あらゆる架空国家が併存するモザイク世界

扶桑国の落語とは、扶桑国の芸能の一つである。日本の落語と混同されるのを防ぐため、このように表記した。扶桑国の講談も参照のこと。

扶桑国の落語の歴史

扶桑国の落語の始まり

曽呂利真太郎(そろり しんたろう)から、扶桑国の落語は始まった。彼は江戸時代中期の旗本で、落語マニアであった反面武士としての弓術などの手習は疎かにしており、周囲からは「町人文化に熱中するなど武士の風上にも置けない」などと言われ、白い目で見られていた。
モザイク地球に転移すると、これ幸いと落語を始め、人を集めては寄席の真似事を行なっていた。そのうち次第にファンが増えていく。勢いに手応えを感じた彼は亭号を名乗り、本格的に落語家としての活動を開始したのであった。亭号は、日本の落語の祖とされた曽呂利新左衛門(そろり しんざえもん)に因んだものである。しかし当時は「扶桑擾乱」と呼ばれる大規模な内乱状態だったため、食うや食わずの生活がほとんどだった。
扶桑国建国後も、曽呂利真太郎は落語家としての活動を続けた。そして彼の落語に惹かれ、弟子になりたいという者も現れ、落語は段々扶桑国の人々に浸透していく。

式部省からの認可

弟子も多くなり、曽呂利真太郎はこの先を見据えて「扶桑国落語教会」を設立し会長となる。重要課題は式部省からの認可、更には助成金の申請であった。「お笑い」は基本的に低く見られ、認可は得られないだろうと思われたが、式部省からは「転移前の落語を古典とし、形を変えず継承すること」を条件としてあっさりと認可が降りる。扶桑国の伝統文化として認められたのである。
またこの頃、曽呂利真太郎は弟子たちにそれぞれ別の亭号をつけ、巣立たせた。

扶桑国の落語の特徴

  • 現実の日本では、大阪を拠点として演じられた落語を「上方落語」と呼んでいたが、扶桑国では「上方」がないために区別はされず、上方落語独特の演目はそのまま残っているが、似通った演目は統一される傾向にある。
  • 転移前から継承されている落語を「古典落語」、扶桑国で作られた落語を「新作落語」と呼ぶ。新作落語のみでは式部省からの認可が得られないため、扶桑国落語協会に所属する落語家は、古典落語を覚えることが必須となっている。
  • また、特徴として世相を鋭く批評する「毒舌」があげられる。扶桑国では言論の自由が存在するが、それ以上に権威を批評する気風が強く、また関白や公方などの政治に関わる者たちも、批判を言われるのも仕事のうちと思っているからである。しかし、諸外国への批評は、外交問題にもなりかねないと危惧する者もいる。また、やはり帝への毒舌は気が引けるらしく、今まで誰も言ったものはいない。
  • 近年は外国のファンも多い。神聖フランス帝国のシャルロット1世は落語好きとして知られる。

落語家の階級

落語家は修業によって階級制度が存在する。昇級は基本的に師匠が認めた場合であるが、協会ができて以後は前座は最低3年、真打ちまで最低10年と言われる。

前座

師匠に弟子入りを志願した落語家の、最初の階級はこの「前座」である。見習いともいう。基本的に内弟子となり、師匠の家で生活をし、家事手伝い・身の回りの世話をしながら落語を覚えるが、近年は女性落語家もいるため、一緒に住まわせるのは問題があるので、近所の下宿を師匠が世話することもある。また寄席の手伝い、太鼓や笛などの稽古、出演する落語家へのお茶出しなどやることは多い。協会から最低限の給金が支給される。

二ツ目

前座から二ツ目になると、師匠の家や楽屋での雑用をせずともよくなる。また着物も、今までは着流しだったのが紋付羽織袴を着けることもできるようになる。しかし自身で仕事を探さなくてはならない他、落語の稽古も続けないとたちまち他の二ツ目との差が開いてしまう。熱心に稽古をするかしないかで、自身の落語家人生が決まってしまう重要な階級である。

真打ち

真打ちとなると「師匠」と呼ばれ、寄せでのトリを演じること、弟子を取ることが許される。

落語家の言葉

落語家の言葉は、扶桑国における武家や公家の言葉とも異なるもので、「噺家言葉」とも呼ばれる。2種類に分けられ、1つはいわゆる「江戸弁」(下町言葉)であり、荒っぽくて立て板に水のごとく早口でしゃべる。もう一つは「上方言葉」と呼ばれ、いわゆる「大阪弁」である。

扶桑国落語家の亭号一覧と、主な落語家の紹介

扶桑国における落語家の祖、曽呂利真太郎は多くの弟子を育て、自身が「一人前」と判断した弟子は別の亭号を与えて巣立たせている。その結果、それぞれの一門の個性が強くなり、扶桑国の落語はますます豊富となっていった。
落語家のうち、真打ち・二ツ目を紹介する。なお全て初代である。

曽呂利真太郎に弟子入りした落語家を祖とする一門

曽呂利一門


(“丸に九枚笹”は曽呂利一門の定紋である)
曽呂利真太郎を家元とする一門。
  • 曽呂利真太郎…扶桑国落語協会会長。本名長谷川長義。扶桑国における落語家の祖であり、多くの弟子を育てた。落語は忠実、オールマイティに何でも演じた。
  • 曽呂利真之介
  • 曽呂利真一郎
  • 曽呂利真右衛門

