最終更新: touhou_icha 2012年06月08日(金) 21:41:20履歴
レミリアとでいうぉーかー番外編の続き
宴会の席。
いつものように絡まれて酔いつぶれた○○を膝枕しているレミリアに、ふと声がかけられた。
「あらあら、見せ付けてくれるわね」
「何故全員同じことを言うんだ」
少しむっとした声で返した後、レミリアはその姿を見上げる。
「何かしら?」
言いたいことを察したのか、彼女はレミリアの隣に腰を下ろした。
「ちょっと、訊きたいことが」
「あら、珍しい」
くすくすと笑った彼女がそっと薬湯を差し出した。彼に飲ませろと言うことらしい。
「……ありがとう」
「いえいえ。で、何かしら?」
永遠亭の薬師は柔らかい微笑みを浮かべて、幼い吸血鬼の問いを待った。
「…………その、前に、もらった薬、だけど」
「あら、使ったの? まだ要る?」
「使ってない!」
一声叫んで、レミリアは顔を紅くしてうつむく。照れを隠すように、○○の額の髪を払った。
「いや、まあその……パチェに言ったらしいから」
「……? 何を言ったかしら?」
本気で忘れているらしい永琳に、レミリアはぼそぼそと尋ねる。
「その、使うときは気をつけろ、みたいなこと」
「ああ、そのこと」
永琳は微笑みながら、そうね、と頷いた。
「妖怪用に作ってあるものだから、少し強めにはしてあるわ」
「……そもそも、これを私が飲むのか○○が飲むのかも知らないし」
「どちらでもいいのよ? ただ、一人で飲むには少し多いかもしれないけれどね」
だから、と悪戯っぽく永琳は囁く。
「彼だけに飲ませたら、貴女を滅茶苦茶にしかねないわよ?」
「……っ!」
レミリアは顔を背けて、視線だけで永琳を睨む。
人を射殺せそうな視線だが、顔を赤く染めているため威厳は半分と言うところか。
「あらあら、そんなに睨まないで。でも、そうね。半分にするくらいがいいかもね。初めて使うなら」
「半分ずつ?」
「ええ。まあ適当に分けても構わないわ。身体に害が残るような代物じゃないもの。お酒みたいなものよ」
「そうなの?」
「そうよ。だから効果が出てくるのも若干早いはず。いろいろ改良中だから、良かったらモニターしてくれる?」
「……どこまで本気で冗談なのか……」
レミリアが呆れたようにため息をつくと、薬師は何でもない表情で答えた。
「あら、私はいつも本気よ?」
とにかく、用法用量を尋ねて、その場での彼女達の会話は幕を閉じた。
そして翌晩の紅魔館。夜半もとうに過ぎ、休む前のちょっとした時間。
「その、○○」
「はい」
甘えた声で自分を呼ぶレミリアに、○○は応じて彼女の隣に座る。
「今日は、その」
「あ、ええ、大丈夫ですよ。明日は里に行く用事もありませんし」
「う、うん、それで」
手にした小瓶を見せられて、彼は一瞬首を傾げ――思い出した。
「あ、あー、あれですか」
「うん……薬師に使い方、聞いて」
「……いつ?」
「○○が酔いつぶれてるときに」
その言葉に何とも言えない表情になった後、こほん、と彼は咳払いした。
「使いたい、ですか」
「興味は、あるの」
「……では、お聞きしていいですか、使い方」
どこか不安そうにしていたレミリアに、彼は照れたように微笑んだ。
「僕も、興味がなかったわけではないんですよ」
「ということは、半分こですか」
「ん……効き方は身体の大きさで変わる、とは言ってたけど」
「じゃあ、あんまり効かないかも。それだったらそれだったで、優しくできるといいんですが」
優しく、の言葉に、レミリアは顔を真っ赤にする。
「……○○は、優しいわ」
「……それは光栄」
言われて照れたのか、彼も少し紅くなった頬をかく。
「どちらから、飲みます?」
「……私から飲む」
レミリアはそう言って、小瓶の封を切り、中の淡い赤の液体を、半分ほど飲み込んだ。
「どうです?」
「……甘い、わね。○○も」
「んー……飲ませてください、というのは流石に我儘ですかね?」
悪戯っぽい笑みに、レミリアは慌てて視線を彷徨わせる。
「な、何言いだすのよ」
「冗談ですよ」
くすくすと笑いながら小瓶に手を伸ばしたところで、レミリアが少し頬を膨らませた。
「いいわよ」
「え、あ、ちょっ……」
レミリアはいきなり小瓶の中身をあおると、○○の襟元を引き寄せて口付けた。
甘い液体が○○の舌の上を滑り、喉に流れ落ちていく。
その間も、液体を押し流そうとするレミリアの舌が彼の舌に絡んできて、脳が痺れるような甘さを残した。
「……飲ませたわよ」
「あ、ありがとう、ございます」
顔を真っ赤にするレミリアに、どういう表情をしたらいいのかわからないまま、紅くなって応じる。
口の中の味をもう一度確かめて、んー、と彼は我に返ったように呟いた。
「甘いですね」
「あ、うん、ちょっと甘すぎるかしら」
効くまでに二十分ほど掛かる、と聞いていたので、適当な会話を振ることにした。
「んー、でも、どこかで飲んだことのあるような甘さですね……」
「……あるの?」
「ああ、睨まないでください、こういう薬でというわけでは……ん、薬?」
思い出したように、ああ、と彼は呟く。
「あれだ、風邪シロップか、子供の頃飲んだ」
「風邪シロップ?」
「そういうのがあって……ああ、あの味だ。地味に薬染みたところまでそっくりです」
納得する○○に、不思議そうな顔をしてレミリアは彼の袖を引いた。
「どういうものなの? 私には縁の無いものだから」
「あー、うん、そうですねえ……」
ともかく、取りとめの無い話を始めるにはよい切っ掛けとなったようで、○○は外の薬のことを話し出した。
とりあえず、報告に味だけはどうにかしてもらおう、と伝えることは心に決めて。
