東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

上白沢慧音は戸が叩かれる音で顔を上げた。
時刻は宵闇が迫りつつある頃だ。
丁度仕事を終えた人々が帰路に就き始める時間である。
 
「ちょっと待っててくれ、すぐに戸を開ける」
 
先程まで使っていた筆を置き、慧音はゆっくりと立ち上がった。
人里で寺子屋を開いている彼女は生徒達だけではなく、他の人々からも頼りにされている。
ある程度の学があるので、様々な人間からの相談にも乗っている。
仕事終わりのこの時間に、自宅を訪ねて相談を持ち掛けてくる人間も少なくない。
今回もその類だろう、そう思いながら戸を開けた慧音は珍しい来客にほんの少しだけ目を丸くした。
 
「○○じゃないか」
「ど、どうも……ご無沙汰しております」
 
戸の前に立っていたのは○○という男だった。
彼はこの里――というより幻想郷では少し珍しい外の世界の人間、「外来人」である。
以前彼が幻想郷に永住する事を決めた際に慧音が衣食住や仕事の斡旋等、面倒を見てやった。
その後も何度か交流があり、友好な関係を気付いている。
しかし、○○がこんな時間に自宅を訪れるのは初めてだ。
 
「こんな時間に来るとは珍しいな、何かあったのか?」
 
不思議に思った慧音は尋ねた。
聞かれた○○は少し疲れたような笑みを浮かべた。
見ると頬が少し痩せこけているような、どことなくやつれているような印象を受けた。
 
「ええと、少し相談がありまして……」
「ふむ、相談……」
 
ここまでの雰囲気で慧音は何か訳ありという事を察した。
今までにこんな事例は無かったからだ。
 
「分かった、話は中で聞こう。上がってくれ」
 
ともかく、立ち話で済むような相談では無いだろう。
慧音は○○を家に上げて話を聞く事にした――。
 
 
 
部屋に設置されているちゃぶ台の側に○○は座った。
庶務用の机ではなく、来客用の物らしい。
そこへ台所に行っていた慧音が戻ってきた。
お盆の上に湯呑みが二つ置かれている。
どうやらお茶を淹れてくれて来たらしい。
 
「外は寒かっただろう?良かったら飲んでくれ」
「あ、ありがとうございます。そうですね、もう冬ですからねぇ」
 
幻想郷には冬が訪れていた。
吐く息は白くなり、朝には至る所で霜柱が出来ている。
日によっては雪がちらつく事も多くなってきた。
そんな寒い時には熱いお茶が非常に有り難い。
○○は置かれたお茶を軽く飲む。
その温かさに思わず息を一つ付いた。
 
「それで、相談というのは?」
 
慧音が○○の緊張が少し解れた時を見計らって切り出した。
 
「あ、はい。相談というのはその、『アイツ』の事でして……」
「『アイツ』……?ああ、リリーの事か」
 
リリー――それは春告精リリーホワイトの事である。
幻想郷に住んでいる者なら誰しも知っている春の象徴とも言える妖精である。
――そして、○○の恋人でもある。
どんな経緯があったか詳細は不明だが、いつの間にか恋仲になっていたらしい。
今では○○の家屋に一緒に住んでいるとの事。
慧音自身も人里にて楽しそうに歩く二人の姿をたびたび見かけていた。
それ故に今回の相談が少し奇妙に思えた。
特に何か相談事があるような状況には思えなかったからだ。
 
「一体何なんだ?喧嘩でもしたのか?」
「あいや、そんな事は無く……。むしろ、仲が良すぎるから問題というか……」
 
慧音は首を傾げて訝しんだ。
 
「どういう事だ?」
「まあその、種族の違いによる問題なのかな……と」
 
独りごちる様に言うと、○○は軽く俯いてしまった。

「……種族、か」
 
人というのは同じ人同士であっても仲がままならない事が往々にしてある。
それは男女という性別の違いによってもまた発生するものだ。
人間と妖精の番い――そんな話は産まれてから幻想郷で生活してきた慧音でも聞いた事が無い。
同じ人間同士でもそんな状態なのである、種族も違えばその悩みはより深刻化するのも想像が難しくない。
価値観の違いか、文化の違いか、習慣の違いか、あるいは別の何かか。
いずれにせよ、○○は今まさにそれで悩んでいるのだろう。
慧音自身も半人半獣のワーハクタクである。
今でこそ人里の人間達とも友好な関係が築けているが、それでも人間でないという事で苦労もしてきた。
だからこそ、慧音は○○の力になってあげたかった。
その問題を解決できるかは分からない。
だが、解決法を一緒に考える事は出来る。
ともかく、まずは○○がその問題を話してくれてからだ。
自分から言うようにしてしまっても意味が無い。
○○が○○自身の口で語る事に意味があるのだ。
決心が付いたのか、○○が顔を上げた。
例えどんな内容の問題を相談されても慌てずに受け止めよう。
そう決心した慧音は自身を落ち着かせるように茶に口を付け――。
 
「実は、最近リリーがやたら俺を求めてきて困っているんです……」
「――!?!?ブッハ、ゲッホゲッホ!!」
 
盛大に咽た。
 
「だ、大丈夫ですか!?」
「ゲホッゲホッ、お、お前は何を言ってるんだ……!?」
 
何回か咳ばらいをして喉の調子を整え、目尻に滲んだ涙を手の甲で拭う。
そして胡乱げな視線を○○に向けた。
 
「それは当て付けか?未だに独り身な私に対する当て付けなのか!?」
「ち、違いますから!!とにかく落ち着いてください!!」
 
若干の妬みと憤りを込めた抗議に対して、○○は必死に宥めようとする。
やがて頭が冷えたのか慧音は一度茶を飲み直し、一つ深呼吸をした。
胡乱げな視線は相変わらずそのままだが。
 
「……で、どういう事かちゃんと説明してもらおうか」
「は、はい……」
 
若干気圧されながらも、○○は詳細を話し始めた。
 
「改めて説明すると、最近リリーがやたら迫ってくるというか……つまりエロイ事をしようと迫ってくるんです」
「一々言い直さんで良い。だがその位なら男女の番いならよくある事なのではないか?リリーも女だ。好きな男に対する想いが抑えきれなくなる事もあるだろう。ただでさえ感情が豊かな妖精だからなあいつは」
「いえ、そういう次元を超えてる気がするんです……。例えばこの間も――」
 
 
 
その日、○○はある違和感で目が覚めた。
何か奇妙な感覚を感じる。
それは決して不快な類ではなく、むしろ心地良いものだ。
 
(……なん、だ?)
 
少しずつ頭が覚醒し、刺激が鮮明になり始める。
先程から感じる刺激は主に股間の辺りから感じられ、温かくそしてぬめった何かの感触の様だ。
 
「うっ……!」
 
無意識の内に声が漏れ、腰が跳ねた。
その喘ぎ声は股間に与えられる刺激――快感によって生み出されたものらしい。
ようやく五感を感じる程度に頭が覚醒してきたようだ。
 
「な、なんなんだ……?」
 
先程から股間に与えられ続けている快感の正体を知る為に○○は身体に掛かっていた布団を持ち上げた。
そこにいたのはよく見知った顔だった。
 
「んっ、ちゅっ、じゅる、ぴちゃ、じゅるぅ……んぁ、おふぁようごはいまふ〜」
「……おはよう、リリー」
 
○○の布団の中には彼の恋人――リリーホワイトが居た。
朝に寝ている恋人の布団の中に潜り込む少女、微笑ましい光景だ。
ただ、その少女が隆起している男の肉棒を愛しげに咥えていなければ、だが。
あまりにも当然の様に口淫をされながら挨拶をされ、○○も思わず生返事を返した。
寝ぼけた頭がまだ何が起こっているのか正確に理解してないらしい。
しかし、再び再開された口淫によって背筋にゾクリとした快感が走り思わず呻いた。
それで寝ぼけていた頭が完全に覚醒した。
 
「じゃなくて、何やってるんだよ!?」
「ん?ん〜……あはふぇられすよ〜?」
「そりゃ見りゃ分かるわ!!じゃなくてなんでそんな事してるんだよ!?」
「あ〜、ほれはへふね……」
 
リリーに問い詰めると、彼女は咥えていた肉棒を離した。
リリーの舌先と亀頭の間に粘ついた糸が引く。
その蠱惑的な光景に思わず息を飲む。
先程までリリーの口内に咥えこまれていた○○の肉棒は彼女の唾液でぬらぬらと光っており、先程までの行為の濃厚さを物語っていた。
 
「今朝○○さんを起こしに来たら、おちんちんが大きくなっていたのでスッキリさせてあげようと思ったんですよ〜」
「いや、それ生理現象だから!!」
「まあまあ、リリーに任せてください〜」
「いやだからな……あっ」
 
制止しようとした○○の言葉は自身の喘ぎ声によって途絶えた。
リリーが再び彼の肉棒を咥えたからだ。
 
「んぐ、じゅる、じゅるる、んく、ちゅっ……」
「リ、リリー……!」
 
柔らかな唇が肉棒を挟み、小さな舌が亀頭を絶え間なく刺激してくる。
同時に頭をゆっくりと上下させ、咥内全体を使って肉棒を舐る。
決して激しくない、まるで相手を労い奉仕するような口淫
思わず止めさせる為に、手を伸ばそうとした。
だが与えられる予想以上の快感に本能が揺れ動かされ、一瞬止めさせるのを躊躇してしまった。
その躊躇が決定的だった。
意識がはっきりした分、感じられる快感もひとしおだ。
そして、その快感が○○から抵抗の意志を削ぎ落した。
行為を止めさせるために頭に伸ばそうとしていた手はその目的を果たせず、力無く降ろされた。
○○に出来たのは少しでも与えられる快感に耐える為に布団を掴むくらいだった。
無意識の内に全身に力が入り、硬直する。
呼吸は徐々に荒くなり、時折我慢しきれなかった喘ぎ声が食いしばった歯の間から漏れ出る。
 
「リリー、も、もう……!!」
 
やがて訪れる絶頂の予兆を感じ取って、○○が上擦った声を上げる。
○○が覚醒する前から刺激され、快感が蓄積していたからなのか普段よりも限界までの時間が早かった。
それを聞いたリリーは少し嬉しそうに笑うと、口淫の速度を上げ始めた。
じゅるじゅると水音を立てながら肉棒を吸いたて、舌が至る所を舐る。
その快楽の前に、○○が耐え切れるはずが無かった。
 
「出っ、ぐぅ……!!」
 
○○の肉棒から熱い欲望が迸る。
腰が震え、脈動する度に精液を吐き出した。
同時に下腹部から全身に向かって、男が感じる最高級の快感が電撃の様に駆け巡った。
思わず躰が跳ね、手足が慄く。
口から喘ぎ声が漏れるのを抑えられないのも無理も無かった。
咥内に精液を吐き出されたリリーは嬉しそうに鼻を鳴らした。
肉棒から吐き出される○○の欲望をその小さな口で受け止める。
更にその状態で更に射精を促すように再びゆっくりと頭を上下させ、肉棒を口で扱く。
射精直後で敏感になっている状態でそんな事をされたのだ、○○としてはたまったものではない。
 
