東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

「ほら、ちゃっちゃと脱いじゃってくださいよ」

自分が流されやすい人間だということは重々承知していたけれども。

「な、なぁ、射命丸さんや。やっぱり、これは……」

「ぼやぼやしない。女性を待たせるほうがよっぽど失礼ですよ?」

強い調子でたしなめられると、ここまで流されるものなんだろうか、などと我が事ながら呆れがでる。しかし、それでも言われた通り脱ぎ捨てていく当たりやはりそうなのだろう。付け加えれば、服に手をかける自身の手が震えているのも気に食わない。何せ、どう考えても武者震いとかそう言う質のものではないのだから。
……自分で言ってて悲しくなってきた。情けないにもほどがある。いや、情けないだけなら自己嫌悪で済むけれども、生憎ここにはそれだけでは済まさない嫌味な奴が一匹いるのだ。

「あやや? 〇〇さん? 手が震えていますよ?」

ふふふ、と質の悪い笑みを浮かべる、射命丸文とか言う鴉天狗がその原因だった。

「うるさい。仕方ないだろ」

「おお、こわいこわい」

一瞬だけ、目の前にいるのは実はきめぇ丸なんじゃないかという錯覚を覚えたので、努めて射命丸のことを無視しながら残った服も全て脱ぐ。無論、その間も手が小刻みに震えていたことは言うまでもない。
取り敢えずその難行を成し遂げたことをよしとしよう、そんな事をちらと考えたが、すぐに首を振った。いや、この難行を成し遂げた所で事態は少しも改善などしていない。寧ろ、悪化したような気がひしひしとする。

「……緊張するなとはいいませんが、緊張しすぎではありますよ? ね、もう少しリラックスして」

「………」

「〇〇さん?」

「……出来ると、思うか?」

「本当に経験ないんですねぇ」

「い、一々どうして人の癪に障るような事をだな……っ!」

本当に癪に障る鴉天狗だ。ムッと来た俺は思わず背を向けていた射命丸に振り向く。
……後に、よくよく考えてみれば、これは尋常ではない緊張を見せる俺に対しての、射命丸なりの気遣いだったのかもしれない。実際、一瞬とはいえ平静を取り戻しているのだし。
尤も、だとしたら手段が悪すぎたと言わざるを得ない。何せ、

「………」

「おーい、〇〇さーん? ……あ、あや、幾ら何でもここまでとは」

俺の視界に入ったのは、裸体を隠そうともせず晒している射命丸文の姿なのだったから。
その射命丸文はといえば、耐性なさすぎでしょうと固まる俺を呆れたように笑っている。
一体全体、何でこんな事になったんだろう、と俺は肩を落とし、天を仰いだ。……そこにあったのは天井だけだったけれども。









兎角、幻想郷に娯楽、それも人間用のそれは少ない。
理由は明白、外の世界のような電子機器や、サービス産業が発達するだけの経済力が幻想郷には存在しないからだ。もちろん、そんなのがそこら中に溢れかえっている幻想郷もどうかと思うが。
しかしながら、それにしたって娯楽が少なすぎる。人里でさえ、唯一の楽しみといえば稗田家やら寺子屋やらの蔵書の閲覧とか、或いは少し危険だが人里を出て釣りに行くくらいしか無いのだ。
ただ、それに不平不満を漏らすような人間は数少ない。当たり前だ。彼らにとってはこの娯楽の少なさが当たり前なのだ。だいたい、何だかんだで頭脳労働が主体の外の世界とは違い、幻想郷は未だに農業とかの肉体労働が大部分を占めているのだから、金はあるにせよ遊ぶ暇など無い。近代以前の、生活の中に遊びを見つける「古き良き日本」そのものの図だ。唯一、楽しく酒が呑める席でもあればいい、精々そのくらいだ。そのくらいであったから。

「……と、言う訳で射命丸さんや、暇で暇で仕方が無いんだよ」

「そんな事言ってる暇があったら、もっとネタでも拾ってきてください……あ、この情報詳しく」

「毎度あり……とは言ってもな」

外来人――守矢のところの早苗ちゃんとか、俺のような人種には非常に物足りないものがあったのだ。
まぁ、早苗ちゃんの方は妖怪退治っていう、彼女曰く「一度味わったらやめられない」遊びがあるそうだが。

「〇〇さんににだって、ネタ探しというこの上なく面白いものがあるじゃないですか」

「ネタ探しは仕事だ、お仕事。俺が欲しいのは娯楽、遊び呆けること」

そう言って椅子の背もたれにもたれかかる俺に、呆れたような視線が向けられた。

「……これでも、多分お前が想像してるよりは必死だったんだからな、俺も」

「……あれが必死じゃなかったら、他のどんな生命体もまず死ねませんよ」

ムスッとした顔で言ってやると、射命丸は神妙な顔をしてそう応えた。悪い気はしない。自分で言うのも何だが、あの頃は本気で必死だったのだ。
目が覚めたら異世界、なんて小説はザラに読んだことがあったけれども、まさか自分がなってしまうとはと呆然としていたのが今からたった三年ほど前の話である。
妖怪の襲撃に遭いながらも辛うじて博麗神社に逃げ込めた俺は、かの八雲の大妖に外来人なら誰でもされる質問、『帰りたいならどうぞ、居残りたいならご自由に、幻想郷はすべてを受け入れますわ』を聞いたときに、興味本位で思わず少し考えさせてと答えてしまった自分は、今思っても何を考えていたのかと思う。

「まぁでも、蓋を開けてみれば大成功だったしな。紫さんも、『もう好きにして……』と了承してくれたし」

「……あれは了承したのではなく、呆れてただけだと思いますが」

「そうか?」

「そうです!」

力説する射命丸。特におかしな事はしていないはずなのに、妙な天狗である。
確かに、面倒くさそうに俺をあしらった紫さんが冬眠した後、俺は下っ端な挙句知名度で言えば三流紙以下と言って何ら問題ない雑誌記者だった経験を生かし、幻想郷初の情報屋となるべく奮闘はした。
だが、それはあくまでも人里の情報交換やら天狗に面白そうなネタを売りつけるのに成功しただけで、特に呆れられるようなことはしていない。
強いて言えば、美味しい酒を萃香と勇儀に紹介してやった後、『もしかしたら春には外に帰るかも。全部紫さんの一存だし』と零したら何処かにすっ飛んでいったくらいか。あの日はその後群発地震が酷かったなぁ。博麗の巫女が出動したそうだし。

「ま、それはともかくとして……なぁ、何かそう言う娯楽情報って無い?」

何の役にも立たないかつての回想をやめた俺は、そういった訳で始めた情報屋の、一番のお得意様である射命丸にもう一度そう訊ねた。
一応客という分類になるこの鴉天狗は、何処か人間に対して傲慢なところのある他の鴉天狗と比べ、よほどの無礼を働かなければ寛容だった事が大きな理由となって、最近はもう単なる商売上の関係以上の間柄になった、少なくとも俺はそう自負していた。でなければ、新聞コンクール前などのよほど忙しい時期を除いて情報屋ごときにニ三時間も居座らないだろう。割りと値の張る茶まで要求されるのだ。
簡単にいえば悪友とでも称されるこの関係を、俺は割と気に入っていた。一緒に居て楽しい辺り、多分惚れてるんだろうなという自覚はあったが、だとしてもこの関係で十分だった。何せ、居心地がいいのだから。……外の世界に帰るのを蹴った理由の何割かも実はこのあたりが占めていたりするのだが、バレると恥ずかしいので絶対にこいつには言わない。

「持ってないですよ。そういうの、〇〇さんの方が詳しいでしょう? 情報屋なんですから」

言葉とは裏腹に、少し間をおいてから射命丸は口を尖らせた。どうやら少しはなにか無いかと考えてくれたらしい。素直じゃない天狗だ。

「いや、取りこぼしとかさ」

「ないない。天狗ですら見習いたくなるくらいの行動力持ってるくせに」

「ですよねー」

はぁ、と言うため息が俺の自室兼仕事部屋に満ちた。

「あーあ、幻想郷での生活に慣れたらなれたでこれだからな。高望みが過ぎると美化すべきか、飽きっぽいと卑下すべきか」

「……帰りたいですか? 外の世界へ」

俺は、思わず射命丸を見つめていた。下手な冗談でもきいたような顔になっていたかもしれない。何処と無く淋しげな射命丸の言葉を反芻した俺は、苦笑した。

「……いや、それはない」

「本当に?」

「一時の気の迷いで漸く軌道に乗った生活捨てるほど馬鹿じゃないから」

「……外の世界は捨てたくせに」

「あれは……あれはあれ、これはこれってやつだよ」

無論、帰らなかったのは先述の通りの理由だったから、凄まじくバツが悪い。頭を掻いて気分を紛らわせようとするが、寧ろ沈黙が際立ってしまった。射命丸も似たような思考によってわざとらしく茶を啜っていたが、こちらも特に効果なし。……気まずい。

「ふ、ふん、せめて風俗街の一つや二つでもあれば、まだ暇も紛れるんだがな!」

だから、こんな事を口走ったのは、気まずさ故に頭がおかしくなっていたのだと俺は信じたかった。

「……? 風俗? その土地土着の生活習慣とかしきたりとかの意味でしたっけ。それが何か?」

時間が止まったかのように思えた。いや、実際には俺の動きが止まっただけなのだけれども、いきなり背後に紅魔館のメイド長あたりが現れたって別に驚かない。寧ろ、お願いしてでも出てきて欲しかった。
尤も、例え彼女がここに居たとしても苦笑いしながらこう言うことだろう。曰く、さすがに時は戻せない、と。
変な汗が背中を流れるのを自覚する。ああ、そういえば、風俗なんて単語がいかがわしい商売を指すようになったの、戦後だったっけ? はは、少なくとも幻想郷で通じるわけ無いよな。

「……何でもない」

取り敢えず誤魔化す方向へ逃げるのも仕方のないことだと思う。同時に、どうあがいても目の前の鴉は食いついてくるんだろうなという確信も抱いたけれども。

「何ですか。気になるじゃないですか」

そら見ろ畜生。

「何でもないったら何でもない」

「ふむ、その反応を見るに、風俗という単語には外の世界で何やら面白そうな意味があるのでしょう。〇〇さん、その情報買いますから、売ってください!」

「売り物じゃない! と言うか、風俗の話題で売るとか買うとかは本気でやめてくれ!」

「それ、私の好奇心をますます刺激してるってことくらいわかりますよね?」

ですよねー。開いた口からはこんどこそ乾いた笑いしか出てこなかった。

「……風俗ってのは、外の世界では禁制になった薬の俗称で」

「あ、嘘は結構ですので」

「……無駄に勘が良いな」

「これでも新聞記者ですので」

打つ手など無かった。こちとら、「何馬鹿なこと言ってるんですかー!」といったノリを期待していたってのに。……下ねたなんて、言おうなんて思うべきじゃなかった。
ええい、ままよ!

