東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

秋めくしるべ



ここは妖怪の山にほど近い森の中、わたしはわたしの愛犬の姿を探していた。
いつもの散歩道をいつもよりも少しだけ遅い時間歩いていたときのことだった、
わたしが少し気を緩めたとき彼とわたしを繋ぐ紐はわたしの手をすり抜け、彼は喜び勇んで木立ちの中へと駆けて行ったのだった。
「ったく、うちの馬鹿犬は…こんなところで妖怪に見つかってもみろ、ただじゃすまないぞ」
などなどひとりごつも陽は確実に落ちていく、夏の終わりで夜が訪れるのがいつもより思ったよりも早い。
あたりを確認し安全を確認しつつ(それでもどれほど安全かはわからないが)茂みを掻き分けて行く。
馬鹿犬などとそれこそ馬鹿にしてはみたものの、やはり寂しい独り身の大切な家族だ、放っておくわけにはいかない。
もしも野獣や妖怪なんかに襲われでもしたら夢見が悪いったらありゃしない、よしんば既に襲われていたとして…それならそれで飼い主としてきちんと弔ってやらねば。
徐々に夕焼けに陽が染まり始めた頃、ようやくわたしの耳に聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。
ようやく見つけた、この馬鹿犬手間をかけさせて、よく無事だった、そんな安堵の思いを抱いて鳴き声のするほうへ急いだ。
進行方向からは鳴き声と一緒に女性の笑い声が聞こえる、誰かが保護してくれていたのだろうか、きちんと礼を言わなければならないだろう。
このときわたしは気づくべきだったのだ、こんな山に近い森の奥に人間の女性などいるはずがないという事に。
「おい、シロ!こんなとこに居やがったか、めんどうかけさせ…」
言葉を詰まらせたのは目の前に広がっていた光景のせいだった。
そこには、うちの馬鹿犬に押し倒されてもがく白狼天狗と、それを見て笑い転げる河童の姿があった。


「で、そのシロちゃんが逃げ出したからこんな妖怪の山くんだりまでやってきたってわけ?」
あんたなかなか見所あるねぇと、青いキャップを被った河童が愉快そうに笑った。
「そうは言ってもここまで侵入されてただで返すわけにはいきません」
白狼天狗は、居住まいを正しながら言った、その表情はむくれている。
「人間の里と妖怪の山はお互いに不可侵です、そこをここまで入り込んでなんのお咎め無しでは示しがつきません」
そういって天狗はこちらをにらみつけた、野生の獣のような鋭い眼光でこちらを射止めている。
シロを探すためとはいえ彼女達の縄張りを侵したのはたしかにわたし自身だ、こうやって咎められると返す言葉も無い。
まるで寺小屋の教師に叱られる子供のようなわたしを見て助け船を出してくれたのは河童だった。
「ふぅん、そうだけれどもね…まぁいいじゃん今回は許してあげなよ」
白狼天狗はその大きな耳をびくっと動かして、わたしは驚きつつも期待を入り混じらせてそちらを向いた。
「そこの彼はシロちゃんを探しにここまで来たんでしょ?つまりあんたの同属のためにこんな危険を冒したんだ、そこは汲んでやるべきだと思うよ」
「それとこれとは話が別です!私情を任務に挟むなんてこととてもできません!」
「ふぅん?それじゃその任務をきちんと果たしていたのかな、椛ちゃんは」
「う、それは…」
椛と呼ばれた天狗は口ごもった、何かあるのだろうか。
「任務の途中に人間の飼い犬を見つけて構いに行って、挙句その飼い犬なんかに不覚を取ってのしかかられちゃったのはどこの誰かな?」
「うぅ…」
椛の頬が紅潮し、ピンと張っていた耳はしゅんとなりふさふさとした尻尾もいくらか縮んだように思われた。
とても場違いな感想を抱いたのだが、なんだろう、とても可愛い。
「大天狗様には黙っててあげるから、ここは許しておやりなよ」
