東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

もう、いつからだろう。
「ぁっ、んぁ、あぁっ……はぁ、ルナ……っ」
「あっ……ぃい、いいの……もっと……っ、○○さんっ……」
こんな生活を送るようになったのは。

俺とルナ……ルナチャイルドの邂逅は、もう数えるのも忘れたくらい遡る。
俺が自然とこの姿だった頃……大人の歳になるすこし前のことだ。

いつだったかもわからないほど幼い頃、この世界……幻想郷に流れつき、薬問屋の主人に養子として迎えられていた俺は、森に薬草をとりに行ったのだ。
魔法の森。数え切れないほどの村人が、立ち入っては戻って来なかった場所。
しかし、病を癒す糧として、あるいは嗜好として、そこにあるさまざまなものは人里の生活にも欠かせない。
たまに兎のねーちゃんが薬を売りに来るけれど、毎日とはいかないし、妖怪の都合にあわせてばかりでは人里の生活も成り立たない。
妖怪に食われるかもしれなくても、それを冒さねばならないときはあるのだ。

(くそ……遅くなってしまったな……)
そう、いつも利用している群生地をとり尽くし、それでも数が足りなかったために、さらに奥までわけ入ることになってしまったのだ。
木の枝を折り、つる草をからげて道標にしていたとはいえ、お天道様が山の陰に沈む刻にはもう猶予がない。
帰りを急いでいた俺は、すぐそばを吹き抜けた空気の流れ……そして、からめておいたつる草の指し示す方向が変わっていたことに気が付かなかった。
(こっちだな……)
大きな樫の木を目印に足の向きを変えた直後だった。
「うわっ!?」
その時は俺も何が起きたのか、直ぐには飲み込めなかった。俺は大きな落とし穴にはまってしまったのだ。
「やったー、ひっかかったー!!」
「きょうはどんな妖怪をひっかけたのかしら。ちっこいみたいだけど……」
「もう、また蛇にこてんぱんにされたときみたいになっても知らないわよ……。とばっちり食うのは私なんだから」
「「ルナがこけるのがわるい」」
「うー……」
……どうやら妖怪の仕掛けた罠にはまってしまったようだ。

こうして薬草をとりにくるのはいつも俺の仕事だった。
俺のいた薬問屋には、俺が拾われたすぐ後に世継ぎがうまれたのだが、主人は俺の面倒はきっちり見つつも、明らかに実子の方を溺愛していた。
それは世継ぎが成長するに従って顕著になり、俺は妖怪にでも食われてしまってもかまわない、と思われていても不思議ではないくらいにまでなっていたのだ。
(俺も……年貢の納めどきか)
そう思って上を見上げると、そこにいたのは俺よりすこし年下くらいの外見の……

「ようか……妖精?」
「「「 に ん げ ん ?? 」」」

そこにいた三人……三匹の声が重なった。
「どうしよう、これだけ奥なら妖怪くらいしかいないって言ったのはスターでしょ!?」
「私はナニモノかがいるって分かるだけよ、声や物音でわかるのはルナの領分でしょ!?」
「私は音を消すだけで音を聞き分けるのは無理よ……異変も久しくていたずらしようって言ったのはサニーじゃない」
わけのわからぬ俺をほっといて喧嘩をはじめる三匹。
「で、どうするのよ、こいつ……」
「ここだったらアリスさんの家が近いけど、持っていってあげる?」
「でもアリスさんは人里に出て人形を見せてるときもあるから……あっ!」
(……?)
「近くになにかいるよ……けっこう大きい」
しばし聞き耳を立てているらしく、訪れる静寂。それを破るかのように、

ニンゲンノ……ニンゲンノニオイガスルゾ……

(!?)
「妖怪……雑種ね。でも大きい」
「うそ……どうしよう、逃げないと!」
「でも、こいつどうするのよ」

そのおどろおどろしい気配は、穴の底で周りのようすが見えない俺にまで伝わってきた。
腹は決まっていたはずなのに、こみあげる恐怖。
とっさに手にしていた籠から、無我夢中で気付けになる葉を一枚取り出してかじってみた。しかし乾燥させすりつぶさないと効果は薄い。
妖精ならばいいが――といっても妖精のいたずら程度のちょっかいでも生身の人間の生命に関わるには十分だが――、妖怪となるともはや思考の必要はない。
恐怖で震えが止まらなくなった俺は、穴の上でいまだなにか言い合っていた妖精のことなど思考の範疇に入れることなく、へなへなとへたり込み、そのまま気を失ってしまった。

それからどれだけの時間が過ぎたのか、思い出そうとしても思い出せない。
気付いたとき、俺は頭上の落とし穴の入り口、いびつな円形のキャンバスいっぱいに描かれた、満点の星空と満月を見た。