「……その、だな。風俗ってのは」

「風俗ってのは?」

「あー……遊郭? それとも娼館とか女郎屋とか、その類の、まぁ、外の世界の隠語みたいなもんだよ」

「はぁ、しょうかん……しょうかん、娼館……娼館!?」

射命丸が、言葉の意味を理解したのか素っ頓狂な声を上げ、そのまま押し黙った。
気まずい沈黙なのは先ほどと同じだった。変わったことといえば、寧ろそれが悪化したことだけである。つまり、墓穴を掘ってしまった。
……まず、馬鹿な事を口走ったことを謝ろう。

「その、射命丸、すま」

「〇〇さんは!」

そんな俺の謝罪の言葉を遮ったのは、頬を少し赤く染めた射命丸だった。
有無を言わせぬ剣幕に押され、俺が思わず言葉を飲み込むと、射命丸は何処か落ち着かない様子で続けた。

「〇〇さんは、その、外に居た頃に、そう言う……風俗、でしたっけ、ともかくそんなお店によく行っていたんですか?」

妙に震えた声でそんな事が訊かれる。慌てて俺は首を横に振った。

「い、いや、風俗云々は冗談のつもりで言ったわけで、その、踏ん切りがつかなかったと言うか、まぁ、話に訊くぐらいで、行ったことは一度もない」

……正直、風俗というものはどうにも俺に合わなかった。
いや、もちろん実際に行為に及ぶのが怖いとか、どうにもそう言う店に入る勇気がないとか、理由は作れば色々とあるが、真実は単純明快、金のやり取りで女性を抱くという行為がどうにも腑に落ちなかったのだ。
我ながら潔癖症と言われても仕方のないことなのかもしれないが、生来の性癖なのだからどうしようもない。それに、それがさほど切実な問題ではなかったという点も大きい。その気になれば、ネットで二次・三次問わず画像でも漁ればいいだけの話なのだから。

「……本当ですか?」

ジト目で睨んでくる文。ここまで突っ込んでくる理由はわからないが、少なくとも俺を信用しているわけでは無いようだった。
むっとした俺は、必死に自分を信じろとアピールし……。

「本当だ! 俺だって確かに男だが、安易にそう言う店に入り浸るのがどんな結果を齎すかくらいはわかるし、外はそれこそその手の物は溢れてたからわざわざ風俗店なんかに行きたいとも思わなかったし、だいたいそんな決心ができるようだったら俺は未だに童貞なんかじゃない!」

……言ってからしまったと思った。どうにも、俺には学習能力というものが致命的に欠落しているらしい。

「………」

ぽかんとする射命丸。直後、顔が真っ赤になる。意外にも、そういった話に耐性が無いのだろうか?

「……デリカシーの無い男の人は嫌われますよ?」

「……ごめん」

返す言葉もない。
気づけば、射命丸の顔はすっかり平常に戻っていた。何か思案するように黙っている。
ああ、流石にこれは引かれたかな。今日はなんて厄日だ。俺が心のなかで自分の浅はかさに対し毒を吐いたその時だった。

「……――ですよ」

「……ん? 何か――」

「私がしてもあげても良いですよ、って言ったんです」

思考が止まる。
……おかしい。これは、文脈上、「性的なアレやこれ」をしても良いと言っているようにしか取れないのだが。

「お、おい、射命丸、何言って」

「皆まで言わせないでください」

慌てて問いただそうとするも、怒ったように射命丸に窘められ、黙らざるを得なかった。

「いや……だが……」

「ほら、うじうじしない。男でしょう?」

射命丸の顔がずいと近づけられる。吐息がかかる。

「無知蒙昧な人間を導くのは、何時の世も天狗の仕事ですから。それに、〇〇さんには何時もお世話になってますし。枕営業みたいなものですから。安心して、ね?」

好意を抱いている女性に、そんな事をさせるというのは、風俗店に行かない理由と同じ文脈で言語道断だったけれども。

「……ほら、返事は?」

「……はい」

全く同様の理由で、断るのは困難な話だった……。










「あやや」

どうしてこうなった、と過去の回想で現実逃避していた俺は、射命丸の悪戯気な声でその残念な現実へと引き戻された。

「……私の裸を見ただけで、こんなになっちゃったんですね」

いつの間にか――まぁ俺が放心していた間になのだが、すぐ横にまで来ていた射命丸は、ゆっくりと股間へと手を伸ばした。無論、そこには生理現象で不可抗力にも屹立してしまった俺の息子が居る。
つんつん、と興味深そうにつつかれるに至り、凄まじい快感が脳に流れ込んだ。

「ぐっ……」

「あ、あや、痛かったですか?」

俺の呻き声に、慌てて手を引っ込める射命丸。ああ、何だ、これを弁明するのは非常に情けなくて嫌なんだが……。

「あ、いや、痛いんじゃなくてだな、その……」

「……あぁ」

しどろもどろな俺の様子に、射命丸はふっと微笑むと、今度は慎重に、しかし迷いなくそそり立つペニスを手のひらで包んだ。
先ほどとは比にならない快感。思わず、敷かれている布団を握り締める。

「良いんですよ、我慢しないで。楽に、していてください……」

「くっ……俺にも、威厳って、奴が、だなっ…」

「無理とか虚勢とかも結構ですから……こんなに張っちゃって。苦しそうで見てられないんですよ……あ、先走りが出てきた」

結構どころか、虚勢を張る事すら無理だった。こちとら完全な初体験である。如何にも自身有りげな射命丸に、まともな反撃ができるとも解らなかった。……もういっそ、流れに身を任せてしまうほうが良いかもしれない。
そんな俺の思考を感じ取ったのか、これ幸いと徐々に手を動かし始める。怒張が優しく扱かれた。

「……しょ、どうですか、気持ちいい?」

「わかって、言ってるな?」

「バレましたか……っとと、反応が良くなって来ましたよ?」

嬉しそうに息子を弄る射命丸。だが、それと対照的に、俺の背には冷や汗が伝っていた。
いや、別に射命丸の愛撫が気持ちよくないわけじゃない。普段があんな、繊細さよりは大胆さを感じさせるような行動と言動からは想像できないような優しい愛撫は、それだけで極楽へ行きそうなほど気持良い。
そして、それが問題だった。
……やばい、出そう。
俺みたいなチェリーボーイ(笑)に、この刺激はきつすぎる。うん、きっとこれは愛撫だけのせいじゃない。「じゃあ準備しますね」なんて言いながら射命丸が風呂に入ったあたりから延々と興奮状態にあったこともきっと原因に違いない。……どっちにせよみっともないことには変わりないが。
だが、そんな俺の葛藤を知りもしないで、射命丸の愛撫の手はますます激しくなっていく。

「……ん、どうですかー?」

カウパー液が水音を立てる中、時折そんな事聞いてくる射命丸に、もう限界と必死に視線で伝えるも、そうですか気持ち良いですかとニンマリされてお終いである。

「ふふ……えいっ」

「ぐおっ」

遂に射命丸の手が陰嚢にまで伸びた。思わず出してしまった情けない呻きに、射命丸のやつは楽しげに表情を歪ませやがった。意地の悪いやつめ、そう毒づくも、それすらも現実逃避でしか無い。
……もう、限界か?

「……手だけ、というのも芸がありませんね」

そう覚悟を決めた瞬間に射命丸の手の感触がなくなって拍子抜けする。何だなんだと気になって射命丸の顔を覗き込み……俺は後悔した。もう、本当にいい笑顔を見せる射命丸の顔がそこにあったからだ。

「口でしてあげますよ」

そんな、とても素敵な死刑宣告を耳元で言うのはやめてくれ。
俺の思いも虚しく、うふふと笑った射命丸の顔が自分ですらここまで大きくなったことを見たことの無い怒張へと近づく。息がかかるたびに凄まじい快感が脳へと電気信号で送られてきた。
あ、これ、もうだめだわ。

「――はむっ」

亀頭が何か暖かい物に包まれ、熱くうねうねした物が押し付けられるのと、俺が射命丸の口内に白濁した液を放ったのはほぼ同時だった。

「んっ」

「す、すまん射命丸!」

目を瞑り、迸りを受け止める文に、射精が一段落して漸くいうことを聞くようになった身体に鞭打ってティッシュを探る、が。
……射命丸に、がっちりと腰を掴まれたせいで、身動きがとれない。