さらに河童が念を押す、悩んでいたようだが弱みに付け込まれてはどうしようもなかったようだ、ついに椛は折れた。
「わかりました、いいでしょう。今回ばかりは彼女の顔を立てて許してあげます、今後二度とこういうことがないように気をつけなさい」
「ありがとうございます、えっとそちらの方もありがとう」
「いいよいいよ、人間は河童の盟友だからね、こまったときは助けてあげないと」
まさに地獄に仏とはこのこと。
「わたしは河城にとり、谷カッパのにとりだよ人間」
ああ、神様にとり様!今にも拝み倒したいところだけれど横で不服そうに不貞腐れてる天狗の目が気になったのでさすがに思いとどまった。
これでようやくうちに帰れる、この馬鹿犬にもしっかり説教してやらないと、そう安心したときだった、目の前の神様は続けてとんでもないことを仰ったのだった。
「そうそう、椛、彼とシロちゃん、今日はあなたの詰め所にでも泊めてあげたら?」
「「!?」」
わたしと椛は異口同音に声にならない悲鳴を上げた。
いきなり何を言ってらっしゃるんですか?にとり様
「ちょっと待った、さすがにそれは…!」
「な、何を考えてるの!」
「えー、もう日が暮れてるじゃないこんな暗い中を人間とその犬だけを帰すのは危険だよ」
「そういう話じゃなくって…!」
「盟友として助けてあげたのに命を落とされちゃ夢見が悪いよ」
「じゃあにとりのところでかくまってあげたらいいじゃないの!」
「それは、無理。今日は夜中に客があってさ、ちょっと無理なんだよ。いいじゃない、あなた今日宿直だって言ってたし、ちょうどいいじゃん」
「大問題です!こんなこともしも文さんにでも知られたら私は…!」
「何、見つからなければどうってことないって」
なんだかわたしの関与しないところでわたしに関する重大なことが決定しようとしていた。
何かわたしも意見を言うべきだったのだろうけれど、狼狽してもうそれどころではなかった。
二人のやりとりは、自分のあずかり知らぬ世界のもので口を挟む余裕がなかったのもある。
ただただ、横に寝そべって退屈そうにしているシロの背を撫でてやることしかできなかった。
だが、わたしの意識はにとりの一声で呼び戻されることになる。
「しょうがない埒が明かないね、それじゃあんたはどうしたいのさ人間」
「え、俺!?」
「そう、あんたのことだからあんたが決めないとね、こんな暗い道を帰るのは嫌だろ?」
確かににとりの言うとおり、空はもうほとんど朱に染まりきって森は暗闇と化していた。
こんな道を帰るなら泊めてもらえたら百倍も嬉しい。
だが、だ、天狗の住処に足を踏み入れるというのもひどく危なっかしいい気もする。
何よりも現に今わたしの横で白狼天狗がにらみを効かせているので迂闊なことを喋ったらバラバラに引き裂かれそうだ。
ええい、こうなったら苦渋の策だ。
「なぁ、シロ。おまえはどうしたいんだ?」
我ながら下策も下策だと思うが、わたしは横にいたわたしの家族に救いを求めた。
彼が何かの役に立つとは思わないが、とにかく考える時間を
当のシロは、わんと一声鳴くとわたしの手をすり抜け椛に飛びつきその頬をぺろぺろと舐め始めたのだった。
「きゃあ!?」
「あはっ、決まりだね。椛あんたシロに好かれちゃったみたいだししょうがないよ」
にとりはそういってまた愉快そうに笑った、確かに…年を経た狼の化身と呼ばれる白狼天狗がはるかに若い飼い犬にじゃれ付かれてなすがままというのは滑稽なものがあった。
何はともあれ、わたしはこうして重大な運命をわたしの馬鹿犬に託してしまったのだった。


わたしは椛に連れられえ哨戒天狗の詰め所へとやってきていた。
道中は運よく誰にも会うことはなかった、妖怪の山といってもそこかしこに妖怪がいるわけでも無いらしい。
詰め所は滝の裏にある天然の洞窟を利用してあるらしく、中はよく整備されていて住み心地が良さそうだった。
というかこれは詰め所とはいえわたしのうちよりも立派じゃないだろうか?