「あら……気が付いたみたいね」
その円形の縁からひょこっ、と顔を出すものがひとつ。
「今夜は満月だったから、妖怪ほどじゃないけど私たちの力も強いの。うまく隠しきれてよかったわ」
そのときの俺にしたら、まったくわけがわからず呆然としているしかなかった。
「サニーとスターは先に帰ったわ。月明かりでいちばん力が強くなるのは私だから……でも、それだけじゃないかな」
「あんたは……」
「ふふ。巫女と魔法使い以外の人間なんてひさしぶりに見るけれど……そうね、私たちを初めて見て、慌てもしないで……座った目、嫌いじゃないわよ」
そして、その妖精はふわりと浮かんで……
「待って、きみは……」
「……ルナ。月の夜に、また会えるかもね」
そう言い残して、その妖精……彼女、ルナはどこかへ飛んでいってしまった。

いまでもはっきりと覚えている。
宵闇のディープブルーに映える真っ白のドレス、金色の月をすぐそこまで持ってきたようなふわりとした金髪、暗がりでもはっきりわかる白くて無垢な肌……
俺は彼女が視界から消えるまで、恍惚とも呼べる感覚に身を委ね、その場からぴくりとも動けなかった。

いま思えば、俺はそのとき、彼女……ルナに恋をしてしまったのかもしれない。

妖精が掘った穴とだけあって這い上がるのは簡単で、俺は難なく外に出て、正しい目印を探してなんとか村に帰り着いた。
薬草こそきっちり――いや、そのときの俺はかごの中身が数倍に増え、めったに見つからない高価な薬草まで混ざっていたのには気づかなかった――集めてきたものの、主人にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。

しかしそれからというもの、俺は頭の中にぽっかり穴が開いたように、呆けることが増えてしまった。
薬草集めに薬作り……やることはやるが、やっている最中も、自分はどこへやらのうわのそら。
主人たちもそれには気がついていて、実子がもうすぐ大人のトシ、いよいよ世継ぎをという期待の高まりもあって、俺に対する風当たりは目に見えて強くなっていった。

そんな生活がしばらく続いて、俺はとうとう見切りをつけ、世を捨てる決心をした。
世を憂い坊さんになる人はたまにいるが、俺は違った。
まず世話になった薬問屋にあれこれと理由をつけて暇を貰い――もとより風当たりの強かったこともありあっさりと認められた――、村外れに小さな穴ぐらを掘って、自分の着物や財産のいっさいを持ってそこに移り住んだ。
それからはろくに里の人間とも会わず、身の回りを整理し、俺がいたという痕跡を少しずつ薄めてゆく。

人との縁を薄めたら、山に入り、土の上に寝転んだり、川に身を浸したりして瞑想にふけった。
自然の中において人間とはなんだろう。
人間は草木や動物の生命を食べて生き、そしてときに妖怪の糧になる、その真理とはいったいなんだろう。
人間はもっと、自然に身をゆだねて生きるべきではないのか……
……そう、自然の中での特異点たる自分の存在を消し、自然と一体になるように。

しまいにはろくに物も食べずに水だけをすする生活のせいもあってか、俺の背は縮み、身体ももとより十は年下の子供くらいの身体つきになった。

そして、あるとき。雲ひとつない、醒めるような満月の夜だった。
俺は仰向けになって川に身を浸し、天を仰ぎながら自分を無としていた。
不意に、ふわり、と浮きあがる感覚を得た。
ああ、風になって流されていくんだ、俺はとくに動じもせず、まったく自然体でそれを受け入れた。
そして俺は、なすがままに身を任せ、ふわふわと流されていった……

「ふふ、きづいた?」
……どこだ、ここは。
「ゆっくりできそうな木がほかになかったから。神社の近くだから、ちょっとうるさいかもだけど」
そういえば、かすかにお祭り騒ぎのような音が聞こえる。聞いたことがある、巫女の住んでる山奥の神社は、妖怪に制圧されて、巫女もそのいいなりで酒盛りをやってると。

「あなた、人間やめて妖精になっちゃったみたい。珍しいこともあるのね……わたしにはどうでもいいけど」
そうか、俺は人間をやめると決めてたんだっけ。
「一回休みでふわふわしてたから、とりあえず手頃な木につれてきたの。服がぼろぼろだったから、私のお古しかなかったけど……」

言われて気がついた。村を出てからずっと着古していたぼろぼろの着物はきれいに畳まれて脇に置かれ、俺はルナと同じ真っ白のドレスを着せられていた。
……ちょっと、かわいいかも。

「そとはいつもの宴会がにぎやかだこと。サニーとスターはきっと、きのこ集めなんかほったらかしてあの中ね。……でも、いまは五月蝿いだけ」
ぱちん、と指を鳴らす。するとかすかな喧騒が……いや、まわりの音すべてが消えてなくなった。耳に入るのは俺とルナの吐息の音、心臓の鼓動だけ。