「ん……んく、んく」

あたふたと焦る俺を他所に、射命丸は精液が口から零れないようになのか上を向くと、少しばかり音を立てながらそれを飲み下す。少し涙目になっていた。無理もない。

「……無理して飲まなくても良かったのに」

「でも、こっちのほうが興奮するんでしょう?」

「………」

ぐうの音もでない。
そんな俺の反応に気を良くしたのか、射命丸は艶っぽく微笑むと、再び股間に顔を埋め、舌先で既に回復しつつあった肉竿をつつき出した。

「し、射命丸さん?」

「……あれです、お掃除フェラってやつです。じっとしててください」

じっとしてても何も、どの道こんなことをされれば逃れる気が失せてくる。
ぴちゃぴちゃと、恐らくは文の唾液だろうか、そんな水音と、射命丸が自分のものを綺麗にしているというシチュエーション。
第一、射命丸からしてただ「お掃除」するだけで事足りるわけではなく、一度出したからか先程よりかはましになったとはいえ、男性器から送られてくる快感も未だすごいもので。

「れろ、ぺろ、ちゅ……あやや〜、また大っきくなっちゃいましたよ、〇〇さんのここ」

怒張が再び現れた。

「ふふ、さっき出したばっかりなのに、元気ですね」

「……お前がしてくれてたからな」

恥ずかし紛れに、そんな事を言ってやる。紛れも無い本心だった。目の前の鴉なら、これも茶化すタネにしてくれるんだろうと。
ところが。

「………」

たっぷり十秒は固まる射命丸。

「……射命丸?」

「……うぇ!?」

あ、何かすごく新鮮な反応。

「そそそ、そうですとも! 何千年と積み重ねられてきた天狗の秘技なのです! このくらい当たり前なのです!」

「お、おう」

……いきなりどうしたんだ? 突如反応がおかしくなった文は訝しげに眺める。

「さ、さぁつぎです! これで終わったなんて、まさか思ってませんよね?」

ごほん、と咳払いを一つして射命丸は気を取り戻したかのようにそう宣言した。顔にはすぐに楽しげな笑みが戻る。ああ、またいいようにされるのか、と思わず肩が落ちる。妙な違和感は――まぁ、捨て置こう。

「今度は――これです」

そう強調するのは、射命丸の形の良い美乳だった。大きすぎず小さすぎずで悪く言おうとすれば中途半端なんて言葉が出てくるが、少なくとも俺はそんな事を思うつもりは全くない。寧ろ、時々いつの間にか邪な思いで見てしまっていたこともあるくらいである。
その、柔らかそうな胸をふにふにとつかんだ射命丸は、それを肉棒へと近づけてくる。ごくり、と息を飲み込む。

「……何するか、わかりますよね?」

「……パ、パイズリというやつか?」

「当たりです」

外の世界で、散々パソコンの画面越しには見たことのある行為。それが、今から為されるという。

「さて、期待してくれているらしいこの、……おちんちんを、包み込んであげましょう」

まさに遊女のような笑みで――実際俺は射命丸に遊女の真似事をしてもらっているわけだが――迫ってくる鴉天狗に思わず見とれていた俺は、息を飲んで双丘が肉竿を包むのを見守った。
刹那、柔らかく、そして張りのある感触がペニスを包み込んだ。思わず身悶えしそうになるのを抑えこむ。この世に極楽が現れたかのような心地に、再び必死に耐え無いと本当にやばい。先ほどの射精がなければ、この段階で暴発していただろう。
しかし油断は出来なかった。射命丸は俺の反応を見ながら嬉々として胸で肉棒を刺激し続けるのだろうから。男の沽券を守るため、覚悟を決め――

つるんっ。

「……へ」

「……あれ?」

極楽浄土の心地が何処かへ消え去ったことで、思わず拍子抜けした。

「……射命丸?」

「ちょ、ちょっと待っていてください! これはほんの小手調べですから!」

「そ、そうか」

「そうですとも!」

先ほど感じた違和感が、再び俺の中で鎌首をもたげて来た。……何だ? さっきとは打って変わったみたいに余裕がなくなって……。

「では、いざ!」

そんな疑念を打ち消すかのように大声を出しながら、射命丸は再びパイズリしようと胸を肉棒に押し当て、はさみ込むように――

つるん。

「……あれ、何で上手く出来ないの?」

えらく小さな声で、射命丸がそんな事を呟いたような気がした。

「……なぁ、おい、射命丸」

「大丈夫ですっ! 〇〇さんは力抜いてっ! 楽にしててください!」

俺の中の疑念が、巨大なものになってくる。……いや、だが、自分にこんな風にしてくれるということは、そんな事はあり得ないはずだ。絶対に、あり得るはずがない。

「大丈夫。冷静にやれば大丈夫……落ち着きなさい、射命丸文。冷静に、冷静に……」

はばかるように小さく呟く声が、しかし、徐々に静寂に包まれていく室内に響き渡った。――幸いというべきなのか、本人はそれに気づいていないようだったけれども。

「落ち着いて、包む、ように、すれば……」

つるん。

射命丸の何度目かの挑戦は、度重なる自身の愛撫で滑りが良くなった俺の逸物の所為もあって、またしても失敗した。その感覚自体は、とても心地よいものだったが……。

「射命丸」

「いえ! 別に、これは」

「……焦ってるな?」

「っ!!」

鴉の表情がこわばっていくのがすぐにわかった。普段はポーカーフェイスで押し通すこの鴉天狗のその反応だけで、まず間違いなく何かがおかしいという確信が湧いてくる。

「ち、違います!」

射命丸は怒鳴った。

「こ、これは、その、焦らしプレイです! ほ、ほら、その、と、殿方にも長くねっとり楽しんでもらうっていうのが天狗の房中術といいますか、そのですね!」

いや、怒鳴ると言うより、悲鳴といったほうが良かったかもしれない。
射命丸の声音から怒り以外の何かを敏感に感じ取れる。……ああ、怯えか。
訊いても満足に答えようともしない鴉天狗じゃ埒があかない。意を決した俺は、先程から頭の中を行ったりきたりしている、まずあり得ない、しかしそれ以外に合理的な回答があり得ない答えが果たして本当なのか確かめて見ることにした。……俺の馬鹿な勘違いでありますようにと願いながら。

「っ!? な、何を…ひぅ!」

射命丸の股間に手を伸ばすと、びっちょりと液体がついた。……経験がないのが本当に恨めしいが、知識によればまず間違いなく愛液で間違い無いだろう。恐る恐る視線をそこに移してみると、股間どころか太ももまでびっしょりと濡れている。もちろん、射命丸にされるがままだった俺が、反撃のような形でこいつを愛撫した記憶もない。
ああ、これは、本当に。
ごくりと息を飲む。どうせ、躊躇しても始まらないのだ、と自分に言い聞かせ、そして――

「や、やめ、やだ、やぁ!」

暴れる――力が抜けているらしく小娘以下のそれ程度だったが――射命丸を抑えつけた俺は、慎重に、本当に細心の注意を払って、綺麗なピンク色できつく絞めつけてくるこいつの秘所に指を挿入していき……

慌てて、指を引きぬいた。

射命丸の膣内の奥へと指を入れようとした瞬間俺に襲いかかったのは異常なまでの抵抗だった。そして、こいつのこの反応。まず間違いなく――射命丸は処女だった。

「………やぁ」

射命丸は手で顔を隠し、力無げにそう羞恥に満ちた悲鳴を上げた。肌を上気させ、涙声で言うその姿は先程より遥かに扇情的だった。扇情的だったけれども。

「……初めてだったのか、射命丸?」

「………」

呆然とした俺の言葉に、しばし逡巡してから、鴉天狗は無言のまま小さく頷いた。

「……何で」

俺の口をついて出たのは、その一言だった。
思えば、今日の射命丸はたしかに何処かおかしかった。その時その時ではこっちが舞い上がっていたのもあって気づけなかったが、今ならそう断言できる。
そして、それがわかると同時に俺に襲いかかってきたのはそれに気づけなかった己の浅はかさに対する自己嫌悪と、何故射命丸が風俗まがいの行為を俺にしようとしたのか、その疑問だった。

「……千年も生きていて初めてなんて女は嫌ですか?」

震えるような声音で射命丸が訊ねてくる。その、頭がイイくせに俺の気持ちを欠片も察知していない様子は、俺を激昂させるのに全く十分だった。

「そういうことじゃない!」

気づけば怒鳴り声をあげていた。普段の俺に対しての優位を主張するかの如き態度が、叱られる子供のような態度に変わっているのに気づいてはいたが、止まらなかった。

「何で、そうならそうと言ってくれなかった! あと少しで、取り返しの付かない事になってたんだぞ!」

「……だって、言ったら〇〇さんが無理やりやめさせちゃうと思って」

「当たり前だ!」

何で、今に限って人を怒らせるようなことばっか言いやがるんだ、この天狗は。

「……射命丸。率直に言って、お前みたいな奴が俺の初体験の相手だっていうのは純粋に嬉しい。本来なら、こっちがお願いして縋り付いてもいいくらいだ。けどな」

自分でも驚くほど強い調子だった。ならば、射命丸が怯えない訳が無い。俺の一言一句に合わせ、今日は小さく見えるその体がまたびくりと震えた。
だが、その様子を努めて無視して、俺ははっきりと拒絶の言葉を口に出した。

「……だからといって、お前の初めてを無理に奪ってまでそれがしたいわけじゃない」

射命丸の方は俺から視線を逸らしていたが、そんな事はお構いなしにその震える顔を見据える。

「……今日は、もうやめよう。ゴメンな、こんな俺に付きあわせちまって。無理してたんだろう? もう、良いからさ。そんなに守ってきて初めてくらい、俺みたいな奴に遊び半分でやるんじゃなくて、もっと良い奴にあげろ、な?」

先ほど脱ぎ散らかした服を、若干のバツの悪さを感じながら集める。……明日以降、どんな顔して射命丸と会えばいいんだろうかとか、そもそも射命丸はまた来てくれるのだろうかとか、そんな不安を感じはするがどうにもならない。
ともかく、今は早々にこの空間を何とかしよう。俺が必死に現実から逃げるために考えていたのがこんな事だったから。

