東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

昼を少し過ぎた頃の人里、それはこの場所が最も活気付く時間帯であった。
人々は通りを行き交い、各々目当ての店を目指す。
店先では店員が声を張り上げて品物を売り出し、またある店先では客と店員が値切り交渉で談笑していた。
そんな人々に混じって、○○もまた通りを歩いていた。
だが、その様子は少し妙だった。
どこか物珍しそうに、辺りを見回す様に歩いているのだ。
○○が幻想郷にやって来たのはそれなりに前の話であり、今更物珍しさに駆られる事などは無いのだが。
 
「ここ歩くのも半月ぶりかぁ……」
 
その理由は、ここ半月ほど泊まり込みで仕事をしていたからだ。
普段携わっている仕事の進捗が切羽詰まってしまったようで、止む無く泊まり込みで作業を推し進めるという方法が取られたらしい。
おかげで○○は半月近くもの間、人里から少し離れた作業現場にてひたすら従事する事となった。
作業の合間に人里に戻る余裕すら無く、作業現場と宿舎を行き来するだけの毎日。
お世辞にも良い作業環境とは言えなかったが、その苦労に見合うだけの報酬と代わりの休暇は貰えたので表立って文句を言うつもりは無いのだが。
そんな訳で、彼は久しぶりの人里の雰囲気を満喫していた。
 
「物凄い久しぶりって訳でも無いのに、なんか懐かしく感じられるな」
 
活気から縁遠い場所に隔離されていたから余計にそう思えるのかもしれない。
実際一緒に従事していた同僚達は、歓喜のあまりまだ日が高いというのに飲み屋が多くある繁華街の方へと向かって行ってしまった。
おそらく明日の朝日が昇る頃には、貰った報酬の殆どは消えてしまっている事だろう。
勿論○○としても貰った報酬で思い切り羽目を外し、豪遊したい気持ちが無い訳では無い。
だが、彼には分かっていた。
家で自分の帰りを待っている者がいる事を。
その事が分かっていたから、○○は寄り道をせずに直帰する所だったのだ。
 
「あいつにも寂しい思いさせちまったからな」
 
脳裏に待ち人の顔が浮かぶ。
○○としても久しぶりに『彼女』に会えるからか、家に赴く足取りはどこか軽やかだ。
そんな調子のまま人里の入口まで差し掛かった時――。
 
「……あ」
 
何かに気が付いたのか、思わず口から声を漏らした。
視線の先には木で作られた長椅子。
人々の休憩や待合の為に設置された物だろう。
その椅子に座る一人の少女。
裾や袖に赤い線の入った白くゆったりとした服を着て、赤いリボンが付いた同じ模様の帽子を被っている。
遠目からでも金糸の様に綺麗な金髪がハッキリと分かった。
とても可憐で可愛らしい少女だが、彼女は『人』では無い。
理由は背中から生える桜の花弁の様な薄い羽。
人間ならば存在しないそれが、彼女が人間ではない事を物語っていた。
買い物を済ませた後なのか、脇には食材が入った手提げ袋が置かれている。
時間を持て余しているのだろうか、少女はどこか退屈そうに足をパタパタと動かしていた。
買い物を終えて誰かを待っている、そんな所かもしれない。
その少女に向かって、○○は歩を進める。
思わず頬が緩むのを、早足になってしまうのを抑えながら。
足音か気配で気が付いたのだろうか、不意に少女が○○の方へと顔を向けた。
 
「……あ」
 
そして、先程の○○と同じ様に声を声を漏らす。
一瞬の間の後、少女はぱぁっと笑顔になった。
飛び跳ねる様に椅子から立ち上がり、パタパタとこちらへと駆け寄ってくる。
 
「○○さ〜ん!!」
「うおっと」
 
名前を呼びながら勢いよく抱き着いてきた少女を、○○はしっかりと受け止めた。
彼の顔からも思わず笑みがこぼれる。
 
「相変わらずだな、リリーは」
 
リリーホワイト――幻想郷に春を運んでくると言われる妖精。
この地に住む者ならば誰でも知っている春告精である。
そして、○○の愛しい恋人でもあった。
 
「えへへ〜久しぶりの○○さんです〜」
「ああそうだな、久しぶりだな」
 
抱き着いてきたリリーを抱き返し、優しく頭を撫でてやる。
実に半月ぶりの対面だからか、彼女はとても嬉しそうだ。
顔を綻ばせながら身体を密着させてくる。
まるで○○の温もりを、存在をしっかりと確かめる様に。
やがてその感触をじっくり堪能できたのか、リリーはゆっくりと身体を離した。
 
「ところでどうしたんだこんな所で? 買い物の途中か?」
「そうですね〜。買い物が終わったから○○さんが来るのを待っていたんですよ〜」
「そうか……え?」
 
○○はその会話の中でどこか違和感を覚えた。
『来るのを待っていた』?
つまり、自分がここを通る時間が分かっていたのだろうか?
そんな事を話した記憶は無いのだが。
 
「あれ、俺って今日のこの時間辺りに帰るって話してたっけ?」
「特に話していないですよ〜」
「えっ?」
 
思わず間抜けな声が出た。
○○は呆れる様に長い息を吐き出す。
 
「お前さぁ……もし俺が真っすぐに帰らなくて他の連中と飲みに行っちまったらどうするつもりだったんだ?」
「ふふ、リリーはそんな心配していませんでしたよ〜」
「な、なんでだよ?」
 