「リリー待っ、うぁっ……」
 
あまりの刺激に思わず○○が悲鳴を上げる。
だがリリーは止める気配を全く見せず、悪戯っぽく笑うだけだった。
結果として、○○はより多くの精液を吐き出す事となった。
やがて射精の波も収まり始めた。
○○の躰から射精による快感は既に引き、代わりに男性特有の絶頂後の疲労感と倦怠感が纏わり付き始める。
口を開け、荒い呼吸を繰り返す。
リリーの方は、汚れが残らないようにゆっくりと口から肉棒を離している所であった。
そのままほんの少しだけ顔を上に向けたかと思うと、喉がゆっくりと蠢き始めた。
恐らく咥内に溜めていた精液を嚥下しているのだろう。
口に出された粘ついた液体を、何度にも分けてゆっくりと飲み下していく。
見せつける様に妖しく蠢く白い喉から、○○は目が離せなかった。
全て嚥下し切ったのか、リリーは口を開けて熱っぽい吐息を吐き出した。
全身を震わせ、感嘆の声を漏らす。
 
「はぁ……ふふ、濃いのが一杯出ましたね〜」
 
既に硬さを失いつつある○○の肉棒を優しく撫でながらリリーは笑みを浮かべた。
その笑みには先程までの女としての貌は無く、見た目相応の屈託の無い笑みである。
いきなりの変貌ぶりに○○はしばし茫然としていると、リリーは布団から這い出てて立ち上がった。
 
「もう朝ごはんが出来てますよ〜。準備が出来たら来てくださいね〜」
 
そのまま彼女は台所の方へと行ってしまった。
後に一人残された○○は、荒い息を付きながらノロノロと上半身を起こす。
そして思い悩むように右手で顔を覆い、呟いた。
 
「一体何だっていうんだ……」
 
とにかくまずは着替えよう。
そう思った○○は倦怠感が残る身体を無理やり起こし、着替える為に箪笥へと向かった――。
 
 
 
「……という事がありまして」
「あ、朝から何をやっているんだお前は……!?」
 
○○の相談という名の生々しい経験談を聞かされて、慧音はわなわなと声を震わせた。
見ると顔が少し赤くなっている。
この手の話題に対して耐性があまり無いのかもしれない。
――もっとも、女性に自身と彼女の性事情を包み隠さず話し切ってしまう○○にも問題が無い訳では無いが。
 
「でまあ、続きを話していきますが……」
「ま、まだあるのか!?」
 
 
 
突然の朝の行為の後のリリーは、普段通りの様子だった。
むしろ普段通りの様子である事が異常に思えてしまえる状態なのだが。
兎にも角にも○○は寝起きから消費してしまった体力と栄養を補充する為に十分な朝食を取った。
やはり、リリーの作る朝食は美味い。
そう思いながら朝食を掻き込む○○を見てリリーは嬉しそうに微笑んだ。
――ああ、やはり今朝のアレは何かの間違いだったんだ。
こんな無垢な笑みを浮かべる少女がいきなりあんな事をするはずが無い。
きっとあれは寝ぼけた頭が見せた幻か淫夢の類だったのだろう。
そう、きっとそうだ。
そう考える事で、○○は今朝の出来事を片付けようとした。
だが、それは夢でも幻でも無かったという事を○○は身を以って知る事となる。
朝食を取り終え、少しの準備を整えた○○は玄関へと向かった。
これから人里にある仕事場に向かうためだ。
愛用している草履を足に馴染むように整え、履く。
問題無い事を確認すると、○○は立ち上がり家屋の中の方を向き直った。
 
「じゃあ、行って来るぞ」
「あ、待ってくださ〜い」
 
水場で後片付けをしていたリリーがこちらに向かってパタパタと駆け出してきた。
その姿は恋人というよりも、大好きな父親を見送る娘の様でもある。
○○の元まで駆け寄ってくると、リリーはいきなり彼に抱き着いた。
 
「おわっ」
「えへへ、行ってらっしゃいですよ〜」
 
○○の胴に手を回し、身体を密着させてくる。
○○は土間に立ってリリーは玄関の式台の上に立っている状態なので、二人の間の身長差は普段よりも縮まっていた。
 
「やれやれ……」
 
仕事に出る前の見送りでリリーが抱き着いてくる事は珍しくない。
無邪気なリリーなりの、これから仕事に出掛ける恋人に元気になってもらおうという想いからの行動なのだろう。
愛でる様に頭を軽く撫でてやると、リリーは嬉しそうに笑った。
今朝見た気がするあの発情したような面影はどこにも無い。
やはりあれは見間違いだったのだ。
そう確信した○○は安心したのか、一度ゆっくりと深呼吸をした。
○○の方もリリーの身体に手を廻し、軽く抱きしめてやる。
抱きしめているだけなのにやたら気持ちが良い。
それに何だか良い匂いもする気がする。
抱きしめる腕や手に力を入れると、女性特有の柔らかな感触が返ってきた。
妖精という種族は人間より一回り身体が小さいのだが、それでもちゃんと女の身体をしているという事なのだろうか。
そしてやはり何より否応が無く意識させられるのが、胸元辺りに押し付けられる魅力的なまでの柔らかさだ。
リリーホワイトの胸、それがその柔らかさの理由だ。
どうにもリリーは着痩せするタイプらしい。
人間より小さい身体と普段体型があまり目立たない服を着ているため分かりづらいが、中々の物を持ってる。
それこそ、人間と比べても遜色の無いレベルだ。
全人類男性の中で嫌いな者など居ないだろうその魅惑的な膨らみを押し付けられ、意識しない方がどうかしている。
思わず固唾を飲み、身体と身体の間で押しつぶされて形を変えているリリーの胸を凝視してしまう。
この状況で邪な考えが一瞬でも横切らない男がいるだろうか?
いや、そんな男が居るはずが無い。
 
(ああ……これ最高だな……)
 
だから○○が一瞬でも邪な思考が脳裏を過ぎってしまうのも無理もなかったのだ。
気付いた時にはもう遅かった。
邪な思考、身体中に与えられる魅力的な感触、どこか夢中になる匂い。
それらの情報を脳が生殖行為の機会と認識して、下腹部――詰まる所性器に血流を送り込むように命令を伝達する。
海綿体に血流を送り込まれた事によって性器は硬度を増し、衣服を押し退ける様に隆起する。
 
「ふふ、元気になっちゃいましたね〜」
「あ!?い、いやこれは……!!」
 
勿論、身体を密着させているりりーがそれに気づかないはずも無かった。
うっとりとするような声色で喋りながら、リリーは顔を上げる。
顔は既に少し朱色に染まっており、とろんと蕩けた笑みを浮かべていた。
眼の光が情欲によって潤んでいるのが分かった。
その表情は正しく幻と思っていた今朝の口淫している時の表情そのものである。
 
(や、やっぱりあれは現実だったのか……!?)
 
今更その事実を知った所で遅い。
リリーは完全に○○を狩りに来ていた。
 
「抱きしめただけで興奮しちゃったんですか〜?」
 
甘えるような鼻にかかった声でリリーが問い詰めてくる。
事実だ、事実だがそれを肯定してしまってはマズイ気がした。
同時に衣服の上から勃起した肉棒を手で優しく撫でてくる。
こそばゆい快感が○○の躰に流れる。
思わず声が出そうになるのを必死に噤んだ。
とにかくこの状況から脱しなければならないといけないと直感した。
ゆっくりとリリーから身体を離す。
 
「な、なあリリー、そろそろ仕事に行かないと……うっ!?」
 
○○は苦し紛れの言い逃れを最後まで紡ぐ事は出来なかった。
リリーが○○の下衣の中に手を忍び込ませ、肉棒を掴んだからだ。
 
「すごく熱くて、硬くなってます……」
 
悪戯っぽい笑みを浮かべながらこちらを見つめてくる。
見つめられて気恥ずかしさからか、あうあうと間抜けな声しか出せなかった。
ただ肉棒を掴まれた、それだけなのにまるで全身を掴まれてしまったかのように身体が硬直してしまう。
いや、むしろそれは必然といえるのかもしれない。
肉棒は正しく男の分身そのもの。
それを掌握されてしまうというのは男を掌握するというのに間違いなかった。
今まさに○○の躰の自由はリリーの掌の上にあるといっても過言では無いのだ。
 
「お仕事に行く前に、スッキリさせてあげますね……」
 
聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で囁くと、リリーは掴んでいる手をゆっくりと動かし始めた。
 
「あっ、ぐっ……!」
 
与えられた快感に思わず声が漏れる。
その反応に気を良くしたのか、リリーは小さく笑うと肉棒を扱く手の速度を少しずつ早め始めた。
彼女を抱きしめる様に腰に回していた手は、いつしか身体が崩れ落ちない様に縋る様になってしまっている。
その気になれば手を肩に掛け、身体を離す事も出来ただろう。
だが、○○にはリリーを引き剥がす事ももう出来なかった。
彼女の手によって、徐々に絶頂へと追いやられていく。
肉棒に絡みつく手と指は、自分と同じ五本の指を持つ手と同じとは思えなかった。
自分の手で自慰をした時とは比べ物にならない。
白くて細い指が肉棒を撫で上げ、掌で亀頭を撫でる。
かと思えば指の間に雁首を挟んで刺激し、指と手で肉棒を優しく掴んで扱き上げる。
それを行われているのが衣服の下という事もあって、何が起こっているのかまるで分らなかった。
何も分からないまま快感だけを与えられる。
○○は無意識の内に快感に耐える様に目を硬く瞑り、俯いてしまった。
それを見たリリーは少しだけ背伸びをして口を○○の耳元に近づけて囁いた。
 
「我慢しなくても良いんですよ〜……いっぱい出しちゃってくださいね〜……」
 
子供をあやす様に、それでいて男を誘うように言葉で責める。
脳が蕩けるような声色に、○○の性感はさらに加速する。
腰が震え出す。
もう限界が近かった。
喘ぎが混じった吐息が口を震わせて吐き出す。
 
「リ、リリー……ィ」
 
限界を知らせるかのように切なげな声が出た。
リリーは嬉しそうに笑う。
 
「良いですよ〜……リリーが全部受け止めてあげますね〜……」
 
トドメとばかりに肉棒を扱く手を速めた。
限界まで性感を高められていた○○にその責めを耐え切れるはずも無かった。
 
「ぐっ……イ、く……ぅ!!」
 
その言葉と同時に○○は欲望を解き放った。
全身に快感が走り、それに耐えるかの様にりりーを抱きしめている手に力が入る。
リリーの方は射精の瞬間に掌を亀頭に被せていた。
結果、○○の精液は全てリリーの掌に吐き出される事になる。
 
