東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

かたん、と、扉の音がする。もう陽も落ちた時間。こんな時間にここを訪ねるのは一人しかいない。

「来たのか」
「うん、来ちゃった」
「茶でも飲むか」

そう言いながら、青年は湯呑みをことりと来客の座るべき薄い座布団の前に置く。
来客は遠慮なくその座布団の上に座った。茶を入れてやると、ふうふうとそれに息を吹きかけながら彼女は微笑う。

「ありがと」
「いや。飯は」
「食べてきちゃった。貴方は?」
「もう食った」

茶をすすりながら、彼は目の前の少女――古明地こいしに答えた。
こいしがここに訪れるようになってからもう随分経つ。
少しずつ詰められた距離は、幾度か波乱を呼びながらも、恋人という関係に落ち着いていた。

「今日は泊まっていっていいかな」
「こいしの好きにすればいい。駄目だっていっても泊まっていくんだろう」
「へへ」

ふにゃ、とこいしは微笑った。その表情は、以前感じた儚さとは別のもので、何となく安心する。
それでもどこか消え入りそうな姿は出会った頃から変わらず、それは彼自身の奥底に不安感として残っていた。
そしてその不安感こそが――

「あ、帽子置いてくるね」
「ああ」

言葉に思考が途切れる。自分が置いてくるか、と立ち上がった彼に首を振って、こいしは適当な物入れの上に帽子を乗せた。
そして、戻ってこようとして、何に取られたのか足を滑らせる。

「おい!?」

慌てて抱き止めて、彼はふわりと、こいしのスカートが翻ったのを見てしまった。
正確には、そのスカートの中のものを。

「ありがと……きゃっ!?」

見てしまった、と思った次の瞬間には、こいしを引き寄せて床にくみ伏せていた。

「ど、どうしたの?」
「それは俺の台詞なんだが」

幸いにして湯呑みは倒れなかった。だが、それに安堵する暇などなくて、彼はただ真剣な顔でこいしのふとももに触れる。

「や、やあ、何してるの……!?」

その声には応えず、彼はそっと、ふとももからこいしのスカートの中に手を進めて下着の紐に触れた。
こいしが大仰なほどびくりと身体を震わせる。それは予想外のことをされたから、ではなく、何かに気が付かれてしまったが故の震えだった。
知っているな、ということを確信しながら、指先を下着から離す。

「どうしたんだ、その下着」

言いながら、今度は彼はこいしの腕をつかみ、動きをとれないようにした。

「う……その……」
「……誘ってるのか?」

かあ、とこいしの頬が紅く染まる。図星をついたのか、と、その頬に軽く口付ける。

「んっ……」
「どうなんだ?」
「わ、わかん、ないの」

出てきた答えは、やや予想外だった。

「わからない、って」
「きょ、今日、貴方のところに行こうって思って、それで、気が付いたら、これだったの」

でも、戻るのも、ここに来るの遅くなっちゃうから。
弁解がましい言葉は、彼には半分くらいしか聞き取れなかった。
自分のところに来るためにわざわざ、など、並の男でも耐えられないだろう。
それに何より、彼自身は、こいしに恋い焦がれていた。一度などその想いで関係を叩き壊しそうになったほどに。

「あ、あの、その」
「こいし」

軽く口唇を奪って、軽くですんだことに自分でも驚きながら、彼は諧謔味に満ちた笑みを浮かべる。

「覚悟するんだな」

出てきた言葉は、自分で思っている以上に悪役じみていた。





口唇を何度も何度も乱暴に奪いながら、こいしの服を肌蹴させていく。

「ん、んん、あ、ふ……ふ、あ……っ」

その行動に少しだけ泣きそうな表情のこいしの頬に、彼は優しく口付けた。

「俺が凄く悪い奴みたいじゃないか、そんな顔されると」
「だっ、て……悪い人、とは言わないけど、結構、えっちなんだもん……」
「わかってるなら、そんな男のとこに、こういう下着はいてくるんじゃない」