緊張をほぐすように寄り添ったまま話しているうち、レミリアが徐々に寄り添ってきていることに彼は気が付いていた。
息にも、甘いというより熱いものが混じり始めていて、効き始めているのだとわかってくる。
自分の精神も少しずつ蝕まれてきているのだろうが、それには気が付かないことにして、彼はレミリアを後ろから抱きしめ、膝の上に抱えた。
「きゃ、○○……?」
「そろそろ、効いてきてるんじゃないですか?」
耳元で囁きながら、レミリアの服の裾に手を伸ばす。
「ん、あ、いきなり……?」
「……そんなつもりはないんですけど」
する、と服の中に手を滑らせ、膨らみに向かって伸ばしながら、耳を軽く甘噛みする。
「や、ひゃ……」
軽く身を捩じらせながら、しかしレミリアも抵抗しない。シーツを握り締めて、自らを襲う感覚に耐えている。
「んんっ……!」
だが、○○の両手が胸の先端に達してそこを撫でた瞬間、レミリアは小さく嬌声を上げて軽く震えると、○○にもたれかかった。
「……レミリアさん、まさか……」
「……や、言わないで……」
顔を真っ赤に染めて俯く様は、○○の中の何かを刺激した。
それはあえて言うなら悪戯心とか嗜虐心とか言うものだったかも知れない。
だがそれがわかるような余裕が彼に残されていたわけがなく。
「……っ!?」
驚くレミリアに構わず、○○は彼女をベッドに押し倒すように押さえつけていた。
「○○……?」
覆いかぶさられる体勢に、レミリアは戸惑う声を上げた。
ベッド自体が柔らかいために羽を痛めることはないが、初めての体勢に視線を彷徨わせる。
「……あ、やっ、だめ……っ」
服を脱がしながら肌に口付けていく○○に、形ばかりの抵抗をする。
「駄目、ですか」
「……っ! 意地悪なこと言うな……っ! ひゃうっ」
強がりを言う姿がさらに○○を煽り立てることにも気が付かない。
唐突に乳首を舌で転がされて、レミリアは身体を捻った。
「や、ひゃ、んんっ、あ……っ!」
甘い声がさらに互いの理性を溶かす。片方の胸をたっぷり苛めた後、もう片方に移る。
「ん、んんっ、あう、やん……あ」
荒い息を吐きながら、潤んだ瞳で彼を見つめる。
「どうしました?」
○○も息を乱しながら、レミリアと視線を合わせた。
いつもと違う視点で見つめられて、彼女は上気した顔を照れたように背ける。
「ん、別に……んっ」
「……身体は、そうでもないみたいですけど」
下腹部に滑らされた手に、レミリアは瞳を強く閉じる。
下着の上から触られたときに、軽い水音がして、彼女は小さく声を上げた。
「もう、濡れてる」
「や、だから言わないで……」
羞恥からか、顔を紅く染めている様子は可愛らしくて、つい虐めたくなる。
下着の上から優しく撫で上げて、耳元で軽く囁いた。
「直接の方がいい?」
「あ、う……う、ん」
薬のお陰なのか所為なのか、大人しく頷く様子に、彼は首筋に口付けを一つ落とした。
そうでもしなければ、変にタガが外れてしまいそうで。
いやもう既に半分以上外れているのかもしれない。まあいい、薬の所為にしておこう。
「ん……あっ」
下着をずらされ、脱がされて、そこから秘部に糸が引いたのを見て、レミリアはまた目を逸らした。
その様子を楽しみながら、そっと指を触れさせると、淫らな水音が聞こえてくる。
ゆっくりかき回すだけで、レミリアの息が荒くなってきた。
「あ、まっ……もう少し、やさしく、して」
「はい」
速度を落として、だがそれでも弱いところを探って責める。
「ん、あ、んんっ、や、ああっ」
シーツをぎゅっと掴んで、レミリアは身体をくねらせた。
それさえもどこか誘っているようで、○○は一度指を離す。
「ん、あ……?」
不思議そうな表情には答えず、何を思い立ったのか、濡れた指をぺろりと舐めた。
「甘……」
「や、何を……」
レミリアが言い終わる前に、彼は彼女の下腹部に口付け、少しずつ下に下ろしていく。
「あ、だめ、そんなとこ……ああっ!」
制止の声は届かず、秘所を舐め上げられてレミリアは身体を跳ねさせた。
「は、ぁん、だめ、あ、ん、あああっ、や、ん!」
くしゃりと、両手は○○の髪を軽く掴んでいるが、力が入っていない。
本気で抵抗しようと思えば幾らでも出来るはずなのだが、今の彼女にはそれすら出来ないでいる。
いや、本気で抵抗しようと言う気がもう無いからかもしれない。
「ふ、ふぁ、ん、ああ、あああっ!」
舌でかき回され、陰核を責め立てられ――既に一度軽く達していたレミリアに余裕があるはずもなく。
「あ、や、んあっ! あ、ん、ひゃうっ、あ、ああああっ――――!」
一際大きく身体を震わせて、彼女はくたりと力を失った。
荒い息のまま、レミリアは力の入らない身体で○○のほうを向いた。
「あ、う、○○……」
「ごめんなさい、強すぎました?」
緩く首を振って、シャツを肌蹴ている彼に腕を伸ばす。
「おかしい、の」
「……?」
「もう、こんな、なのに」
いつもと違う感覚に彼女は戸惑っていた。
体が熱くてたまらない。身体は達しきったはずなのに、それでもまだ治まらなくて。
それとも、これが薬の効果なのだろうか。だとしたら、これは。
「何か、変なの。まだ、熱くて」
「レミリア、さん」
彼の声に戸惑いが混ざったのにも気が付かず、レミリアは彼の胸に頬を当てる。
素肌の感触が心地よくて、熱い吐息を吐きながら、囁くように告げる。
「からだ、熱いの。おねがい」
たすけて。
甘えるような、強請るような、懇願するようなその言葉が、更なる引き金になったことに彼女は気が付いたかどうか。
いきなり激しく口付けられて、再びベッドに押さえつけられて。
