぶ……」
到底大丈夫には見えない。やりすぎたかと、少し待とうと、そう思った彼に、さとりは少し責めるような瞳で呟いた。
「ふぁ、だっ、て、貴方のが、おおきい、から」
ぷつん、と何かが切れた気がした。片方の腕を腰に回して、自分の方に抱き寄せる。
「あ、や、また、おっきく……」
「すんません、無理」
そう囁いて、項に強く口付けた。紅い痕が残るが構わず、背中にも口付けの雨を降らせる。
「あっ、や、んんん、ふぁ、ああっ」
抱きかかえたまま、激しく腰を動かす。
すぐにでも果ててしまいたいほどの欲に駆られ、それと同時にさとりをもっと満足させたい想いに駆られる。
「ふ、ああっ!」
強くこすり上げた瞬間、さとりが果てたのが感覚でわかった。それでも止められず、快感を増すように動き続ける。
自分の快感を求めているのか、さとりの乱れようを見ていたいのか、自分の中でも曖昧になってきた。
あるいは両方。愛しい相手のこんな様子、見ていたくないわけがないだろう。
「ん、んん、あ、ん、あああああっ!」
「くっ、っ!」
一際強い締め付けに、彼も耐えきれず自分の欲を解放する。大きく息をつきながら、押さえつけていた手を離す。
「だいじょ、うぶ、ですか」
「ん、うん……」
身体の下で荒い息をつくさとりから、彼は身体を離す。
まだ繋がっているところからまだ快感が襲ってきていて、耐えきれなくなりそうだった。
いくらなんでも、連続でというのは節操のないようにも思う。
「ん、あ……あっ」
引き抜かれて、甘い声を出しながら、くたりとそのままさとりは身を横に倒した。
秘所からは、今し方注ぎ込んだ濁ったものが流れ出している。
そして少しぼんやりとした、どこかとろんとした視線で、さとりはこちらを見上げていた。
その様子はあまりに艶めかしく、あまりに扇情的で。
少しは大人しくなると思った自身が、また力を取り戻すのを感じてしまう。
さっき節操ないと思ったのはどこのどいつだ、と思いながらも、身体は先に動いてしまっていた。
「すんません、さとり様」
言いながら、さとりの肩を掴み、自分の方に相対させる。
さとりはその意図を動作と心で悟ったのか、慌てたように目を瞬かせ、焦ったような表情をした。
「え、ま、また……? でも」
何か言いかけた口を強引に塞いで、彼は再びさとりに自身をあてがう。
「すみません」
離した口唇から糸を引かせながら、謝罪の言葉を口にした。
精を一度受け入れているそこはまだ濡れていて、容易く彼を受けいれる。
「ひゃ、あああん!」
可愛らしい悲鳴を上げたさとりに、まるで襲っているような感覚で、彼は奥まで自身を突き入れた。
「あ、あっ、んあ、もう、だめぇ……」
声とは裏腹に、さとりの中は彼を包み込んで離さない。
淫らな音が、動く度に繋がっているところから聞こえてくる。
「ふ、ぁ、んんぅ……ああっ」
締め付けはなお強くて、彼の喉から唸りを漏らさせる。
また達してしまったらしく、さとりの身体が一つ跳ねた。
「ひゃ、あん、だめ、いま、つよいの、に……!」
抗議に近い言葉が返ってくるが、それすらも甘い音であれば、さらに求めるように聞こえてしまう。
達したばかりの中が、彼を痛いほどに締め付け、包み込む。それでもまだ求めるように蠢いていて、彼の興奮を促してくる。
「あ、ん、んん、あっ!」
また、びくんと中が震える。また達したのか、それとも下りてこられないのか。
どちらでもいい。愛しさのまま貪るように口唇を奪い、水音がし続ける中をかき回す。
ふと、第三の目がこちらを見つめてることに気がついた。この想いも読んでいるのだろうか。
思いのままに、こちらを見つめ続けるそれに指を触れさせ、そっと撫でる。
「や、だめ、そこは触っちゃだめ……!」
さとりの身体がおののくように震えて、彼を飲み込んだままの秘部もまた、痛いほどに締め付けてきた。
「わかんなく、なっちゃう、こわれちゃう、からぁ……!」
甘い声で抵抗するさとりに、嗜虐心と支配欲を刺激される。
壊れてもいい、わからなくていい、自分だけを感じていてほしい。
そんな利己的な思いが一瞬自分を支配し、けれどもそれだけではないのだと心に呟いた。
それだけではないから、さとりが欲しいのだ。
だから、と、彼はさとりの中で動きながら、さとりに囁く。
「大丈夫」