「……何なんですか、『俺みたいな、遊び半分』? 馬鹿ですよ」

後ろからそんな、愚痴るような声が聞こえてきた時、俺は反応が遅れてしまった。

「……射命丸?」

「……少しは気づいてくれても良いじゃないですか。何で、この馬鹿は」

いきなり馬鹿呼ばわりをされて、一体何なんだと振り返った俺は、そのまま固まった。
視界の先で、射命丸が目から涙をボロボロと流していたのだから。

「遊び半分で、こんな事できるわけ無いじゃないですかぁ!」

どくん、と心臓が飛び跳ねた。……それは、もしかして、いや、だけれども。
尤も、俺のそんな逡巡と言うか、意味のない思考は、

「私は」

涙に濡れ、澄んだ瞳をこちらに向ける射命丸の前には、

「〇〇さんのことが、好きなんです!」

何ら役には立たなかった。

「ずっと、好きで! ひっぐ、でも、〇〇さん、私のこと、どう思ってるのか、っ、解らなくて!」

しゃくり上げながらの告白だった。それだけこいつを無理させてきたのか、と再び自分が嫌になる。
俺のそんな内心の思いなど関係なしに、射命丸は吐き出すように続けた。

「だから、っ、あの話題が出た時、もう、ここしかチャンスが無いって思って! 気付いたらあんな事言ってて!」

「……それで、こんな事を」

「それで、っ、そんな事言い出したのに、処女だって、知られたら、ぐす、私のこと嫌いになるんじゃないかって、思ったら、言い出せなくてっ!」

本当に、悲鳴のような声で。そうだったからこそ、俺も覚悟が決まった。

「えっぐ、ごめんな、さい。嫌でしたよね? やっぱり、〇〇さんが、言った通り、今日はやめ……ぁや」

「……馬鹿はお前だ」

涙で前が見えてるんだかも怪しい鴉天狗――いや、もうただの少女にしか見えない射命丸を抱きしめた。
唐突だったので射命丸の身体が硬直する。それをほぐすように、俺は耳元でそっと囁いた。

「その程度で、お前を嫌うわけがないだろうが。というか、そもそもお前をその程度にしか思ってなかったら誘いになんか乗らなかったし」

「……で、でも」

「……物覚えの悪い鴉だな」

「なっ!?」

そう馬鹿にしてやると、怒ったような声。顔を見れば、涙で濡れた顔に怒りが見え……そのアンバランスさに苦笑が漏れてしまう。

「良いか? 俺はさっき、お前が誘ってくれる前に確かに言ったぞ? ……風俗みたいな、金払って性行為をする店に行くような勇気はないって」

「……でも、私は」

「ただの友人としか思ってなかったら、頷いてなんか無いさ」

射命丸の目が見開かれた。

「……一緒に居て居心地がいいんだよ、射命丸とは」

「はっきり」

いつの間にか射命丸が俺の背中に腕を回していた。強く力が込められる。天狗のそれは若干の痛みを覚えるほど強かったが、何故か苦にはならなかった。

「はっきり言ってください」

まっすぐに見つめられ、俺は深呼吸をひとつする。俺も緊張で押しつぶされそうではあった。けれども、射命丸ほどのそれがあったわけではない。何せ、こちとらもう告白を受けて、それに自分の思うままに答える、ただそれだけをすればいいのだから。

「好きだ、射命丸。……お前さえ良ければ、付き合ってくれ」

愛しい愛しい少女へそう伝えた。この期に及んで顔がほてるのを感じたが、そんな事に気が回るほど落ち着けては居ない。

「……私も馬鹿かもしれませんが、〇〇さんも馬鹿です」

俺の告白に射命丸がはにかむように笑ってそう詰った後、小さく呟いた。「良くないわけ、無いじゃないですか」

抱きしめた射命丸の感触が直に伝わる。心臓の鼓動音と、射命丸の暖かさが心地よい。
……幸せとかいう言葉はきっと今のためにあるんだろう。以前だったらくさすぎて頭の中でばーかとでも投げかけたくなるような言葉が、妙に身近に感じられた。ふと見えた文の顔は、俺の胸板で幸せそうに、目をつむりながら微笑んでいた。
胸の支えが取れたような気がした。知らず、腕に入る力が強くなる。

そして、それは射命丸も同じだった。いや、それ自体は凄く嬉しいことなのだけれども。ちなみに、蛇足だが俺は人間であり、射命丸は鴉天狗、つまり妖怪である。

……きつい、凄く、その、愛がきつい。主に物理的な意味で。

「……なぁ、射命丸、その」

「文」

いや幾ら何でも告白の後にそれ言うのは不躾にも程があるから遠まわしにお願いしようとするも、懇願は甘えるような射命丸の声に遮られる。割と長い付き合いでも見たこともないほど新鮮で、同時に魅力的でもあったそれを押しのけてまで、そんな馬鹿馬鹿しい事が言えるほど俺は理性が強くない。

「な、何だ?」

「……何時までも苗字で呼ばれるのは嫌です」

酷く甘ったるい声。くすぐったくなるような幸福感に襲われる。望まれるまま、俺はしっかりと文、と呼んでやる。

「……〇〇さぁん」

こんな無防備な反応が出るほど思いつめさせてたんだなぁ、と自分の鈍感さが嫌になる、が、俺に自己嫌悪をする暇など与えられなかった。
ぎゅう、と腕の力が強くなる。心なしか、骨がきしんできたような気がする。あと、何か変な所が圧迫されてるらしく、息が苦しくなってきた。あれ、これ本気でまずいんじゃないか?

「あ、文、その」

「……もっと呼んで」

「あ、文?」

「〜〜〜!」

無言のまま更に強く抱かれる。気がするとかじゃなく、本気で骨が軋んだ。脂汗が出てきた。あれ、息ができないよ?

「……夢、だったんですよ? 今まで、絶対に名前でなんか呼んでくれなかったから」

「………」

「え、えへへ、でも、いざ強請るとなるとこっ恥ずかしいものがありますね」

「………」

「そ、その、〇〇さん? えと、良ければ、暫くこのままで……」

「……め、まる、ごめ」

「……あや? 〇〇さん?」

一人独白していた文は、とても魅力的だったけれども。
文と視線が合った瞬間、顔がみるみる青ざめていくのが見えた。身体にかかっていた重圧が消え去るが、もう遅かった。
ああ、文。ごめん、俺もそうしたいのはやまやまなのだけれども。
ちょっと、休ませてくれ………。










「……さん! 〇〇さん!」

何かに揺さぶられる。眠気に襲われている俺からすれば非常に邪魔な振動だった。
後五分、外の世界で使い古された言葉でも口に出そうかとしばし逡巡する。が、どうにもそんな気になれない。何か、同時に大声で自分の名前が呼ばれているのが心地よかったのだ。
文のやつ、いったい何騒いでやがるんだか。ふっとそんな笑みが漏れた。もう少し、ゆっくり寝かせろ、よ……
そこまで考えて、やっと意識が覚醒した。跳ねるように起きる。

「……〇〇さん!」

まだ眠気を訴える脳みそをガンと叩いて無理やり覚醒させると、ぼやけた視界の中に愛しい少女が居た。
……もしかして、さっきのも夢だったのか?と一瞬だけ疑ったけれども、すぐにいやあれは現実だと確認できた。文は何も着ていなかったし、俺もタオルケットを一枚書けられた他は全裸だった。間違いなく、さっきのは現実の出来事だ。
ホッと胸をなでおろすと同時に、しかし全く別方向からも、俺はあれは現実だと強く知らされることになった。

「……痛つつ」

文に抱きしめられた跡が少し痛んだ。思わず声が出るが、我慢出来ないほどの痛みではない。

「ごめんなさい!」

取り敢えず痛みを押し殺した所で、文が大声で謝ってきた。見れば、こんどこそはっきりとした視界が、文の顔に再び涙の筋が存在することを伝えてきた。

「か、加減忘れちゃって! 〇〇さんをこんな目に……っ!」

「お、おい、文」

「本当にごめんなさい!」

ものの見事な土下座を見せつけられる。大した事じゃないんだがと柱時計を見ると……納得した。軽く一時間は伸びてたらしい。
文の嗚咽だけが部屋に響いた。寝かされていた布団の脇へと視線を移せば、桶とタオルがあった。恐らく、患部を冷やしてくれていたのだろう。
そうまで思われていることが何とも嬉しく、むず痒く……だから現状が許容出来なかった。
いや、寧ろどうやったら許容出来るのかというレベルだ。これで文のことを泣かせたのは今日二度目だ。これ以上醜態は晒したくなかった。

「……文、俺は別に気にしてないし、そんな大事でも」

「ごめんなさい!」

「………」

だめだこりゃ。聞く耳持ってない。
頭をボリボリと掻く。何時もなら少なくともこんな妙な反応はしないやつだから、恐らく俺と同じで舞い上がってしまっているのだろうと推測する。こいつも初めてなんだし。
しかし何だ。こう、見てていじらしい文ってのは本当に初めて見るけれども、普段が普段だから本当に新鮮で。
……ああ、そうか。別に、聞く耳持ってもらわなくてもいいのか。

「……ぐす、やっぱり、私、だめだめですよね。こう言う時に限って、馬鹿なことしちゃいますし」

鼻をすすり、自嘲する文を慰めたい気もするが、一度理性の防波堤が破られるととてつもなく弱かった。

「……そう、だな。お前は何時も肝心なとこで焦る」

「………」

俺が文の自嘲を肯定してやると、哀れな鴉天狗は黙りこくった。……やはり理性の歯止めは効かないようだ。いや、今更やめようとしても困るが。

「だから」

「……あや?」

「お仕置きだ」

文の肩を遠慮なく掴み、そのまま押し倒した。きょとんとする文だったが、次第に顔が赤くなる。どういう状況かを理解したらしい。

「〇〇さん? 何を……」

「お仕置きって言っただろうに」

「え、でも、あの、え……んむぅ!?」

ゆでダコのようになった文に我慢できず、無意識のうちに唇を重ねていた。

「……ぁ……んっ」

ともすれば舌をねじ込みそうになるのを必死に抑える。と言うか、そんな事にまで頭が回らない。文の唇は本当に柔らかく、心地よかったのだ。
ゆっくりとその心地よさを堪能したあと唇を離すと、非難がましい目が向けられた。