リリーは花が咲くような優しい笑みを浮かべた。
 
「だって、○○さんは絶対にすぐに帰って来てくれるって信じていましたよ〜」
「……」
 
思わず閉口して軽く仰け反った。
毒気を抜かれるとはこういう事を言うのだろう。
そんな優しい笑みで、自信満々に根拠の無い理由を断言されてしまっては何も言い返せる事など無い。
○○の心の中で少々の呆れと、そして愛おしい気持ちが湧き上がる。
苦笑を浮かべつつ、彼女の頭に手を伸ばしてまた撫でてやった。
 
「そっか、ありがとうな」
「ん……」
 
リリーは目を細めて喜んでいる。
頭を撫でられる感触が心地良い様だった。
 
(こいつには敵わないな……)
 
ひとしきり彼女の頭を撫でた○○は、先程から放置されていた食材の入った袋の元へと寄る。
中を覗き見ると、肉や野菜など様々な食材が入っている。
少し奮発した買い物だったようだ。
 
「結構色々買ったんだな」
「久しぶりに○○さんと一緒にご飯が食べられますからね〜。期待しててくださいね〜」
「マジか、それは楽しみだな」
 
○○は笑うと、袋を持ち上げた。
様々な食材が入ってズシリと重いが、男の○○にしたら特に問題は無い。
一度軽く持ち直して右手で取っ手をしっかりと握ると、リリーの方へ振り返った。
 
「じゃあ、帰ろうぜ」
「はい!」
 
まるで子犬の様に、リリーが嬉しそうにしながら駆け寄ってくる。
そして、そのまま○○の左腕へと抱き着いた。
彼の左腕を、身体を密着させて自身の両腕でしっかりと抱きしめる。
更に右の掌を○○のそれと重ねて、指を絡めるようにしてぎゅっと握った。
 
「えへへ〜」
「……ったく」
 
いきなりの行動に、○○は呆れたような声を漏らす。
だが、言葉とは裏腹にどこか嬉しそうに笑顔を浮かべた。
左腕全体に伝わってくる柔らかな感触と温もり。
今はそれがとても心地良く、懐かしく感じられた。
そして、二人は家への帰路に付くのだった――。
 
―――
――

 
家までの帰り道、二人は様々な事を話した。
互いに会えなかった時に起こった出来事や、ふとその場で気になった事。
傍から見ればどれも取り留めが無く他愛の無い会話だったが、二人にとってはとても楽しいひと時である。
久しぶりに会った二人にとっては一緒に時間を過ごせる、それだけで幸せだったのだ。
 
「お、やっと見えてきた」
 
景色の奥の方に、見知った家が見えてきた。
住み慣れた我が家が見えてほっとしたのか、○○は一つ息を吐く。
遠くからパッと見ただけだが、家を留守にしていたせいで廃れていた――そんな事も無さそうだ。
留守の間もリリーがしっかりと家を守ってくれていたのだろう。
 
「留守番ありがとうな、リリー」
 
尚も左腕に抱き着いているリリーの方を向いて礼を言う。
だが、彼女の反応は無い。
どこか彼方を見ているかのような、心ここに有らずといった様子だ。
心なしか、顔が火照って少し紅くなっている様に見える。
日の当たり方だろうかと、○○は心の中で首を傾げる。
 
「……リリー? リリー?」
「……え? あっ、はい、なんですか〜?」
「どうしたんだ? なんかお前様子が変だぞ?」
「そ、そんな事無いですよ〜あはは」
「……?」
 
どこかに違和感を覚えた○○だったが、本人がなんとも無いと言っている以上は問題無いのだろう。
そう考え、○○は特に気にしない事にした。
もしかすると疲れで早く休みたいという欲求が思考力を緩くしていたのかもしれない。
やがて二人は家の玄関前に辿り着いた。
改めてここに戻ってくると、どこか懐かしさの様な物を感じられた。
ゆっくりと玄関の木戸を引き開ける。
 
「ただいま〜っと」
 
誰に言う訳でも無く挨拶をする。
特に意味は無いが、この言葉を言う事で家に帰って来たという実感を改めて覚えることが出来るのだ。
○○は持っていた買い物かごを居間の段へと置く。
兎にも角にも、まずは風呂に入りたいと彼は考えていた。
泊まり込み先では精々井戸水をそのまま被ったり、良くて湯に浸した布で身体を拭く位の事しか出来ていなかったのだ。
だからこそ、身体の汚れをまず落としたかったのだ。
勿論、疲労が溜まった身体を湯に沈めてじっくりと癒したかったというのもあるのだが。
 
(とりあえず薪をくべないとな……)
 
いずれにせよ、その為にはまずは湯を沸かさなければならない。
そう考えた○○は、薪を火にくべる為に外に出る事にした。
 
「悪いリリー、この食材は台所に運んでおいてくれるか? 俺は風呂に入りたいから薪を――んむっ!?」
 
リリーの方を向き返りながら掛ける○○の言葉は、妙な声と共に途切れた。
何故なら、彼女が突然飛び付いてきて彼の唇を自身のそれで塞いだからだ。
突然の出来事に、○○の身体は思わず硬直してしまう。
だが、リリーはそんな事お構い無しのようだ。
彼女の舌先が、○○の唇を軽く舐める。
そのくすぐったさに思わず口を少し開けてしまった瞬間、リリーの舌がニュルニュルとまるで蠢く生き物の様に入り込んできた。
 