快楽に震えるさとりの耳元で、せめて言葉だけは優しく聞こえるように。
「愛してる」
指を絡めて、涙を浮かべている目元に口付ける。
酷いことをしている自覚がないわけではない。それでも、愛しているということはきちんと伝えたかった。
「愛してるよ」
その囁きに、潤んだ瞳と第三の目が、こちらを捉えた。
「すき、だいすき、だいすきぃ……っ!」
涙をこぼしながら、ぎゅっとさとりは抱きついてくる。
彼の想いを確かめるように、第三の目がこちらを見つめていた。
全部見ればいいと思った。
全部読んでしまえばいいと思った。
この愛おしさが、感情が、全部伝わればいいと思った。
「っ、ふぁ、あ、っく、んん……っ!」
もう何度目になるかわからない高い嬌声が、さとりの口から漏れる。
締め付けてくる中も、もし独りよがりでないのならば、随分悦んでくれている証なのだろう。
「あ、ん、ん、んん」
口唇を塞いで、舌を絡めて、その甘さに酔う。さとりもまた彼を求めるように舌を絡めてきた。
普段だとひどく恥ずかしがるのだが、今はそれすら考えられないらしい。
「ひゃ、ああ、んんっ、ふああ……っ」
さとりの表情と声が蕩けたものになっていく。それがまた、彼を煽り立てるというのに。
エプロンの上から胸に手を伸ばし、さらなる快楽を与えられるように――かつ、自分の望むままに、さとりを責め立てる。
「ん、ああ、んんん……っ」
胸元に強く吸い付いて、紅い痕を残して。
耳元に、心に愛を囁いて。
全身で思いを伝えられるように、強く抱きしめて。
「ふ、ああ、あああああっ……!」
「っ、く、うっ……」
さとりから抱きしめる腕の力が強くなり、彼女の身体が再び大きく震えた。
それと共に、自身の限界も感じて、彼はさとりの中に欲望を解き放つ。
「……くう……はあ……」
唸りに近いものを漏らしつつ、彼はさとりを解放した。
繋がっていたところから再びどろりと濁ったものが溢れてきていて、それがまたどこか艶っぽくも映る。
「は、あ……ん、はぁ……」
それを感じているだろうに、とろん、と蕩けたような表情のまま、さとりはぼんやりとこちらを見上げている。
焦点は合っていない。ぼうっとなったまま、こちらを見ている――が、たぶんいつもの如く見えていない。
「……しまった、またやった」
ぼそりと呟いて彼は頭をかく。完全に放心状態なのはわかっていた。
いや今回はさとりの挑発に近いものがあったからだと弁解するも、自分の中でさえその声は弱い。
「……とりあえず、身体拭いて……その前、に」
そう言いながら、汗だけでないもので汚してしまったエプロンを脱がせる。
このままだと、気が付いた後にまた襲ってしまいかねなかった。
「う、んん……?」
「……ああ、ようやく気が付いた」
気が付いたさとりの耳に、安堵に満ちた声が届いた。
「ん……」
身体を襲うけだるさと、何とも掴みにくい幸福感を同時に感じながら、さとりは目を瞬かせる。
部屋の明かりは落とされ、枕元の光だけに、互いの姿がぼんやりと浮かぶのみ。
そんな中で、彼はずっとさとりの頭を撫でていてくれたようだった。
「……だいぶ、気を失ってた?」
「気を失うというか、茫然自失というか」
ほっとした声色で、彼は告げた。随分心配させたようだ。
それにぼうっとなるような心地よさを感じながら、今日の乱れようを思い出して恥ずかしくなる。
その気恥ずかしさを誤魔化すように、拗ねたような声で尋ねた。
「……今日は、ずいぶん、その、激しかったわ、ね?」
「……これに懲りたら、あまりこういうことはしないことです」
紅い頬をかいて、彼はそう応えた。やりすぎたという反省がその言葉の裏にはある。
「……嫌でしたか」
(随分、無理矢理やったから)
心配そうな声が降りてきた。やりすぎて嫌われてはないだろうかと心配だったらしい。
「嫌だったら」
さとりは彼に身を寄せて囁く。そんなことはないのだと、きちんと伝えるために。
「そもそも、こういうことをしていないわ……私は、貴方だから」
「……だから、そういうこと言われると、また襲いたくなるでしょうが」
ぎゅうと抱きしめられて、さとりは顔を紅くしながらも頬を緩ませる。
彼の言っていることは事実だったが、それよりも彼が照れているという事実が嬉しかった。
「……何か笑ってません?」
「気のせいよ」
「いいや、気のせいじゃないですね。ったく」