常には無いその少しの荒々しさが、それでもどこか自分を満たしてくれていることを、レミリアは感じていた。
繰り返される口付けの合間に、レミリアは喘ぐように息をする。
口唇も触れているところも熱いのに、それが何故だか心地よかった。
「レミ、リア」
熱っぽい彼の言葉が何を表しているかなど、考えるまでもなく彼女は頷いた。
既に彼自身が彼女に宛がわれていて、それが強く主張していることもわかっていたから。
「ん、ふぁ、あ、ああああっ――」
唐突に奥まで達した感覚に、レミリアは大きく仰け反って声を上げる。
「あ、はあ、っん、ああ……っ」
再び達した余韻に浸る間もなく、○○の腕が伸びてきて彼女の腰を抱き寄せた。
「ん、あ、まっ……だめ、まだ……」
中にある彼自身から感じる熱さに、レミリアは身をよじらせる。
身体も何もかも酷く熱いのに、一緒になっていることが酷く心地よくて、その感覚に戸惑った。
「あ、ん、まだ、うごいちゃ……」
それでも、敏感になっている身体ではその快感が逆に辛い。
中から感じる動きがそれを助長しているのか、喘ぐような声には、余裕の欠片も無かった。
「……まだ」
「う、ん」
「……いや、まだ、僕は動いて、ないですよ」
歯を食いしばり、やや唸るような響きで答えた彼の言葉が浸透するまで少し時間がかかった。
気が付いて、さらにレミリアの顔が紅潮する。いや、今や全身が薄っすらと朱に染まっているようだった。
その姿が艶かしく、そして美しいなど――彼女は知る由も無かったが。
「あ、う、や……」
「……動くよ」
レミリアの中の彼が存在感を増す。頷いて、彼女は彼の首に腕を回した。
「あ、ふ、んん、ああっ……」
動きは思ったよりも緩やかだった。急いで貪るのではなく、ゆっくりと、どこかもどかしいほどの動き。
だがそれでも、敏感になっているレミリアには少し刺激が強くて。
「ん、ふ、ああっ、は、あ、んああっ……」
「っ……辛、い?」
彼の言葉に首を振って、少し強く抱きつく。
「ん、ううん、あ、はう、きもち、いい……」
「――――っ!」
その言葉に、○○はそっと首に回されてる腕を外させて、掌を合わせるようにシーツに押さえ込んできた。
その彼の少し大きめの手の指に、レミリアは自分の指を絡め、軽く握って応える。
「ん、んんっ、あ、ふぁ、ん、あ、んん」
少しずつ速くなる律動も、何度も落とされる口付けも、全部全部、愛しくてたまらなくなって、くる。
知らず知らずに自分からも動いて彼に応えていることなど、レミリアが気が付くはずも無く。
何度も意識ごと快楽に押し上げられる中、彼女の耳に届いたのはただ、これだけの言葉。
「愛してます――愛してます、レミリア」
「わ、わたしも――――ああっ!」
そのうわ言のような彼の声が合図になったかのように、彼女の身体は大きく震える。
それでも、行為を、言葉を、想いを、彼女の身体は求めるのをやめなくて。
「あ、○○、ん、ああ、もっと……」
「っ……! 仰せの、ままに」
何度目かの口の中を貪るような激しく情熱的な口付けも、最早彼女を満たすものでしかありえなかった。
そして後には、絹の擦れる音と水音と嬌声だけが響いて――
「むー」
「すみません」
拗ねたように自分の胸に顔を伏せているレミリアに、○○は困った声を上げた。
少しまどろんだ後の、後朝のベッドの中である。
「別に怒ってないわ」
「でも、拗ねてるんでしょう?」
結局、昨晩は薬の効果が切れるまで求め合った。
普段は言わないようなことも、しないようなことも、それに任せてやってしまった気がする。
いや、気がする、ではなく全くの事実であるのだが。
当然シーツはとても休めるような状態ではなかったため、休む前に気力を振り絞って○○が替えていた。もちろん自分達の後始末も含めて。
その間、レミリアのことは抱きかかえていたから良いのだが、問題なのはいつの間にかシーツの替えが既に用意されていたことで。
自分は用意していないから、考えられるのはただ一人なわけで――瀟洒なメイド長、恐るべし。
「……何か、悔しいのよね」
「悔しい、ですか」
「何だか、ずっと○○のペースだったみたいで。それが悔しいの」
むう、と唸るように身を寄せてくる様子は可愛らしいのだけど、どうも機嫌を損ねてしまってるようだ。
まあでも、本気で拗ねているわけではないから、どうとでも宥めようはあるのだけど。
「あー、いやでも、ペースと言うならこちらは乱されっ放しだったわけで」
「そう? そのわりには、好き勝手してたように思うけど」
いやそれは理性が切れただけです、とか何とかぼそぼそと口にする。
「それに、レミリアさんが」
「ん、私が、何?」
「レミリアさんが可愛いからですよ。翻弄されてるのはこっちです」
照れた表情が見られないように片腕で抱き寄せながら、○○はそれだけを口にする。
レミリアも照れているようで、○○からも耳が真っ赤になっているのが見えた。
「……馬鹿なこと言わないの」
照れ隠しなのか、○○の胸に頬を寄せながらレミリアはぽつりと呟いた。
「本心なのに……いたたたたた」
「うるさい、ちょっと黙りなさい」
調子に乗っていたら頬を抓られた。これも照れ隠しなのはわかってるから、可愛い限りだが。
「何にやにやしてるのよ」
「いえいえ、何でも……いたいいたい、頬抓るの止めてください」
「そう余裕綽々だからこちらは腹が立つの」
「いや別に、余裕なんてあるわけではないんですが」
全くにしてそうだ。一挙手一投足に翻弄されているのは彼の方だと言うのに。
「そういう態度がそうだって言ってるのよ。全く……」
そうため息をついた後、ふとレミリアは悪戯っぽく微笑った。
「まあ、そういうところも気に入ってるんだけれど」
「あ、え……?」