「んっ、はっ、ちゅ、ちゅる、くちゅ、ふっ――」
 
熱っぽい吐息と、粘ついた水音が二人の口の間から漏れ出る。
もっとと言わんばかりに、リリーが身体を密着させてきた。
妖精の力で浮き上がっているのか、貪る様に下から上へと顔が押し付けられ押し上げられる。
一方の○○は未だ混乱の最中に居たが、なんとか舌を絡ませ返し始めた。
いや、それは快感を欲する男としての本能だったのかもしれない。
 
「じゅる、んっ、んくっ、ふっ、ぐちゅっ、れるっ――」
 
暫しの濃厚なキス。
それは今まで会えなかった寂しさを埋め合わせるようにも見えた。
やがて、リリーがゆっくりと顔を離した。
互いの舌の間に、透明な糸が掛かる。
浮き上がっていたリリーの身体がゆっくりと下がり、地面に足が付く。
だが、未だにその身体は○○に抱き着いたままだ。
 
「ど、どうしたんだよ急に……」
 
唐突な口づけ、勿論それは○○にとって嬉しくない訳では無い
それでも、何の前触れも無く行われるとやはり混乱してしまう。
気持ちを落ち着かせるように、○○は肩に置いた手でリリーの身体を優しく撫でながら問いかける。
彼の問い掛けを聞いたからか、彼の身体に顔を埋めていたリリーがゆっくりと顔を上げた。
 
「んっ……は、ぁ……」
 
見上げてくる顔は紅潮し、薄く開けられた唇の間から熱っぽい吐息が零れる。
眉を八の字に寄せて、切なげな表情を浮かべている。
その理由は先程までのキスなのか、それとも別の何かなのか――。
一瞬の間の後、リリーがゆっくりと口を開いた。
 
「○○さんの春が、欲しいです……」
「……は?」
 
想像もしていなかった回答に、○○は思わず間の抜けた声を漏らした。
『春が欲しい』その真意とは――。
その答えは、リリーの行為によってもたらされた。
 
「うっ……!?」
 
突如、○○の身体がビクリと震えた。
その理由は、リリーの小さな手が彼の股間に這わされたからだ。
甘い快感が、○○の身体に走る。
リリーホワイトは幻想郷に春を伝える妖精である。
それはつまり、春の一部を司っていると言い替える事も出来る。
春――それが情愛・性愛の比喩としての言葉という事なのかは分からない。
だが、この状況であればそう考えてしまうのも仕方が無かった。
――尤も、彼女自身もそこまで考えての言葉なのかは分からないが。
 
「さっき人里で○○さんに抱き着いてからずっとドキドキが止まらなくて、頭がフワフワして……身体が熱いんです……」
 
妖精とは元来刹那的な考え方をする傾向がある。
好きな時に好きな事をして、やりたい事をやりたい時にする。
彼女達にとっては我慢と言うものは縁遠いものなのだ。
それは絶対的な死が訪れない種族ならではの考え方なのかもしれない。
勿論、リリーも例外では無い。
だが、彼女は今まで我慢していたのだ。
大好きな○○と会う事を、触れ合う事を。
妖精であるリリーにとって半月と言う時間はとても長く、とても苦しく感じられた事だろう。
だからこそ人里で○○に再会して抱き着いた時に感じた彼の温もり、身体の逞しさ、匂い。
それらが我慢していた物を溢れ出させてしまったのかもしれない。
 
(だ、だから帰ってくる時の様子がおかしかったのかっ……!)
 
帰宅途中のリリーがどこか放心しているような様子だったのは、渦巻く感情で惚けてしまっていたからかもしれない。
そして、先程のキスで歯止めが効かなくなりつつある様でもあった。
 
「んぅ……はあ、ぁ……」
 
幼げな少女の姿からは想像も出来ない艶っぽい声と吐息をリリーが漏らした。
同時にわざとらしく身体を擦り付けてくる。
彼女から伝わってくる温もりと柔らかさ、そして良い香り。
半月に及ぶ禁欲生活に加え、久しぶりに触れる女体の感触。
全てが今の○○にとっては魅惑的過ぎる。
魅惑的な感覚が、自分の理性を徐々に削り取っている事を自覚出来た。
リリーの瞳が下から○○の顔を覗き込んできた。
蒼穹の様に澄んだ蒼い瞳は微かに潤み、揺れている。
何かを懇願――いや、哀願しているようだった。
その『何か』は、最早言うまでもないだろう。
 
「ダメですか……?」
「せ、せめて風呂に入ってから――」
「ダメですか……?」
 
○○の言葉を遮り、同じ言葉を繰り返す。
言葉としては許可を求める質問なのだろう。
だが、それは質問としての体をほとんど成していなかった。
追い打ちをかける様に、○○の股間を擦るリリーの手がまた妖しく蠢き始めた。
股間を慰撫するその手つきは幼い少女の物ではなく、男の身体を知り尽くした娼婦のそれである。
甘い快感、蕩ける理性、昂る欲望。
それらは、○○の行動を決めるのには十分すぎる程の要因だった。
 
「ひゃっ、〇、○○さん?」
 
リリーが驚いたような声を出した。
何故なら、○○が彼女横抱きにして持ち上げたからだ。
小柄な少女の身体は見た目通りに軽い。
リリーが少し戸惑ったような表情で見上げてくる。
 