「んっ……○○さんの凄く熱いです……」
 
ドクドクと肉棒が脈動する度に掌に吐き出される熱い粘ついた感触を感じ、リリーはうっとりとしたような熱っぽい声を漏らす。
その量は本日二回目だというのに、一回目のそれと遜色無い量であった。
 
「ふふ、いっぱい気持ち良くなってくれて良かったですよ〜……」
 
心の底から嬉しいといった感じでリリーが話す。
○○の方は気怠い脱力感に再び晒されていた。
ハアハアと荒い息を付く事しか出来ない。
やがて、射精の波は完全に止まったらしい。
それを確認すると、リリーは自身の手を○○の衣服から引き抜いた。
掌には先程吐き出した精液がべっとりと塗れていた。
手から少し垂れているのにも関わらず、滴っていない。
どれほどの粘度を誇っているのか一目瞭然だった。
 
「凄い量でしたね〜」
 
リリーが笑いながら見上げてくる。
○○は気恥ずかしさから目を逸らした。
その様子が可笑しかったのか、リリーは小さく笑うといきなり手に塗れている精液を啜り始めた。
 
「じゅ、じゅる、んく……」
 
突然の行動に○○は度肝を抜かれた。
まさか手に出したものを啜るとは思っていなかったのだ。
 
「ず、ずず、ちゅっ、ちゅる、れるぅ……ハァ、美味しいです……」
 
あんな物が美味しいはずが無い。
それでも精液を啜るリリーの表情は恍惚としている。
まるで本当に美味だと感じているかのようだ。
その異常な、しかし扇情的でどこかコケティッシュな光景に○○は目を奪われ言葉を発するのを忘れてしまっていた。
やがて精液に塗れていたリリーの掌は、肉棒を扱く前の綺麗な状態に戻っていた。
 
「スッキリしましたか〜?」
「ハァハァ……あ、ああ……」
 
リリーの問いにそう答えるのが精一杯だった。
答えを聞いたリリーは嬉しそうな顔をするとゆっくりと身体を離した。
あれほどの事をしておきながら、手に触れていた感触が無くなるのがどこから名残惜しかった。
 
「それじゃあお仕事頑張ってきてくださいね〜」
 
笑いながら手を振り、見送りをする。
その表情には先程までの妖艶さは無く、元気で子供の様な屈託の無い笑顔だった。
正しく寝起きの時と同じだ。
だが、疲労感と倦怠感、先程まで身を焦がしていた快楽のせいか思考が上手く回らない。
なんとか考えれたのは、とにかく仕事に行かなくては遅れてしまうという事だけだった。
 
「い、行ってきます……」
 
そうして○○は身体を若干ふらつかせながら仕事へと向かうのであった――。
 
 
 
「……とまあ、ここ最近はずっとこんな調子で」
「どれだけ爛れた生活を送っているんだお前は……」
「言葉もありません……」
 
○○の報告を聞いた慧音は頭を手で抑えながら呆れたような声を出した。
はぁ、と一度ため息を付く。
 
「成る程、道理でお前がそんなに疲れてやつれた様に見える訳だ」
「え、俺そんな風に見えるんです?」
 
言われて初めて知ったかの様に○○が自分の顔を手で擦ったり揉んだりする。
どうやら自覚が無かったらしい。
 
「一度鏡で自分の顔を見てみろ、酷い有様だぞ」
「うう……そんなにですか……」
 
○○はガックリと肩を落とし、情けない声を出した。
 
「大体、今回の件はお前にも少し問題があると思うぞ。お前が確固たる意志を持って断れば良いのではないか?まあ、断りづらいのは理解しているが……」
「ですよねぇ……でも毎回それが出来ないんです。なんというか、いつの間にか頭がぼぉっとしちゃって……」
「むぅ……」
 
腕を組んで慧音は唸った。
ともかく、情報が少なすぎる。
その辺りは○○に聞いていくしかない。
 
「今までにもこんな事はあったのか?」
「いえ全く。多少求めてくる事はあってもこんな毎日は無かったですね」
「ふむ、じゃあいつ頃から今みたいな状態になった?」
「ええと、少し前くらいですかね。確か初雪が降った前後だった記憶が……」
「初雪?」
 
初雪、その何気ない言葉が慧音の中で何故か引っかかった。
手を口元に当て、思考する。
慧音の中であらゆる推測と思考が走り、徐々に推理が組み立てられていく。
やがて、頭の中で一本の線が通った。
 
「……もしかすると」
「わ、分かったんですか!?」
「あくまで推測だが、という前置きが付くが」
 
そして慧音はゆっくりと自身がたどり着いた仮説について話し始めた。
 
「○○は妖精についてある程度は知っているか?」
「ええと、確か自然現象が具現化したようなものでしたっけ?」
 
○○が首を傾げながら思い出す。
正直幻想郷縁起で軽く読んだ程度なのでいまいち自信が無い。
 
「まあ、大体そんな所だ。例えばチルノは氷の妖精だな」
 
チルノ――恐らくリリーと一緒に遊んでいる所をよく見るあの妖精の事だろう。
羽が氷のような形をしていたので、何となくそんな気はしていた。
 
「けれど、今の話とリリーの件にどんな関係が?」
「まあ、最後まで聞け。妖精という存在が自然現象に依った存在という事は今話したが、その依代にしている現象がより強力になると妖精もまた力を増す」
「はあ、……ちょっと待ってください。じゃあ逆にその現象が弱くなると……?」
「当然その妖精の力も弱くなるな」
 
それを聞いて○○は一つ思い出した。
 
「そうか、だからあの時のリリーは少し元気が無かったのか」
「ちなみにそれはいつ位だ?」
「丁度秋頃です。木の葉が紅葉し始めていたのでよく覚えています」
 
あの頃のリリーはいつもの元気さが少し欠けている様に見えた。
ボーッとしている事が多かったり、朝起きるのが遅くなったりもしていたからだ。
 
「でも変ですね……そんな感じだったのに冬になりだしたらなんで突然あんな風になったんだ……?」
「……やはり、私の推測は当たっていたのかもしれん」
「ほ、本当ですか!?」
 
慧音は頷いた。
 
「秋ごろにリリーの元気が無くなっているように見えたのは『春』という現象がこの幻想郷から失われつつあったからだ」
 
依代にしている自然現象が無くなると妖精は力を失う――先程は話した通りだ。
 
「そして冬、ますます『春』が失われる。そこでリリーは別の『春』を発生させる事で力を増そうとしたのだろう」
「別の春?何なんですか別の春って?」
「……春には季節以外にも別の意味がある。お前も聞いた事が無いか?例えば――」
 
慧音は気乗りしない様に一つ大きく息を吐いた。
 
「例えば『春を売る』、とか」
「……え?」
 
一瞬○○は慧音が何を言ったのかよく分からなかった。
いや、何を言ったのかは聞き取れた。
ただ、言葉の意味がよく分からなかったのだ。
それでも、段々と思考が追い付いてくる。
 
「ま、まさか……?」
 
やがて○○も答えに行き着いたのか、目を見開いて顔を上げた。
 
「ハ、ハハ……そんな馬鹿な……」
 
思わず引き攣ったような乾いた笑いが漏れた。
自分の考えが合っていれば今までの事の筋が通る。
だが、その考えはあまりに都合が良すぎてまるで仕組まれたようにも思えた。
 
「ま、まさか最近リリーが性的な意味で俺を襲うのは……」
「恐らく、お前との情事で『春』を回収しているのだろう」
「や、やっぱりですか!?」
 
男女の情事や愛欲の事を指す場合もある。
今回の場合、リリーが○○を襲う事でそこに発生した春を回収しているという事になる。
 
「そう考えるとお前があいつに迫られた時にやたら流されやすくなる理由も説明が付く。恐らく彼女の『春を伝える程度の能力』の『春』も同じ解釈で使われているからだろう」
「ほ、本当にそんなトンチみたいな理論なんですか!?」
「妖怪や妖精は人間よりも精神的な影響を受けやすいからな。それに先にも言ったがあくまで推測の域を出ない」
「……どうにかならないんですか?」
「難しいだろう、人間で言えば眠い時に無意識の内に欠伸をしてしまうようなものだ。恐らく彼女にも狙って行っているという自覚は無いだろう」
「そ、そうですか……」
 
慧音は茶を一回啜り、落胆している○○にフォローを入れるように言った。
 
「まあそれでも誰でも良いという訳では無いらしいな」
「え、何故です?」
「ここ最近で人里の若い衆や子供が春告精に襲われたという話は聞いていない。つまり好いているお前だからやっている訳だ」
「俺だから、か……」
 
そう言われると事が事なのだが無性に嬉しくなった。
無意識の内に頬が緩む。
それを自覚した○○は照れ隠しの様に茶を啜った。
 
「じゃ、じゃあ対策というのは……?」
「無いな、せいぜい永遠亭の薬売りから何か滋養強壮の薬を買うくらいしか無いだろう」
「で、ですよねー……」
 
○○は少し気が滅入った。
理由は分かった、しかし結局の根本的解決方法というものは存在しなかったのだ。
恐らく今後も、少なくとも春までリリーは自分を求めてくるのだろう。
恋人に求められるのは悪い気はしない――むしろ嬉しいのだが、流石に頻度が深刻である。
 
「とにかく、自制心と平常心を持つ事だな。アイツが誘惑して来てもその誘いに乗らず、自らを律して丁寧に断るしかない。流石に全ては無理だとしてもお前の身体の負担にならない程度になんとかはするべきだろう?」
「う、上手くいくんですかね……?」
「そんな事は私にも分からん。ただ少しでもその気になってしまったらお前の頭の中の『春』を増幅させられてもう逃れられないだろうな」
「う……」
 
正直リリーが誘って来る時のあの女の貌を見せられて邪な考えがチラつかないようにするというのはかなり難易度が高そうな話ではあった。
だが、それでもやらなければならない。
正直今の時点でも自分で体力を消耗しているのが分かるし、慧音にもやつれている事を指摘されたばかりだ。
このままでは自分の健康にも影響が出る可能性がある。
 
「……分かりました、とにかく善処してみます」
「まあその、なんだ、程々にな」
「ハハ……程々にしてもらえたら嬉しいんですけどね……。ともかく相談に乗って頂いてありがとうございました」
「あ、ああ。しっかり精の付くものを食べるんだぞ」
 
そうして○○は慧音の自宅を後にした。
気のせいか若干ふら付きながら、だったが――。
 
 
 
家への帰路の間、○○は思案していた。
どうすればリリーの誘惑を躱す事が出来るのかと。
恐らく最も確実な方法は彼女を無視する事だ。
見ざる聞かざる言わざる、これを押し通せばリリーの能力に中てられる事も無いだろう。
だが、それは現実的には不可能だ。
唐突にそんな事をしては不自然だし、そもそも今日を乗り切った所で明日明後日はどうするのかという話になる。
それに○○としてもそんな手段を採ってリリーが寂しそうにする姿は見たくなかった。
結局の所、○○が採れる手段というのは慧音が言っていた『自制心と平常心を持つ事』以外に無いのだ。
 