剣や盾、団扇に頭巾などの備品などが整然と並べられている一方、新聞将棋盤といった娯楽品が雑然と置いてある。
中にはわたしが知りようもしないような奇抜な品もいくつか置いてあった、どうやら妖怪の山の技術力は里に比べてはるかに高いという噂は本当のようである。
あまりじろじろと眺めすぎて椛に咎めるような視線で睨まれわたしは萎縮するしかなかった。
泊めてもらっただけでもなく夕食もご馳走になることになった、品目は川魚の塩焼きにキュウリの漬物、そしてあろうことかなんと一杯の酒まで出してもらった。
ここまでしてもらえば歓迎されているのか?とも思うが、彼女は相変わらず無愛想な表情をしている。
たまにこちらを見て来て目が合ってしまうがすぐに目を逸らされてしまう、不可思議でならない。
そうして…夜は更けシロは眠りにつき、わたしたちはふたり杯を交わしていた。
話題は他愛もない、わたしの里での暮らしぶりやこの前の春の異変などそういう当たり障りの無いものだった。
彼女とも少しだけ打ち解けられたと思う、が笑みを見せてくれたと思うと途端に目を逸らされてしまう。
嫌われているようにも思える、が照れてるようにも見える、判断に非常に困る態度なのである。

「ところで、シロだっけ…あなたは飼いはじめてどのくらいになるの?」
話題は巡り巡ってうちの犬の話となっていた。
「今年で四年目ぐらいかな、世話になった方がなくなって世話をする人間もいなかったから俺が引き取ることになった」
「ふうん、家族はいないって言っていたけどシロは家族じゃないの?」
「家族みたいなものだよ、手はかかるけどよく懐いてくれてるしこっちも色々助けられてる」
この言葉に嘘は無い、決してシロを引き取ったのは恩人の愛犬だったからではない。
一人暮らしがいい加減寂しくなったのもあった、身寄りをなくし若い時分から一生懸命はたらいていたら色事などからは程遠い場所にいたというのもある。
気がつけば友人達はみな所帯を持ち、私は一人取り残されて、その寂しさを紛らわすためにシロを求めたのだったかもしれない。
「それなら…家族みたいなものって言い方はよして欲しい」
「へ…?」
「犬は群れ全体が家族みたいなものなんだよ、だからシロからしてもあなたは今たった一人のご主人で、たった一人の大事な家族なんだ」
「……そういうことは考えたこともなかったな、シロの気持ちか」
「別にあなたは今のままでもいいと思うよ、シロ…彼を見てるとあなたのことをよく好いているのがわかるし、あなたと一緒にいるときはとても楽しそうにしているよ」
「そうなのか?」
「そう、だからあなたはシロのことを大事にしてやればいい、シロより長く生きるものの大事なつとめだよ」
そして、しばしの沈黙間を紛らわすために手元の杯を一口あおる。
こんな、こんな犬の視線での考えは聞いたことがなかった、これも彼女が白狼天狗である所以だろうか。
「しかし、これだけ慕われてるんだからあなたの人柄もいいのかしらね」
「…褒めても何もでないよ」
唐突にそういうことを言われると、正直照れてしまう。
「本当さ、そういういい主人に仕える犬ってのは、すごく幸せなのかもしれないよ」
恥ずかしい、なんだこの娘は褒め殺す気か、褒め殺して頭から食ってしまおうとでもいうのか。
照れ隠しに手元の酒をまた一口あおる。
「…ねぇ、ご主人様」
あおった酒を盛大に口から吹き出した、口をぬぐうのも忘れて椛のほうを見やる。
「何よ!そんな反応しなくてもいいじゃない!」
椛は顔を真っ赤に染めて抗議するような目でこちらを見ていた、耳をピンと立ててこちらを睨みつけているが先ほどのような威圧はまったくない。
むしろ可笑しい、そんな彼女の様子を見てわたしはくつくつと笑い、そして彼女も釣られて笑いだした。
なぜだろうか、こうやって彼女と喋っているのがいたく楽しい。
目じりに涙の粒を見せながら笑い転げる彼女の姿が、とても愛しく見えた。
「ねぇ、もうちょっとそっちに行っていい?」
無言で頷く、椛はそれを確認もせずぴたりと肩を寄せた。
言葉の無い時間がしばらく続く、こうやって身体を寄せ合っているだけなのに、何故こうも幸せなのだろう。
もっと彼女と近づきたい、そう思って腕を後ろから回して肩を抱き寄せた。
椛は一瞬びくっと身体を反応させたが、すぐにこちらにしなだれかかってきた。
人間よりもはるかに力のある天狗、だがその肩はとても細くか弱い。
彼女の肌が少し上気しているようなのは先ほどまで飲んでいた酒のせいだろうか、それとも…
「ねぇ、ご主人様」
そういって椛は悪戯っぽく笑う、それで通すつもりなのだろう。
「なんだ?」
にやつくのをどうにも抑えられないが、それでもこちらも乗ってやるのも悪くはない。
それにこんな可愛い娘にご主人様と呼ばれて、嬉しく無い男がいるんだろうか?