そう言いながら、彼は手をこいしの腰から尻、太股にかけて滑らせた。
その途中、下着の紐に一瞬指がかかって、こいしはびくりと身を震わせる。

「……こういうの、嫌い?」
「まさか。むしろ好きだな」

首筋に口付けを落として、こいしが、ん、と小さく声をあげるのを楽しむ。

「さあ、どうしようか」

そう言いながら、こいしの太股を撫で回す。それに、こいしは少し身を捩った。

「や、いじわる……」
「そんなの、今に始まったことじゃないだろ」

音を立てて、首筋に何度も口付ける。こいしは恥ずかしそうに目を閉じつつ、少しだけ頬を染めて、嬉しそうに彼に抱きついた。

「……もう、えっち」
「……そんな表情するから、耐えられなくなるんだよ」

今度は口唇を塞いで、額をこつりとくっつける。そのまま、左腕で逃げられないように抱きかかえて、そっと、紐に手をかけた。

「あ、やっ、そのっ」
「脱がされるために、着てたんだろ?」

そのまま、ゆっくりと、焦れったいほどゆっくりな動きで、紐を引いていく。

「や、やあ……っ」

恥ずかしいのか、こいしは首を振りながら身を離そうとした。
だが、当然そんなことを許すわけもなく。そもそも、本気でこいしが逃げようとするならば敵うはずなどないのだ。
だからこれは、嫌がりながらも、内心はそうでもない、という現れ。
する、する、と解けていくに従って、こいしの顔が紅く染まっていく。

「ん、んんっ……」

その表情を楽しみながら、時折手を離して太股を撫で回す。
そのたびにびく、びく、と身体を震わすのが楽しくて、つい何度もしてしまう。
こいしが可愛いのが悪いのだ、と自己弁護をしながら、その表情を楽しみつつ、少しずつ、焦らすように紐を解いていく。
指先だけでもわかる。こいしの肌が露わになっていく感覚。紐が少しずつ解けていき、下着が外れていく。隠すべき場所が露わになっていく。
こいしはぎゅっと瞳を閉じて、その感覚のもたらす羞恥に耐えているようだった。

「こいし」

紐を解いてしまう瞬間、こいしの顔をくいと持ち上げて口唇を塞ぐ。
荒々しくせず、ゆっくり、優しく、じっくりと味わうように。

「ん! ん、んん、ん、ぁ……」

一瞬目を見開き、だが、すぐに気持ちよさそうに目を細めて、こいしは彼が成すがままに任せた。
舌先で軽く口唇をなぞって開かせ、そっと舌を差し入れる。歯列をなぞった後、こいしの舌先に触れた。
おずおずと伸ばしてきた舌を強引に吸い上げる。こいしの身体がびくんと大きく震えた。

「んん、んん――! あ、ぷは、あ、うう……」

離す瞬間、絡めていた舌が名残惜しげに口唇から覗いて、彼の情欲を煽った。
キスに蕩けたような表情になったこいしの下着を、ゆっくりとはがす。
まだ片方の紐は解かないまま、露わになった秘所を丁寧に撫でて、彼は意地悪い笑みを浮かべた。

「随分濡れてるみたいだな?」
「しらない……っ」

さっと紅くなった顔を背けるこいしの頬に口付けて、彼は指を進めてくちゅりとわざと水音をたてる。

「ん、やっ……」

びく、と震えたことにも構わず、秘部の周りをそっとなぞった。湿った感触に、誘われるように中に指を進める。
きゅ、という締まった感覚と、温かいものが指を包む。その心地よさに、思わす指をそのままそれを楽しむように蠢かした。
だが、その瞬間、びくんとこいしの身体が跳ねる。

「や、いや、やさしくしてよう……!」

いやいやと首を振って告げるその声は必死な響きを帯びていて、彼は指を離した。
粘った音と共に、とろりとしたものが指と秘部に橋を架けて、非常にいやらしい。
だが、こいしの表情は少し落ち着いていた。どうやら急ぎすぎたようだった。

「すまん」

そう言いながら、反省の思いと共に彼はこいしの上着をはだけさせ、白い肌に舌を這わせていく。

「こっちもだな。もう少し解してやれば良かったか」
「ん、ふぁ、や……そ、そういうこと、じゃ……」

だが、こいしの声にも行動にも抵抗はない。
全て脱がしてしまわず、中途半端に肌蹴させたまま、彼は愛撫を続けていく。
なだらかな――まだ成長しきっているとは言い難い膨らみを舐めながら、こいしの反応を伺った。

「ん、んん、や、あんまり……んん」
「こうか?」
「やっ!」

胸の先端を舌先でつついてやると、こいしの身体がのけぞった。白い首がどこか情欲を煽り立てて、それの所為にして舌先でさらに弄る。
ん、ん、とびくびくと快感に震えるこいしに、さらなる快感を与えてやろうと、こいしの乳首を口に含む。