「大丈夫かなぁ……?」
 
不安が口から漏れる。
実際今朝もずっとリリーのペースに巻き込まれっぱなしだったのだ。
今更こちらが主導権を握れるかと言われると正直自身が無い。
だが、それでもやらねばならないのだ。
やらなければ自分の生命がそこはかとなく危機に晒される事となる。
などと思考を巡らしている間に自宅に着いた、着いてしまった。
 
「自制心……平常心……」
 
自分に言い聞かせる様に目を閉じ、言葉を呟く。
やがて眼を開き、顔を上げた。
 
「……よし!」
 
覚悟を決めた○○は頬を手の平で叩き、気合を入れる。
そして玄関の戸を開いた。
 
「た、ただいま〜」
 
努めて普段通りに帰宅の挨拶をする。
大切なのは普段通りに過ごす事だ。
 
「あっ、おかえりなさ〜い!!」
 
奥の方からリリーの声が聞こえた。
恐らく、台所で夕食の準備をしていたのだろう。
少しすると、リリーが嬉しそうに笑いながらこちらに駆けてきた。
両手を広げているので、恐らく朝に見送った時の様に抱き着くつもりなのだろう。
それを考えると、○○は一瞬躊躇した。
自分は抱きしめてしまって大丈夫なのだろうか、と。
しかし、答えが出るよりもリリーが抱き着いてくる方が先だった。
 
「えへへ〜」
 
抱き着きながらリリーが顔を綻ばせる。
そこにあるのは無邪気さだけであった。
 
(大丈夫……大丈夫だな、うん)
 
そう、抱きしめる位なら問題無い。
これは欲情したとかでは無く、単純に愛おしいと思う気持ちからの行動だ。
だから何も問題無いのだ。
誰に問い詰められたわけでも無いのに○○は一人脳内で説明をする。
だが、○○は気づかなかった。
それが自身の行動を赦す言い訳になってしまっている事に。
抱き着いて見えないリリーの表情が蕩け始めていた事に。
リリーが頭を動かす度に髪の毛がサラサラとなびいた。
丁寧に手入れをしているのだろう。
思わず○○は彼女の髪の毛へ手を伸ばしていた。
指で軽く梳いてやると、髪の毛は一切の抵抗を感じさせずに指の間をすり抜けていった。
髪を撫でている、ただそれだけなのにその感触がとても心地良い。
ほとんど何も考えずに、○○はまたリリーの髪の毛を撫でる。
それを何度も何度も繰り返す。
思わず癖になってしまいそうな心地良い感触を求めてしまっていた。
 
(あれ……俺、何やって……?)
 
一瞬我に返り、自分に問いかける。
だが、何故か頭が少しぼぉっとしてスムーズな思考が出来ない。
 
「んっ、んぅ……ふふっ」
 
髪を撫でられる感触が心地良いのか、リリーが気持ち良さそうな吐息を漏らす。
その様子を見ていると○○としても悪い気がしない。
 
(良い……よな、リリーも喜んでるし)
 
結果、○○はその行動を続ける事にした。
続ける事にしてしまったのだ。
不意に甘く、とても心地良い匂いを感じた。
リリーの髪の毛から漂っているのだろうか?
この匂いには覚えがあった。
これは確か、寝起きや仕事に行く時にも嗅いだことのあるような……。
 
(もしかして、これって……)
 
そこでようやく○○は気づいた。
この匂いこそが○○の中にある『春』を増幅させるという事に。
 
(あ、ヤバ、イ……)
 
気付いた時にはもう遅かった。
『春』に侵されているのか、頭が妙にクラクラするのが自分でも分かる。
そして同時に自身の内側から劣情が込み上がってくるのも自覚出来た。
とにかくこのままではマズイ状況に陥るのは火を見るよりも明らかだった。
 
(と、とにかく離れないと……!)
 
自身とリリーの身体を離そうと、彼女の方に手を掛ける。
そのまま押し退ける事で身体を離す……つもりだった。
だが、○○の身体は動けなかった。
いや、『動かなかった』といった方が正しいのかもしれない。
頭では分かっているのに身体がいう事を聞かない。
○○の中の雄としての本能が、この後もたらされるであろう快感を求めてしまっていた。
不意にリリーが顔を上げる。
目が合うと嬉しそうに目を細め、熱っぽい吐息を吐いた。
リリーが何かをしようとしている事だけはハッキリと分かった。
リリーは○○に抱き着いていた手を離し、その場でゆっくりと屈み始めた。
屈む途中、彼女の手が○○の身体を這い回り愛撫する。
胸板、脇腹、腹部、太腿、そして内腿。
撫でられる度にこそばゆい快感が身体に走り、ぶるりと身体が震えた。
 
「お仕事帰りで疲れてると思うので、リリーが気持ち良くしてあげますね〜」
 
そう言うとリリーは○○の下衣を脱がせ始めた。
これから何をされるのか、容易に想像が付いた。
だが、○○はされるがままである。
もはや彼には抵抗する気力は残されていなかった。
荒い息を吐きながら、衣服を脱がされているのを傍観しているだけだ。
そしてとうとう最後の砦であった褌も脱がされてしまった。
 
「わぁ……すごぉい……」
 
リリーがうっとりとしたような声を漏らす。
後に残ったのは獲物を求める様に鎌首をもたげ、赤黒く怒張した肉棒である。
 
「な、なあリリー、やっぱりこういうのは……その、後にしようぜ……?ほら、まだ水も浴びてないから汚くて臭かったりするだろうし……」
 
○○が顔を引き攣らせながら話す。
どうにかしてこの状況から逃れようと必死だ。
だが、それは今更過ぎる言い逃れだった。
そもそも本当に逃れようとするのならいくらでチャンスはあったのだ。
リリーの能力の影響があるという事を加味しても、こんな情けない姿にされた状態で誤魔化そうとしても説得力が無さ過ぎる。
 
「そんな事無いですよ〜。むしろ○○さんの臭いが凄く濃くって……」
 
リリーが顔を○○の肉棒に近づける。
そのまま目を閉じると、鼻で大きく深呼吸をした。
 
「……はあぁぁ……興奮してきちゃいます……」
 
躰を震わしながら息をゆっくりと吐き出す。
盛りの付いた犬の様に口を小さく開き、荒い呼吸を繰り返す。
目つきもとろんとしていた。
完全に発情し、蕩け切った表情であった。
 
「それじゃあ、いきますね〜……」
 
そう言うとリリーは目の前にある醜悪な肉棒の先端――亀頭に一つ口付けをした。
 
「……ッ!」
 
本能が待ち望んでいた肉棒への刺激に、○○の躰が大げさに思えるほどに震えた。
だが、声を出さなかったのは彼の最後の見栄だったのだろうか。
手を硬く握り締め、その快感に耐えている様でもあった。
そんな○○の姿を見て、リリーは楽しそうに小さく笑った。
再び彼の肉棒に口付けをする。
今度は雁首の辺りに。
先程の感触とはまた違った快感に思わず息が漏れる。
段々と口付けの間隔が短くなっていく。
 
「ん……ちゅっ……ちゅる……んふ……」
 
弾けるような水音が響き、時折それに混じってうっとりとしたような吐息が混じる。
リリーは目を閉じ、肉棒への口付けに夢中になっていた。
まるで唇の感触だけで肉棒を確かめ、堪能しているようだ。
やがて口付けだけでは無くなり、舌で舐める動作も入り始めた。
一方の○○の方は、生殺しにされているような状態である。
確かに気持ち良い。
だが躰が求めているのはもっと強烈な快楽と、その先にある絶頂だ。
このままでは達する事は出来ないだろう。
 
「リ、リリー……」
 
思わず彼女の名を呼ぶ。
視線を下に向けると、肉棒を楽しげに舐めるリリーと目が合った。
彼女は楽しそうに目を細め、口角を釣り上げる。
 
「あぁ、うぅ……」
 
まるで全て見透かされているような視線。
きっと男として情けないのだろう、惨めなのだろう、屈辱なのだろう。
だが、それを意識すると背筋にゾワゾワと心地良い感覚が這い上がるのを感じた。
被虐的な悦びに思わず躰が震える。
そして悟った。
もはや、自分には何一つ自由は無いのだと。
この状況からの脱却も、絶頂に至る許しも。
全てはリリーのさじ加減一つなのだろう。
今の○○に出来るのは、情けない顔をして懇願するような視線をリリーに送る事だけだった。
それは彼が意識して行った事では無い。
本能が理解して、無意識に行ったのだ。
そんな○○の痴態が見れて満足したのか、リリーは小さく笑った。
 
「ふふ、切なそうな顔をしてる○○さん可愛い……良いですよ〜、それじゃあ気持ち良くしてあげますね〜」
 
そう言うとリリーは口を開け、舌を少し突き出した。
そして、そのままゆっくりと肉棒を咥え込み始めた。
 
「はっ、ああぁ……」
 
先程までとは比べ物にならない感触に思わず声が出る。
咥内の温かくぬめった感触。
○○が渇望していた感触であった。
リリーは舌で肉棒を軽く刺激しつつ、ゆっくりと口の奥へと○○のそれを飲み込んでいく。
激しい動きでもないのに、○○が感じる快感は凄まじかった。
今までじれったい様な刺激しか与えられていなかったというのもあるかもしれないが。
やがてリリーは口いっぱいに肉棒を咥えた状態になった。
そこから今度はゆっくり口から肉棒を引く抜いていく。
先程とはまた違った刺激に、○○の身体が震える。
リリーの口が亀頭辺りまで戻ると、再び飲み込む。
勿論、咥内の至る所で刺激するのを忘れない。
飲み込んで、引き抜いて……次第にその行為の速度が上がっていく。
 
「ん、んく、じゅる、じゅるる、ぐぷ、ぐぽ……」
 
次第にリリーの口からいやらしい水音が立ち始める。
その音が○○の興奮をより一層煽った。
次第に足の震えが止まらなくなり、大臀筋の辺りが引き攣ってくる。
正直、立っているのが精一杯の状態であった。
荒い呼吸を繰り返し、時折不意に与えられる強い刺激に呼吸が止まる。
 
「リリー……そ、そろそろっ……!!」
 
息を詰まらせながらも必死に限界が近い事を彼女に伝える。
それを聞いたリリーは、ラストスパートを掛け始めた。
 
「じゅぽ、じゅぽ、じゅる、ぐぷ、んぐ、じゅるる」
 
口から涎が滴るのも構わず、リリーは激しい口淫をする。
そんな強烈な快感に晒されて、○○が耐え切れるはずが無かった。
あっという間に限界寸前まで追い詰められる。
 
「あ、イッ……!」
 
確かな絶頂の予兆を感じ取って、○○はリリーに動きを止めてもらおうとした。
だが、彼女は○○の想定外の行動に出た。
肉棒を限界まで飲み込むと、両手を○○の腰に回してがっちりと掴んだ。
そして、トドメとばかりに強烈な勢いで肉棒を吸い立てたのだ。
 