不意打ちに応じきれずに言葉にならない言葉を口にしていると、彼女はその慌て振りに満足そうな表情をした。
「疲れたわ。寝ましょう?」
「あ、はい……」
「じゃあ、寝る前に」
レミリアは顔を上げて不意に○○の口唇を奪うと、そのまま、ぽす、と彼の胸に頭を乗せる。
心なしか顔が紅くなっていて、彼はささやかな反撃に出た。
「……自分でやっておいて照れてますね?」
「うるさい。寝るわよ」
不機嫌な声は明らかに照れ隠しで、はい、と応じながら○○は微笑ってレミリアの背に腕を回した。
「ね、○○、明日、私が起きるまでこうしてて」
「え? ええ」
「いつも、貴方の方が先に起きて準備してるじゃない。だから、たまには」
「……ええ、了解しました」
甘い我儘を受け入れて、彼は少しだけ強く、腕の中の恋人を抱き寄せた。
――後日。
紅い館に、永遠亭の薬師が訪れていた。別段珍しい話でもなく、たまに薬の補充にやってきたりする。
もちろん、今日の目的はそれだけではなかったが。
「いらっしゃいませ」
「ええ、お邪魔するわ。いつもの喘息用のは持ってきているけれど、足りない薬は何か無い?」
「ええと……」
咲夜が永琳に応対し、薬箱の内容を確認しながら置き薬の量を合わせていく。
そうしているうち、館の主が応接室に入ってきた。
「ああ、来ていたのね」
「お邪魔してるわ」
「パチェの薬ね? ああ、咲夜、一通り終わったらお茶の一つでも淹れてあげなさい」
「かしこまりました」
手早く仕事を終わらせると、咲夜は一礼して部屋から出ていく。
「珍しいわね、それとも昼間から起きてるのかしら?」
「今日は○○も里に出てるから、後で見に行こうかと思ってね」
「ああ、さっき会ったわ。子供達に囲まれてたわよ」
「自分が吸血鬼の自覚あるのかしら……」
ため息をついて、戻ってきた咲夜が淹れた紅茶を手に取る。
「まあ、ついでの話もしてきたけれど」
「ついで?」
「この前の薬の感想」
「……っ! ごほ、ごほっ」
思い切りむせ返って、レミリアは永琳をじと目で見やる。
「あらあら、モニターしてもらうって言ったじゃない」
「それは言ったが……!」
子供達と遊んでいる者にする質問でもないだろうに。
「まあ、楽しんでくれたようで良かったわ」
「……あんなになるなんて聞いてない」
ぼそぼそと答えながら、ふう、とレミリアは息をついた。
「○○に効いてたのかしら、あれ」
「さて。効いてたようだ、とは言ってたけれど」
「私にわからないなら意味が無いじゃない」
むう、とレミリアは不満を漏らす。
「……要するに、悔しい、と」
「……やられっ放しは悔しくない?」
「まあ、わからなくもないけれど」
いつしか相談役に回りつつ、ふむ、と永琳は顎に手を当てる。
「ま、何か面白いもの作ったらまた回して上げるわ」
「……楽しんでるでしょ」
「否定はしないわよ。それにしても、大人しそうな彼に貴女がねえ……」
にやにやとからかう永琳に、レミリアは顔を真っ赤にする。
「う、煩い」
「あらあら、からかいすぎたかしら」
そう言いつつ永琳は後ろのメイド長を見遣るが、じゃれ合いと言うことを理解してか、済ました表情で口元に微笑を浮かべているだけだった。
「……○○連れて帰ってくる。どうせそろそろ日暮れだし。そしたら薬のことも話すから待ってなさい。咲夜、しばらくお願い」
気恥ずかしさが頂点に達したのか、耳の先までを真っ赤にして、レミリアは咲夜から日傘を受け取ると外に出て行った。
「失礼しますわ。お嬢様が帰っていらっしゃるまで、少々お待ちください」
「いいわ。私もからかいすぎたのはわかっているし」
咲夜に新しい紅茶を注いでもらいながら、永琳はくすくすと笑う。
「しかし、貴女が怒らないのは意外だったわね」
「お嬢様も嫌がっているわけではありませんから」
「いいえ、彼に対しても、よ?」
言葉の裏にあるものを正確に読み取って、咲夜はふう、と微笑みながらため息をついた。
「そもそも、認めていなければお嬢様の傍に在ることを許していませんわ」
「あら、ではお眼鏡にはかなったのね……この館の人達の」
永琳の言葉に、咲夜はただ微笑みを返しただけであった。
結局、里に着く頃に、帰ろうとしていた○○と出逢い、並んで歩きながらレミリアが尋ねた。
「子供達に人気があるんですってね?」
「まあ、以前からいつも遊んでましたから」
日傘をレミリアの上に差しながら、○○が応じる。
「薬師から聞いたわよ。今家に来てるわ」
「あ、そうなんですか……てことは、聞きまし……た?」
「何を言われたのかしら?」
先ほどからかわれた分を発散するかのように、レミリアは○○に尋ねた。
「……『あれはどうだった?』と問われたので、味を改善して欲しい、って言ったら『あら、それ以外は気に入ってくれた様ね』と」
「……綺麗に引っかかってどうするのよ」
ため息をついて、レミリアは悪戯っぽい笑みを向けた。
「まだ来てるから、さらにからかわれることは覚悟しておきなさい」
「うー……」
頭を抱える○○を楽しそうに見て――自分のことは棚の上に放り投げつつ、レミリアは不意に思い立つ。
「んー、あ、そうしたらいいのかしら……」
「……どうしました?」
「いいえ別に、何でもないわよ?」
何か悪戯に近いものを思いついた表情に、○○は一つやれやれとため息をついた。
こういった表情が愛おしく感じるのだからたぶん自分はもう末期に違いない。
からかわれるのは仕方ないだろうが、まあそれもまた幸せの一つなのだろうと、暢気なことを考えながら。
後日、レミリアのその『思いつき』が例によって例の如く、彼の理性を粉微塵にしかけるのだが――
――それはまた、別の話。
続く?