「……ファーストキスだったんですよ?」

……ジト目で睨んでくる文は、きっと俺から理性という理性を消し去りたいのだと思う。

「……なぁ、文」

「な、何ですか?」

尋常ならざる俺の態度に嫌な予感でも感じたのか、文が身構えるのがわかった。だが、もう構いなどするか。

「すまん。我慢出来ない」

「ちょ、え、や、あや、んんっ!?」

もう一度唇を重ね、今度は舌を思い切りねじ込む。それを阻止しようと暴れまわる文の舌に絡めるように動かすと、火照った鴉の身体から力が抜けるのがわかった。これ幸いと、口内を蹂躙する。
たっぷり一分はそんな事を続けた後、ゆっくりと顔を離すと銀色の糸が架かった。とろんと呆けたような文と相まって実に色っぽい。

「……激しいですよ」

「自業自得だ。諦めろ」

「………」

「それとも、自覚がないのか?」

「いえ、そうではなく。その、私を見てこうなってくれてると思うと、嬉しくて、ですね……って、ひゃん!?」

いよいよこいつわざとやってるんじゃないかと思いながら、憂さ晴らしに文の胸を鷲掴みにする。思わず声が出そうになるのを必死に抑えるハメになった。うん、凄く柔らかくてハリがあって、ともかく凄い。うん、凄い。油断してたら「おっほぉ」とか出てたよ、絶対に。

「んっ、手つき、やらしいですよ……あんっ」

「そりゃ、な。やらしいことしてるんだから」

「あやや、言いますね初めてのくせに。何なら、もっとがっついても、ふあ!? ちょ、そんな、乳首ばっかりはダメ、や、あやっ!」

お前も余裕なんて無いだろうが、と恨みを込めて乳首を摘むと、想像以上の反応が返ってきた。気分が良くなったので、そのまま優しく擦ってやる。

「ひ、ん、あ、んんっ、んひゃあ!?」

気づけば文が口を手で強く抑えていた。どうやら相当恥ずかしかったらしい。尤も、気持ちよさそうな喘ぎ声が聞こえなくなるのは寂しいので、すぐに手を退けさせたけれども。

「やぁ! だめ、声、出ちゃ、からっ!」

「抑える必要は無いだろ?」

「う、うぅ!」

恨めしそうな目で俺を睨んだ鴉天狗だったが、すぐに対処法を思いついたらしい。思い切り――それこそ唇を噛み千切らんかの如き勢いで口をつぐみ、声を押し殺している。
……そっちがそのつもりなら。

「ひあぁ!」

ぱく、と文の桜色の突起を口に含んだ。少し汗の味がする。
そらみろやっぱり感じてるじゃないか。唇をすぼめて刺激しながらムスっとそう思っていると、口に胸が押し付けられた。……文の顔を見やる。元から真っ赤だった顔が更に真っ赤になり、眼が潤んでいく。どうやら、無意識のうちにやってしまったらしい。まぁ、向こうもお望みらしいし。俺の豊富な(主にネット経由の)知識をフルに活かして、もっと鳥肉を堪能することにした。

「ちょ、ダメ、舐めちゃ、ん、ふあ!」

ほぼ無心に――無我夢中にとも言うが――乳首を舐め続ける。痛いばかりに起っているそれは、凄まじい快楽を与えている様子で、文の固く結んでいたはずの口は既に開け放たれてしまっている。

「……気持いいか?」

「や、乳首、吸いながら喋っちゃ、やんっ!」

「ほーかほーか気持ちいーか」

「こ、この、わざとっ!」

いや、こんな姿見せつけられてこうしないなんて男じゃないから。
身を捩る文を背中に回した手で抑えつつ、本当に嫌なら俺程度軽く吹っ飛ばせるだろう?と揶揄して黙らせた俺は、再び乳首をしゃぶり始める。
舐められるたびに文の腰が跳ねる。……股間にあたった感触だけで達しそうだったが意地になって耐えた。さっき出していなかったら確実にやらかしていただろう。
そんな自分への不甲斐なさを理不尽な怒りに変えて乳首を嬲り続けていると、文の喘ぎ声が次第に甲高くなってきた。これは、もしかしますと。

「……イきそうか?」

「ふあ! やぁ! あん! ひゃっん!」

きっとそうに違いない。縋るような目で首を横に振る辺りまず確実だろう。

「そうか」

「あっ! い、いやな、よか、んがっ!」

さすがに気づかれたか、と会心の笑みを浮かべながら俺は思った。盛大にイッちまえ。
吸いながら舐め回すと、文の反応はいよいよ凄まじい物になってきた。気を抜くと振りほどかれそうなくらいである。
もう限界だな。俺は笑みを浮かべたまま、含んでいた突起に軽く歯を立て、噛んでやった。ついでに、片手を胸まで持ってきて、こちらもビンビンに勃って刺激を求めていた乳首を、胸ごと鷲掴んで刺激した。

「―――ッ!!」

声にならない悲鳴と身体の硬直の後、文の身体から力が抜けた。
文の胸が酸素を求めて上下する。上気した肌も相乗効果になって非常に艶っぽい。

「……胸だけでイッちまったな」

言外に淫乱とでも言われたのかと思ったのか、文の口から呻き声が漏れた。その反応が煩悩をくすぐるので訂正なんてしない。

「顔もまぁ、呆けちゃって。相当気持ち良か――」

笑いながら茶化していると、背中に力がかかり、次の瞬間柔らかなものが唇に触れた。

「んっ、む、れろ、ちゅぱ」

舌が入り込んできて漸く文がキスしてきたのだと気づく。もちろん、受け入れない理由なんてない。

「――ぷはっ」

たっぷり数十秒は文のされるがままに任せると、漸く満足したのか顔を離し、悪戯気に微笑んだ。

「散々いいようにされたお返しですっ! 天狗が人間に良いようにされるなんてことあってはんむっ!?」

少しむかついたのと、何というか折角復活してくれた理性を叩き割られた腹いせにすっかり油断しきった文に口付けた。先ほどほど濃密で長いものではなかったが、腔内をひと通り舐めると文が再び崩れ落ちた。不本意そうな呻きと共に、小動物チックな、何とも珍しい表情で睨みつけてくる。

「……いや、あまり無理はするなよ?」

「無理させてるのは〇〇さんじゃないですか!」

「見解の相違だな」

「はぐらかさないでください!」

……こいつってこんなに可愛かっただろうか。そんな風に余裕が無い俺でも思えるのだから、文は相当テンパっているのだろう。その証拠に――。

「ひう!」

「……キスと胸弄られただけでこんなに濡れたのか」

「ち、ちがっ!」

先程初めて触れた時も思ったが、文はかなり濡れやすいタイプらしい。愛液を指に絡めて目の前でまじまじと観察する。……糸って本当に引くもんなんだな。

「そ、それは汗であって! 別に、そこまで気持ちよかったわけではふあんっ!」

まぁ緊張していつも通りでいられないのならそれはそれで好都合だがな。真っ赤な顔で意味のない反論を繰り広げる鴉天狗を、秘処を軽く撫でて黙らせる。あのつかみ所のない鴉天狗を良いようにできるのだから。――それにしてもその言葉、男としては地味に傷つくんだが。

「なら、今度こそ気持よくしてやろう」

「あッ!」

陰裂を撫でるとそれだけでびくびくと身体を揺らす文を抱きしめながら耳元で囁くと、目をギュッと閉じてぶんぶんとかぶりをふってきた。……口が開いているのには気づいていないらしい。
さすさす、とクレパスを擦る。ぴちゃぴちゃという水音と鴉の鳴き声が心地良い。

「あっ! あんっ! ああっ! ひあっ! ひゃあっ!」

「文」

「ふあっ! な、あっ、何です、かっ?」

「腰。指に押し付けてきてるけど、俺が弄るだけじゃ物足りなかった?」

「あう、ふ、やぁ、はっ、んんっ!」

……先程から薄々感づいてはいたのだが、言葉責めをするとと目に見えて反応が良くなる。普段言われ慣れていないからだろう。自業自得なので同情なんてしないし、この手のことが下手であるという自覚もあるので有効活用させてもらうだけだが。

「とまら、ぐすっ、ない、ふあ、あっ!」

気づけば再び涙声混じりになっている文を安心させるように背中を撫でた。……妙な突起部というか、違和感を感じるところがあったが、すべすべの肌は実にさわり心地がいい。

「〇〇、さん」

「もっと、身を任せて」

正直言って、濡らすという目的のためにこれ以上愛撫をする必要がないほど文の秘所は濡れそぼっていたが、もっと乱れた姿が見たかった。愛液が潤滑剤になり、人差し指がゆっくりと、しかしすんなりと文のそこに入り込む。文の体がこわばるのを感じ、撫でる手に力が入った。

「や、〇〇さ、んっ!」

膣のごく浅いところを、淫汁を掻きだすようになぞる。強引にできないのは、加減がわからず処女を散らしたらまずいという強迫観念から。だったらもっといい方法がある、と気づくのにさしたる時間はかからなかった。

