天井は豪華な金の装飾。豪奢な天蓋のついた大きなベッド。壁には職人が手を尽くした幾何学模様の装飾。床には隻眼のホワイトタイガーの毛皮が敷いてあり、その床も細かい細工がなされている。
 それは豪華絢爛という言葉が見事に当てはまる部屋だった。
 だが、そんな雰囲気を崩す二つの要因がある。
 一つ目はむせ返るような甘ったるい香の匂い。苦手な者ならば嗅ぐだけで、頭がおかしくなる程の混沌とした匂いだった。
 二つ目はフカフカとしたベッドに横たわる眼鏡をかけた茶髪の少女。それだけならば要因となりえないが、その手首には魔力を奪う特殊な手錠が付けらていた。
 少女――アウスはむせ返るような香の匂いによる吐き気に耐えながら、この部屋の主を睨んだ。

「そう睨むではない。せっかく儂が買ってやったのじゃ、奴隷の分際でこのような部屋にすまわせてもらえるなぞ、普通ではありえんことじゃぞ」

 豚が喋っていた。いや、一応にもコレは人間だ。背丈はアウスの二倍近くあり、着ている服も豪奢だったが今にも張り裂けそうである。
 豊かに伸ばした不潔なヒゲ。脂ぎったつやつやした肌。なにをとってもアウスには同じ人間であることが信じられなかった。

「……」
「だんまりかのう? 儂としては泣き叫んでくれたほうが楽しいのじゃが」

 下種。こんな下種にアウスは買われてしまったのだ。
 事の始まりはあの盗賊たちに襲われた時だった。魔法で応戦はしたものの、何分数には勝てずアウスは捕まり、杖も奪われて奴隷商へと売り払われた。
 そして、この豚の目に止まってしまい今に至る。

「ふむ、身体の発達は良さそうじゃの」
「触るなっ」

 伸ばしてきた豚の腕に食ってかかる。豚は手を引っ込めながら、くつくつと笑った。

「いいぞいいいぞい、その調子。儂はそういう目を見るのが好きなのじゃ」
「うるさいっ! 僕はあなたなんかに屈しない!」
「『僕』か。これはそそるぞ。いやはやいい買い物だった」
「……っ」

 嫌悪感にアウスは顔をしかめた。
 本当なら友人たちの家に到着しパーティに参加していたはずだったのに、どうしてこんなことになったのだろう。自分の今の状況に嘆きつつ、知恵の回るアウスは必死に打開策を探し続ける。

「帰りたいという顔をしておるな?」
「……それがどうした」
「なに、賭けをしようかと思ってな」
「賭け?」

 いきなり持ち出された要件に、アウスは目を白黒とさせる。
 やがて条件が分厚い豚の口から放たれた。

「そうじゃな、今から一時間、一度も絶頂しなければ開放してやってもよいぞ」

 言葉の意味が最初はわからなかった。理解する前に豚がアウスの上にのしかかる。
 香に犯された頭でも否定の言葉は飛び出させることができた。

「やめろっ! そんなの嫌だ!」
「ほう、なら儂のペットの番になりたいか?」
「――――っ」
「なら、逆らわぬことじゃ。賭けは守るのが儂なのでな」

 太い指がアウスの服を引きちぎる。下着も引き剥がされて、年の割には随分と大きい二つの果実が揺れでた。
 感心したように豚が声を上げる。

「おお、これはこれは随分と大きな胸じゃのう。どれ、味見をしてやろう」

 豚がアウスの左の果実にかぶりつく。むろん本気で噛まれている訳ではないが、アウスにとっては未知の感覚だった。
 吸われ、弄られ、嬲られる。汗に濡れた果実を豚は味わいながら、もう片方を手で揉み始めた。豚の大きな手でも収まりきれない果実は、強い力によって無理やり形を変えられる。太い指は果実の先端を抓り、いやがおうにも固くさせられた。

「……ぅっ」
「どうした? まだ前座じゃが、もう額に汗が浮かんでおるぞ」
「違う、これはっこの部屋が暑いだけ――――ぁっ!?」

 いつの間にか下半身に伸びた豚の手が、スパッツの上からクレパスをなぞり始めていた。 
 不意打ちに思わず嬌声が漏れ出て、豚は顔を醜悪に歪める。そのままアウスの桃色の唇に、分厚い唇が近づけられた。

(入れてきたら噛んで――)
「噛んだらわかっておるだろうな?」
「くっ……んんっ……んぅ」

 読まれたかのように脅され、アウスが硬直した隙を狙ってディープキスが実行された。アウスの口内をほとんど埋めてしまうほどの太い舌が唾液を得ようと暴れまわる。

(息が……でき、ない)