1スレ>>608 ロダicyanecyo_0070.txt
レミリアとでいうぉーかー番外編3へ続く
SS : レミリア・スカーレットへ戻る
宴会の席。
いつものように絡まれて酔いつぶれた○○を膝枕しているレミリアに、ふと声がかけられた。
「あらあら、見せ付けてくれるわね」
「何故全員同じことを言うんだ」
少しむっとした声で返した後、レミリアはその姿を見上げる。
「何かしら?」
言いたいことを察したのか、彼女はレミリアの隣に腰を下ろした。
「ちょっと、訊きたいことが」
「あら、珍しい」
くすくすと笑った彼女がそっと薬湯を差し出した。彼に飲ませろと言うことらしい。
「……ありがとう」
「いえいえ。で、何かしら?」
永遠亭の薬師は柔らかい微笑みを浮かべて、幼い吸血鬼の問いを待った。
「…………その、前に、もらった薬、だけど」
「あら、使ったの? まだ要る?」
「使ってない!」
一声叫んで、レミリアは顔を紅くしてうつむく。照れを隠すように、○○の額の髪を払った。
「いや、まあその……パチェに言ったらしいから」
「……? 何を言ったかしら?」
本気で忘れているらしい永琳に、レミリアはぼそぼそと尋ねる。
「その、使うときは気をつけろ、みたいなこと」
「ああ、そのこと」
永琳は微笑みながら、そうね、と頷いた。
「妖怪用に作ってあるものだから、少し強めにはしてあるわ」
「……そもそも、これを私が飲むのか○○が飲むのかも知らないし」
「どちらでもいいのよ? ただ、一人で飲むには少し多いかもしれないけれどね」
だから、と悪戯っぽく永琳は囁く。
「彼だけに飲ませたら、貴女を滅茶苦茶にしかねないわよ?」
「……っ!」
レミリアは顔を背けて、視線だけで永琳を睨む。
人を射殺せそうな視線だが、顔を赤く染めているため威厳は半分と言うところか。
「あらあら、そんなに睨まないで。でも、そうね。半分にするくらいがいいかもね。初めて使うなら」
「半分ずつ?」
「ええ。まあ適当に分けても構わないわ。身体に害が残るような代物じゃないもの。お酒みたいなものよ」
「そうなの?」
「そうよ。だから効果が出てくるのも若干早いはず。いろいろ改良中だから、良かったらモニターしてくれる?」
「……どこまで本気で冗談なのか……」
レミリアが呆れたようにため息をつくと、薬師は何でもない表情で答えた。
「あら、私はいつも本気よ?」
とにかく、用法用量を尋ねて、その場での彼女達の会話は幕を閉じた。
そして翌晩の紅魔館。夜半もとうに過ぎ、休む前のちょっとした時間。
「その、○○」
「はい」
甘えた声で自分を呼ぶレミリアに、○○は応じて彼女の隣に座る。
「今日は、その」
「あ、ええ、大丈夫ですよ。明日は里に行く用事もありませんし」
「う、うん、それで」
手にした小瓶を見せられて、彼は一瞬首を傾げ――思い出した。
「あ、あー、あれですか」
「うん……薬師に使い方、聞いて」
「……いつ?」
「○○が酔いつぶれてるときに」
その言葉に何とも言えない表情になった後、こほん、と彼は咳払いした。
「使いたい、ですか」
「興味は、あるの」
「……では、お聞きしていいですか、使い方」
どこか不安そうにしていたレミリアに、彼は照れたように微笑んだ。
「僕も、興味がなかったわけではないんですよ」
「ということは、半分こですか」
「ん……効き方は身体の大きさで変わる、とは言ってたけど」
「じゃあ、あんまり効かないかも。それだったらそれだったで、優しくできるといいんですが」
優しく、の言葉に、レミリアは顔を真っ赤にする。
「……○○は、優しいわ」
「……それは光栄」
言われて照れたのか、彼も少し紅くなった頬をかく。
「どちらから、飲みます?」
「……私から飲む」
レミリアはそう言って、小瓶の封を切り、中の淡い赤の液体を、半分ほど飲み込んだ。
「どうです?」
「……甘い、わね。○○も」
「んー……飲ませてください、というのは流石に我儘ですかね?」
悪戯っぽい笑みに、レミリアは慌てて視線を彷徨わせる。
「な、何言いだすのよ」
「冗談ですよ」
くすくすと笑いながら小瓶に手を伸ばしたところで、レミリアが少し頬を膨らませた。
「いいわよ」
「え、あ、ちょっ……」
レミリアはいきなり小瓶の中身をあおると、○○の襟元を引き寄せて口付けた。
甘い液体が○○の舌の上を滑り、喉に流れ落ちていく。
その間も、液体を押し流そうとするレミリアの舌が彼の舌に絡んできて、脳が痺れるような甘さを残した。
「……飲ませたわよ」
「あ、ありがとう、ございます」
顔を真っ赤にするレミリアに、どういう表情をしたらいいのかわからないまま、紅くなって応じる。
口の中の味をもう一度確かめて、んー、と彼は我に返ったように呟いた。
「甘いですね」
「あ、うん、ちょっと甘すぎるかしら」
効くまでに二十分ほど掛かる、と聞いていたので、適当な会話を振ることにした。
「んー、でも、どこかで飲んだことのあるような甘さですね……」
「……あるの?」
「ああ、睨まないでください、こういう薬でというわけでは……ん、薬?」
思い出したように、ああ、と彼は呟く。
「あれだ、風邪シロップか、子供の頃飲んだ」
「風邪シロップ?」
「そういうのがあって……ああ、あの味だ。地味に薬染みたところまでそっくりです」
納得する○○に、不思議そうな顔をしてレミリアは彼の袖を引いた。
「どういうものなの? 私には縁の無いものだから」
「あー、うん、そうですねえ……」
ともかく、取りとめの無い話を始めるにはよい切っ掛けとなったようで、○○は外の薬のことを話し出した。
とりあえず、報告に味だけはどうにかしてもらおう、と伝えることは心に決めて。