「頭、撫でて」
返事もせずに肩に回した手をふさふさした銀髪へと持って行く、椛はうん、と短く息を漏らした。
ゆっくり撫でてやると耳はぴくぴくとし、尻尾はふぁさふぁさと動いてわたしの背中に当たった。
「どうだ?」
反応を見れば聞くまでも無いが、そうやって耳元で尋ねてみた。
椛はこちらをちらと見て、そして少し恥ずかしそうにしながら呟いた。
「すごくしあわせだよ、ご主人サマ」
「椛…!」
その言葉で辛抱がたまらなくなったわたしは、両腕で彼女をぎゅっと抱きしめた。
椛はうんっと少し呻いたが、さしたる抵抗もなく受け入れた。
彼女の柔肌の感触を思う存分、心臓のどくんどくんと脈打つのが肌で感じられて、わたしは我を忘れて力をこめた。
「…ちょっと苦しいよ」
その言葉で我に返って腕にこめた力を一気に力を緩めた。
「ごめん・・・つい」
「いいんだよ、いいんだけどもっと優しく…ね?」
「…ああ」
すまない、と続けた言葉は椛の唇にふさがれて出せなくなってしまった。
唇どうしが軽く触れるだけのキス、恋人同士がお互いの慕情を確認しあうような甘い甘いキス。
それはとてもしあわせであり素晴らしい感触だったのだが、しかしわたしはひどく狼狽してしまった。
ここから先は進めば取り返しのつかない、それこそ妖怪の山のように危険な領域では無いかと思い始めてしまったのだった。
わたしに女性経験が無いというのもあるが、そうだよくよく考えてみれば彼女は天狗でわたしは人間だ。
今こうしてじゃれあいこそしているが本来こうやって一緒にいることすらままならない関係のはずだ。
この状況は非常にまずい、そう考えてこちらを不思議そうに眺める椛から目を逸らしてしまう。
「これ以上はさすがにまずいだろ…」
視線を隣の部屋、シロが寝ている土間にやる。
「ねぇ聞いて、こっちを向いて」
椛が呼びかけて来る、だがわたしはそちらを向くことができない。
「いいから、こっちを向きなさい」
軽いため息のあと軽く威圧するような口調で椛は言った。
その言葉に逆らえずわたしは椛のほうを向いた、そこにあった椛の顔は少し寂しそうにしていた。
「あなたの心配もわかるよ、こうしてあなたがわたしに会うのは初めてだし」
ちがう、そうじゃないんだ、わたしは…
「でもね、わたしはずっとあなたのことを見てたんだから、あなたがシロを大事にしているところを」
いや…この娘は急に何を言っているんだろう…?
「見ていたって…」
「千里眼だよ、わたしの能力。あなたのことを一目見たときから、シロの嬉しそうなところを見てからあなたのことを観察した」
「観察していた…?」
椛ははっ、と気づいたように目を見開いて、顔を真っ赤にした。
「いや、その別にあまりプライベートなことは見たりなんかしてないよ!…あんまりね」
少し可笑しくて、でもこの娘がなにを言おうとしているのかとても不思議で、わたしはきょとんとしていただろう。
「別にだれでもいいとかそういうんじゃなくって、わたしはあなただからここにこうして上げたしこういうことだってやっているんですから。
わたしはあなたのことが好きだから、今こうしてあなたに抱かれているんですよ」
相変わらずきょとんとしていたが、だがわたしは彼女のいうことをようやく理解できた。
「君は、俺が、好き…?」
片言になりつつ確認する、とつぜんのことで何も考えられない。
「そうです、わたしはあなたのことが好きなんです…まったく女の子に何てこと言わせるの、責任とって今度はあなたからキスしてよ」
顔を赤らめながら椛はそう言った、必然的にこちらも真っ赤になる。
「いや、それは…ちょっと…」
顔が茹蛸のようになっているのが自認できた、まるで子供の頃に熱を出したときのようだ。
「ほらっ、さっきわたしは勇気を振り絞ったって言うのに、恥をかかせっぱなしにするの?」
そこまで言われればわたしは断れない、人がよすぎるのがお前の悪いところだとよく人に言われるのは、間違いないだろう。
椛はこちらをまっすぐと見ていた、その肩を両手で抱えるると椛は目を閉じた、こちらを待っているんだろう。
ここまで来たらやるしかない、顔をゆっくりと近づけると椛の吐息がこちらに軽くかかった。
あと一寸というところで思い切って一気に唇をくっつける、椛は一瞬反応したがそれだけでじっと目をつぶっていた。
一秒、二秒、いつまでしていればいいのだろうか三秒、いい加減に口を離す。
