最終更新:ID:DygMqGiAOg 2015年12月21日(月) 05:33:39履歴
黒崎隼との決闘で倒れた素良だったが、幸い軽傷で済んだらしく、数日の検査入院で問題ないようだった。
遊勝塾の皆や権現坂達は医者のその報告にホッとしながら、素良の見舞いを済ませて帰って行った。
だが柚子と遊矢の二人は、黒崎との決闘中の素良の様子を思い出してどこか腑に落ちない気分で歩いていた。
「……どう思う? 素良の態度」
「……うん──」
遊矢に言われ、柚子は先程病室で話した素良の様子を思い出す。
『え、決闘中のあれって? あんなのお芝居でしょ?』
黒崎との決闘中の会話について遊矢が尋ねた時、素良はケロッとした表情で首を傾げて言った。
『少なくとも僕はそのつもりだったけどなぁ。だってあいつ、僕の言うこと全然聞いてくれないし、だったら僕が合わせるしかないじゃん?』
他の皆はその答えに笑いながら納得していたので、多少の違和感を覚えた遊矢もそれ以上突っ込めなかった。
だが──、
「嘘、吐いてたと思う」
素良がなついているのは遊矢だが、二人の内付き合いが深い方と言えば、彼から融合召喚を教わっていた柚子である。
故に、遊矢が違和感を覚えていた以上に、柚子ははっきりと彼の態度からその嘘を捉えていた。
「あの子、何か隠しながら話してたし、少し苛々していたみたいだったし、それに……」
飄々としているようで、根本的には素直な性格の素良である。感情は隠せても『隠した』ことがこちらには分かってしまう。だから結局、分からない時は分からない表情になるし、怒る時はどう取り繕っても強張った表情を崩せない。
その彼が遊矢の質問に対して、突然の問いに目を丸くし戸惑いを内包したキョトンとした表情ではなく、予測していた質問に用意してきた回答をした。
そしてそう答えたことをさも重要でないかのようにケロッとした表情を張り付かせていたのなら、そこには嘘があったと判断せざるをえないだろう。
「やっぱり、その瑠璃って子が関わっているのかな……?」
道すがら、遊矢にユートの話をしておいた。沢渡との決闘をしたのが彼だと柚子が知っていたことにも特に怒りもせず、最後まで話を聞いてくれた。
(もう、物分かり良すぎよ)
柚子とてあからさまな罵倒を望んでいた訳ではなかったが、少しは文句を言ってくれなければ逆に傷付く。
……まるで、自分のことになどどうでもいいと思っているようで──
「柚子?」
「──あ、うん。そうね……」
と、遊矢に声を掛けられて柚子は意識を戻す。そう、今はそんなことを考える時ではない。
そもそも自分だって──、
「…………」
「……そうだな。二人で考えてても仕方ないし、今度もう一度素良に聞いてみよう」
黙り込んだ柚子相手では話が進みようもなくなり、遊矢はそんなことを言った。
「なんだかよく分からないけど、黒崎も今はLDSにいるんだから、あっちから先に話を聞いたっていい。あいつ決闘の後、素良に何かしようとしてたしな」
「……そう、ね。ああいや──」
そう言えば黒崎を敵だったり味方だったりと、真澄達の様子もおかしいのだったと柚子は思い出す。
光る腕輪についても何も分からないままであり、最近自分達が、何か大きな力が働いているところに巻き込まれている気がしてならない。
一体自分は、何をすべきなのだろうか──。
「私は……」
大きな力。
その内の一つは、やはり素良である。
ならは彼とはもう一度話さなければならないと柚子は思った。
「……素良については、私に任せてくれない? 皆で行くより二人なら話してくれることもあるかもしれないし──」
「柚子、いいのか?」
「うん。大丈夫」
現実として素良は怪しい。仲間としてそれは心苦しいが、だからこそ彼のことを信じなければならない。
『じゃあ、柚子はこれから僕の弟子一号ね!』
『だからぁ、融合モンスターは普通のデッキに入れてちゃ駄目なんだってば!』
『大丈夫だよ。今の柚子なら、LDSの融合使いなんかに負けるはずないんだから』
少なくとも今まで過ごした素良は嘘ではない。ならば彼が自分達の仲間であることは変わりない。ユートや黒崎と憎み合う理由も、瑠璃を拉致したのかも、素良が何を抱えているのかも、それらがどう絡んでいるかなど問題ないのだ。
それでも柚子は知りたかった。いつも笑顔でいた素良の内側を。それを知った自分に対して彼がどう振る舞うのかを。
それは──、