緊張をほぐすように寄り添ったまま話しているうち、レミリアが徐々に寄り添ってきていることに彼は気が付いていた。
息にも、甘いというより熱いものが混じり始めていて、効き始めているのだとわかってくる。
自分の精神も少しずつ蝕まれてきているのだろうが、それには気が付かないことにして、彼はレミリアを後ろから抱きしめ、膝の上に抱えた。
「きゃ、○○……?」
「そろそろ、効いてきてるんじゃないですか?」
耳元で囁きながら、レミリアの服の裾に手を伸ばす。
「ん、あ、いきなり……?」
「……そんなつもりはないんですけど」
する、と服の中に手を滑らせ、膨らみに向かって伸ばしながら、耳を軽く甘噛みする。
「や、ひゃ……」
軽く身を捩じらせながら、しかしレミリアも抵抗しない。シーツを握り締めて、自らを襲う感覚に耐えている。
「んんっ……!」
だが、○○の両手が胸の先端に達してそこを撫でた瞬間、レミリアは小さく嬌声を上げて軽く震えると、○○にもたれかかった。
「……レミリアさん、まさか……」
「……や、言わないで……」
顔を真っ赤に染めて俯く様は、○○の中の何かを刺激した。
それはあえて言うなら悪戯心とか嗜虐心とか言うものだったかも知れない。
だがそれがわかるような余裕が彼に残されていたわけがなく。
「……っ!?」
驚くレミリアに構わず、○○は彼女をベッドに押し倒すように押さえつけていた。
「○○……?」
覆いかぶさられる体勢に、レミリアは戸惑う声を上げた。
ベッド自体が柔らかいために羽を痛めることはないが、初めての体勢に視線を彷徨わせる。
「……あ、やっ、だめ……っ」
服を脱がしながら肌に口付けていく○○に、形ばかりの抵抗をする。
「駄目、ですか」
「……っ! 意地悪なこと言うな……っ! ひゃうっ」
強がりを言う姿がさらに○○を煽り立てることにも気が付かない。
唐突に乳首を舌で転がされて、レミリアは身体を捻った。
「や、ひゃ、んんっ、あ……っ!」
甘い声がさらに互いの理性を溶かす。片方の胸をたっぷり苛めた後、もう片方に移る。
「ん、んんっ、あう、やん……あ」
荒い息を吐きながら、潤んだ瞳で彼を見つめる。
「どうしました?」
○○も息を乱しながら、レミリアと視線を合わせた。
いつもと違う視点で見つめられて、彼女は上気した顔を照れたように背ける。
「ん、別に……んっ」
「……身体は、そうでもないみたいですけど」
下腹部に滑らされた手に、レミリアは瞳を強く閉じる。
下着の上から触られたときに、軽い水音がして、彼女は小さく声を上げた。
「もう、濡れてる」
「や、だから言わないで……」
羞恥からか、顔を紅く染めている様子は可愛らしくて、つい虐めたくなる。
下着の上から優しく撫で上げて、耳元で軽く囁いた。
「直接の方がいい?」
「あ、う……う、ん」
薬のお陰なのか所為なのか、大人しく頷く様子に、彼は首筋に口付けを一つ落とした。
そうでもしなければ、変にタガが外れてしまいそうで。
いやもう既に半分以上外れているのかもしれない。まあいい、薬の所為にしておこう。
「ん……あっ」
下着をずらされ、脱がされて、そこから秘部に糸が引いたのを見て、レミリアはまた目を逸らした。
その様子を楽しみながら、そっと指を触れさせると、淫らな水音が聞こえてくる。
ゆっくりかき回すだけで、レミリアの息が荒くなってきた。
「あ、まっ……もう少し、やさしく、して」
「はい」
速度を落として、だがそれでも弱いところを探って責める。
「ん、あ、んんっ、や、ああっ」
シーツをぎゅっと掴んで、レミリアは身体をくねらせた。
それさえもどこか誘っているようで、○○は一度指を離す。
「ん、あ……?」
不思議そうな表情には答えず、何を思い立ったのか、濡れた指をぺろりと舐めた。
「甘……」
「や、何を……」
レミリアが言い終わる前に、彼は彼女の下腹部に口付け、少しずつ下に下ろしていく。
「あ、だめ、そんなとこ……ああっ!」
制止の声は届かず、秘所を舐め上げられてレミリアは身体を跳ねさせた。
「は、ぁん、だめ、あ、ん、あああっ、や、ん!」
くしゃりと、両手は○○の髪を軽く掴んでいるが、力が入っていない。
本気で抵抗しようと思えば幾らでも出来るはずなのだが、今の彼女にはそれすら出来ないでいる。
いや、本気で抵抗しようと言う気がもう無いからかもしれない。
「ふ、ふぁ、ん、ああ、あああっ!」
舌でかき回され、陰核を責め立てられ――既に一度軽く達していたレミリアに余裕があるはずもなく。
「あ、や、んあっ! あ、ん、ひゃうっ、あ、ああああっ――――!」
一際大きく身体を震わせて、彼女はくたりと力を失った。
荒い息のまま、レミリアは力の入らない身体で○○のほうを向いた。
「あ、う、○○……」
「ごめんなさい、強すぎました?」
緩く首を振って、シャツを肌蹴ている彼に腕を伸ばす。
「おかしい、の」
「……?」
「もう、こんな、なのに」
いつもと違う感覚に彼女は戸惑っていた。
体が熱くてたまらない。身体は達しきったはずなのに、それでもまだ治まらなくて。
それとも、これが薬の効果なのだろうか。だとしたら、これは。
「何か、変なの。まだ、熱くて」
「レミリア、さん」
彼の声に戸惑いが混ざったのにも気が付かず、レミリアは彼の胸に頬を当てる。
素肌の感触が心地よくて、熱い吐息を吐きながら、囁くように告げる。
「からだ、熱いの。おねがい」
たすけて。
甘えるような、強請るような、懇願するようなその言葉が、更なる引き金になったことに彼女は気が付いたかどうか。
いきなり激しく口付けられて、再びベッドに押さえつけられて。
常には無いその少しの荒々しさが、それでもどこか自分を満たしてくれていることを、レミリアは感じていた。
繰り返される口付けの合間に、レミリアは喘ぐように息をする。