二人で同時にぷはっと息をついた。
「これでおあいこだね」
微笑む椛はとてもかわいい、だがこの状況に流されてしまったとはいえわたしの不安はまだ解消していない。
こちらの葛藤をよそに椛はわたしの名前を呼びながら腕を胴に絡ませてきた。
「ちょ、ちょっと待った、さすがに人間と天狗じゃ色々と…!」
わたしは精一杯の抗議をする、が椛は何だそんなこととばかりに鼻で笑ってより一層密着してきた。
「大丈夫大丈夫、人間と妖怪が結ばれた話なんていっぱいあるじゃん、心配性なんだよあなたは」
そう耳元で呟かれて息を吹きかけられ、ぺろと頬を舐められる。
「心配性…?」
「そう、心配のしすぎ、そもそも白狼天狗は人里に下りることもある人間に近しい天狗だよ」
頬をすすすと撫でられその手はそのまま肩から腕へ、腕から手へと伸ばされる。
そしてわたしの手をとるとそれを椛は自分の顔へとやらせた。
「それともあなたは、わたしのことが嫌いなの?」
「嫌いじゃない、好きだ」
咄嗟に答えが口から出ていた、多分それは嘘じゃなく本心だったと思う。
わたしはわたしのことを恋慕してくれているこの娘のことが本当に好きになり始めていた。
「嬉しい…!」
椛はそう短く呟くと、わたしの唇を貪った。
彼女の舌が、わたしの唇を這い回る、それはとても淫靡で蠱惑的で俺も唇を開き舌を絡めた。
二人の舌がまるで二匹の生物のように絡みつき吸いつきあい、漏れ聞こえる水音が俺の感情をより一層煽った。
息が苦しくなり一旦口を開く、俺と椛は荒く息をつき、二人の唇の合間から垂れた唾液は糸を引いていた。
「椛…」
「あ、んっ…!」
一息をつくと俺はまた、いや今度は俺の方から椛の唇を貪った。
彼女の身体をできる限り優しく押し倒し、俺の舌は唇を割って椛の中へと侵入し、彼女の舌を歯茎を口蓋を蹂躙した。
そして俺の自由になった右手は、彼女の胸元をまさぐり始めた。
形のよい、ちょうど手に収まるぐらいの大きさの乳房をひとつふたつ揉んでみると、椛は息苦しくあえぎながらも俺の行為に反応を示してくれた。
キスをしていた唇を一旦離し彼女の髪を撫でながらその目を見据える、椛は潤んだ瞳でこちらをじっと見つめている。
「椛…俺はおまえを抱きたい」
「いいよ、あなたの好きにしていいよ…ただしやさしくしてよね?」
「ああ、わかってるさ…!」
彼女の同意を得ると、俺は彼女の装束に手をかける。そのボタンを一つ一つ外し前をはだけさせた、椛の小ぶりで形のいい双丘が目に映る。
「なにまじまじと眺めてるのよ」
視線を動かさずにいると椛が少し照れたようにそう言った。
「いや、綺麗な胸だなと思ってさ」
「…もう、ばか」
不貞腐れて悪態をつく椛を笑いつつ、また右手で、今度は直接乳房を手におさめてみる。
柔らかく弾力のある感触だ、ためしに軽く揉んでみる
「んっ…」
短く吐息を漏らす椛、そのまま俺は左の乳房にも手をかけ、ゆっくりと壊れ物を扱うかのように揉み始めた。
これまでみるだけで決して味わったことの無い感触に夢中になる。
「…人間の男ってそんなに胸が好きなの?」
椛が怪訝そうな顔で聞いてくる。
「もちろんだ、男の憧れだよ」
「ふふっ、単純ねぇ」
あきれたように笑う椛、こんな風に言われると俺も馬鹿みたいだが、どうせならもっと馬鹿になってやるさ。
「単純さ、おっぱいがあるとしゃぶりつきたくなるのが男なんだよ」
「…しゃぶりたいの?」
「…うん」
「いいよ、そんなに遠慮しなくても」
「わかった、じゃあ遠慮無しに…」
遠慮無しに俺は椛の乳首に口をつけた、下で試しにペロッと舐めてみる。
「ひゃっ…!」
思わず声を上げる椛だが、俺はそれに構わずに乳首への刺激を続ける。
舌で転がし、甘がみし、ちゅうっと吸い上げる。
手持ち無沙汰になった左の手はもう一つの乳首をつまみ上げころころと転がし刺激をする。
「あっ……んっ……」
愛撫行為のひとつひとつに嬌声を上げる椛を見ていると、俺はだんだんと欲が出てきた。
もっと椛のいろんなところを愛撫してやりたい、そういう思いを描いて舌はだんだんと腹部へと移り行き、両手は腰と大腿部をまさぐった。
「はぁ…んっ…あぁぁ…」
息も荒く俺の愛撫を感じる椛、その足の付け根はもじもじともどかしいように動く。
その扇情的な仕草に当てられた俺はスカートへと手をかけた。
「脱がすよ」
「…うん」
椛は羞恥からか顔を真っ赤に染めてそう答える、俺は椛のスカートをなれない手つきで脱がした。
