ラッツヘルトの戦いに代表されるセルカティーナの速攻に、ビーストバリア国は危機感を感じていた。
このままセルカティーナがアヤクリス国を支配すると、宿敵である鬼龍軍は、後方に安全地帯を築く事となり、ビーストバリア攻略にのみ全力を尽くすことができることとなる。
そして、ビーストバリアの滅亡はアーズ国にとっても防波堤を失うこととなる為、他人事ではなく、両国は共同して鬼龍軍と戦い、この戦力を削ぎ取る必要があった。
鬼龍部隊とセルカティーナ部隊がまだ完全な連携をとっていないうちにこの作戦は実行しなければならなかったが、更に万全を期すため、アーズ国はフレイミスト国にも共同戦線を申し出た。
こうして、本来ならビーストバリア軍と援軍対鬼龍軍となるべき戦いは、アーズ国と援軍対鬼龍軍という戦いになり、ビーストバリア国は、主役の座をアーズ国のアルスレーナに奪われることとなる。(ただし、アルスレーナ自身は神器衆の説得もあり、今回の戦いに出陣していない)
三国連合軍の真の狙いはチャリオス岬の奪取であった。
ここを抑えることで鬼龍軍の領土を分断することができる。
これまでの情勢では、この岬を占領したとしても、ビーストバリア国とフレイミスト国は互いに無関心であった為、それほど重要視されることはなかった。しかし、状況は変わり、モルコア、リゼルバを支配下としたアーズ国が西に兵力を裂ける状態となり、また、昔は連携が希薄であったフレイミスト国とビーストバリア国も、五カ国連合会談、そしてディジィの戦い以後は、共同戦線が行われるまでになっていた。
そして、セルカティーナによる領土拡大が、それまで見逃されていたチャリオス岬を、三国に本気で攻略させる気にさせていた。
この戦いは長距離の移動を必要としたため、艦隊は戦力としてより地上部隊の輸送に徹した。
鬼龍軍は南方から迫るアーズ国、ビーストバリア国軍に対処するべく迎撃部隊を派遣したが、その隙に本命であるフレイミスト国軍がチャリオス岬に進軍、これを陥落させる。
更に、アーズ国軍はそれだけでは帰還せず、トミラスが矛先をモルト国に向け、南部の地域を次々と陥落させて領土拡大に成功する。
こうして、フレイミスト、アーズ国が領土を拡大する中、ビーストバリア国軍はこの戦いの本来の主役であるはずにも関わらず、鬼龍主力軍と激戦を繰り広げたのみで、得るものは何もなかった。
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