「とりあえず、まずは布団を敷かないとな」
「……はい、えへへ」
 
一瞬の間の後、彼女は言葉の意味を理解したらしい。
嬉しそうに、顔をふにゃりと綻ばせて笑った。
身体から力を抜き、○○へと身を委ねる。
こうして、久しぶりに二人きりで過ごす甘い一時が始まったのだった――。
 
―――
――

 
床に敷かれた一枚の布団。
掛け布団は用意されておらず、あるのは枕だけ。
これから行われる行為に、掛け布団などは必要無いからだ。
そして布団の上にはリリーが仰向けに寝転んでおり、四肢は力無く投げ出されている。
興奮で息が少し荒くなっているのか、呼吸をする度に彼女の胸が上下するのが分かった。
ゆったりとした白い服は重力に引かれて広がり、まるで花びらのようだ。
袖や裾が僅かにめくれ上がり、手首や足首が露わになる。
ほっそりとした四肢は華奢な印象を与え、小柄な少女と言う事を再認識させる。
その小柄な少女は、布団の上で笑みを浮かべていた。
頬を仄かに上気させ、歓喜を待ちわびる笑みを。
一見穏やかに見える笑み、しかしその目には微かにだが蠱惑的な光を宿していた。
その光に中てられたのか、○○の身体にゾクリとした物が走る。
思わず生唾を飲み込み、膝でリリーへゆっくりと擦り寄る。
まるで食虫の花に引き寄せられる羽虫のように。
リリーの身体の横に手を突き、四つん這いの体勢で覆い被さった。
 
「……背中の羽、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ〜、心配してくれてありがとうございます〜」
「なら、良かった」
 
背中から生えている羽も、仰向けで寝ているから付け根が潰れて痛むという事は無いようだ。
気遣いが嬉しかったのか、リリーが笑顔を浮かべる。
そんな彼女の笑顔につられて、○○も表情を緩ませた。
ほんの少しだが、意識が落ちつけた気がした。
ゆっくりと、リリーの顔へと手を伸ばす。
そのまま、彼女の頬に手のひらを添えて優しく撫でてやった。
ついでに指先で軽くくすぐってみる。
 
「んっ……」
 
リリーはくすぐったそうに声を漏らした。
身体をピクンと僅かに震わせ、心地良さそうに目を閉じる。
まるで、何かを待ち望むかの様に。
その望みが何なのか、分からない○○では無い。
何故なら、自分もそれを望んでいたからだ。
手をリリーの頬に添えたまま、○○は顔をゆっくりと近づける。
 
「ちゅっ、ん、ふ……」
 
そして、唇が重なり合った。
水が弾けるような軽い音。
互いの唇を啄み、優しく咀嚼するかのように挟み合う。
呼吸をする度に微かな吐息が二人の口端から漏れ出た。
先程玄関先で交わしたものに比べれば明らかに軽い、挨拶の様なキス。
それでも、心を通わす分には十分なのだ。
幸せな気持ちが心に満ちていく。
数回じゃれ合うようなキスを交わした所で、○○は一度顔を離した。
人間と言うものは欲深い生き物だ。
ある程度の幸せや心地良さが手に入ると、更にそれを求め始めてしまう。
だが、それは妖精であるリリーも同じようだった。
彼女は物足りなげな表情で見つめてくる。
 
「もっと……して、欲しいです……」
 
懇願に応えるかのように、リリーの胸元の赤いリボンへと手を伸ばした。
彼女の肩に掛かっているケープを留めているリボンである。
紐端を軽く引くと、リボンは軽い布擦れ音と共に解けた。
どことなく、○○は贈り物の箱に施された装飾を解いているように思えた。
そのせいだろうか、妙に胸が高鳴る。
その理由が男の本能なのか、女性の衣服を脱がせる事に興奮する性癖でも持っているからなのかは定かでは無い。
いずれにせよ、○○は自身がより昂っているのが自覚出来た。
尤も、昂っているのは○○だけでは無い様ではあるが。
ケープをゆっくりと引き抜き、身体から取り払った。
リリーは熱っぽい吐息を漏らしながら、愉しそうに目を細める。
 
「ああ、分かってる」
 
もっとして欲しい――勿論、言われるまでも無い。
○○もこれだけで満足出来るはずも無かった。
自分もリリーにしたい事が沢山あるのだ。
不意に、○○の指がリリーの唇に添えられた。
軽く唇を指先でなぞると、そのまま指先をゆっくりと顎の方へと滑らせていく。
白魚のように透き通る首筋をなぞり、胸部へ。
二つの膨らみの間に指を這わせ、腹部へと下っていく。
 
「んっ……くすぐったいですよ〜」
 
こそばゆさからか、リリーが軽く身を捩った。
だが、○○の指の動きは止まらない。
臍の辺りを通り過ぎて下腹部に到達した所で、○○はようやく指の動きを止めた。
そのまま下腹部を包むかの様に手を添え、二度三度優しく撫でてやる。
意図は分からなかったが、温かさと心地良さでリリーが吐息を漏らす。
その瞬間、○○は少しだけ力を込めてグッと下腹部を手を押し込んだ。
 