「や、ああっ! あ、ああっ! あっ!」

びくんとその小さな身体が跳ねた。それに満足しつつ、責めるために舌を蠢かす。

「や、や、そんなにしちゃだめえっ……!」

嘆願は聞かず、こいしの胸先を舌で思う存分に転がす。
固くなっているそれは、逆に絶好の責めるポイントになった。舌先でつつき、舐め、なぶるように動かす。

「や、も、だめ、ん、あっ!」

跳ねようとする身体を無理矢理押さえつけて、思う存分に楽しむ。

「あ、うう、あ、んっ。も、う……!」

不意にこいしはこちらの手を引き寄せると、はむ、と指を口に含んだ。
一瞬驚いたが、声を押し殺す為なのだろう、必死に声を我慢しながら、指に舌を絡ませている。
それは逆効果だ、という言葉は声にならなかった。唸り声を無理矢理押し殺したような声を出して、辛うじて衝動に堪える。

「っ、んん、ん、んっ!?」

指を動かして舌を挟むように愛撫すると、こいしは驚いたように目を見開いた。
反撃は予測していなかったらしい。だが、それ幸いとそのまま苛めてみる。

「ん、んんー! ん、ん、んんぅ……」

こいしは少し睨むように彼を見つめると、逆に指を絡め取ろうとしてきた。責め返そうとしているらしい。
そちらがそんな抵抗をするならと、再び秘部への責めも開始する。今度は、秘部を濡らす粘液をたっぷりと陰核に擦りつけた。

「ん、んん、や、んんっ」

口を離そうとしたこいしの口の中に、今度はこちらから指を入れる。逃げようとする舌をくすぐるように指を動かした。
無論、もう片方の手は陰核を責め始めている。こちらも十分に反応していたようで、指の腹でなぞってやった。

「ん、んんっ、んんんんっ」

指で口の中をかき回しながら、こいしの身を責め立てる。中々に、こちらを興奮させる図であった。
乳首をいじり、最も敏感な場所をこね、秘所を指を伸ばしてかき回す。
そんな責めに、長いこと耐えられるはずもなく。

「ん、んんんん……っ、ん――――っ!!!」

大きく身体をしならせて、こいしの身体が震えた。きゅっと手と足の指に力が入り、やがて弛緩する。
その余韻に酔うように、ちろ、ちろ、と、こいしの舌先が指を舐めた。

「こいし」

口唇から指を離すと、名残惜しそうにこいしの舌が少しだけ開いた口の合間からちろりと動くのが見えた。
それがこの上なく煽情的で、ぐうという唸りを腹の中にだけ収め、こいしの身を抱き上げる。
さっと下履きを下ろして、もうすっかり昂ぶっていた己自身を、こいしの濡れそぼった秘部に擦りつけた。
その感覚に、ん、と声を上げて、戸惑ったような瞳でこいしは彼を見つめる。

「え、あ、その、まま?」

「嫌なら準備するが」
いつもは、彼が避妊具を用意して、こいしが絶頂の余韻でぼうっとなっている間に用意していた。
こいしは気が付いているかいないか知れないが、これは一つの覚悟の現れでもある。

「……ん」

少し震えながらもこいしは首を横に振って、抱き寄せる彼の背にそっと腕を回した。

「いやじゃ、ないよ」
「優しく、する」

出来る限り。そう囁いて、彼はこいしの中に自身を押し進める。ゆっくりと、できるだけ。

「ん、んん、あ、あっ、ああっ、うう、あ」

だが、その甘い喘ぎが、ゆっくりしようとしていたその意志を叩き壊した。その言葉は、あまりにこちらを求めているようで。
ぐいと身体を引き寄せて、そのまま奥に無理矢理突き入れる。

「ふぁ、ああん!」

服を半ば身体に引っかけたまま強引に貫かれて、こいしは圧迫感に耐えかねたような声を上げた。
こいしが達した感覚が伝わってきて、彼はぞくりと支配欲に似たものが満たされるのを感じる。

「もう、か」
「ん、ん」

こくこく、頷きながら、こいしは彼の身体にしがみついた。
唸りそうになるのをこらえながら、こいしが落ち着くのを待つ。素のまま繋がるのは、思った以上に快感を与えるものだった。