「……?」
訝しげに思う俺の胸に、ルナが倒れこんでくる。
「うわっ!?」
「……ふふ」
むくり、と自分の身体だけを起こすルナ。俺の上に馬乗りのかっこうである。
そのまま俺のスカートの中をまさぐり……
「ち、ちょっと……」
「ふふ、げんきね」
俺は心の準備もなにもあるわけないのだが、こんな状況にされて、平静でいられるわけがない。

戸惑う俺をほっといて、ルナはドレスの裾をすこしまくって中に手を入れたかと思うと、すとん、とルナのドロワーズが木の床に落ちる。
顔をうすい桜色に染めつつ、ルナは、

「あ……」
「サニーやスターと遊んでても楽しいけど、わたしっていつになってもヘマしてばっかりで……ちょっと、別のところでシゲキがほしかったのよ。それに言ったでしょ、あなたのこと、嫌いじゃないって」

ルナは目を閉じ、スカートの中をまさぐるようにして位置を定めて……すとん、と腰を落とす。
「ん……あっ……」
どちらのものともしれない悦楽の吐息が漏れ、音が絶たれた空間に水音質の音だけが響きはじめた……

「うわっ……とと、きゃっ!! ……あー、びしょぬれだー……」
「きをつけなさいよー、きょうは風が強いから。畑がだめにならないように、お父さんたちが神様にお願いにいってるからねー」
村外れ、森に近い畦道を歩いていた小さな女の子が急なつむじ風に襲われ、水路に落ちてしまう。それを窘める母親。
いつもと変わらない、人里の日常……だが。

「あははー、ひっかかったー」
「あなたもやるわね、妖精にしてはいい能力よ」
「いつもはどんくさいのにね」
「どの口がどんくさいって言ってるんだ……」

俺は三妖精とともに、その光景を近くの木の上から見ていた。むろん姿はサニーが、音はルナが消している。

「さっすが、ルナの見込んだ新入りねー」
「私はただ、使えそうな能力のやつがいたから拾ってみただけよ。オスの妖精もめずらしいし」
「いけずだなぁ、どんくさいルナにしてはたまにはいいことしたからほめてあげてるのに」
「そうよ、自分のお古きせてるし、盆栽とおなじでただの寓集品だと思ってたのに」
(ひどいいわれようだなぁ……)

妖精になった俺は、風や水と対話して、少しだけだが力を借り、操れる能力を身につけていた。
三妖精に縁がある森の人形遣いや魔法使いに聞くところによると、人を捨てるとき、河原で水や風とひとつになっていたのがきっかけのようだ。

さっそくその噂を聞きつけた天狗と河童に勝負を挑まれたこともあったが、弾幕四分の一くらいのハンデをもらってすらぼろぼろにやられ、一回どころか七回休みくらいを喰らってしまった。
さらに、休みの間にあることないこと新聞に書き立てられてたのだからたまらない。
……なにより、こっちはまだスペルカードも持ってないっての。

もっともそれ以前に、妖精としてはどんくさいことこのうえない。
空は飛べるがほとんど風任せで方向が定まらないし、羽を消すのも中途半端で、木に降りててもしょっちゅう木の葉にひっかかる。それゆえ着替えも満足にいかない。
……正直、ルナよりどんくさい。
三妖精にしてみれば、かっこうの弄りキャラがでてきてご満悦のようだ。

「そういえばルナ、最近ふとった?」
「な……いきなり何よ!?」
「またおいしいキノコでもみつけたんでしょー、教えなさいよー!」
「あー……もう、またこんどね」

俺とルナの関係は、サニーとスターにはひみつである。
しかしさすが視覚のプロたるサニー、ふんわりして体型がでにくいルナのドレスの上から見破るとはおそれいった。当然秘密なのだ、ルナのおなかの中に、もう一匹妖精がいることも。
まぁ、スターはルナの中にもうひとつ感じるものがあるようで、薄々勘付きつつ後ろで不敵な笑みを浮かべているだけだが。こいつは敵に回したくない。

そして、月日は流れ……

妖精は本来、自然の体現としてどこからともなく湧いて出て、どこへともなくいなくなる存在。自然そのもの。
しかし俺とルナの前にいるこのちびっこは、あきらかな意志によって、うっすらとだが人間の血すら受け、この世にあらわれた存在。
半人半妖はこの世界に数いれど、前例のないその存在が幻想郷に起こす風がどんなものか、いまは誰もわからない。
でも……

「あっ、んぁ、ぁん……はぁ、ルナ……っ、るなぁ……」
「んぁ……○○さんっ……すごいっ……のぉ、もっと……もっときてっ……」
あの夜、俺とルナのあいだに芽生えたものは、たしかにここにある。

とっくにその覚悟はできている。いまは見届けよう。
人と同じ時間を生きられない存在になったからこそ見える、この世界のすべてを――


イチャネチョするロダ : icyanecyo_0376.txt

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