東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

※ネチョは最初と最後の方だけです。少ないです。そして長いです。
※EratohoJの輝夜口上に刺激されて書き始めてますが、話的には繋がってても繋がってなくてもどっちでも


「あら、薬師の格好。永琳に弟子入りしたのかしら?」

笑顔でそうだと答えると、輝夜は両手そっと顔を包んで、似合ってるわよと言いながら口づけた。

「でもなんでまた?」
「薬草の手入れを手伝ってたんだけどね。永琳に調合もやってみたいって頼んでみたんだ。」
「えー、何でそんなのやるのー?仕事に時間取られちゃうじゃない。」
「代わりに濃密に愛してあげるから大丈夫だよ」

輝夜は頬を朱に染め、キャッと言いながら軽くビンタをした。



「あっ……もう、そこ弱いって言ってるじゃない……」
「なら重点的に攻めないとな」

ニチャニチャと音を立てながら、指が輝夜の中をかき回す。
その行為を続けながら、胸に吸い付き、続けてキスをする。
指の動きに合わせ、輝夜の腰が艶めかしくに揺れる。

「ああっ…ああぁぁぁぁ……駄目、駄目……」
「気持ち良い?」
「うん……でも、もう……」
「もう、何?」
「……指じゃなくて、ちゃんとして」
「ちゃんとってどういうことか言ってくれないと解らないな」
「馬鹿、もうソレはいいわよ。……もうっ。……おちんちん挿入れて」

何度となく繰り返している馬鹿なやりとり。
男は良くできました、と言うと、いきり立ったモノを輝夜のヌラヌラと輝く秘部に勢い良く進入させた。

「あ…………あハッ♪ 好き、あなたの……好きぃっ」
「俺とどっちが好き?」
「ば、馬鹿!よくそんなこと聞けるわね!」

輝夜が思いっきり入り口締め付けて懲らしめてやると、男は情けない顔をして、いででで、と漏らしている。

「解ってるでしょ。……あなたのだから好きなのよ」
「輝夜ッ!」
「……来てッ♪」

男は輝夜に上から抱きつく姿勢になり、腰を強かに打ち付け始めた
前もって入念に弄り回されていた其処からは、粘液が止めどなく掻き出され、肛門まで垂れていた。

「んっ!あっ!あっ!激し……ああああ、あああ!!!!!」

輝夜が絶叫にも近い声を上げ、小刻みに震える。

「輝夜、もうイッちゃったの?」

輝夜は顔を赤らめながら、うん、と小さく漏らした。

「もう、輝夜はえっちだなあ」

言いながら男は輝夜の顔にキスの雨を降らせる。

「ばかっ、あなたのせいでしょ……」

輝夜が男のキスをさえぎるように頭を押さえ、僅かに頭を上げて口同士でキスをすると、
男も輝夜の頭を支えながら下ろし、そのまましばし口づけを続けた。
そしてそのまま再び腰を動かし始める。

「ん!!んんーーーー!!!んんん!!!!」

輝夜は荒い鼻息で必死に呼吸しながら、快楽に耐えている。
時折緩急をつけながらも、男は腰を打ち付けるのをやめない。
ひとしきり激しく腰を打ち付けたあと、輝夜の中に大量の精が吐き出され、ようやく輝夜の口は解放された

「んっ!んぅぅぅ……ぷふぁっ…はぁっ、はぁ……出てる……。もうっ………もっと、優しくしてよ」

輝夜は頬を膨らませて、男の頬をぺちぺちと叩いた。
男は上から被さるように抱きつき耳元にキスをしながら呟く。

「ゴメン、輝夜が欲しくてしょうがなくて……何度したって足りないぐらい」

その言葉に反応したのか、輝夜は身体をきゅっと強ばらせ、蕩けるような顔になった。

「そ、それは嬉しいんだけどっ……もうちょっと、ね?……もっかいしましょ?」

男は再度、そんな輝夜の唇をついばみ始めた。

「ん……んん♪」
「輝夜、幸せ?」
「ん?……あなたが幸せならね。私、物凄く幸せでしょ?」
「その通りだ」

男は輝夜の腰を持ち上げ、向かい合わせに座って小刻みに身体を上下させ始めた。

「あぁぁぁ……ああああ!イイ!良いから!もう、死んじゃうぐらいあなたの好きにしていいから!!!!」

輝夜は何度も弓なりに背を反らせ、髪を振り乱している。
黒髪が闇に散り、男の目に月明かりで僅かに白く光る障子に斑な模様を作った。
その様がさらに男の理性を狂わせ、腰つきをいやらしく、激しくさせる。
男は自身の身体を少し浮かせ、輝夜の腰を抱えたまま高速に腰を前後させる。

「いやあああああ!!イク!イクぅ!!!!」
「輝夜!輝夜、出る!!!」
「あああああ!来て!中に出して!!!!」

接合部から、再度大量の熱い精液が注ぎ込まれた。男と輝夜は動きを止め、ただそれが最後まで注入されるのを待っている。
輝夜は背中を大きく反らせた状態で痙攣している。

「あっ……あっ………ふっ……」

輝夜は痙攣して揺れる身体に合わせ、時折声を漏らしている。
精を吐ききった男が胸に吸い付くと、それに反応して大きく身体を揺らした。

「あっ……もう、本当に死んじゃうかと思ったじゃない」
「良いって言ったじゃないか」
「比喩よ比喩。本当に死ぬのはそれなりに怖いんだからね……。罰として、今日は腕枕ね」
「えっ、あれ腕痺れるし……」
「問答無用。ほら、おやすみなさい!……うふふ」