「あ、や、おっきく……」
「すまん、耐えられん」

その言葉は反則だろう、と弁解がましく思いながら、下から奥の方を探るように腰を動かす。

「あ、ああ、やっ、んぅ、ふぁん」

びく、びく、と震えながらも、その荒い吐息は、明らかに感じているものであった。
身体を屈め、こいしの首元から胸元に舌を這わせる。

「ふ、ぁ、ややん、あ、あっ」

律動に合わせて、こいしの声が耳朶に染み込んでくる。
きゅ、と、こちらの服を掴んで、必死に責めに耐えていた。

「あ、ああっ、ん、あっ――!」

締め付けが強くなる。軽く達してしまったらしく、瞳が茫洋と揺れていた。
その表情に、さらに思いが煽られて、もっと欲しくなって。

「きゃ、あっ……!」

身体を掴んで、床に押しつけるように体勢を変える。板張りの床は、身体に優しいとは言えない。
言葉だけになるとわかっていながら、それでも彼は軽く弁解の言葉を述べた。

「すまん、痛いかもしれんが」

我慢できない。そう囁いて、奥深くに自身を進める。甘い嬌声と共に、こいしがぎゅうと抱きついてきた。
そして、拗ねるような声で、囁きを返してくる。

「も、うっ、本当に、えっち、なんだからぁ……!」
「お前だけだ」

びく、と、こいしが腕の中で震えた。
快感や快楽だけでない震え方。何かに少し、怯えているような震え方。
意味はわかっているつもりだった。けれども、情欲と愛欲に支配された身では、論理的な思考など追いつかない。

「ほん、とう?」
「そうじゃなきゃ、こんなことしてない」

だから、返答は簡潔に、素っ気なく、真実だけを。
こいしを包むように抱いて、彼は耳元で囁く。

「愛してなきゃ、年下にこんな事しない」
「あなた、の、方が、とししたの、くせに……」
「見た目は俺の方が上だろう」

こいしの目元に浮かんだ涙を口唇で拭って、彼は軽く腰を引く。

「ふぁ、ああ!」

どこが弱いか、なんて、もう身体が覚えている。一番弱いところを擦って、こいしの身が震えるのを楽しんだ。
さらに深く突き入れれば、こいしの身がそれに応じるようにのけぞった。

「あ、ああっ、ん、ああ、ふ、あん……」

こいしの腕がこちらを求めてきて、それをこちらの身体に回してやる。
少し安堵したような表情をしたこいしを、またさらに責め立てる。
「あ、あっ……!」

身体をぎゅっと寄せて、こいしはその快楽に押し流されないようにしているかのようだった。



荒い呼吸。潤んだ瞳。陶然とした表情。
全部自分のもの、だと。
全部全部ただ、自分だけのものにと。
醜い独占欲と情欲の合間で、それでも、自分はこいしを。



「んぅ、あ、あっ、ん、ああ、あっ」

嬌声が高くなり、さらに甘さを増した。
それに煽られるように、貪るようにこいしの中を蹂躙していく。
深いところを擦り、時にゆっくりと腰を引き、また奥に突き立てて。

「やっ、や、も、だめ、あああ、んぁ、ふっ、あ、ああ、ん!!」

一際強く、こちらの身体に抱きついてきた。同時に、こいしの中も彼自身を強く締め上げる。
限界が近いのだ。わかっていて、彼はさらにこいしの奥の弱いところに自身を擦りつけた。

「あ、ああ、また、つよく、あ、んん、ふぁあああ!」

びくびくと脈動を繰り返し、軽い絶頂を何度も迎えているであろう中に何度も突き入れて、彼はこいしの快楽を煽る。

「あ、ああっ、ん、んぅ。あ、ふぁ、ああっ、も、もう、あ、あああああっ――――!」

こいしの身体が震えて、彼自身を痛いほど締め付けた。腕が少し緩んで、床に力なく降りる。
そのままこちらも絶頂に至れれば良かったのだが、あいにく彼の方はまだ愉しみたいがために、それを必死で耐える。
それでも、ここまでの刺激にそう耐えられるはずはない。達してひくひくと蠢くこいしの中を、さらにかき回すように腰を引いた。

「や、あっ、あっ、ん、ああっ、やぁっ、だめ、いま……っ!」
「すまん、こいし。もう少し」

余裕はもうほとんどない。こいしが辛そうに何度も絶頂に達する気配を腕と身体と自身で感じながらも、止められそうにはなかった。

「ん、んん、ふ、ぁ」

きゅ、と彼の服を握りしめ、こいしは涙目のままこくこくと頷く。小さな身体で全て受け入れようとしている姿が、とてつもない罪悪感と征服欲と独占欲を煽った。
けれども、だからこそ、一言だけに全てを集約させる。