梅亭(ばいてい)一門


(“丸に梅鉢”は梅亭一門の定紋である)
梅亭鶯志(ばいてい おうし)を家元とする一門。名前は鳥に因む。
  • 梅亭鶯志…本名前田隆家(まえだ たかいえ)、江戸時代の武士であったが転移後に曽呂利真太郎の落語に魅了され一番弟子となる。落語協会設立後、師匠より独立を奨められ、自身の家紋であった梅鉢から「梅亭」、そして梅には鶯がつきものであることから「鶯志」を名乗った。非常に癖のある性格で、達観したような鋭い世評で知られ、また直情径行でTPOを(わざと)わきまえない毒舌落語家として有名である。弟子は鶯志の強い個性に惹かれ、弟子になった。
  • 梅亭鷹富士…後に許しを得て独立、講談師・冬寂庵白州(とうじゃくあんはくしゅう)となった。
  • 梅亭子規
  • 梅亭文鳥
  • 梅亭ぷうる…扶桑国初の女性落語家。二ツ目。コルシカ島出身で扶桑国人とフランス人のハーフ。プールとはフランス語で雌鶏の意。扶桑国と神聖フランス帝国の架け橋になると期待されている。

鈴屋(すずのや)一門


(“左三つ巴”は鈴屋一門の定紋である)
鈴屋直助を家元とする一門。名前は江戸時代の国学者の名に因む。
  • 鈴屋直助…江戸時代の国学者。本名加藤安光。転移後に落語に目覚め、曽呂利真太郎に弟子入り、その後独立。曽呂利真太郎の弟子の時は兄弟子であった鶯志と何かと張り合っており、今でも芸の上ではライバル関係にある。鶯志とは違って「ためになる落語」を目指した。古典落語を丁寧に演じるのは師匠譲り。また人情噺を得意とし、上品な落語家として知られる。
  • 鈴屋紫冥
  • 鈴屋渓仲
  • 鈴屋ちかげ…女性落語家

福内亭(ふくちてい)一門


(“八咫烏”は福内亭一門の定紋である)
福内亭鬼外を家元とする一門。名前は鬼に因む。
  • 福内亭鬼外(ふくちてい きがい)…本名九鬼友隆。江戸時代の旗本の次男だが芸名で劇作家としても活躍。第二地球に転移後は曽呂利真太郎に弟子入りしたのち、独立。先祖が熊野神社の神主だったことから、八咫烏を紋とした。また劇作家だった経験から多くの新作落語を創作し、新作落語のパイオニアとして知られる。また彼は自身の新作落語を一門の専門とすることをしなかったため、彼が作った新作落語の中には、他の一門も演じるようになったものも多い。例として扶桑国の手続きの煩わしさを風刺した「ぜんざい公社」、ヨーロッパの昔話を元にした「死神」、年の瀬の人情噺として人気の高い「芝浜」など。
  • 福内亭鬼六
  • 福内亭鬼平
  • 福内亭桃太郎
  • 福内亭らむ…女性落語家。二ツ目

今春亭(こんぱるてい)一門


(“丸に蔦”は今春亭一門の定紋である)
今春亭馬笑を家元とする一門。名前は中国の故事にちなむ。
  • 今春亭馬笑(こんぱるてい ばしょう)…本名岩倉友清、江戸時代の下級公家出身。転移後に曽呂利真太郎に弟子入りするが、生来の無頼派気質で「飲む・打つ・買う」が災いし、師匠に頼み込んで金を借りた挙げ句賭博に使うなど、師匠を幾度も困らせた。しかし落語の腕は一流であった。独立し弟子を持つものの、今度は弟子を困らせている。いわゆる破滅型の落語家であるが中国の故事や漢詩に詳しい一面も持つ。落語家としてはバレ話(下ネタ)やブラックユーモア、どぎつい風刺、他の落語家の悪口などが多い。これは、転移前は下級の公家として様々な差別を上級公家から受けてきたことへの反動だと、本人は語っている。またバレ話を得意とすることから、女性の弟子は自身が固辞して取らないという噂である。
  • 今春亭尾生
  • 今春亭白眼
  • 今春亭愚山

それ以外の一門

曽呂利真太郎の弟子ではないが、落語協会の方針に賛同・入会している一門。

柏(かしわ)一門

柏豊楽を家元とする一門。上方由来の落語を演じる。

(“丸に蔓柏”は柏一門の定紋である)
  • 柏豊楽(かしわ ほうらく)…本名木下利次、江戸末期、上方で旗本の末子として生まれるが、落語好きが講じて家を飛び出し落語家・四代目三笑亭可楽(さんしょうてい からく)に入門し落語家となる。当時の亭号は「桂豊楽」。しかし転移後は一次落語を捨て、一武家として各地を転戦する。扶桑国建国後、寄席で曽呂利真太郎の落語を見、弟子入りを志願したが、豊楽の経歴を知った真太郎からは「釈迦に説法」と固辞され、逆に寄席に上がってほしいと懇願されて落語家に復帰した。復帰後は「桂」の名を憚り語呂の似た「柏」とした。
  • 柏文生
  • 柏真知助
  • 柏弓削丸
  • 柏三楽

天狗連

落語や講談を演じるアマチュアのことを俗に「天狗連」という。
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