目に飛び込んできたのは彼女の穿いた可愛らしい下着、そしてむせ返るようなメスの匂いだった。
股間部はぷっくりと膨れ、下着のその部分には明らかに染みが浮かんでいた。
俺は本能のままにそっとそのふくらみに指を伸ばす。そしてすっと割れ目を布越しになぞった。
「ひゃっ!?」
椛はびくっと身体を震わせ小さく悲鳴をあげる、それを聞いて俺は一瞬動きを止める。
「んっ、いいよ、やめないで…あなたの好きにしていいから…」
切なそうな顔でそういう椛を見るといても立ってもいられなくなり秘所への愛撫を再開する。
「あんっ…!あっ…ああっ…」
椛の声が麻薬のように俺の頭にこだまする、麻薬は俺の理性を徐々に徐々に溶かしていく。
布越しの秘所の感覚だけでは物足りない、俺は手を下着の中に滑り込ませた。
そして直接割れ目をなぞりぷくっと膨れた彼女の陰核をつまむ。
「わう…っ…ああっ!」
声にならない声をあげ反応する椛、これだけでは物足りないまだ物足りない。
俺は今度は、もう確認もせず椛の身につけた最後の一枚を剥ぎ取った。
目前に白銀の茂みと淫靡に濡れた性器が露出し、俺はそれ以上無いほどの昂ぶりを覚えた。
「あんっ…だめっ見ないで…」
急に裸にされたのが恥ずかしいのか、太ももをこすりあい手で秘所を隠そうとする。
だが今の俺にとってそれは抵抗ですらなく彼女のアピールにしか捉えられなかった。
その腕を無理に掴み拒否の言葉を紡ぎだす口を、自らの唇でふさぐ。
半ば強引に彼女の舌を味わい、聞き分けの無い子供をたしなめるように彼女にささやく。
「…好きにしていいって言ってくれたよね?」
「ぷは…う、うん…んっ!」
片手は腕を押さえつつももう片方の手は彼女の敏感なところをまさぐり続ける。
「あんっ、わかったわかたからっ…!あぁっ」
「ありがとう」
そういって手を離し頭を撫でる、その顔はとろんと蕩けて荒い息を出し続ける。
もう一度軽くキスをして今度はその下を首筋から胸、胸から腹、下腹部そして秘所へと椛の全身から吹き出た汗を味わうように、ナメクジのように這わせる。
秘所にたどり着くと下で彼女の溢れる蜜を水音を立てて舐めとった。
「ああっ…音を…立てないで…んっ!…は、恥ずかしいよ…」
だがその願いもかなえられそうに無い、俺はこの淫らなメスの匂いの立ち込める甘酸っぱい泉を味わうのに必死だった。
自由な両手は彼女の小ぶりでかわいいお尻と、締まった腰の線をじっくりと愛撫する。
俺の行為のたびに椛は身体を震わせて反応して、快感を感じているのは明らかだった。
「あっ…だめ、何か何か来るよ…!あああっ!」
ひときわ大きく嬌声を上げると、身体を大きくびくんびくんと痙攣させ彼女は達した。
目尻には小さく涙の粒が浮かび荒い息をつきながらこちらを見ている。
「はっ…はぁっ…逝っちゃった…」
「ああ、すごく可愛かったぞ、椛」
「そ、そう?…ふふ」
優しく手入れするように身体をなでてやる、自分の愛撫で彼女が絶頂に達したことがひどく誇らしかった。
「でも、まだ…あなたはまだ満足してないみたいよ」
椛はそういうと俺の股間にすっと手を伸ばした。
俺の愚息は、はちきれんばかりに大きくなっており、彼女がそうだったように俺自身もまた下着に大きな染みを作っていた。
「わたしだけ満足して終わりなんて、そんなつまらないのは嫌だよ」
「でも、今達したばかりじゃ…」
「平気、わたしはね。それにわたしはあなたが今欲しくてほしくてたまらないの」
椛はそう言いつつ俺の下着を下ろし、窮屈にしていた俺の陰茎を開放してくれた。
すすすとその指先で撫でると、自分でするよりもはるかに敏感な刺激が俺を襲った。
「お願い、来て。あなたをわたしに頂戴」
椛はそういってしなだれかかってくる、さっきまでこちらが攻めていたのが嘘のようだ。
完全に主導権を握られてしまった、だがこちらも今臨戦態勢に入ってしまった、もう止められやしない。
椛を再び押し倒し仰向けに寝かせる、太ももを撫で開かせ、指で秘所を愛撫し場所を確認する。
「俺もだ、椛。おまえが欲しい」
返事も聞かずに先走り汁で濡れた先端を椛の濡れそぼった秘所に押し当てる
「いいよ、奪って」
その声を聞くや一気に剛直で椛の膣内に侵入した。
ぎちぎちときつい抵抗が俺の愚直から伝わってくる。
「はがっ…〜〜〜っ!!」
「椛、おまえもしかして処女…!」