くしゃくしゃと癖のある髪を撫でられて、さとりは幸せな想いで微笑む。
「でもまあその、やりすぎてしまうと言うか、何というかちょっと歯止め利かなくなるので、程々にお願いします」
「ん」
彼の胸に顔を埋めて、さとりは頷いた。
彼の中には、本気が半分、次は自制しようという思いが半分。そしてその中心には、さとりへの想いがある。
それに酔ってしまいそうになりながら、さとりは彼の顔をのぞき込めるように軽く身体を離して首を傾げた。
「……でも、たまになら、いいかしら?」
「そりゃ、俺はいつでも大歓迎ですが、さとり様が動けなくなるでしょうに」
頬をかいて、彼は再びさとりを抱き寄せる。
「明日は用事があるんでしょう? 勇儀さんと会うとか。大丈夫ですか?」
「……たぶん、大丈夫。でも、そうね。次からは考えます」
少し甘えるように言ってみる。こうして甘えられるのは、この二人きりの時間だけの特権だった。
(ああ、くそう、可愛いなあ……)
彼の想いが流れ込んでくる。照れるけれども、とても嬉しい。
「……もっと、ぎゅっとして」
「はい」
(いくらでも)
その思考に甘えて、さとりも彼の胸に抱きついた。
安心できる想いとともに、疲労感と眠気が襲ってくる。
ここまでにしてしまうのは惜しい気もしたが、明日もあるのだから仕方ない。
「……眠たいです?」
「ん、うん……」
重い瞼をこすると、彼は枕元の明かりを消した。暗くなると、また眠気が強くなったように思う。
そして、同時に彼の温もりもまた、強く感じた。
「おやすみなさい、また明日」
「うん、おやすみなさい……」
彼の口付けが額に下りてきたのを感じて、さとりは幸せな想いで瞳を閉じた。
意識が眠りの中に溶けていくのには、そう時間はかからなかった。
翌日。出かけようとするさとりに、それを見かけた燐が声をかけてきた。
「さとり様、お出かけで?」
「ええ、お燐。いつもの鬼との会談で」
「お気をつけて。まあどうせ相手はいつも通り勇儀さんでしょうけど」
そう言いながら、さとりの服装を確認していて、燐は、あれ、とつぶやいた。
「さとり様、どうしましたこれ?」
「え?」
「ここ」
燐が指したのは項の辺り。さとりも手を当ててみるが、特に何か痛むというわけでも――と思った瞬間。
(何か、紅い痣がありますよ)
その心の声に、一気に耳まで紅くなった。原因も理由も全部思い当たったからだった。
その様子だけで、燐は何があったのか悟ったようだった。というより、悟っていた。
(……あいつか……意外にやるもんだね)
感心なのか呆れなのかわからない呟きを胸中でして、燐はさとりに告げた。
「……薄めの紗で隠せると思いますんで、準備してきます。見つかったら会談どころじゃなくなりますよ」
「ごめんなさい、お願い」
「あいつはあたいらがとっちめときますか」
「……帰ったら私から言っておくからいいわ。釘だけ差しておいてもらっていいかしら。今日はここにいるはずだし」
「了解しました」
そう、燐が駆けていくのを見送って、さとりは、ふう、と息をついた。
恥ずかしいし、照れくさいけれど、こうして彼の痕が残っているのを少しでも嬉しいと思ってしまったからだった。
「……重傷なのね、きっと」
致命傷かしら、と呟いて、さとりは仕方なさそうに、少しだけ微笑んだ。
ロダicyanecyo_0318.txt
SS : 古明地 さとりへ戻る
「……いや、それどうなんですか、こいし様」
「えー、でも、あの人って結構淡白そうだしさあ」
「……まあ朴念仁とは思いますけど」
食堂から燐とこいしの声が聞こえてきて、さとりはそちらに顔を出した。
「二人とも、まだ起きていたのね」
何の話をしていたのか読み取ろうとする前に、こいしが満面の笑みで近付いてくる。
「あ、お姉ちゃんいいところに来たねー」
「……何というか、凄いタイミングですねさとり様も」
燐の何とも言えない表情と話の概略を教える思考に一瞬たじろいで、さとりは自分の手を握り締める妹を見下ろした。
「……何かしら、こいし」
「あのね」
ぱっ、と楽しげな笑みを浮かべて、こいしはこう告げた。
「あの人を喜ばせる方法、試してみない?」
ぎゅうと枕を抱きしめて、さとりがベッドの上に座っている。
風呂から上がって、入る前に言われた通りにさとりの部屋に訪ねてきて、まず目にしたのがそれだった。