「な、何を……あ゛っ……!!」
 
思わずリリーの頭を掴んで引き離そうとした。
だが、それよりも肉棒に与えられる刺激の方が勝った。
なす術も無く○○は絶頂を迎えさせられる。
四肢が硬直し、震える。
肉棒が脈動する度に腰が痙攣し、快感が全身を駆け巡った。
その快感に打ちのめされ、だらしなく開けられた○○の口から喘ぎ声が漏れる。
 
「は、あぁぁぁ……」
 
訪れた絶頂に、脳が幸福を感じる。
だが、その幸福感は一瞬で掻き消えた。
 
「……ふぅ。――ッ!?リ、リリー何をっ……!?」
 
先程まで○○の射精を受け入れる様に動かなかったリリーが再び口淫を再開したのだ。
喉奥まで咥えこんだ肉棒を先程以上に強く吸い立てる。
それに留まらず口を窄めて咥内全体を使って○○を責め立てる。
 
「ま、まて、今イッたばかりだから、ぅあ!!」
 
絶頂直後の敏感な亀頭を責められ、○○は悲鳴のような声を出す。
それはもはや快感では無く、苦痛に近い感覚であった。
刺激から逃げる様に○○は腰を引こうとする。
だが、それは腰にがっちりと腕を回したリリーによって阻止された。
退路を塞がれた○○は、その暴力的とも言える刺激の前にただ耐える事しか出来なかった。
少しでも刺激に耐えるようにする為か無意識の内に身体がくの字に折れ曲がり、リリーの頭を抱えるような形になる。
搾り取られる――まさにこの表現が似合う。
今まさに○○の『春』をリリーが搾り尽くしているのだろう。
彼の体内に一滴の『春』をも残さない、彼女の行動はそうとでも言いたげだった。
苦痛とも言える快感に、○○は吐き出し続けた。
やがて根こそぎ搾り取られ、もう何も出なくなった事を確認したリリーはゆっくりと肉棒を口から引き抜いていく。
ゆっくり、ゆっくりと。
肉棒にこびり付いた精液も全て持って行くと言わんばかりに。
ようやく肉棒を解放したリリーは目を瞑ると、ゆっくりと上を向く。
そして口に溜めていた○○の精液を一気に嚥下した。
ゴクリ、と喉を鳴らす音が聞こえた。
それほどまでの量だったのか粘度だったのか、飲み込まれてしまった今では分からない。
 
「は、あ、あぁぁ……」
 
精液を飲み干したリリーは恍惚とした表情を浮かべる。
吐き出される吐息はとても熱っぽく、艶めかしかった。
一瞬だけ躰をブルリと震わせると、リリーはとろんとした笑顔を浮かべた。
 
「気持ち良かったですか〜?」
 
○○は力無く頷く事しか出来なかった。
だが、それでもリリーは嬉しかったようで目を細める。
 
「良かったです〜。お仕事が大変だったから溜まってたんですね〜。いっぱい出てましたよ〜」
 
確かに仕事で疲労が溜まっていたのは事実だが、根本的な原因はそこでは無い。
だが、今の○○にはそこを指摘する気力も体力も無かった。
リリーは立ち上がるとニッコリと笑った。
そこにはもう先程までの妖艶さはどこにも無かった。
 
「もう晩御飯の準備が出来てますから、着替えたら来てくださいね〜」
 
そう言うとリリーはまた台所へ戻って行った。
後に残されたのは○○のみ。
遂に限界が来たのか、糸が切れた人形の様に○○は崩れ落ちた。
かろうじて床に手を付き、身体を支える。
 
「け、結局こうなるのか……」
 
一人絶望するように○○は呟いた。
下半身を露出させた情けない四つん這いの姿の状態で――。
 
 
 
食事の時間、○○は一心不乱に飯を食らっていた。
とにかく身体が栄養を欲していた。
このままでは冗談では無く干乾びて死んでしまうかもしれないという本能的な恐怖があったのかもしれない。
リリーによって吐き出されてしまった栄養を補充すべく、彼女が用意してくれた夕食を食べる。
そんな○○を見て、リリーはニコニコしている。
自分が作った料理を、自分が大好きな人が美味そうに食べてくれて嬉しいのだろう。
もっとも、それをさせている原因が自分自身だという事を自覚しているかは怪しかったが……。
 
「んぐっ……ふぅ、御馳走さま」
 
食事を終えた○○は合掌した。
そして食器をまとめるとそそくさと台所へと向かった。
今の○○にはこれからの作戦があった。
それは『とにかく行動の先手を打つ』という事。
残念ながらリリーに迫られてしまったら、そこからの脱出はほぼ不可能とみても良い。
先程の玄関先での結果からもそれは明らかだ。
ならば、迫られる瞬間をそれとなく避けていくというのが○○の考えた作戦である。
正直リリーをそれとなく避けてしまう事になるのが心苦しいが、そうでもしないと自分の身が持ちそうも無かった。
せめて今日という日だけでもなんとかやり過ごしたい所である。
とりあえずリリーが何かアプローチを掛けてくる前に行動に移す事にした。
 
「リリー、もう風呂の準備って出来てるか?」
「は〜い、もう入れますよ〜」
 
○○は心の中でガッツポーズをした。
これなら行動に出れる。
 
「じゃあ、俺さっさと入っちまうわ。早く湯浴びがしたくてな」
「分かりました〜」
 
○○は着替えと手拭いを箪笥から引っ張り出すと、そそくさと風呂場へと向かった。
 
「はぁ〜……やれやれ」
 
服を脱ぎながら、○○は深くため息を付いた。
今日は大変な一日だった。
朝も夜もリリーに迫られ、その度に絶頂を迎えさせられて体力的に非常に辛い。
しかもそれは妖精としての本能という事も判明した。
 
「まあ、悪気がある訳じゃないのは分かるんだけどな……」
 
むしろ悪気があってくれた方が突っぱねる良い口実にもなったのだが、それも望めない。
 
「とにかくさっさと入るか……」
 
服をすべて脱ぎ終えた○○は、風呂場の戸を開けた。
 
「うう、寒っ」
 
戸を開けた瞬間ひんやりとした空気が○○の身体を包み込み、思わず身がすくみ上がる。
風呂の蓋を開けると、中に溜まっていた湯気が一気に立ち上った。
湯に手を入れてみると非常に温かく、丁度良い湯加減だった。
 
「流石リリー、俺の好きな湯加減をよく分かってる」
 
一人でニヤニヤしながら○○は桶で湯を掬い、頭から被った。
そのまま椅子に座ると、手拭いを濡らして石鹸を擦り付ける。
しばらくすると泡が立ち始めた。
○○の考えとしては、とにかく身体を洗ってしまっていつでも風呂を出れる状態になろうという事だった。
そうすれば不測の事態に陥った時でも撤退する事が出来る。
それに以前、リリーに身体を洗われると同時に色々と恥ずかしい事をされた前科もあったので、それを避けたいというのもあった。
我ながら完璧な作戦だ、○○は心の中で一人ほくそ笑んだ。
 
「○○さ〜ん、湯加減どうですか〜?」
「――!?あ、ああ大丈夫だ。丁度良い湯加減だぞ」
 
不意に入り口からリリーの声がした。
思わずビクリとしたが、すぐに平静を装い声を返した。
ここで慌ててしまってはボロが出る可能性がある。
とにかく努めて平静に、いつも通りにを心掛ける。
 
「良かったです〜。……じゃあ」
 
その言葉を聞いて、○○は直感で危機を察した。
今までの経験や推測から導き出された防衛本能。
○○は思わず何かを言おうとした。
だが、間に合わない。
後ろで戸が開く音。
 
「じゃあ、リリーも一緒に入りますね〜」
 
タオルで身体の前を隠したリリーが風呂場に入ってきた。
勿論服は何も着ていない。
 
「い、いきなりどうしたんだよ?」
「んふふ〜、たまには○○さんと一緒にお風呂に入ろうかな〜って」
「お前さっきまで食器洗ってなかったか?」
「ああ、あれは別に後でも出来ますよ〜。お風呂を出たらちゃんと洗うから安心してください〜」
 
リリーは楽しそうに笑いながら言う。
だが今は彼女に背を向けて身体を洗っているため、その表情を伺う事は出来ない。
 
(くそ、想定外だ……!!)
 
○○は心の中で一人悪態を付く。
正直リリーが風呂場へ乱入してくる事は想像が付いていた。
だが、それは食器の洗浄を終えてから来るとばかり思い込んでしまっていた。
それならば風呂場に乱入してきた頃には自分は身体を洗い終え、湯船でゆっくりと温まった後でそのまま湯を上がれば違和感も問題も無いと考えていたのだ。
だがこうなってしまっては、身体を洗い終えた直後に風呂場から出るというのは違和感のある状態となってしまった。
 
(落ち着け、落ち着くんだ俺……)
 
身体を洗いながら平静を装い、○○は必死に思考を巡らす。
とにかくこうなってしまったからには一度鉄火場を潜らざるを得ない。
平常心だ、と心の中で唱えながら○○は湯で泡を流した。
――正直その平常心が役になった所は一度も無いのだが。
泡を洗い流し切った○○は立ち上がると、湯船の方へと向かう。
既にリリーは湯船に浸かっており、嬉しそうに鼻歌を歌っている。
湯船の側で○○が立っていると、リリーは不思議そうな顔を向けてきた。
 
「どうしたんですか〜?一緒に入りましょうよ〜」
 
どうやら、入れ替わりで出るつもりは無いらしい。
このまま側に立っていると嫌でも揺らめくリリーの裸体が目に飛び込んできてしまう。
なるべく考えないようにはしているつもりだが、いつ自分の中に一瞬でも邪な感情か生まれるかも分からない。
 
(ええい、ままよ!)
 