「いいのっ、いいから続けてっ!わたしの処女をあなたに挙げる!」
椛は必死に人差し指を噛んで痛みに耐えている、その指に犬歯が食い込み血が滲んでいる。
彼女の有様を身、俺は再び挿入を再開した。
「ん〜〜〜っ!!」
声にならない椛の悲鳴を受け止めつつ一気に押し進め、そしてゴムが切れるような間隔とともにその抵抗がなくなった。
俺が椛を貫通した証である、破瓜の証拠として血が秘部からにじみ出ていた。
痛みを堪え荒い息をつく椛を、わたしはしばらく繋がったままで抱いていた、さすがに経験が無いとは言え処女を失う痛みの強さは伝え聞いているつもりだった。
さっきまで苦痛に歪んでいた顔を頭を優しく撫でてやる。
しばらくそうしていただろうか、椛が口を開いた。
「ありがとう、もう大丈夫だから、動いていいんだよ」
「いいのか?まだ痛いんだったら…」
「いいの、あなたのためにだったら我慢できるんだから」
「そうか」
彼女のその言葉に俺はゆっくりとピストン運動を開始する。
椛は、まだ痛みを感じているのか声を押し殺そうとしている。
彼女なりの気遣いなのだろうか、なら俺はその気持ちに応えなきゃならないんだろう。
ゆっくりゆっくりと腰を動かして少しずつ少しずつその速度を上げていく。
彼女の中は暖かくきつく俺のモノを締め上げて、気を抜けばすぐにでも射精してしまいそうだ、丹田に力をこめてなんとかそれを我慢する。
「ああ、あっ…あんっ…あああっ…んっ!」
彼女の声はだんだんと嬌声へと変わっていく、痛みに慣れてきたのだろうか。
「ああっ、いい!気持ちいいよっ…わたしの中であなたが…んっ!大きくなっていく…!」
椛は俺の背中に手を回し身体を密着させてきた。
「わたしでっ…!あなたが…あんっ!こんなに感じて…っくれてっ!…嬉しいっ!」
椛の膣内はより一層強く締め付け始め、俺の堪えも限界に達しようとしていた。
「いいっ!いく!またいっちゃうっ!いっちゃうよぉ!」
「俺も逝きそうだ、椛っ!」
「いって!わたしの中で…んっ!わたしで感じていってっ!」
「くぅっ!」
「あああああぁーっ!」
ひときわ大きな嬌声を上げ椛は達し、膣は剛直を締め付け俺もまた彼女とともに達した。
尽きるかと思われるほどの精が椛の胎内に注ぎ込まれそれでもかのじょの中は搾り出そうと貪欲に動いた。
「ああ…暖かい……いっぱいあなたを感じる…」
椛は恍惚とした表情でわたしの方へと抱きついてきた。
わたしも絶頂の余韻からか力尽き二人して重なり合うように横になった。
「椛…すごく、気持ちよかった…」
「わたしも…こんなにしあわせなのはじめて」
しばらく繋がったままでわたし達はキスをした、そして二人で微笑みあった。
このまままどろみの中に落ちていって世界は緩やかに闇に溶けていった…






「ワンッ」「あやややや!」
そのときだった、私達が事を行っていた隣の土間から、聞き覚えのある我が愛犬の鳴き声と、聞き覚えの無い女性の驚嘆の声が聞こえてきた。
わたしと椛はばっと飛び起き、近くにあったものを手早く羽織り声のした部屋の扉を開けた。
そこには、嬉しそうに尾を振ってのしかかる馬鹿犬シロと、
「どうも、清く正しい射命丸です」
にまっと笑う鴉天狗の姿があった。


「で、そのブン屋さんがこんなところに…」
「いえ、私が取材を終えて山へ戻ろうとしていたら天狗と河童と犬と人間を見かけまして、それで何事かと思って隠れて様子を見てたのですよ、
そしたら白狼天狗と人間の熱愛発覚じゃありませんか、大ニュースです、一大スキャンダルです。」
シロによって抑えられ、カメラを確保してこちらの方が優位にあるというのに、このふてぶてしさはなんなんだろう。
椛は、ばつが悪そうに、というよりも明らかに頭を抱えていた。
「とにかく、ネガは頂きます。さすがにこれを返すと俺も椛もただじゃすみませんから」
射命丸と名乗った天狗は少し思案するようにしてから答えた。
「そうですね…本来ならば私のスクープ、とてもじゃないけどその要求は呑めないのですが…」
射命丸は椛のほうをちらと見る、椛はびくっと一瞬身体を硬直させた。
「そこの犬走の顔に免じて今回は許してあげましょう」
射命丸が得意げに喋る、椛は顔を驚きの表情で輝かせた。
「いいんですか!?文さん!」
「そんなつらそうな顔をされたらさすがに私も鬼じゃありませんからね」
射命丸はそうやってふふふと笑う、何か面白いことでもいったのだろうか?