「んっ、何か、もどかし、んっ、ですよ」

そんな抗議を聞き流しつつ、秘所がよく見えるように身体をずらす。――ここに来て漸く何されるのかわかった文の抵抗が激しくなってきた。

「……そんな、見ないで」

「凄いな。膣内をちょっと摩るだけで汁が」

「やぁ!」

取り敢えず文の足を抑えつけM字に開脚させると、飛び込んできたのはそんな光景だった。指が締め付けられ、愛液が垂れ流しになる。見られて感じているらしい。
自然と、そこへと顔が近づいた。

「―――ッ!?」

飛び跳ねる腰を抑え、ただひたすらに文のそこを舐め続けた。よくよく冷静になって眺めてみると実は無毛だったそこは、ひくひくと物欲しげに俺の舌を迎え入れた。少ししょっぱいが、それよりなにより、文の味がする。
溢れてくる淫汁を啜りながら、舌で秘裂をほぐすようにし、ついでに指での刺激も加えると、顔に圧力がかかってきた。……やだやだという割に、どうもこの刺激を離したくないらしい。

「んんーッ! んあ、ふ、はぁっ!」

喘ぎがだだ漏れになっているのに気付いたらしい文は、懲りずに手で嬌声を押し殺そうと努めていたが、どうも成果はかんばかしくないようだ。
いっそ、その気も起きないようにしてやるか。
恥丘に顔をうずめながら、手探りで上半身と右手を伸ばす。決めの細かい柔肌の感触を楽しんだあと、当たりを付けたところへ手をやれば、先ほど散々堪能した柔らかい塊があった。躊躇せず鷲掴みにする。若干体勢がきついが、

「んふあっ!」

などという喘ぎが聞こえれば我慢出来ないはずがなかった。そのままクンニを続けながら、ゆっくりと揉みしだく。

「んーっ! んーっ!」

股間の柔肉から流れ出る肉汁が、より俺の食欲を刺激する。本音を言えばこのまま延々と貪りついていたい。だが、それはそれで生殺しの訳で。
最後に陰裂の上のほうで自己主張しているクリトリスを舐め上げて、びくびくと文が反応するのを眺めた俺は、ゆっくりと股座から顔を離した。つぅ、と糸が引く。何とも扇情的な光景だった。

「……ぁ」

離した瞬間物欲しげな声が聞こえたと思い文の顔を見つめると、真っ赤な顔を隠す鴉天狗が一匹いた。いくら何でも初心すぎるだろ、と呆れながらも、こんな有様で無理してまで身体を重ねようと奮闘してくれた努力を思い出すとからかいようもない。思わず苦笑が漏れた。

「〜〜〜! わ、笑いたきゃいっそ思い切り笑ってくださいよっ!」

それを、自分の経験のなさを笑われたとでも受け取ったらしい文は、ヤケクソ気味に大声を上げる。苦笑がますます大きくなった。

「と、というか〇〇さんも初めてのはずなのに何でそんな余裕ありげに――」

「余裕なんか無いよ」

努めて優しく文のことを抱きしめ、耳元でそう囁いた。全く予期していなかったのか身体が一瞬こわばったので、背中も撫でてやる。

「寧ろ、いっぱいいっぱいだったから暴走したかも」

「……紳士的じゃない人は嫌われますよ?」

「嫌われたっていいさ。文が気持ちよくなってくれれば」

「……馬鹿」

言いながらも、文の方も抱きしめてきた。

「……ねぇ、〇〇さん?」

「どうした?」

「……それを言わせる気ですか?」

むすっと膨れる文。流石にそれがわからないほど野暮ではないので、素直に床に寝かせた。

「……良いんだな?」

「ええ。お願い……来て」

自身の、一応先ほども出したはずなのに寧ろ大きくなっている逸物を掴み、文の秘所へと擦りつける。

「んんっ」

「ぐっ」

こ、これは想像以上に……。
擦っただけでこれである。膣内に入れたらどうなって――いや我慢出来ないだけか。

「んう、んあ、んっ、んふっ……じ、焦らさないでくださいよ……」

「あ、す、すまん」

もとよりこちらも我慢出来ないのだから否と言うはずがない。取り敢えず、入れた瞬間に感じるであろう凄まじい快感について大丈夫きっとなんとかなるという根拠のない自信を無理やり持つと、深呼吸して、肉槍を膣肉へと埋めはじめた。

「……ひぐ、う、うぅ」

想像通り、いやそれ以上の締め付けに、果てそうになるのを辛うじて堪える。男の沽券に関わることだったのと――ものすごく痛そうにする文の姿が、そうすることの出来た要因だった。人に弱みを見せないことについて定評があるやつだから、痛がっている姿などこれまで実際見たどころか想像したことすら無いのだ。

「あ、ぐ、ぅ――ッ、はぁ、はぁ」

荒い――快感ではなく、痛みによってもたされた息。正直見ていられない。
もう何度か、おっかなびっくりに押しこもうとするが、力が弱いからかろくに進まない。そのくせ、文の痛がりようは凄まじく、そのせいで更に俺の力が失せていく。高慢ちきな鴉の顔が激痛で歪み、普段は間違っても見せないような弱々しい仕草でしがみついて来るに至り、遂に進もうという気が完全に失せた。腰から力を抜く。
捨てられた子犬のように見つめられ、散々逡巡した挙句、やっと口が開いた。

「……やっぱりきついだろ。 無理そうだし今日はもうこの辺で――」

「馬鹿な事言わないで!」

怒鳴りつけられるのと同時に背中が抓られた。

「無理なんかしてない! お願いだから最後までして!」

「だ、だけど」

「確かに痛いけど。聞いてたより何倍も痛いけど、ここでやめられる方がもっとヤダ!」

強い調子でそう言われれば、確かに心変わりも起きたかもしれない。いや、きっとそうなっていただろう。――痛みで顔を顰めてさえいなければ、きっと。

「なぁ、文。別に、今日が過ぎれば今生の別れが待ってるとかじゃないんだ。焦らずゆっくり慣らしていこう? 正直、お前の辛そうな顔が見てられない」

「……わかった」

「……じゃあ、取り敢えず一旦これを抜いて――」

少し休もう。そう言う直前、文と目があった。何か、肝の座った目になっていた。凄く、嫌な予感、というか確信がした。

「お、おい文。少し落ち着いて」

「そっちがそういうつもりなら」

腰がきつくホールドされる。無論のこと、妖怪の力だから動くことなんてできない。

「こっちが動くだけよ」

肉棒が締め付けられる、という表現では生やさしいくらいの圧力の中を、肉壁を裂くように進んでいく。文の口からは、苦痛に悶えるうめき声。それが極端に大きくなった瞬間、何かを突き破ったような気がした。

「は、入っ、た。熱い……」

射精さなかったのは奇跡といって良かった。四方八方から押し寄せてくる温もりと快感で何も言えない俺は、苦痛で目を潤ませ満足そうに息を吐く文をただ見ていることしか出来なかった。と言うか、吐息がかかるだけで暴発しそうなのを抑えるのに必死で、それすら満足にできていない。それでも、死力を尽くして何とか悪態をつく事には成功した。

「ば、バカラス! 無理するなって……」

「む、無理なんて、して、ない」

「息絶え絶えなのと敬語使ってない段階で嘘って丸分かりだ」

「……無理させたの、〇〇だもん」

「……それについては認めるけどさ」

「じゃあ、大人しくしてて」

「お、おい、ちょっと待て、まだ動くな――」

制止の声も虚しく、文は腰を思い切りグラインドさせた。

「ひぐぅ!?」

「うっ!」

凄まじい膣圧に、さんざん我慢していた俺は太刀打ち出来なかった。すなわち暴発。しかし、情けない限りだがこれ自体は仕方がないから百歩譲って諦める。
問題は、明らかに激痛の呻きを漏らしたバカラスだ。

「あ、膣内、出てる……」

「出てるじゃない阿呆! 慣れてもないのに動かす奴が居るか!」

激痛と快感でめちゃくちゃな顔になっている文を怒鳴りつけ、再び無理に動かせないよう精一杯腰を抑えつける。結合部に手をやると、想像を超えた量の血が付着する。

「よ、妖怪は、人間と違って頑丈だから――」

「痛いのには変わりないだろうが!」

びく、と文が震えた。

「……嫌、だった?」

「ああ、嫌だよ」

震える肩を抱きしめながら、頼むからと前置きして続けた。「気持いいのは大歓迎だけどな。――その、お前が痛がる姿を見たくない」

一瞬、きょとんとした顔をされる。照れ隠しに目を逸らすと、すぐに吹き出す声が聞こえた。

「あ、あはは! き、嫌われたって思ったのが馬鹿みたいじゃないですか! そんな、子供みたいな事だったなんて」

「な!? 子供みたいってなんだ子供みたいって! 普通はそう思うだ」

続く言葉は出なかった。ぐい、と顔を近づけてきた鴉天狗に唇で塞がれていたのだから。

「でも……嬉しいですよ」

軽く押し付けられていた唇が名残惜しげにはなれた後、そんな言葉が紡がれた。顔が火照るのがわかったから、言い返さないで回した腕に力を込めて意思表示する。天狗は漸くらしさを取り戻したのか、意地悪気に、そして心底楽しそうに笑っていた。

「……ん、〇〇さん。もう動いて大丈夫ですよ」

暫くそんな感じで抱き合っていると、不意に文が囁いた。思わず眉をしかめる。

「本当か? 嘘じゃないだろうな」

「信用ないんですね、私」

「前々からな」

「……そこは嘘でも空気読みましょうよ」

空気読まない筆頭に言われたくないわ。

「で、ほんとうに大丈夫なんだろうな」

「ええ。妖怪の回復力って、こういうところにも反映されるらしくって」

「……本の知識だけじゃないだろうな」

「もちろん今実地で確認――って耳年増みたいに言わないでくださいよっ!」

事実ですけど。いや、それ今更だから。そんな野暮な会話を交わした後、ゆっくりと腰を引いた。

「ひゃん!」

「……嘘ではないみたいだな」

「ま、まだ疑って――んあっ!」

甲高い鳴き声と抗議の声を楽しみながら、今度はゆっくりと押し出すと、減らず口をいう余裕もなくなってきたらしい。乱れた息に苦痛によるものがないことを確認できたので、徐々にペースを早めていく。
文の膣内は、先程よりは遥かに動きやすくなっていた。先ほど暴発した精液と――恐らく、文自身も感じ、興奮していたのだろう。分泌された蜜が良い潤滑剤になっている。

