あらゆる架空国家が併存するモザイク世界

「マクラ」とは、落語の本編に入る前の世間話や小話のことである。

『梅亭鶯志独り会』(2023/05/05)

鶯志「えー…なんですな。子供ってのはね、理由もなくぶっ壊すでしょ。何の前触れもなく。砂場でね、天下の名城だなんつって城をね、作ってね、自分で突然壊してね。親が責任感がないのよあの子はなんて言うでしょう。言わねえか(会場・笑)。んー。今の大人でもそういうやついるでしょ。自分で企画立ててさ、やめちまいやがんのよ。この間さ、直助のやつがさ、大八車が多くなってきたから交通安全の落語を作らないかって言ってくんのよ。つまらねえって言ってやったら顔真っ赤にして怒ってね(会場・笑)何言ってんだよコンコンチキが。落語は落語なんだよバカタレ!(会場・拍手)。まあねえ、でも直助、いや直助師匠にはね、感謝申し上げてますよ。いや皮肉じゃなくてね、落語をそういうふうに馬鹿、いや頭のお弱い人々にまで浸透させようってんだから。それにくると俺を好きなヤツはえれえよな!お前らのことだよ!(会場・拍手)。えー、話があっちこっちいってるなあ。あのねえ、直助師匠はすごく清廉潔白なんすよ。いい人。でもね、世の中それだけじゃ渡っていけない時もあるんすよね…」
(このあと『黄金餅』を披露)

『新春梅亭一門会』(2021/01/05)にて

鶯志「えぇ、欧州でまた軍事的緊張がなどと、いろいろなことをあっちこっちの国が喚いておりますが。なんで戦争すんのかね。バカらしくってしょうがねえやな。戦争なんてな、大義名分があればこそですよ。てやんでえ、ちょいと前までお互い殺し合ってた連中が何言ってやがんだ、べらぼうめ!と他の国から言われそうだけどね、しょうがないでしょうよ、ちょいと前までこの扶桑には統一された国がなかったんだから。そこかしこで大名たちが争ってたわけじゃないですか。幕府がどうとか朝廷がどうとかでね。釈迦に説法だけども、「扶桑擾乱」っていう血で血を洗う抗争の中で出来た国ですからね、みんな戦というものには人一倍敏感なわけですよ…俺はそう思うよ。まあなんていうか、戦争アレルギーみたいなもんですよ。扶桑国の政府だってそうなんだと思うよ。お上の思し召しかもしれねえけどもよ。散々お互いでドンパチやってた末の統一国家だもん。だからさあ、どこの国とは言わねえけど、お隣さんみたいにつまらねえ理由で戦争なんかしないわけですよ。戦争好きなら自分の国民でも撃ってりゃいいじゃねえか、と言おうと思ったら、本当にやっちゃった。ワレーシェンっていうところでね。ま、バカは隣の火事より怖い、ってなもんですな。まあ、落語にもこういう底抜けのバカがたくさんいるんですよ…って、あー、何の話するか忘れちゃったよ。おい、前座、おい!おいって言ったら来いよ前座!誰でもいいからこーい!…来た来た。で、なんだっけ?」
前座「『初天神』です」
鶯志「あ、そうだった。えれえなお前、下がっていいぞ。…新春だからか。でもこの流れでそれやってもつまらねえだろ。えー、違う噺をします!」
(この後『らくだ』を披露)

『梅亭鶯志慰問独演会(将軍府)』(2020/11/17)にて

鶯志「ええ、大勢の軍人さんを前にして恐縮でございますが…おいおい、てめえら俺のマクラが聞きたかったんだろうが!」(歓声・拍手)
会場「よっ待ってました!」「名人芸!」「たっぷり!」「鶯志ー!」
鶯志「へっへっへ、ありがたいこってすな。これだけの拍手もらっちゃ真面目にマクラも落語やらなきゃいけない。しかしなんですな、お隣のお国は猫も杓子も戦争だときたもんだ、おかげでこっちはとばっちりですよ。みなさんねえ、阿呆らしいと思いませんか!?まあしかしどの国もしょうもない事で戦をする。子供の喧嘩ですよほんとに。それに、毒ガスってえのを使ったそうじゃありませんか。兵隊だけじゃない、女子供も吸っちゃあ死ぬというね、恐ろしい兵器ですよ。でもね、あたしもこれ使えるんですよ。さっき喋ったでしょ?なんたって、あたしゃ『毒舌』落語家ですからね…」(会場笑)「まあそりゃともかくですね、ついでに毒を吐かせてもらえりゃ、そういうまともじゃない兵器を使うような国と国交を結んでる、これもいかがなもんかと思うわけですよ、一市民としてみりゃ。まあ、政治家の考えてるとといったら複雑なんでしょうから、あたしにゃちっとも理解できませんよ。でもねえ、これだけの非道な国と未だにお付き合いしてるなんて…って思うわけですけど…いや今日の朝ね、あたしのカミさんが『今日の慰問の落語会は、関白殿下も来なさるそうだから粗相があっちゃあいけないですよ』ってね、言うんですよ。馬鹿野郎!おめえ落語家ってなんなのか分かってねえのかよ、俺みたいな男と結婚してよ。これだけ大勢の軍人さんを前にして、言いますけどね、まああたしゃ弱腰の関白殿下も軍もあまり好きじゃないんだがね…おぜぜがもらえるってんなら話は別だ」(会場・笑)。「まあ、そういう喧嘩はいつの時代にもありましてね、今回はちょっとネタおろしを1つ…」
(この後『喧嘩長屋』『天狗裁き』を披露)

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