「ひぅ!? あっ、んんぅ――!」
 
刹那、快感が電流の様に身体を駆け巡った。
リリーの口から言葉になっていない甲高い声が零れる。
勿論それは悲鳴などでは無く、悦を帯びた嬌声だ。
小さな身体がビクンと跳ね、手足が引き攣る。
彼女を襲った快感は、○○が下腹部を押し込む力を弱めると徐々に過ぎ去っていった。
ただ下腹部を掌で押し込まれた、それだけのはずである。
にも拘らず、まるで自身の最も大事で気持ち良い部位を鷲掴みにされたような、そんな感覚だった。
快楽に侵された身体が熱く火照る。
目に涙を浮かべ、荒い呼吸を繰り返して息を整えようとしていた。
潤んだ、しかしどこか焦点が定まらない瞳がこちらを見つめてくる。
 
「○○さ、ん……」
 
リリーが切なげに○○の名前を呼ぶ。
○○は微笑み返すと、少しだけ乱れた前髪を手で優しく払って整えてやった。
 
「今まで寂しい思いをさせた分、気持ち良くしてやるからな……」
 
我ながら歯が浮くようなセリフだという自覚はある。
だが、言葉にしなければ伝わらない事もあると思ったからだ。
そして、その甲斐はあったらしい。
○○の言葉を聞いたリリーはふにゃり、と嬉しそうに蕩けさせて笑みを浮かべた。
 
「○○さぁん……」
 
今度は甘えるような声で愛しい人の名を呼ぶ。
彼からの愛情を求めるかのように、リリーは両腕をふらふらと持ち上げて緩やかに広げた。
穏やかな母親が我が子を胸元に招くように、はたまた艶やかな娼婦が男を褥へと誘うかのように。
いずれにせよ、そんな風に求められて我慢出来る男などいるはずが無かった。
広げられた両腕に引き寄せられるかの様に、○○は身体をゆっくりと近づける。
そして、再び唇を重ね合わせた。
 
「ちゅ、じゅる、ぴちゅ、ふぁ、んん、れる、ちゅぷ……」
 
二人きりの部屋に、艶めかしい吐息と淫らな水音が響く。
唇で啄み合い、舌を絡ませ合うキス。
それは親愛を示す為のそれではなく、愛欲や性愛を示す為のキスであることは明白である。
唾液でぬめった舌同士が絡まり、擦れ合う。
生み出される独特の感触と快感は、二人の興奮を高めていく。
いつの間にか、リリーの両腕が○○の首に回されていた。
もっとして欲しい、いっぱいして欲しい――。
彼女のそんな願いが行動に出ているようだった。
互いに顔を少し傾けながら口全体で感触を味わい、時折僅かに顔を離して舌先でじゃれ合う。
濃厚ながら甘いキスを交わしている最中、○○はいつの間にかリリーの首元へ手を這わせていた。
指を器用に蠢かし、衣服のボタンを片手だけで外していく。
首元が少しだけ肌蹴て、白い柔肌が露わになり始めた。
 
「あむ、ふっ、ちゅう……んふふ」
 
口づけに夢中になっていたリリーも、○○の動きに気が付いたらしい。
何をしようとしているのか察したのか、小さく笑い彼の首に回していた腕の力を弱めた。
抱擁の力が弱まったので、○○はリリーとの身体の距離を少しだけ離す。
身体の間に腕を差し入れ、手を動かしやすくする為である。
その空間で上手く腕を動かし、残りのボタンも外し始めた。
プツリプツリ、と順番にボタンを外しながら手は下へを向かって行く。
そうして、衣服のボタンは全て外された。
だが、○○の手はそこで止まらない。
そのまま手をスカートの方へと伸ばす。
勿論、スカートを留めているボタンも外す為だ。
スカートのボタンも、片手だけだというのに器用に外していく。
そして時を置かず、衣服と同じように全てのボタンが外された。
全ての留め具が外され、衣服全体が肌蹴る。
緩んだ衣服の端から、下着が垣間見えた。
 
「あぁ……ん……」
 
秘めていた下着が見えてしまった羞恥からか、リリーは軽く身を捩る。
だが、その顔は紅潮しつつもどこか嬉しそうだ。
どこか身を捩る事によって更に服を肌蹴させ、○○を誘惑している様にも見えた。
そんな姿を見せられて、昂りを抑える事など出来るはずが無かった。
その肢体をもっと見せろと言わんばかりに、白い衣服を強引気味に脱がす。
残されたのは上下の下着のみ。
フリルが施された薄い桜色の下着。
赤いリボンの装飾がそれぞれにあしらわれており、リリーらしさを感じられて可愛らしく思えた。
そして、その下着に包まれた豊満な膨らみ。
小柄な妖精の体躯と言う事を考慮しても、それは男にとっては十分に魅力的な大きさである。
むしろ小柄な体躯のリリーが谷間を作る程の豊かな膨らみを持っている事が、その魅力を更に引き立てていた。
普段はゆったりとした衣服や肩に掛けられたケープのせいで分かりづらく、着痩せして見えるようだった。
 
「どう、ですか〜……?」
「ああ……すげぇ、可愛い……」
「えへへ……嬉しい、です……」
 
○○は絞り出すような声で答える。
正直、まともな返答が行えた事は奇跡に近かった。
だが、残念な事に下着姿のリリーをじっくりと鑑賞して楽しむ余裕はありそうも無い。
今の○○は、本能に思考を殆ど支配されてしまっているようだった。
精神的快楽では無く、肉体的快楽の方へ流されてしまう哀しい男の性である。
 
「脱がす、ぞ……」
 
有無も言わせずと言った感じで、○○はリリーの背中へと手を滑り込ませる。
そのままブラの留め金を外し、彼女から剥ぎ取った。
今まで布地に覆われ隠されていた女性の象徴が露わになる。
 