「……どうしました」
尋ねても、枕に隠していても紅いとわかる顔を横に振るだけだ。ご丁寧に、第三の目までさとりの向こうに隠れている。
むう、と軽く唸って、青年は頭をかいた。どうしたらいいものかわからない。
さとりもまた、何も話そうとしない、というより、恥ずかしくて声が出せない、ように見える。
「ああ、もう、すみません失礼します」
「……あっ」
埒があかないと考えて、彼はおもむろに近付き、その手から枕を奪い取る。
「……っ!?」
その瞬間、思考が停止しかけた。
焦れたわけではない。決して焦ったわけでもない。
ただ、枕を取らないと話が進まない、と思っただけだったのだ。
「あ、これは、そのっ」
さとりは慌てて自分の身体を隠すように縮こまる。
だが、隠しきれるはずもない。
「…………どうして、そんな格好してるか、訊いていいっすか」
目を逸らす。逸らさずにどうして平静を保てようか。
首もとまで真っ赤に染めて、さとりはこくりと頷いた。
その身を覆うのは、薄布一枚。正確には、エプロンと呼ばれるそれ一枚だけ、だった。
「……だって、男の人は、こういうの、好きなんでしょう?」
恥ずかしそうに俯きながら、さとりはぎゅっとエプロンの裾を握りしめる。
「……現に、貴方も悦んでるし」
「……それはまあ、すみません」
頭をかきながら、ぼそぼそと呟いた。
ベッドの上で恋人が裸エプロンで待っていたら、どんな男だって反応するだろう。
「……どこから仕入れた情報かも気になりますがね」
「…………こいしとか、お燐とか」
「………………」
二の句が継げない。
「それで、気が付いたら、こうなってたの」
「……わかりました、大体わかりました」
またこいしあたりに玩具にされたのだろう。こいしはさとりを通してこちらまでからかってくるから性質が悪い。
「……戸惑ってるわ、ね」
「そりゃあ、まあ」
目の前にこんな姿を見せられて、動揺しない方がおかしい。
手を出しあぐねていると言った方が正しいかもしれない。今にも襲いかかりたくはあるのだが、さてどうしたものか。
それを読んでか、かあ、と、さとりは顔を赤くして、告げる。
「……いいの、よ?」
「え」
「……私が、どういう思いで、このままでいたか……わかるでしょう?」
彼が来るまでに、確かに時間はあった。もし着替えるなら、そんな時間はいくらでも。
それに気が付いた瞬間、肌を赤く染めたままのさとりを、くいと引き寄せて抱きしめる。
「きゃ、もう……」
「すみません、でも、そんなこと言われて、我慢なんかできない」
口唇を重ね、さとりの手に自分の手を重ねて、彼は囁く。
「いいですよね」
その言葉に、さとりはぞくりとしたように身体を震わせて、ゆっくりと頷いた。
膝の上に後ろ向きに乗せられて、さとりは少し不安げに背後の彼を振り返るように見上げた。
「こんな体勢がいいの?」
「いやまあ」
「……いいのね」
じと目で睨むと、彼は少し困ったような顔をした。
「もう、『そんな様子も』、だなんて、何思ってるの……」
「可愛いんですから。仕方ないでしょう」
そう言いながら、エプロンの脇の部分に手を伸ばしてくる。
「んっ」
普段と違う状況だからか、ただ触れられているだけでも、随分と恥ずかしい。
「……そんな、触り方……っ!」
「普通のつもりですがね」
彼の手が、柔らかく揉みしだいてくる。そういうわけではないはずなのにいらやしく思えて、さとりは身を捩った。
エプロンはそこまで余裕のあるものではないから、エプロンに彼の手の形が浮かび上がっていて、さとりの羞恥を煽る。
彼も同じことは感じていて、柔肉の感触を楽しみながら、視覚的にも楽しんでいるようだった。
(何というか、随分と、エロいな……)
「やあ、そんなこと……っ」
目を閉じて、さとりはそれから目を逸らそうとした。
それでも、彼の感じているものを遮断することは出来ないから、どうしても自分の格好を意識させられることになる。
胸の先端に彼の指がかかり、こね、摘み、押しつぶすように指の腹で撫でてきた。
「や、んん、んうっ……あ、うう……」
決して豊満ではない、と自分では思っている胸を、彼の指が好き放題に弄ぶ。
「は、あ……っ。んんっ……」
身をのけぞらせると、口付けが降ってきた。重ねた口唇を割って舌が入り込んでくる。