「ん、やっ、早、いっ、ふぅあっ!」

突くたびに文が乱れ、その度により滑りやすくなるからスピードが上がり、それが文をもっと乱し――そんなパターンが数回続くと、双方から再び余裕が消え失せた。こっちはまだ優しくしようと心の何処か片隅では思えていたが、鴉の方は鳴き声を抑えるので必死らしい。両手で思い切り口を抑えた。……さっきから抑えることの出来た試しがないだろうに。

「んんっ! んふっ! んひゃあん!」

浅く突くのを繰り返した後深く突き入れると、膣肉はぎゅっと肉棒を締め付けるものの割合すんなりと奥まで到達する。コツン、と音がしたような気がしたが、文の嬌声のほうが大きくて定かではない。

「……ほら、やっぱり無駄なあがきだ」

「何が、あんっ、よっ!」

「声、出てるぞ?」

「んん〜〜ッ!?」

慌てて口を抑えようとする。その手を掴むと、布団に押し付けた。ろくな抵抗もなかったところを見るに、快感で力が入っていないらしい。

「ちょ、やぁ、手ぇ、離し、んあっ、てっ、ひゃんっ!」

「お前が、痛がる姿は、見たくないけどな、感じてるとこは、余すとこ無く聞きたいんだよ」

「こ、この、んっ、変態っ!」

「変態で結構!」

「ひぅッ!」

大きく腰が跳ねた。文はといえば、いやいやと首を振りながら顔を逸した。

「顔、見せろって」

「ん、あっ、ふあっ!? ちょ、ん、やぁ!」

正常位の体勢から、ぐっと身体を起こさせ胡座の上に座らせる。……確か、対面座位とかいう表現でよかったと思う。

「だ、ふぁ、だめ! これ、顔近いっ! ん、恥ずかし、ひゃっ!」

「当たり前だろ、見たいって、言ってんだから。それから」

「あや?」

ニヤリと笑う。怪訝そうに見つめる文の耳元に口を寄せ、揶揄してやった。

「腰、自分で動かしてるぞ?」

「―――ッ!?」

ぼふ。そんな擬音がふさわしいような勢いで鴉が真っ赤になった。

「……初めてなのに、そんなに気持ちいい?」

「ちがっ! これ、これは誤解で、妖怪は傷の治り早いから、ひゅああっ!?」

文の動きに合わせてこっちも突き上げると、そんな悪あがきも消し飛んだようだった。
間近で見るその顔は、口から涎が垂れてるわ涙も出てるわでお世辞にも美しいとは言えないのかもしれないけれども、少なくとも俺には愛おしくて仕方がない表情だった。

「◯、◯っ! キ、キスして――んむっ!」

なのだから、惚けたようにキスを強請られて吸い付かないはずがない。

「ん、あむ、ぷはっ!」

お互いに唾液を交換した後、どちらからとも無く唇が離れる。えへへ、などとはにかんでいる文を見ていて抑えられる気もしなかったので視線を下に逸らせば、二つの品の良い丘と桜色の突起が踊っていた。手を出さないはずがない。

「ひあ!? や、胸、今弄ったらぁ、あ、やぁ!」

コリコリと乳首をいじると、息子がぎゅっと絞めつけられた。快感で腰が砕けそうになる。慌ててまだ背中にあった右手に力を込め、突き上げ運動を継続する。
……ん?

「◯◯? 何か――」

「この突起」

さっきも気になったけれども、背中のこれは何なんだ?

「ふぁん! え、突起、んっ、って、あや!?」

気になって軽く触っていると、さっきより締め付けがきつくなったような気がした。それに加えて文の口元が引き攣ったのである。………。

「情報屋、としては、とても知りたい、んだがな?」

「ちょ、何でも、んっ、無い、ふぁ、のっ! い、今は、ひゃんっ! こっちに集中してんあっ!」

ひた隠しにする所がますます怪しい。まぁ反応から察するに大方性感帯だろうけど。
突起を摩る度、腰を跳ね、嬌声を上げ、締め付けてくる。面白いので何度も続ける。

「ほんと、だめ、だからぁっ! やぁ! やめて、んあッ!」

結合部から愛液と精液が混じった液体の水音が響き渡る。相当気持ちいいところから、もっと強い刺激を与えればイくんじゃないかと意地の悪い考えが浮かぶ。ならば善は急げ、俺は――

「やめ、ん、ひぅ、ふあああああッ!」

突起部を摘み、文の痙攣する身体を強く抱きしめた。初めてとは思えないほどこなれた膣内と膨らんだ乳首、そして背中の突起部からの刺激に耐え切れなかったようで『バサァ!』……バサ?

「……だから、はぁ、言ったのに」

性感帯から、いつの間にやら黒い翼が飛び出していた。……そういえば、翼が出てる時と何処にも見当たらない時があったなと思い出す。前に興味本位で訊ねたときは、「乙女の秘密です」なんてはぐらかされたが……。

「か、格納式だったのか、鴉天狗の翼って」

「わ、悪い!?」

「いやいや、良いとか悪いとかは無いけどさ」

純粋に驚きである。女体――と言うか妖怪の神秘か。永琳先生あたりに垂れ込んだらいい値で売れそうである。

「こ、こういう時に、翼は邪魔でしょう!? そうでしょう!? さっさと仕舞っちゃうから!」

そんな感慨もやけに焦り気味の鴉天狗の声に阻まれた。まぁ、行為の最中に考えるにしては無粋にも程がある内容だったから、こっちとしても願ったり叶ったりだった。しかし。

「良いじゃんか。文の翼、黒くて綺麗だし」

「……あぅ」

かぁと赤くなる今日一日で実は随分と初心であることが判明した鴉天狗は置いておくとして、実際問題文の翼については前々からかなり興味があったのだ。綺麗だし、触り心地良さそうだし。無論、そんな事したりやったりできる勇気が以前の俺にあったならば、ここでこんな事にはなっていない。

「触るぞー」

「や、ちょ、待ってってば!」

「問答無用!」

と語気を荒らげてみたが、ぎゅっと握り締めるわけにも行かないのでそっと撫でるように触ってみる。手入れの行き届いているらしいそこは、想像していたモフモフ感では無かったけれども、実に触り心地がいい。こう、何時までも触っていたくなるような高級そうな質感が……。

「あん」

ぴた、と手が止まった。ゆっくりと視線を文の顔に移す。両手で口を抑え、顔を赤くしていた。

「あ、あや、こ、これはちがくて、そのひゃんっ」

確認のためもう一度撫でると、しどろもどろで弁明しようとする文の口から再び鳴き声がした。ああ、うん。もしかしなくても。

「……鴉天狗は、翼も性感帯なのか」

「ち、ちがっ! そ、その、少しこそばゆかっただけだから!」

そういえば、突起部も性感帯であったのだ。なるほど当然のことだった。ついでに文の焦り具合も説明できるのだから、寧ろ何故さっき気づけなかったのかというレベルだ。と、なると。……さっき弄ってた突起部ってのは、翼の付け根のことだったな。

「文」

「へ? な、何?」

「暴発はノーカウントだよな?」

「は、え、え? いや、よく意味がふあっ!?」

文の奥めがけて突き上げると、心地よい鳴き声が部屋に響き渡った。

「んあっ! ひうっ! ◯◯ッ!? だめっ! 私、イッたばっかだから、んんぅっ!?」

そんな抗議の声は聞き流し、行為を再開する。俺はイッてないんだから、正当な行為だ仕方がない。

「ひぁああんっ! 何で、んあっ、さっきより、感じて、ふぅっ!」

膣だけでもそんな具合で感じる文。非難がましい目もいつの間にか仕方がないと言う諦めの色が強く出ている。こんな俺に付き合ってくれていることに報いるためにも。

「ひあっ!?」

乳首に手を這わせ。

「ちょ、〇〇、まさかやぁあんッ!?」

羽の付け根を摘んでやった。途端に文がびくびくと震える。これだけで軽くイッたらしい。

「さ、三箇所、どうじ、んっ、だめ、ひうっ、感じ、すぎ、あんっ、からぁ!」

「良いぞ」

まず間違いなく一人でなんか味わうことのできない快楽で、荒い息を吐く鴉にそっと囁く。

「文の感じてるとこを見せて」

「………」

コクリ。文は何も云わないでただ首肯するだけだった。声も出ないらしい。……可愛いやつめ。
突き上げながら乳首をいじくり付け根も弄るという割りと難儀な芸当を続ける。嬌声と共に、羽がバタバタとはためく。

「ふ、は、あんッ! ◯◯っ!」

ほとんど力の入っていない腕が背中に回された。惚けたように名前を呼ばれるのが何ともこそばゆい。
照れ隠しでもう一度キスし、舌を絡めると、文が腰を動かすペースが早くなってきた。感度が高くなっているのもあって、スパートに入ったらしい。こちらとしてももう長くは持たなさそうなので、文に合わせる。

「ひゅ、は、羽、良い、んっ、から、もっと、ふあっ!」

言われるままに胸にやっていた手を、もう一方の付け根に這わす。硬くなった乳首は、俺の身体で擦れるようにしてやると、目に見えて反応が良くなった。
バサッ!
羽音と共に身体が暖かいものに包まれる。文の、烏の濡れ羽色という表現が限りなく似合う翼だった。これまで使って俺にしがみつきたいらしい。