「愛してる、綺麗だ、こいし」
「ふ、ぁ、っっ! あ、ん、うん……っ!」

その言葉に、こいしの中がさらに締め上げた。予想以上の締め付けに、彼も限界を迎える。

「ん、んん……っ!」
「くう……っ」

再びきゅっと力が入ったその中に全てを解き放った瞬間、こいしもまた大きく身を震わせて身体を弛緩させた。

「……こいし」
「ん、は、ぁ……はぁ……っ」

息を荒げたまま、甘えるような視線を向けるこいしを抱きしめて、彼は優しく口付けを落としてやった。





「んー」

上機嫌な声をあげて、こいしは布団の中で彼の胸にすり寄る。
実際、機嫌はよい。ふわふわとしていてつかみ所のない気分だが、だからこそこいしは居心地の良さを感じていた。

「機嫌いいな」
「そうかな、そうかも」

ぽんぽんと頭を撫でられて、こいしは幸せそうに微笑んだ。
落ち着く場所を探し、収まりのいい場所を見つけて満足げな声で頷く。

「これでよし」
「やれやれ」

あの後身を清めるために湯浴みをしたので、今は簡単な寝間着を着ている。こいしの分は、彼の上着を素肌にひっかけただけだ。
彼の上着に包まれるというのが好きらしく、此処は泊まるときにはよくこの格好をしている。

「いいじゃない」
「……そうだな。こういうのはお前の自由だ、好きにしろ」

精一杯の甘言を口にする彼にくすくすと笑って、こいしは、自分の中に彼がまだ残っているような感覚を感じ、顔を赤くした。

「……その、ね」
「ん」
「……気持ち、よかった」
「……まあ、うん」

彼の声が微かに照れている。こいしとして同じことなので、茶化すことはしないが。
「……でも、いいの? その、妖怪相手でも、子供とか、出来ちゃうかもだよ?」

こいしはおずおずと尋ねる。
彼が、妖怪相手だから子供が出来ないと思っているのか、わかっていてなのか、こいしは知らなかったから。
だが、こいしの不安に反して、彼は呆れたような声を上げた。

「……こいしお前、俺が責任取るつもりもなくこんなことしてると思ってたのか」
「え」
「……まだしばらくは何だが、そのうちな。今回はその、そう言う意味も含めてだ」

ぐいと抱き寄せられて、こいしは自分の鼓動の速さに驚きながらその胸にすがる。

「……何も言ってくれないんだもん」
「……そうそう言えない」
「私は、心なんて読めないもの……」

少しだけ、こいしは嘘をついた。
ほんの僅かだけ緩んだこいしの覚りの目は、彼の強すぎるほど強い想いを、ぼんやりと受け止めている。
強い独占欲と、愛情と、こいしを心配する想いと。
全部が心地よくて、まだ怖さがあるのか、目は開こうとしないけれど、彼のぼんやりとした想いは視え始めていて。
それは、只人が他者の想いを察するのよりも弱く、只人が想いを感じるよりも強い感覚で。
こいしは、それにある種の心地よさを感じていた。
いつか瞳は開くのかもしれないし、このままかもしれない。それでも、仄かな幸せを感じられるくらいには、彼女の瞳は緩んでいた。

「……じゃあ、地霊殿に来てくれるの?」
「それも追々考える。こいしの姉さんにもきちんと挨拶もしなきゃならんしな」

殺されそうだが、と、彼の声は渋い。こいしはくすくすと微笑った。
実際、こいしにこういうことをしたと知られた彼が烈火のごとく怒られていたことがある。
こいしが止めなければ、本当に怪我どころでは済まない事態になっていたかもしれない。
いつもはこいしが暴走して姉であるさとりが止める側なのだが、と彼が聞いていたのもそのときだった。
こいしとしては暴走しているつもりなど皆無だから、首を傾げるだけだったが。

「……まあ、何にせよ、今は寝るぞ」
「うん」

上掛けの中でもぞもぞと彼に身体を寄せて、こいしは瞳を閉じる。



どうしてだろう。何も見えない、何も思わないはずなのに。
どうして、この人は、こんなに温かいんだろう。



その温もりだけをただ感じて、こいしは愛しい者の腕の中で、幸せな眠りに落ちていった。



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