概要

国崩れの乱とは、アルファ714年に行われたガイヴェルドによる粛清であり、蜉蝣時代最後の大きな事件となる。

皇帝即位と独眼竜の死

戦乱の終幕が近づくと並行して、この大陸を襲った寒波は、年々その勢力を強めていた。
ベルザフィリス国が天下を統一した頃には、戦乱による苦しみがなくなるのと入れ替わるかのように、天災による民の苦しみが大きくなり、その日の食料にも困る土地が出てくる。
この頃の餓死者は、戦乱の戦死者とは比較にならないほど多かったとの記録もある。

そんな中、ガイヴェルドは、皇帝の位を復活させ、ベルザフィリス帝国の建国を宣言し、自ら初代皇帝に就くことを発表。
713年1月5日には、盛大な皇帝就任の式典を行った。

隠居生活を送っていたルーディアは、突如山を降りてガイヴェルドの元を訪れると、いまは皇帝になる時期ではない、まずは民の生活を安泰させるべきだと忠告するが、ガイヴェルドは、この様な時代だからこそ自分が皇帝となり国を富ませるのだと、頑として聞き入れなかった。
元々権力や地位に対して人一倍強い執着心を持っていたガイヴェルドは、この時よりルーディアを疎み始める。

その後ルーディアは、隠居後に非常事態に備えて長年かけて備蓄しておいた食料を周囲の民に分け与え、民衆の支持を受けていたが、この行為がガイヴェルドを更に怒らせる。
ある民が、ルーディアこそ帝位に就くべきだったと洩らした事がある。
これは勿論本心ではなく、感情的に咄嗟に発した言葉だが、これを聴きつけたガイヴェルドはその発言者を見つけ出して家族もろとも処刑すると、この言葉を真に受けて、皇帝が二人いてはならないとルーディアの存在に危機感を覚える。
ただし、ルーディアが、隠居後に領地を持っていたのならともかく、わずかな供と単身で隠居していたのなら、民衆を救うほど食料を備蓄していたというこの話には無理がある。
その辺の資料は乏しく、史実なのか後世の創作なのかはわからないが、どちらにしても、ガイヴェルドの性格が豹変すれば、相対的にルーディア時代への懐古から、彼女の人気が高まっていたことは事実であった。

こうした経緯から、ガイヴェルドルーディアに持つ感情は、もはや嫉妬と怒りのみとなり、714年9月12日、ルーディアディアルの墓参りをしている最中を暗殺者に襲わせた。
ルーディアは、ディアルの名を叫び、夫の墓に寄り添う形で息絶えたという。

国崩れの乱

ルーディアは病死として発表されたが、その訃報が伝わると、レニィラには瞬時にして何がおきたのか、そして誰が犯人なのかがわかった。
レニィラは、バイアラスヴィルガスディグドガイヴェルド討つべしとの密書を送った。
バイアラスヴィルガスは、レニィラと同じくルーディア派の将であり、ディグドヴァイグの戦い以降、ガイヴェルドと剃り合いが合わず、いつ自分が消されるかと怯えていた為、このレニィラの誘いに乗ることとなる。
だが、この密書はレニィラに養子を与える事で出世していたセドゥによって発覚しており、彼は自らの出世の為にガイヴェルドに密書の事を通告した。

9月28日、諸将はルーディアの葬儀のため帝都ルディック城に集結した。
この時、レニィラバイアラスヴィルガスディグドを集めて、反ガイヴェルドの密約を結ぶつもりであった。
しかし、全てが露見していた彼らは、葬儀の前に控え室で武器を外した瞬間を襲われて囚われる。

こうしてガイヴェルドの元に引きずり出された4将は、その場で処刑されることとなった。
自分を裏切ろうとした彼らに対するガイヴェルドの怒りは凄まじく、ヴィルガスディグドは生きたまま手足を切断され、バイアラスは目をくりぬかれ、レニィラは耳を焼ききられた。
4人は苦しみながら息絶えていき、ガイヴェルドはその光景を見下ろして笑みを浮かべながら優越感に浸っていたという。
同じ頃、4将の一族も囚われ、各地で連座処刑されていた。
バイアラスの妻は、奴隷から将軍の妻になり、リディを挟んで三角関係の恋話を摘むんだことで有名なシルであるが、彼女の命も奪われた。
そして、3歳の誕生日を迎えたばかりのレニィラの養子も彼女の目の前で串刺しにされ、密告者セドゥレニィラの一族として数えられ、本人の哀願も無視されて処刑された。

その報告を帝都に向かう途中で聞いたリディは、ショックのあまりその場で気を失ったという。
こうして蜉蝣時代最後の嵐「国崩れの乱」は幕を下ろした。

蜉蝣時代の終焉

国崩れの乱の後、ガイヴェルドの独裁によって帝国は統治されるが、彼自身の政治力の高さと、冷酷な処罰を行なうのは、あくまでも自分の地位を狙う者だけであり、それ以外は比較的公平な統治と裁きを見せたことから、本来ならば帝国の初代皇帝として、多少強引ながら名君として歴史に名を刻む筈であった。
しかし、この地を襲った冷害は一向に収まらず、それどころかついに長雨、火山噴火といった天変地異を起こし、数多くの将兵が血と戦で作り上げた国の歴史を、一瞬にして崩壊させた。

人々は次々と南の地へ逃れ、ガイヴェルドが民衆の流出をどれだけ抑えこもうとも限界があった。
結局、ガイヴェルド自身も735年に遷都を宣言し、ベルザフィリス帝国はここに一つの役目を終え、ここに多くの英雄、豪傑、知将が綺羅星の如く輝いた蜉蝣時代は終わりを告げた。

彼は、「ベルザフィリス帝国の源流であるシーザルス国こそ、凱旋に相応しい土地」と、多くの民を引き連れてシーザルス国に強引に籍を置いた。
シーザルスオルリアは、暴動を恐れてこれを受け入れるしかなかったが、突然の人口増加によって食糧問題、治安悪化といった様々な問題が生じる。
それらの問題の解決に奔走させられた心労から、オルリアは741年に病没した。
また、膨大な民衆がシーザルス一国に収まりきるわけはなく、多くの民がアルビスフェングランドバーンといったロンドーナ大陸北部に流れていく。
現在でも、これらの地で蜉蝣時代を舞台とした劇や小説の人気が高いのはそのためである。

シーザルス国の食客に近い状態でありながら、最後まで実権なき「皇帝」の地位を名乗り続けたガイヴェルドも748年に没した。


時は流れ 彼らの熱き魂も 全ては歴史の一頁となる

炎の宴も 大地のゆらめきも 風の哀唄も 全ては歴史の一頁となる

兵士の叫びも 軍師の遠謀も 将軍の決断も 全ては一行の言葉となる

言葉は魂までも残すことはできない だが、その一頁に、一行の中に、彼らは確かに生きていた

(アルディア著「蜉蝣戦記 蜉蝣編」より)

関連項目

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