口唇も触れているところも熱いのに、それが何故だか心地よかった。
「レミ、リア」
熱っぽい彼の言葉が何を表しているかなど、考えるまでもなく彼女は頷いた。
既に彼自身が彼女に宛がわれていて、それが強く主張していることもわかっていたから。
「ん、ふぁ、あ、ああああっ――」
唐突に奥まで達した感覚に、レミリアは大きく仰け反って声を上げる。
「あ、はあ、っん、ああ……っ」
再び達した余韻に浸る間もなく、○○の腕が伸びてきて彼女の腰を抱き寄せた。
「ん、あ、まっ……だめ、まだ……」
中にある彼自身から感じる熱さに、レミリアは身をよじらせる。
身体も何もかも酷く熱いのに、一緒になっていることが酷く心地よくて、その感覚に戸惑った。
「あ、ん、まだ、うごいちゃ……」
それでも、敏感になっている身体ではその快感が逆に辛い。
中から感じる動きがそれを助長しているのか、喘ぐような声には、余裕の欠片も無かった。
「……まだ」
「う、ん」
「……いや、まだ、僕は動いて、ないですよ」
歯を食いしばり、やや唸るような響きで答えた彼の言葉が浸透するまで少し時間がかかった。
気が付いて、さらにレミリアの顔が紅潮する。いや、今や全身が薄っすらと朱に染まっているようだった。
その姿が艶かしく、そして美しいなど――彼女は知る由も無かったが。
「あ、う、や……」
「……動くよ」
レミリアの中の彼が存在感を増す。頷いて、彼女は彼の首に腕を回した。
「あ、ふ、んん、ああっ……」
動きは思ったよりも緩やかだった。急いで貪るのではなく、ゆっくりと、どこかもどかしいほどの動き。
だがそれでも、敏感になっているレミリアには少し刺激が強くて。
「ん、ふ、ああっ、は、あ、んああっ……」
「っ……辛、い?」
彼の言葉に首を振って、少し強く抱きつく。
「ん、ううん、あ、はう、きもち、いい……」
「――――っ!」
その言葉に、○○はそっと首に回されてる腕を外させて、掌を合わせるようにシーツに押さえ込んできた。
その彼の少し大きめの手の指に、レミリアは自分の指を絡め、軽く握って応える。
「ん、んんっ、あ、ふぁ、ん、あ、んん」
少しずつ速くなる律動も、何度も落とされる口付けも、全部全部、愛しくてたまらなくなって、くる。
知らず知らずに自分からも動いて彼に応えていることなど、レミリアが気が付くはずも無く。
何度も意識ごと快楽に押し上げられる中、彼女の耳に届いたのはただ、これだけの言葉。
「愛してます――愛してます、レミリア」
「わ、わたしも――――ああっ!」
そのうわ言のような彼の声が合図になったかのように、彼女の身体は大きく震える。
それでも、行為を、言葉を、想いを、彼女の身体は求めるのをやめなくて。
「あ、○○、ん、ああ、もっと……」
「っ……! 仰せの、ままに」
何度目かの口の中を貪るような激しく情熱的な口付けも、最早彼女を満たすものでしかありえなかった。
そして後には、絹の擦れる音と水音と嬌声だけが響いて――
「むー」
「すみません」
拗ねたように自分の胸に顔を伏せているレミリアに、○○は困った声を上げた。
少しまどろんだ後の、後朝のベッドの中である。
「別に怒ってないわ」
「でも、拗ねてるんでしょう?」
結局、昨晩は薬の効果が切れるまで求め合った。
普段は言わないようなことも、しないようなことも、それに任せてやってしまった気がする。
いや、気がする、ではなく全くの事実であるのだが。
当然シーツはとても休めるような状態ではなかったため、休む前に気力を振り絞って○○が替えていた。もちろん自分達の後始末も含めて。
その間、レミリアのことは抱きかかえていたから良いのだが、問題なのはいつの間にかシーツの替えが既に用意されていたことで。
自分は用意していないから、考えられるのはただ一人なわけで――瀟洒なメイド長、恐るべし。
「……何か、悔しいのよね」
「悔しい、ですか」
「何だか、ずっと○○のペースだったみたいで。それが悔しいの」
むう、と唸るように身を寄せてくる様子は可愛らしいのだけど、どうも機嫌を損ねてしまってるようだ。
まあでも、本気で拗ねているわけではないから、どうとでも宥めようはあるのだけど。
「あー、いやでも、ペースと言うならこちらは乱されっ放しだったわけで」
「そう? そのわりには、好き勝手してたように思うけど」
いやそれは理性が切れただけです、とか何とかぼそぼそと口にする。
「それに、レミリアさんが」
「ん、私が、何?」
「レミリアさんが可愛いからですよ。翻弄されてるのはこっちです」
照れた表情が見られないように片腕で抱き寄せながら、○○はそれだけを口にする。
レミリアも照れているようで、○○からも耳が真っ赤になっているのが見えた。
「……馬鹿なこと言わないの」
照れ隠しなのか、○○の胸に頬を寄せながらレミリアはぽつりと呟いた。
「本心なのに……いたたたたた」
「うるさい、ちょっと黙りなさい」
調子に乗っていたら頬を抓られた。これも照れ隠しなのはわかってるから、可愛い限りだが。
「何にやにやしてるのよ」
「いえいえ、何でも……いたいいたい、頬抓るの止めてください」
「そう余裕綽々だからこちらは腹が立つの」
「いや別に、余裕なんてあるわけではないんですが」
全くにしてそうだ。一挙手一投足に翻弄されているのは彼の方だと言うのに。
「そういう態度がそうだって言ってるのよ。全く……」
そうため息をついた後、ふとレミリアは悪戯っぽく微笑った。
「まあ、そういうところも気に入ってるんだけれど」
「あ、え……?」
不意打ちに応じきれずに言葉にならない言葉を口にしていると、彼女はその慌て振りに満足そうな表情をした。
「疲れたわ。寝ましょう?」
「あ、はい……」
「じゃあ、寝る前に」