「ん、んんっ。ん……」
シーツをきゅっと掴んで、刺激と快感に耐える。耐える必要はないといつも言われるのだが、やはり恥ずかしい。
(可愛いな)
その想いだけで、さとりの頬に朱が上る。どうしてこう恥ずかしいことばかり想うのだろう。
それが不快でなく、さとりの中に悦びとして返ってくるから、さとりは困るのだ。
「……ね」
「はい?」
「これ、ん、その」
口唇を離して、彼が寝間着にしている甚平を引っ張る。
(……脱いだ方がいいってことかな)
彼の心の声に、こくこくと頷く。服の感触よりも素肌の感触が好きなのもあるにはあるが。
「私だけじゃ、恥ずかしいもの」
「ああ、うん」
(一応、一枚は着てるはずなんだけどな)
意地悪な思考に、さとりはまた紅くなる。
「そ、それは、そのっ」
「すんません、苛めすぎた」
頬に一つ口付けて、彼はさとりを離すと手早く衣服を脱いだ。適当に放って、再びさとりを抱きしめる。
(本当に、随分といけないことしてるみたいだな)
「……そんなこと、思わなくても」
さとりは紅くなった身を彼に委ねる。どこか背徳的なのは、彼女にもよくわかっていた。
火照っている肌に、再び彼の手が這い回る。
「んっ、んん」
それを待ち望んでいるかのような声が出て、さとりは再び顔を赤らめた。
胸から腹、その下まで伸びた手は、一番敏感なところにたどり着いて、粘ついたような音を立てる。
「……もう、結構」
(濡れてるな)
「やっ……」
恥ずかしさを振り切るように、さとりは首を振る。
「あ、貴方が、そんな風に触るから……!」
そう呟いた瞬間、彼の中の情欲が膨れ上がって、さとりは軽く身体を震わせた。
ぞくぞくする感覚と、どこかそれを歓迎するような想いが自分の中で綯い交ぜになって、自分がよくわからなくなる。
(何故心読めるのに、俺を煽るようなことばかり言うかな)
「そ、そんなの、知らない……っっ!」
下腹部に伸びた指が秘所の入り口と淫核を撫で上げ、さとりは上げかけた声を押さえ込んだ。
「っ、んん、っ……や、あっ、はげし……!」
彼の片方の手は胸をまさぐり、もう片方は淫核を刺激して、淫らな音を立てる。
実際に触れられているところは見えないのに、それが逆に羞恥と、何故か情欲を煽った。
強すぎる愛撫から逃げようとしても、彼の力強い腕に阻まれて、まるで拘束されているかのように身じろぎするだけに終わる。
「は、はっ、んあ、ふぁ、んん」
さとりの息が次第に早くなり、熱いものを纏わせ始める。もう、限界は近くに訪れていた。
(そろそろ、かな)
彼の声が、さとりをさらに追い詰める。必死に頷くさとりに、彼の心がまた一つ、歓喜に躍った。
(いいから、そのまま)
イってしまっていい。その言葉が止めになったように、さとりの身体は自身の意識とは関係なく跳ねた。
「や、ああっ、ああん、ん、んん、ああ……!」
何かが弾けるような感覚とともに、さとりはぐったりと彼にもたれかかった。
快感の余韻が身体を震わせ、息は荒いままなかなか戻ってこない。
「ん、はあ……ん、は、あ……」
少し汗ばむ肌に彼の肌の感触が気持ちよくて、さとりは息を整えるように大きくため息をつく。
「……大丈夫?」
こく、と頷いた。それと同時に、すでに大きくなっていた彼自身の感触に気が付く。
(続き、いいだろうか)
再び頷いて、口付けを求める。優しく口付けられた後、さとりは後ろから抱きしめられたまま、前に倒された。
一瞬、何が起こったのかわからなかったような素振りの後、さとりは驚いたような声を上げた。
「え、あ、まさか……」
「その、まさか」
背後から押し倒して、四つん這いになったさとりに、彼は何とも言い難い背徳感を抱いた。
「や、こんな格好……!」
「折角だから」
そう言いながら、彼は覆い被さったまま、エプロンの中に掌を入れて胸を撫で回す。
「や、ん、んんぅ……」
大人しく、さとりはその愛撫を受け入れた。快感に震えながら、潤んだ瞳で彼を見上げる。
そして、まだ荒く、甘く、熱い吐息を漏らしながら、囁き程度の言葉で告げた。
「……そんなに、したいなら、いいの、よ?」
何が、とは聞き返さなかった。ぐう、と唸りを漏らしそうになるのをこらえて、自身をあてがう。
少し焦らすように動かして、十分に濡れているのを確認した。
「や、そんなこと、しないで……」