覚悟を決めた○○は、ゆっくりと足から湯船に身体を沈めていく。
温かい湯が非常に心地良い。
思わずため息が出た。
ほぼ冬と言って良いこの季節に入る風呂はやはり格別だった。
このまま身も心もリラックスさせたい所だが、今の状況がそれを許してくれない。
今目の前には裸のリリーがいるのだ。
裸の男と女が接近したら、連想する事はほぼほぼ決まってくる。
しかも、○○の家の風呂はお世辞にも大きいとは言えない。
必然的にリリーとは近い距離にいる事になる。
だからこの状況は非常に危ない。
 
(一度風呂から出てくれれば良いんだが……)
 
身体を洗う為等でとにかく一度湯船から出てくれれば、こちらも風呂からでも違和感の無い状況が作れる。
 
(とにかくその時が来るまで待つしかないな……)
 
そう決めた○○は目を閉じ、ゆっくりと上を向いた。
そのままゆっくりと深く息を吐く。
これは○○の疲れたフリであった。
目を閉じる事で視界を遮断し、邪な考えが頭を過ぎらないようにする為である。
疲れた様に見せかければずっとこの状態でいる事にも説得力が出る。
あとはリリーが湯船を出るのを待つだけだ。
 
「〜〜♪」
 
だが、リリーは一向にその気配を見せなかった。
上機嫌に鼻歌を歌い、手で肩に湯を掛けて腕をゆっくりと擦る。
その度にチャプチャプと水音が立った。
そんな状況が少し続いた。
相変わらず○○は目を瞑って天井を仰いでいる。
最初は目を瞑りつつも気を張っていた○○だったが、膠着した状況と湯の心地良さのせいか徐々に弛緩していく。
そしてその弛緩が○○の緊張感を一瞬だけだが途切れさせてしまった。
不意に先程までより少し大きい水音が立った。
 
(ん……出るのか?)
 
緊張感が切れていた○○は不用意に目を開けてしまった。
その瞬間、ほんの少しだけ甘ったるい様な匂いを感じた気がした。
目を開けると、眼前にはリリーの顔があった。
吐息が混じりそうな程である。
リリーが熱っぽい吐息を吐く。
それは○○の鼻をくすぐり、甘いような匂いを感じさせる。
 
「……うぁ!?」
 
ようやく○○は今の状況を理解した。
面白いほどに腕がビクリと跳ね、湯船の淵を掴んだ。
○○の狼狽ぶりが可笑しかったのか、リリーはクスクスと笑った。
 
(ヤバいッ、これはヤバイ!!)
 
咄嗟に身体を起こして湯船から出ようとする。
だが、それはあまりにも遅すぎた。
 
「リ、リリー待っ、んむっ!?」
 
それよりも早く、リリーが○○の唇に自身の唇を重ねた。
リリーは軽く○○の唇を吸うと、自身のそれで○○のそれを挟んだ。
挟んで軽く啄み、舌先でチロチロと舐る。
柔らかで幸せな感触。
その感触に無意識の内に夢中になる。
するとリリーが舌を○○の咥内へと差し入れてきた。
唇の裏側を軽く舐め、○○の舌と軽く絡ませる。
そんな事をされて我慢出来る筈が無かった。
○○は自ら舌を突き出し、リリーのそれと絡め始めた。
 
「はむ、ん、んん、ちゅ、ちゅる、んぷ、ぷぁ、じゅる、んぐ……」
 
舌に唾液を塗し、どちらからともなく互いの唾液を啜り求め合う。
時折漏れる熱を帯びた苦しげな呼吸が二人の興奮をより誘った。
 
(ああぁ……このキスは、ダメだ……)
 
これ以上はいけない、それは自分でも分かっている。
だが、それでもこの濃厚なキスを止める事は出来なかった。
自分でも思考を蕩かされ、削ぎ落されていっているのが自覚出来た。
いや、むしろ元々止める気など無かったのかもしれない。
その時、リリーが身体を密着させてきた。
○○の胸板にリリーの豊満な胸が押し付けられ、むにゅりと形を変える。
その柔らかな感触は、キスに没頭していても分かった。
興奮が昂り、あっという間に○○の肉棒は臨戦態勢となる。
勿論それを見逃すリリーでは無い。
上半身だけでは無く、下半身も○○の身体へ密着させていく。
もっと具体的に言えば○○の下腹部と自身の腹部を。
○○の肉棒に腹部を押し付ける。
 
「んんぅ……!」
 
怒張した肉棒を圧迫され、その快感に思わず呻く。
返ってくる感触も柔らかくすべすべしていて心地が良い。
その反応に気を良くしたリリーは軽く体を捩り、腹部を肉棒へと擦り付ける。
思わず腰が勝手に動いてしまう。
リリーの腹部に更に擦り付ける事でより快感を得ようとしてしまう。
 
「ちゅっ……ふふ、凄く元気ですね……」
 
口付けを止め、顔を離したリリーはうっとりと呟いた。
今度は○○の頬に唇を付けた。
そのまま軽く音を立てて吸い付きながら、徐々に○○の耳に向かって滑らせていく。
不意にリリーが○○の耳たぶを啄んだ。
 
「ひぁ……!?」
 
突然の刺激に、○○は悲鳴のような声を上げた。
耳たぶを啄んだリリーは、軽くしゃぶりながら舌で刺激する。
やがて刺激する場所を徐々に変えていく。
しゃぶる事でわざとらしく弾けるような水音を立て、時折漏れる吐息は露骨なまでに○○の耳をくすぐる。
しばらくそれを続けると、リリーは満足したのか耳から口を離した。
そして唇を耳と触れるか触れないかという所まで近づけて、囁いた。
 
「……リリーと、えっち、したいですか……?」
 
思わず鳥肌が立った。
その囁きは耳の近くで発せられたにも関わらず、ほんの僅かに聞き取れる程度の物である。
だが、今の○○にはそれで充分だった。
甘く蕩けるようなその囁きの意味は理性が解するよりも早く、本能で理解した。
躰がずっとその言葉を待っていた、ずっとその行為を待ち望んでいたのだ。
分かりやすく言葉を区切り区切りにされた事で、否応が無く意味を認識させられる。
無意識の内に身体がビクリと震え、心臓の鼓動が早くなった。
肉棒が痛いほどに張りつめ、リリーの腹を押し返さんとばかりに硬く反り返る。
渇望している刺激を求めてビクビクと震えた。
もう、我慢の限界だった。
○○はガクガクと頭を振る。
もう何でも良いから早く頼む、とでも言いたげだった。
○○の意思を確認したリリーは、ゆっくりと身体を離す。
彼の目を見つめ、唇を舌でペロリと軽く舐めた。
目は欲情で潤んでおり、熱を帯びているのが分かった。
その目で射抜かれ、○○は理解した。
ああ、俺は喰われるんだ――と。
リリーが腰を浮かせ、怒張した○○の肉棒を握った。
そのまま向きを調整し、先端をリリーの秘所へと充てがった。
いよいよ待ち望んだ快感が来る。
○○は固唾を飲んでその瞬間を期待する。
 
「それじゃあ、挿れますね〜……」
 
そう言うと、リリーは腰を下ろし始めた。
○○の肉棒が徐々にリリーの秘所へと飲み込まれていく。
風呂の湯の中にいるというのに、リリーの膣内はそれ以上に熱く感じられた。
奥に突き進むと、進んだだけ膣内の襞が○○の亀頭を迎えた。
まるで意思を持っているかのように襞が亀頭に絡みつき、膣全体が収縮する事によって肉棒を刺激する。
待ちに待った快感に、○○は歯を食いしばり獣の様に低く唸った。
だが、快感を感じているのは○○だけでは無い。
 
「は、あ、あぁぁ……」
 
苦しげながら、どこか悦に入ったような吐息をリリーが漏らす。
硬く反り返った○○の肉棒が膣内に擦れ、快感が生まれる。
まるでリリーの膣内を抉らんとせんばかりだ。
あまりの快感の為か、リリーの躰が前屈みに曲がっていく。
それでも腰を下ろし続け、やがて○○の肉棒を完全に秘所へと飲み込んだ。
○○の双肩に手を掛けて躰を支え、ハアハアと荒い息を付く。
 
「全部、入りましたぁ……」
 
リリーが顔を上げ、微笑んだ。
興奮の為かもしくは嬉しさの為か彼女の目は潤み、涙を湛えていた。
そんな表情がとても愛おしく思え、○○はリリーの躰をしっかりと抱き寄せた。
その圧迫感と抱きしめられた幸福感が心地良かったのか、リリーは気持ち良さげに息を吐く。
 
「それじゃあ、動き、ますね……んっ」
 
リリーはそう言うと、腰を少しずつ動かし始めた。
ゆっくりと腰を上げていく。
勿論その過程にも快感は発生する。
先程は亀頭を誘い込む様に絡みついてきた膣襞は今度は出て行かせないとばかりに絡みつき、雁を刺激してくる。
やがて肉棒が完全に抜けてしまいそうな所まで腰を上げたリリーは、再び腰を下ろしていく。
 
「んんっ、はぁ、あぁ、あっ、はぁ、あんっ、んっ」
 
腰を動かし、全身に快感が駆け巡る度にリリーの口から嬌声が漏れる。
風呂場なので、その嬌声は反響して増幅される。
否応なく頭をかき乱す嬌声、胸に押し付けられる柔らかい乳房の感触、抱きしめた手から伝わる躰の柔らかさ、そして股間に与えられ続ける凄まじい快楽。
その全てが○○の興奮を煽り、躰を昂らせていく。
やがて、その興奮が腰の辺りに集中し始めた。
無意識の内に腰がひくつき、手足に力が入る。
限界がもう近いのを、○○は悟った。
 
「リ、リー……そろそ、ろ……!!」
 
漏れそうになる呻き声を必死に押し込め、リリーに限界が近い事を拙いながらも伝える。
それに応えるかの様にリリーは○○の首へ腕を回し、首元に顔を埋めた。
 
「良いです、よ……!!私も、もう、んぁっ……!!」
 
リリーも限界が近いようだ。
それを代弁するかの様に膣内が先程以上に収縮して蠢き、○○の肉棒を圧迫する。
まるで彼の精液を一滴たりとも逃さず全て搾取しようとするかのようだ。
我慢出来なくなった○○は、自らも腰を動かし始めた。
背中に回して抱きしめていた両手を臀部の辺りに滑らせ、リリーの躰がずれない様にしっかりと固定する。
そのまま勢いよく腰を突き上げた。
 
「ひぅっ!!」
 
突如訪れたあまりの快感に、リリーの口から悲鳴にも似た啼き声が漏れた。
一瞬躰を震わせ動きを止めたリリーであったが、すぐにまた上下運動を再開した。
快楽を貪りたいのはこちらだけでは無いらしい。
そこからは二人とも無我夢中で快楽を求め合った。
どちらかが腰を引けば、もう一方がそれを追いかけて腰を押し付ける。
あまりの動きの激しさに湯面に波が立ち、湯船からあふれ出る。
そして、その瞬間は訪れた。
 