 酸素を得ようとアウスは暴れるも、絶望的なまでの体格差の前ではそれも叶わない。両腕さえ封じられていなければ、せめて魔法を封じる手錠じゃなければ、こんなやつにいいようにされないのに。アウスは涙を浮かべながらこれが早く終わる事を祈る。

「んんっ……ぷはっはぁはぁはぁ……」

 やがてやっと解放されると、香のことも忘れて大きく空気を吸った。口元に残った唾液が気持ち悪かったが、それ以上に体中が酸素不足でまともな思考も奪われかけている。それを危険だと思ったから大きく深呼吸をしたのだ。だが、それも間違いだった。

「やはりいいのう、年頃の女の唾液はな。して、この香にはな少し面白い効能があるのじゃよ」
「なっ……なに、これ」

 まるで火が付いたかのように体中が熱を放った。頭の中は桃色の波に飲まれかけ、得体の知れない感覚がアウスをおそう。

「この香はな、普通に吸う分には影響は少ないが、今のように一気に吸い込めばたちまち媚薬に侵される」
「そ、そんな……んぁっ」

 まずい、と本能的にアウスの脳が警鐘を鳴らした。豚は何もしていないはずなのに、身体の疼きが強まる一方だ。このままではイってしまう。こんな豚にイカされてしまう。

「惜しいのう。多量に吸い込まねば賭けに勝てたかもしれんのにな、これでお前の勝ち目が潰えたぞ」

 さて、と豚が言うと大きな手がアウスのスパッツを掴み引きずり下ろした。すでにそこは濡れ始めていて、下着には大きなシミが出来てしまっている。そのままショーツ脱がされて、とうとう花弁が顕となった。

「綺麗なピンク色をしておるの。どれ」

 太い豚の舌がアウスのじんわり濡れた花弁を舐め始めた。無理やり奥へ侵入され、痛みさえ感じるほどの気持ち悪いはずの感触が、香の媚薬成分によって快楽へと変えられる。

「やめっ……あぁっ……ふぅんっ!」

 耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ、嬌声を漏らしながらも懸命に達することに耐える。
 豚はアウスのそんな反応が楽しいらしく、さらに太い舌を花弁の奥へと進めていく。香によって発情させられた身体は、まるで自分のものではないかのようで、何をされても快楽へと変換してしまっていた。

(耐えるんだ……こんな奴にイカされるなんて絶対に嫌だ)

 それとは裏腹に、花弁から漏れ出す愛液は時間が経つほど量が増し、体中からは湯気が出そうなほど汗が流れ出す。
 もう思考能力はほとんど奪われて、何をすれば良いかという選択肢さえ浮かばなかった。

「もう少しのようじゃな、ほれお豆さんを噛んでやろう」
「ひぎぃっ」

 盛り上がってきた肉豆に豚が噛み付いた。女にとって、最も敏感と言われているそこへの刺激は痛み以上に快楽をもたらす。そこでアウスは限界だった。

「あっあっあああああっ!?」

 絶頂。ブシャアッと花弁から潮が吹き出し、豚の顔にかかっていく。一時間も立つことはなく、たった十数分程度でアウスは達してしまった。
 顔中に愛液を滴らした豚が笑う。

「儂の勝ちじゃなぁ」
「くっそ……」

 せっかくのチャンスだったのに。アウスは自己嫌悪にうなだれる。
 だが、豚は少女に情け容赦なく、絶望の言葉を口にした。

「さて、そろそろ本番とさせてもらおうか」
「――――っ!?」

 豚がズボンを下ろし、それを露出させたときアウスは声にならない悲鳴を上げた。
 滑りのある液に覆われ硬くなった肉棒は、おおよそアウスの腕より太い。そんなも化物が挿れられる。まだ自分は処女なのに。それが何より恐ろしかった。

「ヤダヤダヤダヤダッ! 来るな来るなぁ! そんなの絶対……っ」
「いい表情じゃ、それ」
「――――いやっぁぁぁぁああああああああっ!?」

 逃げるまもなく、躊躇われる事もなく、それはアウスの花弁へと突き入れられた。
 奥まで一気に突き込まれて、破瓜の痛みさえ感じる暇はなかった。唾液や愛液が潤滑油になっていたとは言え、許容外の物の侵入は肉を裂くかのような激痛をもたらす。