格好が格好だからか、そう告げることさえどこか艶っぽく見える。
飛びそうになる理性を押さえて、そっと推し進めた。
「ん、ふ、ぁ、ひゃう……」
甘い声が、理性を音を立てて削っていく。
ゆっくりと進めるつもりだったが、耐えきれなくなりそうでそのまま一気に中まで突き入れた。
「ああっ!」
嬌声を上げてシーツを掴むさとりの手を、上から押さえ込むように手で包み込む。
「あ、ああっ、は、っ、ふぁ……!」
辛いのか、さとりは上体をシーツに押しつけてしまっていた。腕で支えられないのだろう。
「ふぁ、だ、だって、強い、ん、だもの」
「すみません、優しくします」
そう言いながら、彼は動こうとするのをやめて、さとりが落ち着くまで待つことにした。
「ふ、ああ……ん、んん」
「大丈夫?」
「だ、だいじょう、ぶ……」
到底大丈夫には見えない。やりすぎたかと、少し待とうと、そう思った彼に、さとりは少し責めるような瞳で呟いた。
「ふぁ、だっ、て、貴方のが、おおきい、から」
ぷつん、と何かが切れた気がした。片方の腕を腰に回して、自分の方に抱き寄せる。
「あ、や、また、おっきく……」
「すんません、無理」
そう囁いて、項に強く口付けた。紅い痕が残るが構わず、背中にも口付けの雨を降らせる。
「あっ、や、んんん、ふぁ、ああっ」
抱きかかえたまま、激しく腰を動かす。
すぐにでも果ててしまいたいほどの欲に駆られ、それと同時にさとりをもっと満足させたい想いに駆られる。
「ふ、ああっ!」
強くこすり上げた瞬間、さとりが果てたのが感覚でわかった。それでも止められず、快感を増すように動き続ける。
自分の快感を求めているのか、さとりの乱れようを見ていたいのか、自分の中でも曖昧になってきた。
あるいは両方。愛しい相手のこんな様子、見ていたくないわけがないだろう。
「ん、んん、あ、ん、あああああっ!」
「くっ、っ!」
一際強い締め付けに、彼も耐えきれず自分の欲を解放する。大きく息をつきながら、押さえつけていた手を離す。
「だいじょ、うぶ、ですか」
「ん、うん……」
身体の下で荒い息をつくさとりから、彼は身体を離す。
まだ繋がっているところからまだ快感が襲ってきていて、耐えきれなくなりそうだった。
いくらなんでも、連続でというのは節操のないようにも思う。
「ん、あ……あっ」
引き抜かれて、甘い声を出しながら、くたりとそのままさとりは身を横に倒した。
秘所からは、今し方注ぎ込んだ濁ったものが流れ出している。
そして少しぼんやりとした、どこかとろんとした視線で、さとりはこちらを見上げていた。
その様子はあまりに艶めかしく、あまりに扇情的で。
少しは大人しくなると思った自身が、また力を取り戻すのを感じてしまう。
さっき節操ないと思ったのはどこのどいつだ、と思いながらも、身体は先に動いてしまっていた。
「すんません、さとり様」
言いながら、さとりの肩を掴み、自分の方に相対させる。
さとりはその意図を動作と心で悟ったのか、慌てたように目を瞬かせ、焦ったような表情をした。
「え、ま、また……? でも」
何か言いかけた口を強引に塞いで、彼は再びさとりに自身をあてがう。
「すみません」
離した口唇から糸を引かせながら、謝罪の言葉を口にした。
精を一度受け入れているそこはまだ濡れていて、容易く彼を受けいれる。
「ひゃ、あああん!」
可愛らしい悲鳴を上げたさとりに、まるで襲っているような感覚で、彼は奥まで自身を突き入れた。
「あ、あっ、んあ、もう、だめぇ……」
声とは裏腹に、さとりの中は彼を包み込んで離さない。
淫らな音が、動く度に繋がっているところから聞こえてくる。
「ふ、ぁ、んんぅ……ああっ」
締め付けはなお強くて、彼の喉から唸りを漏らさせる。
また達してしまったらしく、さとりの身体が一つ跳ねた。
「ひゃ、あん、だめ、いま、つよいの、に……!」
抗議に近い言葉が返ってくるが、それすらも甘い音であれば、さらに求めるように聞こえてしまう。
達したばかりの中が、彼を痛いほどに締め付け、包み込む。それでもまだ求めるように蠢いていて、彼の興奮を促してくる。
「あ、ん、んん、あっ!」
また、びくんと中が震える。また達したのか、それとも下りてこられないのか。
どちらでもいい。愛しさのまま貪るように口唇を奪い、水音がし続ける中をかき回す。