「イっ、クぅ……!!」
 
同時に○○はリリーの膣内へと精を放った。
全身を駆け巡る絶大な快楽。
思わず息が詰まり、目が眩む。
 
「んんああぁぁっ――!!」
 
リリーもまたその瞬間、絶頂を迎えた。
津波のような快感が打ち寄せ、思わず意識が連れ去られそうになる。
それに必死に抵抗するかの様にリリーは○○の首に回した腕に力を入れ、思い切り抱き着いた。
その小さな躰では受けきれなかった快楽が漏れ出るかのように、リリーは啼き続けた。
そんな状況でも彼女の膣内は妖しく蠢き続け、○○の肉棒を刺激し続ける。
もっともっとと催促しているようでもあり、全てを搾り取る為に強請っているようでもあった。
射精して敏感になっている状態でそんな事をされた○○は堪った物では無い。
情けなく喘ぎながらリリーに出せる限りの精液を献上する羽目となる。
快楽の津波に翻弄されていたリリーであったが、やがてその波も惹き始めたらしい。
徐々に躰の痙攣が収まり始め、四肢の強張りが解け始めた。
そこになってようやく肉棒から搾り取ってやろうと蠢いていた膣の動きも落ち着き始める。
ようやく肉棒が解放された○○は、脱力したかの様に天を仰いだ。
口を大きく開け、ぜえぜえと荒い呼吸をして不足した酸素を取り込もうとする。
今の○○には指一本動かすのですら億劫に思えた。
 
「はぁー……○○さぁん……」
 
リリーが甘えたような声を出す。
身体に力が入るようになったリリーは再び○○の身体へと抱き着く。
甘える様に○○の胸板に顔を擦り付け、安心したかの様な息を吐いた。
安らぎを感じているのかもしれない。
 
「えへへ、凄く気持ち良かったですよ〜……」
 
状況が状況ならここから男女の甘い睦言の会話が交わされるのだろう。
だが、今の○○が思うのはこれだけであった。
何も考えたくない、と――。
 
 
 
「つ、疲れ、た……」
 
布団にうつ伏せで突っ伏したまま、○○は呻くように声を漏らした。
あの後疲労困憊状態になった○○は、リリーを風呂場に残してなんとか出てくる事が出来た。
寝巻に着替え布団を敷いた彼はもう限界で、そのまま倒れ込む様に布団に横になったのだ。
 
「なんで風呂に入ったのに疲れてるんだよ俺……」
 
思わず弱音が滲み出る。
結局今回も流されるままにリリーとまぐわう事となってしまった。
どんなに策を弄して思考を巡らしても、彼女の能力と彼女自身の魅力で『その気』にさせられてしまう。
事実上リリーの誘惑を躱すのは無理なのかもしれない。
 
「……明日、永遠亭の薬師に何か良い薬でも貰うか」
 
避けられないのなら自身の精力を補うしかもはや方法が無かった。
このまま何も対策を応じなければ間違いなく自分の身体が限界を迎えると分かったからだ。
頭の中で明日の予定を立てていると、リリーが風呂場の方から出てきた。
 
「はぁ〜、いいお湯でした〜」
 
入浴を満喫してきたようだ。
心なしか肌がいつもよりつやつやしている様に見える。
 
「あーリリー、悪いけど俺もう寝るわ。寝る時になったら灯りを消してくれ
「は〜い、分かりましたよ〜」
 
もう四肢の一本、指の一本を動かすのすら億劫に感じられる疲労感だ。
まさに精根尽き果てたという表現が合う。
何もしたくないし、動きたくも無い。
とにかく今日はもう寝てしまおう。
流石に夢の中までもリリーは追ってこないだろう。
それこそ夢魔でも無い限りは。
この疲労感だ、きっと泥の様にすぐに眠れる事だろう。
そう思い○○は全身を限りなく脱力し、目を閉じた。
程無くして彼の意識は切れるかと思われたが――。
 
(寝、寝れん……)
 
人間、疲労があまりに蓄積してしまうと却って眠れなくなってしまうものらしい。
かと言って他にどうする事も出来ないので、ひたすらに目を瞑って眠気に意識を奪われるのを待つしか無かった。
 
「ふわぁ〜……リリーも寝ますね〜」
 
一つ欠伸をして、リリーが言った。
その言葉の後、視界が暗くなる。
どうやら灯りを消したらしい。
一瞬にして部屋が暗闇に支配される。
窓から差す淡い月明りだけが残された光だった。
リリーがゆっくりと布団が敷いてある場所に近づく。
そして彼女は布団の中へと潜り込んだ。
――○○の布団に。
 
「なあ、リリー」
「なんですか〜?」
「お前の布団、あっち」
「知ってますよ〜」
「じゃあなんでこっち入ってんだよ……」
「一緒に寝た方があったかいからですよ〜」
 
正しく暖簾に腕押し、糠に釘。
このまま問い続けた所でふわふわと問い掛けを躱し続けるだろう。
どうやら自分の布団で寝る気は全く無いようだ。
○○はもう既に諦めていた。
なんとなくこうなるだろうという予感めいた物を感じていたのかもしれない。
一つ大きな息を吐くと、○○はリリーに背を向ける様に寝相を変えた。
間違いなくリリーはこちらに対して何かしらのアプローチを掛けてくるだろう。
それをとにかく無視する。
無視して寝込む。
この行動は○○のその決意の表れであった。
程無くしてリリーが背中に抱き着いてきた。
柔らかい何かが押し付けられ、無意識の内に意識がそちらに向かってしまう。
 
「えへへ、○○さんあったかいですね〜……」
 
リリーが嬉しそうに笑う。
○○は微動だにしない。
今度は脚を絡めてきた。
背中だけでなく、全身の至る所でリリーの柔らかさを意識させられる事になる。
更に今度は手を身体の前へと回してきた。
そしてゆっくりと○○の身体を擦り始める。
その動きはどう考えても暖を取るためのものではなく、女が男を誘っている際のそれであった。
 
「んっ、はぁ、あぁ、んん、んぁ……」
 
それを裏付けるかのようにリリーは○○の耳元に顔を近づけ、艶っぽい声を出す。
もはや疑いようが無かった。
今回もリリーはこちらを誘惑してきている。
だが、ここまでしてきているのにも関わらず○○の性器には一切触れる気配が無い。
触ろうと思えば今までの様に○○の性器を直接刺激して襲う事も出来るというのにだ。
 
(つまり俺から襲うようにけしかけようってか?)
 
○○を誘惑し、間接的な快感を与え続ける事で我慢出来なくなった○○に自分を襲わせようという事らしい。
こんな挑発に乗ってしまったらそれこそリリーの思うつぼである。
だから○○はそれでも無視する事にした。
だが、その時間が一分、五分、十分と過ぎても一向に眠れなかった。
それどころか○○の肉棒は既に戦闘態勢へと入ってしまっていた。
あれだけの事を長時間されて、むしろこうならない方がおかしい。
まさに男にとって拷問の様な時間である。
次第に○○の中で苛立ちに似た怒りの感情が沸々と生まれ始めた。
 
(なんだって俺はこんな状況になってんだよ……!)
 
冷静に考えればその怒りは八つ当たりの類のものだ。
だが、今の○○は八つ当たりでもして自己正当していなければやっていられなかった。
思えば今日という一日はずっとリリーに良い様にされていた。
ありとあらゆる誘惑で迫り、情事をねだってくる。
そしてその誘惑に全て屈してしまった。
改めて考えると男として非常に情けない。
何か一矢を報いてやりたかった。
それは男のプライドや誇りの為でもある。
 
(もしかして、今がそのチャンスか?)
 
ふと、今の状況を思い返す。
まさに反撃にもってこいの状況だ。
向こうがこちらから襲うようにけしかけているのだ。
なら、敢えてその誘いに乗ってやろうではないか。
死中に活あり、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある。
ここでリリーを情け容赦なく犯す事で一矢報いる事も出来るし、あわよくばそれで体力を使わせて大人しくさせる事も出来るかもしれない。
これだ、いやこれしかない。
平穏に明日という日を迎える為にはもはやこの手段しか無かった。
疲労が蓄積した肉体に喝を入れる。
今が勝負所だ、と。
身体を突如捻り、リリーと対面する。
突然の事で呆けたような顔をしている彼女の表情を見て、○○は内心でほくそ笑んだ。
間髪入れずにリリーの肩を掴むと、そのままぐいっと押した。
 
「ひゃぁん」
 
悲鳴というにはあまりに悦びの色を含んだ声をリリーが上げた。
あっという間に○○はリリーを組み伏せる。
両手首を掴み、布団へと押し付けて動きを封じる。
もっとも、リリーに抵抗する気など無かっただろうが。
 
「こいつ……もう我慢出来ねぇ……!!」
 
荒い息を吐きながら○○は笑う。
口角がにいぃ、と吊り上がり歯が露わになる。
さながらそれは獣が相手を威嚇する時の様でもあった。
傍から見たら悪漢が幼気な少女を強姦しようとしている風にも見えただろう。
 
「○○さん、怖いですよぉ〜」
 
そうは言っているがまるで怖がっている様子では無い。
むしろこれから自分にされる行為に期待して頬が緩み、目が爛々と輝いていた。
その余裕ぶりがますます○○を苛立たせる。
この雌を屈服させたい、啼かせたい。
雄としての本能が自分の中で渦巻いているのが分かった。
 
「そうかよ……!!」
 
だから○○は――。
 
「だったら望み通りにしてやるよ……!!」
 
――本能に身を任せた。
 
「んむっ!?ん、んぐ、ちゅ、じゅる、ぐちゅ、じゅぷ……」
 
○○は乱暴にリリーへ口付けをした。
恋人同士がするような優しいものでは無い。
それこそ男が女を強姦する時のような荒々しいものだ。
床に押し付けるかのように唇を押し当てる。
そして、リリーの咥内へ舌を侵入させ凌辱する。
そこには彼女の意思など一切無い。
あるのはただただ相手を屈服させたいという○○の支配欲だけだ。
リリーが抵抗するように四肢でもがこうとする。
それを抑え込みどちらが上なのか、どちらが主導権を握っているのかを分からせるかの様に暴力的な口付けを続ける。
○○は舌を伝わらせて唾液を流し込んだ。
リリーはそれを受容した。
咥内を凌辱されながらも流し込まれた唾液を少しずつ飲み下していく。
飲み込む度に、リリーの躰が小さく震えた。
その様子を見て、○○の充足感が少しだけ満たされた。
だが、まだ足りない。
こんなものでは○○の心は満たされなかった。
もっと完全にリリーを支配しなければ気が済みそうも無かった。
となればやる事は一つしかない。
○○が口を離す。。
先程まで絡み合っていた舌同士に銀色の糸が架かった。
二人は不足した酸素を取り込む様に荒い呼吸を繰り返す。
ずっと掴んで拘束していたリリーの両手を解放してやる。
案の定、リリーは抵抗の様子を見せなかった。
力無く投げ出された四肢、上気した頬、艶めかしい呼吸、とろんとした瞳。
どれもが官能的な雰囲気を醸し出していた。
思わず○○は下卑た笑みを浮かべた。
くっくっと引き攣る様な笑い声が漏れる。
 
「○○さぁん……」
 
リリーが甘えたような声を出す。
表情を見ると、完全に快楽によって蕩け切っていた。
とろんとした瞳でこちらを見つめてくる。
その表情は完全に雌の表情であった。
雄を誘う為、雄の欲情を煽る為の表情。
ゾクリとした感覚が背筋走った。
思わず唾を飲み込み、息が荒くなる。
もう我慢出来なかった。
○○は上体を起こして、少し後ろに重心をずらす。
そしてリリーの両太もも辺りを掴むと、ぐいと股を開かせた。
 