「い、いっやぁっあああああっ!?」
「キツイな、じゃがこれはこれでそそる。ほれ、もっと泣き叫べ」
「あぐぅっ……やだぁっ……抜いてぇっ……あああっ!?」

 ゆっくりと動かしてやるという意識はこの男には無いらしい。パンパンパンッ! と肉と肉がぶつかって、音がなるほどの勢いで突き入れてくる。 

「本当に痛いのかの? そのわりには動きが良いぞ、ぶははははっ!」
「そっ……なわけっ……くぅっ!」

 しかし、いくら口ではそう言っていても、アウスの身体はその真反対の主張を行っていた。
 無理やり押し広げられているというのに、その痛みは既にない。その代わり、狂おしいほどの快楽がアウスを包んでいる。太すぎるものを無理やり許容した花弁からは、愛液が湯水のごとく湧き続けていた。

「もうイキっぱなしなんじゃろう? 素直にならんか」
「だれ、がぁっ……んあっ」

 一切の情け容赦なく、豚の分身が花弁に突き込まれる。その度に、最も奥にある門が叩かれて、アウスは悲鳴を上げた。

「そんなに子宮を突かれるのが気持ち良いか、ならばもっと早くしてやろう」

 豚の腰の前後運動がさらに早くなる。突かれる頻度が上がって、アウスの思考はその度に飛び散った。
 痛みや、悔しさや、憤りや、悲しみや、快楽や、肉欲や、それらが入り混じってアウスの中を満たしていく。

「そろそろ子種を放ってやろう。この部屋を満たす香には媚薬成分だけでなく、着床を促す効能もあるのじゃ。ほぼ間違いなくお前は儂の子を孕むじゃろう」
「やっ……やめてぇっ!?」

 すでにアウスに冷静さなどなかった。ただ、中に出されるという事態に、唯一残った理性が悲鳴を上げる。
 ただですら香が効いているというのに、今日は危険日なのだ。しかも、こんな豚の種が自分の中に放たれるだなんて、想像したくない。ましてや孕むなんて地獄でしかない。
 けれで、アウスに拒否権なんて存在しなかった。豚があざ笑うように叫ぶ。

「喜べ! 奴隷風情が儂の子を孕むなぞ、誇りに思っても良いことなのじゃぞ!」
「あっあああああああ」
「それっ!」

 その瞬間、豚のモノが急激に膨らみ、アウスの中で熱源が放たれた。放たれた精は子宮内まで満たし、結合部分から白濁液が大量にこぼれていく。

「あ……ああ……ぅぁ……そん、なぁ……」
「ふー、さて儂はまだ収まっておらんぞ。完全に孕むまで続けてやろう」

 もうアウスに何かを考える力はなかった。抜かぬまま行為が再開されて、アウスは思考を闇に閉ざした。
 その後数時間、豚の部屋で少女の嬌声が途切れることはなかったという。

おまけ(アナザーエンド)

「壊れたか、まあ良い。次に起きたとき孕んでいるようにしてやろう」

 糸の切れた人形のように意思を閉ざした少女へ、豚が行為の続きを行おうとする。
 だが、そこで

「待てっ!」
「――――なっ!? 誰じゃ、どこから入った!?」

 そこにいたのは筋骨隆々の青鎧の戦士。一体どこから侵入したのか、豚には予想できない。

「どうやって? 私に不可能はない」
「答えになっておらん! お前は何者なのじゃ?」
「私か?」

 戦士は語る。高らかに。

「私はダイ・グレファー。人は私をドラゴンの戦士と呼ぶ!」
「聞いたことがあるぞ、確か連合軍の戦士じゃとか。じゃが何しに来た」
「ナニしに来たって? お前が考えてみるがいい」

 悪逆非道の限りを尽くした豚にとって、恨まれることなぞいくらでもある。
 それをねじ伏せてきたのが豚なのだ。

「見たところ、儂を殺しに来たか」
「違う」
「何? ならばこの小娘を助け手に来たというのか?」
「違う」

 豚にはこれ以上の予想ができない。だから答えは戦士ダイ・グレファーが言った。

「それはな――お前を貰いに来たからだ」

 その瞬間、豚にかつてないほどの怖気が走った。
 思わず後ずさると、瞬きの間にダイ・グレファーは豚の後ろに立っていた。

「まっ……待てっ!」
「必殺昇天突きぃっ!」
「アッーーーーーーーーーー!」

 その後、騎士団が屋敷を訪れた時には、眠る少女を除き屋敷の主の姿は忽然と消失していたという。
 ただ不思議だと思われたのは、性処理に使われたであろう少女の体は驚く程綺麗になっていたことだった。

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