「は、あぁ……」
 
リリーははにかんだ笑みを浮かべる。
身じろぎすると、彼女の豊かな双丘がふるふると揺れた。
火照りからか身体には赤みが差し、桜色の乳首は隆起していた。
荒い息を吐きながら、○○は彼女の胸へと手を伸ばす。
そして胸の膨らみに掌を覆い被せると、指を動かし始めた。
 
「あっ、あんっ……」
 
胸をゆっくりと揉むと、リリーが甘い声を漏らした。
指に力を込めると沈み込み、その柔らかさが伝わってくる。
やがて揉むだけでは無く、柔らかさを味わうかのように掌全体を使って捏ね始めた。
○○の野卑で粗雑な手つきによって乳房は凌辱され、形を歪ませる。
得も言われぬ甘美な感触。
それは総ての男を夢中にさせるものだ。
揉めば揉むほどその感触は理性を酔わせ、身体の内側から獣欲を漲らせる。
下半身に血流が集中し出している事を、自覚するのは容易かった。
もう我慢の限界だ――。
そう言わんばかりに○○はリリーの乳房に顔を近づけると、そのまま乳首を口に含んで吸い付いた。
 
「ひぅ、んん!!」
 
彼女の身体が大きく震えた。
女の身体の中でも特に敏感な部位をいきなり吸い付かれたのだ、無理もない。
そんなリリーの反応も気にせずに、○○は乳首へとしゃぶり付く。
まるで乳を求める乳飲み子の様に。
だがその様子は乳飲み子の様な無垢さは無く、ただただ浅ましいだけだ。
 
「ふふ、○○さん赤ちゃんみたいです……」
 
それでもリリーはどこか嬉しそうな笑みを浮かべた。
愛おしげに目を細め、か細い嬌声を漏らしながらも自身の乳房に夢中になって吸い付く○○の頭を抱きしめ、撫でる。
まさしく乳飲み子に乳を与える母親の様に。
一方の○○は到底乳飲み子とは思えないようなしゃぶり付き方で、リリーの乳房を貪り続ける。
 
「もう……そんなに吸ってもおっぱいは出ないですよ〜……んっ……」
 
彼女の言う通り、乳など出るはずが無い。
吸い立てたところで何かを飲む事など出来るはずが無いのだ。
出来るはずなど無いのだが――。
だが、○○は口の中に甘い何かが広がる様に感じていた。
飲めば飲むほどもっと欲しくなる優しく甘い何か。
実際の所、それらは全て○○の錯覚である。
興奮と状況が生み出した幻の味覚。
だが、錯覚は間違いなく彼の理性を融かしていた。
もっとその味覚を求め、じゅるじゅると音を立てる程に激しく乳房に吸い付く。
吸い付きながらも舌先で乳首を突き、転がし、舐る。
同時に、空いているもう一つの膨らみにも手を這わせて鷲掴みにした。
先程までしていたように弄び、時折指先で乳首を擦り、弾く。
 
「〇、○○さん、そんな、激し……ひんっ!?」
 
双丘を蹂躙され、リリーの口から可愛らしい嬌声が転がり出た。
思わず○○の頭を抱いていた腕に力が入る。
それはこれ以上の行為を抑制する為なのか、もっとして欲しいという意思表示なのかは分からない。
ただ、彼の興奮をより一層煽る要因になる事は間違いなかった。
乳房と言う女性の象徴に与えられる快感に、リリーは絶頂へと押し上げられていく。
上擦る嬌声、震える身体、荒い呼吸――彼女の限界が近い事を○○は無意識の内に悟った。
ならばと口に含んだ乳首に軽く歯を立て、もう一方のそれを摘まんだ指にほんの少しだけ力を入れて捻った瞬間――。
――快感が弾けた。
 
「ひっ、あっ、んんぅ――!!」
 
悲鳴にも似た嬌声を上げ、リリーの身体が慄き震える。
とめどなく押し寄せる快楽に押し流され、彼女はただその流れに翻弄される。
今の彼女はその快楽に対してどうする事も出来なかった。
やがてその流れは徐々に引いていき、身体の震えも収まり始めた。
後に残されたのは、快楽に侵され疲弊した身体だけである。
リリーはぐったりと脱力し、荒い呼吸を繰り返していた。
その身体を先程まで良い様に弄んでいた○○は、ようやく口から乳房を解放した。
だが、まだ彼女の身体を堪能する事を止める気はないようだった。
乳首から胸元、首筋へと舌を這わせながら登っていく。
そうしながらも、たまに肌を音を立てて吸い立てる。
その度に薄紅色の痕が白い柔肌に残った。
 
「あっ……んっ……ふっ……」
 
○○が肌を吸い立てる度に、仄かな刺激を感じる。
その度にリリーは小さく喘いだ。
どこか嬉しそうに、そして心地良さそうに。
首筋の感触をひとしきり堪能した○○は、身体を起こして彼女の顔を覗き込んだ。
頬は紅潮し、薄く開かれた口からは熱っぽい吐息を漏らしていた。
潤んだ蒼い瞳はどこかぼんやりとしている。
だが、その瞳は間違いなく○○の顔を見つめていた。
一度長く息を吐いて唇を舐めた○○は、彼女の頬に手を添えるとゆっくりと顔を近づける。
そして、優しく唇を重ねた。
 