「もっと、ぎゅってしてっ! あんッ! 捕まえて、んあっ、てっ!」

「くっ、文、締めすぎだ……ッ!」

「良いから! 〇〇も、んっ、我慢、しなくていいからっ!」

締め付けに加え、震える羽が与えてくる不規則な快感。本日三度目の限界だった。

「わた、しもっ! また、イくっ!」

「文」

理性を振り絞って文の名前を呼ぶ。どうにも囁く以上の声が出なかったが、文に聞こえていれば構わない。

「愛してる、ぞ」

「――ッ! 私もッ! 私も、好き、だからッ!」

思い切り文の膣内を、子宮口まで突き上げる。同時に胸板で乳首を潰し、羽の付け根をつまんで擦った。

「ふあ、イくっ! んああああああああああッ!」

膣が今日一番の締め付けを見せ、耐えようという気も起きない俺は、眼を固く瞑って快感を受け入れている文に、これでもかと精を注いだ。

「あ……出てるぅ……、〇〇の、一杯……」

きゅぽん、という音をたたせながら肉棒を引き抜くと、二度に渡る射精による精液と、文の愛液の混ざった液体が流れでた。が、からかう気力ももはや無いので取り敢えずトロンとしている鴉を寝かせ、自分もその横に転がった。

「……なぁ、文」

暫くお互いの吐息以外の音が消えた後、俺はおもむろに口を開いた。

「膣内で出して、良かったのか?」

「……今更って話じゃないわよ、それ」

「ですよね」

ついでに言えば用意周到な文がコンドームを用意済みだったりはしたのだ。ゴタゴタあって存在を忘れてたけど。

「……んっ」

はぁ、とため息を吐いた直後、唇が塞がれた。唇をなめられる。

「好きな人のだもん。拒絶なんかしないわ」

微笑んでそう言われると、自然とこちらの顔にも笑みがこぼれる。が、文はすぐにその笑みを儚げなものにして。

「それに、まぁ――妖怪と人間だから」

……天狗は子をなし難い生き物だ。それが、人間との子作りならばなおさら。

「子供、欲しいのか?」

「そりゃまぁ、何人か知り合いで子を産んだのはいるし、いいなぁっては思うわよ」

「……なら、孕むまで付き合うさ」

文の動きが停止する。……少し無粋だったかな、と背中を冷や汗が流れるが、

「えっち」

ジト、と睨んでくる文を見て少し安堵した。

「えっちだろうが変態だろうが別に構いはしない」

言いながら、くしゃくしゃと鴉の頭を撫でた。

「文と一緒に居れるんなら」

「……馬鹿」

照れているのか頬を染めて目をそらす文にまた口づけた後、どちらからとも無く抱きしめあうと、疲れが出たのか文はすぐに寝息を立て始めた。俺の意識が暗転するのに、それからさほど時間はいらなかった。










「あ、起きました?」

翌朝意識が覚醒すると、バスタオルを身に纏った文がそこに居た。

「あや、流石にあの状態で妖怪の山まで行くのはちょっと……」

思考が顔に出てたのか、誤魔化すように笑いながら文が続けた。確かに、昨日あのあとそのまま寝たからろくに後始末も終わっていないのだ。

「いや、問題はない……っていうか、布団以外は後始末もしてくれたのか。ありがとう」

「い、いえ、何というかそのまま置いておくのも気恥ずかしかっただけなので、そんな感謝することはありませんから」

……ありがとうと言っただけでこの有様である。以前にこんなことなってる記憶がないのは、そんな言葉をかけたことがないからか、と思いいたり少しへこむ。いやいや、それ以前に。

「待て、何で敬語に戻ってるんだ?」

「あ、あや!?」

俺の指摘に、鴉は口元を引きつらせ、眼を逸した。寝起きで億劫になっている身体に喝を入れ、起き上がって文の視界に入り込む。さっきよりも赤くなっていた。

「……別に、呼び捨てにするのが恥ずかしいわけでもないだろ? 仲間内だと普段からタメなんだし」

「それとこれとは話が違いますよ……」

なぁにが、と思う所がなかったわけではないが、昨日の夜からこのあまり隙を見せない天狗の揶揄できる点ばかり見つかっているので、からかうのは後日の楽しみにとっておく。第一、赤面している姿なんて見慣れるどころか全く見たことがなかったのだ。堪能しないほうが損である。

「と、ともかくです!」

見つめられていることに気付いたのか、えっへんと咳払いして強引に話を変えてきた。

「取り敢えず、私は山に戻ります……今日が休刊日でほんとに良かったですよ。今から新聞なんて配り様も無いですし」

「『朝帰りしちゃいまして新聞作ってる暇がありませんでした!』とでも言って切り抜ければいいじゃないか」

「言えますか! そんな事!」

途端に怒り出す。ああ、何だかんだで何時ものやり取りだ。特に、俺のほうが優勢な所が素晴らしい。

「だ、大体ですね! 私にだって山への体面というものがあるんです! そんな頻繁に〇〇さんのとこにも来れません」

「ほお、そいつは商売倫理に悖るな」

「? 何処がですか?」

本音半分、照れ隠し半分な言葉に、俺は芝居がかったセリフを返していた。怪訝そうな文に、我ながらクサイ言葉だなと思いつつも答えてやる。

「商売ってのは契約だよ。だとすると、俺のほうが契約違反になる」

「……一体何を言って」

「だから、さ」

照れ隠しに鼻を掻いて、言葉をまとめて、一気に言い切った。

「こちとら、鴉天狗の枕営業に付き合っちゃったんだぞ? 対価として――俺の全てを毎日払わないとな」

「………」

口をあんぐり。そんな表現こそ似つかわしい表情で文が固まる。……外したか。そう思った所で、

「あ、あはははっ!」

文が吹き出すように笑い出した。

「あは、ひ、く、クサすぎますよそのセリフ! 明日の朝刊の一面に、いえ号外でも出しましょうか?」

「……いや、自覚はあるが何もそこまで笑わなくてもいいだろう」

「だ、だって……あはは!」

ムッとして鴉を見つめ――その目に涙が浮かんでいるのに気づいた。なんとなくだが、笑いから出たそれではないような気がした

「あ、文?」

「そんなおかしな事言う〇〇さんには……んっ」

あまりにも自然な流れで口付けされ、何の反応も出来なかった。軽く押し付けられた唇はすぐ離れ、悪戯気に開く。「昨日良いようにされた分も含めてのお仕置きと……これからもよろしくのキスです」

言うだけ言って恥ずかしくなったらしく、文は幻想郷最速の名に恥じぬ速さで服を着ると、そそくさと山へと逃げ帰っていった。ぽかん、と見送った俺は、その姿に呆れのこもった笑みを漏らした後、こちらも日常生活に戻ることに決めた。まぁ、さっき言った通り、いつも通りの日常になるだろう。だが、ひとつだけいつもと違うこともある。

きっと今夜も鴉天狗が心のこもった枕営業するためにやってきて、俺は為す術もなく、心も含めた全てを差し出してやるのだ。その迷惑さを考えると、夜まで実に爽やかに過ごせそうだった。




以前ウフフ板の射命丸スレに投下した小ネタの改良。
……のつもりが、誰てめぇ感漂う香ばしい作品に。

以下、おまけという名の蛇足





「……おや射命丸様。こんな時間までどちらに?」
「あ、文! 昨日はどこほっつき歩いてたのよ! 挙句朝帰りだなんて!」
「べ、別になんでもないわよ。それより私早く家に帰らないと……」
「男か? ええ? あの情報屋の男か?」
「ぶッ!?」
「……わかりやすい反応をありがとうございます射命丸様。これで仲間内に勝ち誇れますよ」
「え、いや、ちょ、なにこれどういうこと?」
「どういうことも何も、まさか今まで気づかれてないと思ってたわけじゃないでしょう?」
「あ、あやぁっ!?」
「……大勝ち。良かった大穴につぎ込んでてて。暫く酒代が浮きます。射命丸様ありがとう」
「ちょ、賭けって何よ!? というかそんなバレバレだった!?」
「スクープの内容は『射命丸文実はかなり純情説証明さる!? 周囲の視線に全く気づかず』あたりね。『熱愛発覚』だと今更感漂いすぎてて売れないだろうし」
「え、何そんなレベル? そんなに噂されてたの私? というか椛! 賭けって何よ賭けって!?」
「賭けは賭けです。河童・下っ端天狗から天魔さま、果ては守矢の神々まで巻き込んだ、題して『射命丸文は果たして情報屋とくっつけるのか!?』って賭け。私は『割りと早めにくっつける 且つ 周囲のにやにやに気付けてない』に賭けてまして、大勝ちですね。ボロ儲けです」
「あ、あぅ」
「確か守矢の巫女が『いや流石に気づいては居ると思いますよ、幾ら何でも』って主張してたから大体そっちに流れたのよね。かく言う私もその一人だし。あーあ、文がこんなに初心だったなんて」
「あ、やや」
「ん? どうかなさいましたか実は純真乙女な射命丸様」
「あやああああああああああああ! 皆の馬鹿ああああああああああああ! 妖怪の山なんて消えてなくなれええええええええ!」
「……ありゃからかい過ぎたか。と言うか文のやつ、もしかして大声で喚きながら妖怪の山破壊して回るつもりじゃ!?」
「は、白狼天狗に非常呼集掛けてきます!」

後に、人里で「妖怪の山奇声異変」と称される異変の始まりであったとかなかったとか。


メガリス Date:2012/01/30 17:11:23

SS : 射命丸 文へ戻る

このページへのコメント

賛否両論あるかとおもいますが
いいと思いました(^ω^)

1
Posted by シャブ原キメ太郎 2016年02月10日(水) 15:54:08 返信

ファンだけど射命丸に限って無いわ

0
Posted by 射命丸文 2012年12月07日(金) 07:43:15 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

管理人/副管理人のみ編集できます