「私は素良の弟子一号だから」
柚子素良2へ続く
遊勝塾の皆や権現坂達は医者のその報告にホッとしながら、素良の見舞いを済ませて帰って行った。
だが柚子と遊矢の二人は、黒崎との決闘中の素良の様子を思い出してどこか腑に落ちない気分で歩いていた。
「……どう思う? 素良の態度」
「……うん──」
遊矢に言われ、柚子は先程病室で話した素良の様子を思い出す。
『え、決闘中のあれって? あんなのお芝居でしょ?』
黒崎との決闘中の会話について遊矢が尋ねた時、素良はケロッとした表情で首を傾げて言った。
『少なくとも僕はそのつもりだったけどなぁ。だってあいつ、僕の言うこと全然聞いてくれないし、だったら僕が合わせるしかないじゃん?』
他の皆はその答えに笑いながら納得していたので、多少の違和感を覚えた遊矢もそれ以上突っ込めなかった。
だが──、
「嘘、吐いてたと思う」
素良がなついているのは遊矢だが、二人の内付き合いが深い方と言えば、彼から融合召喚を教わっていた柚子である。
故に、遊矢が違和感を覚えていた以上に、柚子ははっきりと彼の態度からその嘘を捉えていた。
「あの子、何か隠しながら話してたし、少し苛々していたみたいだったし、それに……」
飄々としているようで、根本的には素直な性格の素良である。感情は隠せても『隠した』ことがこちらには分かってしまう。だから結局、分からない時は分からない表情になるし、怒る時はどう取り繕っても強張った表情を崩せない。
その彼が遊矢の質問に対して、突然の問いに目を丸くし戸惑いを内包したキョトンとした表情ではなく、予測していた質問に用意してきた回答をした。
そしてそう答えたことをさも重要でないかのようにケロッとした表情を張り付かせていたのなら、そこには嘘があったと判断せざるをえないだろう。
「やっぱり、その瑠璃って子が関わっているのかな……?」
道すがら、遊矢にユートの話をしておいた。沢渡との決闘をしたのが彼だと柚子が知っていたことにも特に怒りもせず、最後まで話を聞いてくれた。
(もう、物分かり良すぎよ)
柚子とてあからさまな罵倒を望んでいた訳ではなかったが、少しは文句を言ってくれなければ逆に傷付く。
……まるで、自分のことになどどうでもいいと思っているようで──
「柚子?」
「──あ、うん。そうね……」
と、遊矢に声を掛けられて柚子は意識を戻す。そう、今はそんなことを考える時ではない。
そもそも自分だって──、
「…………」
「……そうだな。二人で考えてても仕方ないし、今度もう一度素良に聞いてみよう」
黙り込んだ柚子相手では話が進みようもなくなり、遊矢はそんなことを言った。
「なんだかよく分からないけど、黒崎も今はLDSにいるんだから、あっちから先に話を聞いたっていい。あいつ決闘の後、素良に何かしようとしてたしな」
「……そう、ね。ああいや──」
そう言えば黒崎を敵だったり味方だったりと、真澄達の様子もおかしいのだったと柚子は思い出す。
光る腕輪についても何も分からないままであり、最近自分達が、何か大きな力が働いているところに巻き込まれている気がしてならない。
一体自分は、何をすべきなのだろうか──。
「私は……」
大きな力。
その内の一つは、やはり素良である。
ならは彼とはもう一度話さなければならないと柚子は思った。
「……素良については、私に任せてくれない? 皆で行くより二人なら話してくれることもあるかもしれないし──」
「柚子、いいのか?」
「うん。大丈夫」
現実として素良は怪しい。仲間としてそれは心苦しいが、だからこそ彼のことを信じなければならない。
『じゃあ、柚子はこれから僕の弟子一号ね!』
『だからぁ、融合モンスターは普通のデッキに入れてちゃ駄目なんだってば!』
『大丈夫だよ。今の柚子なら、LDSの融合使いなんかに負けるはずないんだから』
少なくとも今まで過ごした素良は嘘ではない。ならば彼が自分達の仲間であることは変わりない。ユートや黒崎と憎み合う理由も、瑠璃を拉致したのかも、素良が何を抱えているのかも、それらがどう絡んでいるかなど問題ないのだ。
それでも柚子は知りたかった。いつも笑顔でいた素良の内側を。それを知った自分に対して彼がどう振る舞うのかを。
それは──、
「私は素良の弟子一号だから」
柚子素良2へ続く
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