ふと、第三の目がこちらを見つめてることに気がついた。この想いも読んでいるのだろうか。
思いのままに、こちらを見つめ続けるそれに指を触れさせ、そっと撫でる。
「や、だめ、そこは触っちゃだめ……!」
さとりの身体がおののくように震えて、彼を飲み込んだままの秘部もまた、痛いほどに締め付けてきた。
「わかんなく、なっちゃう、こわれちゃう、からぁ……!」
甘い声で抵抗するさとりに、嗜虐心と支配欲を刺激される。
壊れてもいい、わからなくていい、自分だけを感じていてほしい。
そんな利己的な思いが一瞬自分を支配し、けれどもそれだけではないのだと心に呟いた。
それだけではないから、さとりが欲しいのだ。
だから、と、彼はさとりの中で動きながら、さとりに囁く。
「大丈夫」
快楽に震えるさとりの耳元で、せめて言葉だけは優しく聞こえるように。
「愛してる」
指を絡めて、涙を浮かべている目元に口付ける。
酷いことをしている自覚がないわけではない。それでも、愛しているということはきちんと伝えたかった。
「愛してるよ」
その囁きに、潤んだ瞳と第三の目が、こちらを捉えた。
「すき、だいすき、だいすきぃ……っ!」
涙をこぼしながら、ぎゅっとさとりは抱きついてくる。
彼の想いを確かめるように、第三の目がこちらを見つめていた。
全部見ればいいと思った。
全部読んでしまえばいいと思った。
この愛おしさが、感情が、全部伝わればいいと思った。
「っ、ふぁ、あ、っく、んん……っ!」
もう何度目になるかわからない高い嬌声が、さとりの口から漏れる。
締め付けてくる中も、もし独りよがりでないのならば、随分悦んでくれている証なのだろう。
「あ、ん、ん、んん」
口唇を塞いで、舌を絡めて、その甘さに酔う。さとりもまた彼を求めるように舌を絡めてきた。
普段だとひどく恥ずかしがるのだが、今はそれすら考えられないらしい。
「ひゃ、ああ、んんっ、ふああ……っ」
さとりの表情と声が蕩けたものになっていく。それがまた、彼を煽り立てるというのに。
エプロンの上から胸に手を伸ばし、さらなる快楽を与えられるように――かつ、自分の望むままに、さとりを責め立てる。
「ん、ああ、んんん……っ」
胸元に強く吸い付いて、紅い痕を残して。
耳元に、心に愛を囁いて。
全身で思いを伝えられるように、強く抱きしめて。
「ふ、ああ、あああああっ……!」
「っ、く、うっ……」
さとりから抱きしめる腕の力が強くなり、彼女の身体が再び大きく震えた。
それと共に、自身の限界も感じて、彼はさとりの中に欲望を解き放つ。
「……くう……はあ……」
唸りに近いものを漏らしつつ、彼はさとりを解放した。
繋がっていたところから再びどろりと濁ったものが溢れてきていて、それがまたどこか艶っぽくも映る。
「は、あ……ん、はぁ……」
それを感じているだろうに、とろん、と蕩けたような表情のまま、さとりはぼんやりとこちらを見上げている。
焦点は合っていない。ぼうっとなったまま、こちらを見ている――が、たぶんいつもの如く見えていない。
「……しまった、またやった」
ぼそりと呟いて彼は頭をかく。完全に放心状態なのはわかっていた。
いや今回はさとりの挑発に近いものがあったからだと弁解するも、自分の中でさえその声は弱い。
「……とりあえず、身体拭いて……その前、に」
そう言いながら、汗だけでないもので汚してしまったエプロンを脱がせる。
このままだと、気が付いた後にまた襲ってしまいかねなかった。
「う、んん……?」
「……ああ、ようやく気が付いた」
気が付いたさとりの耳に、安堵に満ちた声が届いた。
「ん……」
身体を襲うけだるさと、何とも掴みにくい幸福感を同時に感じながら、さとりは目を瞬かせる。
部屋の明かりは落とされ、枕元の光だけに、互いの姿がぼんやりと浮かぶのみ。
そんな中で、彼はずっとさとりの頭を撫でていてくれたようだった。
「……だいぶ、気を失ってた?」
「気を失うというか、茫然自失というか」
ほっとした声色で、彼は告げた。随分心配させたようだ。
それにぼうっとなるような心地よさを感じながら、今日の乱れようを思い出して恥ずかしくなる。
その気恥ずかしさを誤魔化すように、拗ねたような声で尋ねた。
「……今日は、ずいぶん、その、激しかったわ、ね?」