「んん、ちゅ、ちゅる、れる、じゅる……」
 
先程まで乳房に行っていたような野卑な舌遣いでは無く、優しい舌遣い。
ゆっくりと、そして深く舌を絡ませ合っていた。
舌同士が擦れ合う感触、唾液で滑り合う感触。
口元から時折漏れる悩ましげな吐息と粘ついた水音。
その全てが二人の欲情を燃え上がらせる。
やがて、どれほどの時間が経っただろうか。
幸せなこの時間の前では、時の感覚すら朧げになる。
○○が顔をゆっくりと離すと、二人の舌の間に糸が引いた。
糸は重力に引かれて徐々に細くなっていき、やがて途切れてリリーの咥内へと落ちる。
彼女はそれをゆっくりと嚥下すると、蕩けた笑みを浮かべた。
○○が身体をぶるり、と震わせる。
何かぞくっとした物が身体を走ったからだ。
そして、その走った物は明確に股間へと集まりつつあるのを自覚出来た。
 
「リリー……もう、我慢出来そうにない……」
 
その言葉通り、既に○○の一物は衣服の内で硬く怒張していた。
硬く、熱く、少し痛みを覚える程に。
何を求めているかなど、今更言うまでも無い。
 
「はい……○○さんの春、リリーにいっぱい下さい……」
 
リリーも嬉しそうに笑った。
これから行われる行為に、悦びを感じているのかもしれない。
○○が彼女のショーツを脱がす為に下着の中に指を入れると、ぬるぬるとした粘液が指に絡みついた。
最早下着はその用途を果たしておらず、同時に彼女の躰の準備が整っている事をありありと証明していた。
リリーが身に付いていた最後の衣服を脱がすと、○○も自分の衣服を乱雑に脱ぎ捨て始める。
間も無く、彼の股間に熱り立つ肉棒が露わになった。
赤黒く怒張したそれは、脈動に併せて小刻みに震える。
まるで蛇が獲物を狙う際に鎌首をもたげるかのように。
○○はその肉棒を、リリーの秘所へと宛がう。
くちゅりと、厭らしい水音が鳴った。
 
「んっ……は、あぁ……」
 
リリーが躰を震わせ、悩ましげな吐息を漏らした。
興奮からなのか、期待からなのか、あるいはその両方か。
 
「挿れるぞ……」
 
○○はリリーの脚を押し広げると、ゆっくりと腰を押し込み始めた。
幼い割れ目に肉棒が飲み込まれていく。
 
「は、あぁ……」
「うっ、ぐっ……」
 
思わず呻く様な声が漏れた。
リリーの膣内は体格的にも○○の肉棒に対しては狭い。
だが挿入出来ないという訳では無く、膣壁は生き物のように蠢いて肉棒を飲み込んでいく。
狭い膣内で締め付けられ、蠢く腸壁で愛撫される。
久しぶりに味わう快感と相まって、声が漏れてしまうのも無理は無かった。
思わず腰が止まりそうになる。
だが○○は歯を食いしばって耐え、肉棒を更に奥深く突き入れていく。
ゆっくりと、快楽に耐える様に。
そしてより長く、この感触を味わう様に。
やがて、肉棒が根元まで膣内に飲み込まれた。
腰を動かさずとも、膣壁が意思を持ったかのように脈動して絶えず快楽を与えてくる。
まるで早く精を放ってくれと催促するかのように。
その感触を楽しんでいるだけでも、着実に限界に近づけさせられているのが分かった。
だが、快楽に浸っているのは○○だけでは無いようだ。
肉棒を愛撫する膣内、それは同時に愛撫されているとも言える。
リリーは盛りの付いた犬の様に、短い呼吸を繰り返している。
既に一度絶頂を迎えている事もあって、躰の感度は普段以上に敏感なのかもしれない。
○○は彼女の顔に手を伸ばし、汗で額に貼り付き乱れた髪を優しく整えてやる。
 
「……動くぞ」
「は、ぃ……」
 
だがこれで終わりなのではない。
むしろここからが本番なのだ。
最奥まで突き入れた肉棒を、今度は引き抜いていく。
突き入れる時と同じように――いや、それ以上の勢いで精を搾り取ろうと膣内が脈動した。
そして、膣壁も肉棒の雁首で思い切り抉られる。
先程以上の快感に、リリーは僅かに背を反らして小さく震えた。
肉棒が抜ける寸前まで来た所で再び挿入。
抜いて挿す、抜いて挿す――徐々に抽挿の速度が上がり始めた。
部屋には肉同士が打ち合う音と、淫らな水音だけが響く。
ゆっくり行った抽挿でさえ身体を震わす程の快感だったのに、その速度が上がったらどうなってしまうのか。
そんな事は、言うまでも無い。
 
「は、あっ、あんっ、んんっ、んぅっ!!」
 
目も眩むような快楽に、ただただ翻弄される事となる。
快感が押し寄せ、その快感が引く前に更なる快感が打ち寄せる。
その小さな躰が受け止めきれなかった快感の奔流が、嬌声として口から溢れる事となった。
官能的な雌の啼き声、それは雄の正気を犯していく。
本能の赴くままに腰を振っていた○○だったが、徐々に上体を倒し始めた。
ゆっくりと、リリーとの距離が近くなる。
そのまま彼女の身体に覆い被さる様に倒れ込み、腕の中にリリーの頭を掻き抱く。
止め処なく押し寄せる快楽に翻弄される彼女を受け止めるように。
そして決して逃さぬように強く、優しく抱きしめる。
リリーも開いた脚で○○の腰辺りを挟んだ。
決して離れぬように、そして雄を逃さぬように。
 