「あぁ……」
 
リリーが何かを期待するような吐息を漏らした。
就寝時には下着を付けていないのか、遮るものは何もない。
彼女の割れ目は既に十分に濡れていた。
それを確認した○○は、着ていた寝巻を脱ぎ捨てた。
これから行う行為に衣服など意味を成さないからだ。
赤黒く怒張した肉棒をリリーの秘所へ軽く押し当てる。
くちゅり、といやらしい音が鳴った。
準備は完全に整った。
 
「……いくぞ」
 
その問い掛けに果たして意味はあったのだろうか?
返答も待たずに○○は肉棒を一気に突き入れた。
 
「んあぁっ!!」
「ぐっ……!!」
 
リリーが喘ぎ声、○○が呻き声を漏らした。
だが、その何れかも与えられた快楽によって漏れたという事は間違いなかった。
リリーの膣内は熱く、そして柔らかかった。
にも関わらず膣壁がきゅうきゅうと締め付けてきて、襞がまとわりついて刺激してくる。
このままでも凄まじい快感だ。
だが、こんなものでは満足出来ない。
○○は上体を再び倒し、リリーに覆い被さる形になる。
腰を動かしゆっくりと肉棒を引き抜いていく。
その際にも襞が逃がすまいと絡みついて来て快感が○○に走った。
思わず腰が砕けそうになる。
風呂場の時とは違う体位だからか、その感覚も少し違って思えた。
また押し込み、引き抜く。
そして、徐々にその速度を上げていく。
結合部からグチュグチュといやらしい水音が立ち始める。
 
「あん、あ、○○さ、き、気持ち良い、ですよぉ……!!」
「ああ、そうかよ……!!」
 
次第にお互い声を抑えられなくなっていく。
リリーが腕を○○の脇下から胴体に回し、脚で腰を挟んだ。
それに応えるかの様に○○は必死に腰を振って犯す。
口を大きく開いて必死に呼吸する。
全身に汗が滲み、だらしなく開かれた口から唾液が垂れる。
一度腰を振る度に脳を焼き切るような快感が走る。
だが、それは一瞬。
またその快楽が欲しくなる。
一度水を吸った砂地の様にすぐに新たな快楽を躰が渇望する。
だから必死に腰を振る。
いや、振らされるという方が正しかった。
○○が気付かない内にリリーはまた能力を発現させていた。
今までの○○の攻撃的な気性も全てその能力によるものだったのだ。
全てはリリーの掌の上、全ては彼女の思惑通り。
だが、○○だけが気付かない。
いや、気付けない。
これらの行動は全て自分の意思によって行っていると思っているからだ。
もはや今の彼に与えられた自由は必死に腰を振る事だけだった。
パンパンと肉がぶつかり合う音が響く。
もはや二人の間に会話らしい会話は無かった。
お互いに喘ぎ、呻き、啼き、慄き、震えるだけである。
そしてその時は近づきつつあった。
迫りつつある絶頂を察知してか、躰が痙攣し始める。
 
「○、○……さっ……」
 
リリーが何か言葉を紡いだ。
彼女の顔は汗や涙、涎でグチャグチャになっていた。
見ると幸せそうな、しかしどこか苦しげで泣きそうな表情をしていた。
どうやらリリーも限界が近そうだ。
喘ぎ声と引き攣る様な呼吸を我慢して、リリーが唇を動かして何かを伝えようとする。
 
キ、テ――。
 
その瞬間○○は理性を完全に捨てきった。
野犬の様に腰を振る。
もはやそれは性交という生易しいものでは無かった。
正しく獣同士が生存本能のみで行う交尾と形容するのが正しかった。
もはや自分でも何が何やら分からない。
分かるのは全身に感じる快感と、何かが来る感覚だけだ。
 
「リ、リー……リリー……!!」
 
無意識の内にその名を呼んでいた。
それが聞こえたのか、リリーが○○を抱きしめている腕と脚に力が入った。
それは決して逃さないという意思の表明だったのかもしれない。
 
「○○さん……○○さ、ぁん……!!」
 
リリーも○○の名を呼ぶ。
互いに名を呼び合うたびに愛しさが心の中に溢れる。
それは二人を押し上げていく。
そして、その瞬間は訪れた――。
 
「あ、あ、ああああぁぁぁ――!!」
 
先にリリーが絶頂を迎えた。
躰を蹂躙する快感に耐えるかの様に、必死に○○へしがみ付く。
絶頂に伴い、膣内が強烈に収縮する。
今の○○にその刺激を耐え切れる訳が無かった。
 
「ぐ、うううぅぅ……!!」
 
為す術も無く、○○も絶頂を迎えさせられる。
肉棒が脈動し、リリーの膣内へと精液を何度も吐き出す。
吐き出す度に全身を快感が襲い、躰が慄いた。
我慢しきれずに思わず喘ぎ声が漏れる。
やがて、打ち寄せる快感の波が引いていく。
後に残るのは、どうしようもない程の疲労感と倦怠感。
疲労からか、全身が震える。
これ以上、自分の身体を支えるのは無理であった。
リリーの身体の横に突いていた腕が崩れる。
支えを失った○○の身体はそのままリリーの身体の上へと圧し掛かる様に倒れ込んだ。
避けようと思ったが、それも無理であった。
リリーの胸の谷間に顔を埋める。
そこを目指してしまったのは、最後まで残った男としての本能があったからかもしれない。
顔が柔らかく温かい二つの膨らみに包まれる。
とても心地が良い。
流石にもう欲情はしなかった。
その感触に癒されたのか、先程まで影を潜めていた睡魔が一気に襲ってきた。
 
「悪い、リリー……もう、限界、だ……」
 
自然に降りてくる瞼に抵抗が出来ず、ゆっくりを目を閉じていく。
不意に頭に手を置かれた。
そのままリリーはゆっくりと○○の頭を撫でる。
 
「良いですよ〜……ゆっくり休んでください……」
 
まるで幼子をあやすかのようにリリーが優しく喋る。
その心地良い感触に抵抗出来る訳が無かった。
徐々に意識が遠のいていく。
 
「おやすみなさい……」
 
そして○○はようやく意識を手放す事が出来た――。
 
 
 
その日、○○はある違和感で目が覚めた。
いや、圧迫感と言った方が正しいかもしれない。
無視するにはあまりにも大きすぎる違和感。
眠気を振り払い、重い瞼を無理やり開ける。
○○が最初に見た物はリリーだった。
 
「んっ、あっ、あんっ、あ、○○さ、おはよ、ございますっ……!!」
 
頭から掛け布団を被り、全裸で顔を蕩けさせて跳ねるリリーの姿を。
当然というべきか、朝起ちによって勃起した○○の肉棒を秘所に咥え込んでいる。
 
「――!?お、お前なにやって、うあ゛っ!?」
 
○○の抗議は、リリーが膣内を締め付けて与えた快感によって中断させられた。
突然の出来事による混乱と寝起きによる未完全な覚醒、そして与えられる快感によって○○の脳内思考はグチャグチャになっていた。
与えられる情報が多すぎて、脳が処理しきれない。
 
「んあっ、んふふ……今朝起きたらぁ、ぁん、○○さんのおちんちんが大きくなってたからぁ、スッキリさせてあげようと思ってぇ……」
「いやおかしいだろ!?なんでこうなるんだよ!?」
 
以前は寝起きに口淫される事もあったが、今回はそれ以上の異常な状況だ。
とにかくリリーを退かさねばと無理やり上体を起こそうとした。
 
「んあっ!?」
 
だが、○○に出来たのは情けない声を上げる事だけだった。
リリーが○○の乳首を指で摘まんだからだ。
摘まむだけでは無く、指先で転がし、引っ掻き、軽く抓って刺激してくる。
上半身と下半身に同時に与えられる快感に、○○はなす術も無く翻弄される。
 
「んっ……今○○さんのおちんちん、大きくなりました……ふふ、気持ち良いんですね〜……」
 
リリーが悪戯っぽい笑みを浮かべる。
まるで新しい遊びを見つけた童子のようだ。
立て続けに与えられる快感に、○○の反抗の心は早くも折られかけていた。
若干の諦めと共に、この状況を甘んじて受け入れ始めていた。
○○の反応を楽しんでいたリリーであったが、何か良い事を思い出したのか楽しそうに笑った。
 
「そういえば今日って、ん……○○さんお仕事、お休みでしたよね……?だから……」
 
リリーは○○の顔に自身のそれを近づける。
そして、嬉しそうな笑みを浮かべた。
 
「だから今日は……いっぱいえっち、出来ますね……」
 
快感に翻弄される○○がその言葉の意味を理解するのにほんの少し時間が掛かった。
少しの間の後、○○は言葉の意味を理解した。
背筋に冷や汗が流れ、一瞬にして脳が覚醒した。
確かに今日は仕事が休みだ。
という事はリリーと常に一緒に居るとほぼ同意義だと考えて良い。
つまり、常にリリーに襲われる可能性が同居する事となる。
というより、もう既に襲われてしまっている。
そんな事になってしまえばもう永遠亭の薬師に薬を注文しに行くどころの話でなくなる。
昨日でさえ精を抜かれ切ってあの疲労感に襲われたのだ。
今日一日になったらどうなってしまうのか……想像もしたくない。
○○の顔が快感ではなく、恐怖で引き攣る。
とにかく、逃げなければ。
生物としての生存本能が必死に警鐘を鳴らす。
 
「ま、待ったリリー!!ちょっと話を……あひぃ!?」
 
リリーの膣が○○の肉棒を締め付ける。
同時に行われる乳首への責め。
既に春を増幅され、性感が過敏になり始めていた○○にそれを耐える事など出来なかった。
リリーが嬉しそうに笑う。
天使の様な笑み。
だが、今の○○には悪魔の様な笑いにしか見えなかった。
 
「あ、あぁぁぁ……!!」
 
そして○○は、今日一度目となる絶頂をリリーの膣内で迎えた。
 
「んんっ……!!○○さんの春が一杯……でも、もっともっと欲しいです……」
 
リリーが快楽に蕩けた笑みを浮かべながら言った。
膣が再び収縮し、○○の肉棒を萎えさせる事を許さない。
 
「うわああぁぁぁぁ……」
 
そして、○○の冬の休日が今始まった。
 
 
 
幻想郷には春を告げる妖精がいる。
その妖精に春には近づいてはならない。
春が訪れた事により興奮しているからだ。
だが、冬にも気を付けなければならない。
何故なら冬にも彼女は春を求めているからだ。
愛する人の『春』を。
冬の春告精にはご用心。
幻想郷の春は、まだまだ遠い――。
 
「春ですよ〜」


メガリス Date:2015/12/26 16:32:12

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Posted by 春を告げる名無し 2016年07月01日(金) 21:43:38 返信

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