「……これに懲りたら、あまりこういうことはしないことです」
紅い頬をかいて、彼はそう応えた。やりすぎたという反省がその言葉の裏にはある。
「……嫌でしたか」
(随分、無理矢理やったから)
心配そうな声が降りてきた。やりすぎて嫌われてはないだろうかと心配だったらしい。
「嫌だったら」
さとりは彼に身を寄せて囁く。そんなことはないのだと、きちんと伝えるために。
「そもそも、こういうことをしていないわ……私は、貴方だから」
「……だから、そういうこと言われると、また襲いたくなるでしょうが」
ぎゅうと抱きしめられて、さとりは顔を紅くしながらも頬を緩ませる。
彼の言っていることは事実だったが、それよりも彼が照れているという事実が嬉しかった。
「……何か笑ってません?」
「気のせいよ」
「いいや、気のせいじゃないですね。ったく」
くしゃくしゃと癖のある髪を撫でられて、さとりは幸せな想いで微笑む。
「でもまあその、やりすぎてしまうと言うか、何というかちょっと歯止め利かなくなるので、程々にお願いします」
「ん」
彼の胸に顔を埋めて、さとりは頷いた。
彼の中には、本気が半分、次は自制しようという思いが半分。そしてその中心には、さとりへの想いがある。
それに酔ってしまいそうになりながら、さとりは彼の顔をのぞき込めるように軽く身体を離して首を傾げた。
「……でも、たまになら、いいかしら?」
「そりゃ、俺はいつでも大歓迎ですが、さとり様が動けなくなるでしょうに」
頬をかいて、彼は再びさとりを抱き寄せる。
「明日は用事があるんでしょう? 勇儀さんと会うとか。大丈夫ですか?」
「……たぶん、大丈夫。でも、そうね。次からは考えます」
少し甘えるように言ってみる。こうして甘えられるのは、この二人きりの時間だけの特権だった。
(ああ、くそう、可愛いなあ……)
彼の想いが流れ込んでくる。照れるけれども、とても嬉しい。
「……もっと、ぎゅっとして」
「はい」
(いくらでも)
その思考に甘えて、さとりも彼の胸に抱きついた。
安心できる想いとともに、疲労感と眠気が襲ってくる。
ここまでにしてしまうのは惜しい気もしたが、明日もあるのだから仕方ない。
「……眠たいです?」
「ん、うん……」
重い瞼をこすると、彼は枕元の明かりを消した。暗くなると、また眠気が強くなったように思う。
そして、同時に彼の温もりもまた、強く感じた。
「おやすみなさい、また明日」
「うん、おやすみなさい……」
彼の口付けが額に下りてきたのを感じて、さとりは幸せな想いで瞳を閉じた。
意識が眠りの中に溶けていくのには、そう時間はかからなかった。
翌日。出かけようとするさとりに、それを見かけた燐が声をかけてきた。
「さとり様、お出かけで?」
「ええ、お燐。いつもの鬼との会談で」
「お気をつけて。まあどうせ相手はいつも通り勇儀さんでしょうけど」
そう言いながら、さとりの服装を確認していて、燐は、あれ、とつぶやいた。
「さとり様、どうしましたこれ?」
「え?」
「ここ」
燐が指したのは項の辺り。さとりも手を当ててみるが、特に何か痛むというわけでも――と思った瞬間。
(何か、紅い痣がありますよ)
その心の声に、一気に耳まで紅くなった。原因も理由も全部思い当たったからだった。
その様子だけで、燐は何があったのか悟ったようだった。というより、悟っていた。
(……あいつか……意外にやるもんだね)
感心なのか呆れなのかわからない呟きを胸中でして、燐はさとりに告げた。
「……薄めの紗で隠せると思いますんで、準備してきます。見つかったら会談どころじゃなくなりますよ」
「ごめんなさい、お願い」
「あいつはあたいらがとっちめときますか」
「……帰ったら私から言っておくからいいわ。釘だけ差しておいてもらっていいかしら。今日はここにいるはずだし」
「了解しました」
そう、燐が駆けていくのを見送って、さとりは、ふう、と息をついた。
恥ずかしいし、照れくさいけれど、こうして彼の痕が残っているのを少しでも嬉しいと思ってしまったからだった。
「……重傷なのね、きっと」
致命傷かしら、と呟いて、さとりは仕方なさそうに、少しだけ微笑んだ。
ロダicyanecyo_0318.txt
SS : 古明地 さとりへ戻る
このページへのコメント
EX3が見たい、、、、
いいわ
いいわー