「○○さん……○○さ、ぁん……!!」
「リリー……リリ、ィ……!!」
 
互いが互いの名をうわ言のように呼び合う。
そこにどんな意味が込められているのかは分からない。
ただ相手の名を呼ぶ度に、自分の名が呼ばれる度に幸せな気持ちで満たされていく事だけは分かった。
その幸福感は、興奮や快楽と入り混じって二人を押し上げていく。
やがて間近の絶頂を予感を予感した○○は抽挿の速度を更に速めた。
既にリリーの名前も呼ぶ余裕も無く、口からは獣の様に荒い息と涎が垂れるだけだ。
 
「あっ、あっ、あっ、あぁっ――!!」
 
そしてリリーもどうする事も出来ない。
暴力的な快楽に身体を嬲られ、弄ばれ、犯される事をただ受け入れるしかなかった。
無意識の内に○○の身体に強くしがみ付く。
だが、その様子は雌の悦びに満ち溢れていた。
やがて○○は限界を感じ、最後とばかりに歯を食いしばって腰を思い切り打ちつけた。
その瞬間、リリーの四肢の先まで痺れが走り――
 
「あ、ひっ、あ、あああぁぁぁ――!!」
 
――彼女は絶頂を迎えた。
身体が痙攣し、四肢が引き攣り、悲鳴の様な嬌声を上げる。
膣内も先程まで以上に収縮し、肉棒を圧迫する。
既に限界寸前だった○○は、その強烈な圧搾に耐える事など出来なかった。
 
「うっ、あっ、ぐううぅぅ……!!」
 
目の前が一瞬真っ白になるかの様な快感。
肉棒が脈動し、滾りに滾った白濁の獣欲が吐き出される。
精を放つ度に快感が全身を駆け巡り、身体が慄き呻いた。
○○が絶頂を迎えてなお、リリーの膣内は更に搾精せんと妖しく蠢く。
その度に走る快感に身体を震わせ、精を二度三度と吐き出した。
やがて、絶頂の波が過ぎ去っていく。
後に残されたのは疲労感と倦怠感。
だが、不思議と不快な気持ちは無かった。
身に感じる、柔らかく温かい感触があるからだろうか。
暫しの間、二人の蕩けた様な荒い息遣いだけが部屋に残る。
 
「○○、さん……」
 
不意にリリーが○○の名を呼んだ。
息も絶え絶えに、掠れた様な声だったが確かに聞こえた。
 
「……なんだ?」
 
○○は彼女の髪を指先で梳いてやる。
優しく、慈しむかの様に。
次の言葉を急かさず、じっと待っていた。
 
「好き……大好き、です……」
 
それは紛れもなく本心の言葉。
腕の中に抱いているリリーの顔は見えないが、きっと幸せそうな表情をしているのだろう。
 
「ああ、俺もだ……大好きだよ、リリー……」
 
だから○○も言葉を返す。
今、自分も心の中に思っている事を言葉にして。
その○○の表情も、とても幸せそうな笑みを浮かべていた――。
 
―――
――

 
「気持ち良いなぁ……」
 
しみじみと呟いた言葉が、部屋の中で反響する。
○○は今、湯を張った湯船に身を沈めていた。
温かい湯に浸かっていると強張った躰の節々が解れ、身体の芯から温まっていくのが分かる。
深い溜息と一緒に、疲労が湯に融けていくかのようだ。
 
「はぁ……生き返る……」
 
我ながら爺むさいとは若干思う。
だが、こんなに心地良ければそんな風にならない者などいないだろう。
温かさと心地良さ、そして溜まっていた疲労からか瞼が徐々に下りてくる。
 
「あの、○○さん……」
 
だが、手放しそうになった意識を、少女の声が引き戻す。
その声の主は、○○の脚の間に身体を入り込ませて寄りかかってきているリリーだった。
眠気を無理やり払うかのように眼を強く瞬き、彼女の顔を覗き込む。
リリーは伏し目がちに、どこか申し訳なさそうな表情をしていた。
 
「その……ごめんなさい……」
「……? なんでお前が謝るんだよ?」
「○○さん今日までずっと仕事で疲れていたのに……あんな事しちゃって……」
 
落ち着いた事で、リリーは自分が何を行ったのか客観視出来たらしい。
確かに疲労が溜まった身体で春を求められたのは難儀しなかったと言えば嘘になる。
 
(ったく、変な事気にしやがって……)
 
○○は苦笑を浮かべると、両腕でリリーの身体を抱き寄せた。
 
「そんな事気にするなよ、俺だって大なり小なりそういう気持ちはあったんだから。だから気にするな」
「……はい」
 
少しだけ、リリーの声が明るくなった。
○○の言葉で効果があったのかもしれない。
 
「ねえ○○さん、明日はゆっくり休んで、それからいっぱい色んな事しましょうね〜……」
「……ああ、そうだな」
 
貰えた休暇は長い。
だからゆっくりと休んで疲労を取れば良い。
久しぶりの愛おしい春を満喫するのは、それからでも遅くは無い。
そんな事を考えながら、○○とリリーは楽しそうに笑い合うのだった――。


メガリス Date: 19/04/30 16:48:47

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