レミリアは顔を上げて不意に○○の口唇を奪うと、そのまま、ぽす、と彼の胸に頭を乗せる。
心なしか顔が紅くなっていて、彼はささやかな反撃に出た。
「……自分でやっておいて照れてますね?」
「うるさい。寝るわよ」
不機嫌な声は明らかに照れ隠しで、はい、と応じながら○○は微笑ってレミリアの背に腕を回した。
「ね、○○、明日、私が起きるまでこうしてて」
「え? ええ」
「いつも、貴方の方が先に起きて準備してるじゃない。だから、たまには」
「……ええ、了解しました」
甘い我儘を受け入れて、彼は少しだけ強く、腕の中の恋人を抱き寄せた。
――後日。
紅い館に、永遠亭の薬師が訪れていた。別段珍しい話でもなく、たまに薬の補充にやってきたりする。
もちろん、今日の目的はそれだけではなかったが。
「いらっしゃいませ」
「ええ、お邪魔するわ。いつもの喘息用のは持ってきているけれど、足りない薬は何か無い?」
「ええと……」
咲夜が永琳に応対し、薬箱の内容を確認しながら置き薬の量を合わせていく。
そうしているうち、館の主が応接室に入ってきた。
「ああ、来ていたのね」
「お邪魔してるわ」
「パチェの薬ね? ああ、咲夜、一通り終わったらお茶の一つでも淹れてあげなさい」
「かしこまりました」
手早く仕事を終わらせると、咲夜は一礼して部屋から出ていく。
「珍しいわね、それとも昼間から起きてるのかしら?」
「今日は○○も里に出てるから、後で見に行こうかと思ってね」
「ああ、さっき会ったわ。子供達に囲まれてたわよ」
「自分が吸血鬼の自覚あるのかしら……」
ため息をついて、戻ってきた咲夜が淹れた紅茶を手に取る。
「まあ、ついでの話もしてきたけれど」
「ついで?」
「この前の薬の感想」
「……っ! ごほ、ごほっ」
思い切りむせ返って、レミリアは永琳をじと目で見やる。
「あらあら、モニターしてもらうって言ったじゃない」
「それは言ったが……!」
子供達と遊んでいる者にする質問でもないだろうに。
「まあ、楽しんでくれたようで良かったわ」
「……あんなになるなんて聞いてない」
ぼそぼそと答えながら、ふう、とレミリアは息をついた。
「○○に効いてたのかしら、あれ」
「さて。効いてたようだ、とは言ってたけれど」
「私にわからないなら意味が無いじゃない」
むう、とレミリアは不満を漏らす。
「……要するに、悔しい、と」
「……やられっ放しは悔しくない?」
「まあ、わからなくもないけれど」
いつしか相談役に回りつつ、ふむ、と永琳は顎に手を当てる。
「ま、何か面白いもの作ったらまた回して上げるわ」
「……楽しんでるでしょ」
「否定はしないわよ。それにしても、大人しそうな彼に貴女がねえ……」
にやにやとからかう永琳に、レミリアは顔を真っ赤にする。
「う、煩い」
「あらあら、からかいすぎたかしら」
そう言いつつ永琳は後ろのメイド長を見遣るが、じゃれ合いと言うことを理解してか、済ました表情で口元に微笑を浮かべているだけだった。
「……○○連れて帰ってくる。どうせそろそろ日暮れだし。そしたら薬のことも話すから待ってなさい。咲夜、しばらくお願い」
気恥ずかしさが頂点に達したのか、耳の先までを真っ赤にして、レミリアは咲夜から日傘を受け取ると外に出て行った。
「失礼しますわ。お嬢様が帰っていらっしゃるまで、少々お待ちください」
「いいわ。私もからかいすぎたのはわかっているし」
咲夜に新しい紅茶を注いでもらいながら、永琳はくすくすと笑う。
「しかし、貴女が怒らないのは意外だったわね」
「お嬢様も嫌がっているわけではありませんから」
「いいえ、彼に対しても、よ?」
言葉の裏にあるものを正確に読み取って、咲夜はふう、と微笑みながらため息をついた。
「そもそも、認めていなければお嬢様の傍に在ることを許していませんわ」
「あら、ではお眼鏡にはかなったのね……この館の人達の」
永琳の言葉に、咲夜はただ微笑みを返しただけであった。
結局、里に着く頃に、帰ろうとしていた○○と出逢い、並んで歩きながらレミリアが尋ねた。
「子供達に人気があるんですってね?」
「まあ、以前からいつも遊んでましたから」
日傘をレミリアの上に差しながら、○○が応じる。
「薬師から聞いたわよ。今家に来てるわ」
「あ、そうなんですか……てことは、聞きまし……た?」
「何を言われたのかしら?」
先ほどからかわれた分を発散するかのように、レミリアは○○に尋ねた。
「……『あれはどうだった?』と問われたので、味を改善して欲しい、って言ったら『あら、それ以外は気に入ってくれた様ね』と」
「……綺麗に引っかかってどうするのよ」
ため息をついて、レミリアは悪戯っぽい笑みを向けた。
「まだ来てるから、さらにからかわれることは覚悟しておきなさい」
「うー……」
頭を抱える○○を楽しそうに見て――自分のことは棚の上に放り投げつつ、レミリアは不意に思い立つ。
「んー、あ、そうしたらいいのかしら……」
「……どうしました?」
「いいえ別に、何でもないわよ?」
何か悪戯に近いものを思いついた表情に、○○は一つやれやれとため息をついた。
こういった表情が愛おしく感じるのだからたぶん自分はもう末期に違いない。
からかわれるのは仕方ないだろうが、まあそれもまた幸せの一つなのだろうと、暢気なことを考えながら。
後日、レミリアのその『思いつき』が例によって例の如く、彼の理性を粉微塵にしかけるのだが――
――それはまた、別の話。
続く?
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レミリアとでいうぉーかー番外編3へ続く
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