いぶかしんでいると、彼女は持っている扇をこちらにピッと向けた
「ただし、妖怪の山へ出入りすることは二度と許しません、今回は特別です」
「ありがとうございます」
「明日の朝一番には山を降りること、犬走、責任を持ってちゃんと送り届けなさい」
「は、はい!」
そうして射命丸は一件落着とばかりに頷いた。
「では、私はもういきましょう、折角のスクープも台無しになったのにこれ以上ここにいてもしょうがありません」
射命丸は席を立つ、その後ろ姿にシロがわんと一声をかけるが、彼女は振り返らずに部屋を出て行こうとした。
「そうそう、私は別に妖怪の山以外ならあなた達がいくら逢引しようと関与しませんからね、覚えて置いてください」
最後にそういうと、彼女は完全に姿を消した。
部屋に残ったのはわたしと椛とシロと気まずい雰囲気だけだった、私たちはただ苦笑しあうしかなかった。

そして、翌朝。
人間の里のはずれ、わたしの家のすぐ近くにわたしたちはいた。
「白狼天狗というのは人里に下りて人間とともに働く天狗、そして山に迷った人間を追い返してあげるのもその任務
人に山の境界を教えて人の身を守る山の神の端くれでもあるんです」
椛は自分達の種族について説明を行っていた。
「だからこうして人間と触れ合うのも決して不思議なことではないから安心して」
「うん、わかるよ」
椛の説明を聞いてシロもわん!と一声吠える、白狼というぐらいだから犬とも通じ合えるのだろう。
「わたしは山で、あなたは里で、決して同じ場所では生きていけません、ですがわたしはいつでもあなたと会うことができます。
わたしは椛、犬走椛、妖怪の山の哨戒天狗、これからもよろしくお願いします」
深々と礼をする椛、そういわれるとこちらとしてもどこかこそばゆい。
「わかったよ、俺もいつでも君に会いたいときは、何か合図を出すよ。得意の千里眼で見つけてくれればいい。
俺は     、人間の里の       犬走椛、これからもよろしく」
こちらも礼をする、二人で同時に顔を上げ、そして笑いあった。
こうして二人で心が通じ合うのはすごく心地がよい。
「では、私は帰ります、シロ」
椛がシロを呼んだ。
シロはいわれるがままに椛の話を聞く体制になる
「わたしが     の近くに入れない間、よろしく頼みましたよ」
わんと一声、シロが吠える。そんなにたよりないのかな、俺って。
「ふふ、あなたにもいつかはいい犬(ヒト)がみつかります、それではね」
シロはまた一声吠えた、俺も一緒に声を上げる。
「またな、椛!」
「ええ、また!」
別れの挨拶と再開の約束をかわした瞬間あたりは少しばかり早い紅葉の葉が舞い、椛は遠くの空へと飛んでいた。
確かに少しずつ肌寒くなっている空気に私は、確かに色鮮やかな紅葉の季節が到来しようとしていることを感じたのだった。


おわり


1スレ>>412 ロダicyanecyo_0028.txt

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このページへのコメント

すごくほっこりした

1
Posted by 蒼火 2015年07月11日(土) 22:08:05 返信

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