――彼が薬師の勉強を初めて1年になる。
彼はめきめきと力を付け、永琳も感心していた。でも、一緒に居られる時間はどんどん少なくなっている。
特に最近、自分の研究室を持ってから、ゆっくりと一緒に過ごす時間が殆ど無くなった。
夜伽は……激しいけども。
ひょっとして私の独占欲が強すぎるのかな?
それにしても、あの没頭ぶりは異常だと思う。

今日は考えすぎて眠れなかったので、いつも寝ている間に布団から消えている彼を捕まえられた。
まだ午前の3時。まだ昨夜の夜伽の残り香すら漂うというのに。

「ねぇ、あなた。最近ずっと研究室に籠もりっきりじゃない。ろくに寝てないでしょ?体壊すわよ」
「ああ、起こしちゃったか?ちゃんと良い薬飲んでるから大丈夫だよ」
「もう、薬に頼ってちゃダメよ!・・・それにそこまで薬の勉強してどうするのよ。もう一個お屋敷でも建てる気?」
「ん・・・秘密だ。」
「ダメ、ちゃんと教えて」
「そうだな……輝夜を元気にする薬を作ってるってところかな」

何を言ってるの?私にはあなたがずっと一緒に居てくれるのが一番の薬なのに。
そう言いかけて、はっと息を飲んだ。
ずっと、ずっと一緒に……。
ある思いが心と身体を支配する。

蓬莱の薬だ……。
ほぼ、確信に近かった。
忘れようとしていた可能性。あれだけ必死に、飲ませないことで納得したはずなのに、それが蒸し返される。
心が沸き立つ。そしてその心を再度、必死で殺そうとする。
彼を不幸にしてはいけない。かつて遊び半分で人間に与えた薬は、災いを振り撒いて来たという事実もある。
こんな心持ちでは、とてもまともに彼と口がきける気がしなくなった。

「そ、そうなの……ふふ、何かしら」

それ以上追求することも出来ない。追求してはいけないと思った。
違うかもしれない。違うかもしれないけど、そうだったとき、自分はどうしてしまうのかが怖かった。
あの薬の完成には、私の力が必要だということを、もしかしたら今は知らないかもしれない。
でもいつか気づいたとき、頼まれたとしたら、私はどうするだろう……。
それを思うと、ますます眠れなくなった。



研究室は、離れの半地下にある。
この日も室内で、日差しから隠れるようにひたすら研究に没頭していた。
部屋の鍵はかけていないが、輝夜や鈴仙が握り飯を持ってきてくれる以外、滅多に来客はない。
毎日、夜になったことを知らせに輝夜が来ると、その日は終了だった。

永遠亭の住人の中で、永琳だけは、来て欲しくない客だった。
会いたくないとかいうことではなく、師匠でもあるわけだから話はする。
しかしそれは俺から合いに行くときだけだ。
それを汲んだかのように、永琳がこの部屋に来る事は、ほぼ全くなかった。

しかし、この日最後の来客は、珍しくその永琳だった。
戸を叩く音が鳴り、どうぞ、と声を掛けると、戸が開いて、永琳がゆっくりと入って来た。
開いた戸の隙間から闇が覗き、今が既に夜だということに気がついた。

「今日も熱心なのね」
「ああ、師匠……」
「あなたは姫の大切な御方なんだから、師匠はいいって言ったでしょう」
「でも師匠には変わりないからね」
「そう……じゃあ、師匠からのお願い、いえ、命令がひとつあるわ。」

永琳が階段を一段下りる。
僅かに身体が強ばる。それを悟られまいとする程、身体は硬くなる。

「……変な薬を作ろうとして、これ以上姫の心を惑わさないで。
あなたが何を作ろうとしているかは知っているの。姫も感づいて心を乱しているわ」

思わず生唾を飲み込んでしまった。
永琳がそれを聞き漏らすわけはない。しかし、精一杯の抵抗だけは試みる。

「何のことだか。俺はただ姫に釣り合うだけの立派な薬師として……」
「ふざけないで頂戴。じゃあ姫を元気にする薬って何かしら?」
「師匠ともあろう方が、愛の語らいを盗み聞きとは趣味が悪いんじゃないか?」
「姫に相談されたのよ。私を元気にする薬って何があるだろう?ってね。別に聞いてたわけじゃないわ。
そんな話も相談するぐらい心配してるのよ?」

解ってはいた。解ってはいたが、どうにも出来ないことだった。
少し俯き、思案を巡らすが、もう、これといって何か思い浮かぶわけでもない。

「そうか……。変なことを言ってごめん。輝夜に心配かけてるのは申し訳なく思ってる」
「いいのよ。そう思うなら、これ以上姫の心を弄ばないで。」
「弄んでる気は……」
「貴方との時間が、姫にとってどれだけ大事かは解っているでしょう?」

永琳は厳しい表情を崩さず、石段の上からじっと俺を見ている。

「それに……あの薬には姫の力が必要なのは知ってるかしら?それに姫が力を貸すと思って?」

俺は何も答えることができなかった。それは知っている。ただ、初めから、なんとかなると思っていたわけじゃない。
ただ、こうやって動いてないと頭がどうにかなってしまいそうだった。

永琳は研究室の入り口の石段を下りると、近づいてきて俺の両肩を掴んだ。

「いい?何度も何度も話したけど、もう一度言うわよ?不老不死なんてろくなもんじゃないわよ。
死を失うってことが……」
「そんなこと解ってるよ!解ってるけど……納得できない!
俺はシワシワのじいさんで、輝夜は相変わらず美しいままで、看取られて……。
俺はあの世でいつまで待てばいいんだ?どこに生まれ落ちればまた輝夜に逢えるんだ?
何度繰り返せばいいんだ?その度に輝夜を泣かせるのか?」

気づけば俺は泣いていた。
今まで、薬を飲みたいと口に出したことは一回も無い。冗談でもだ。
それは、輝夜が、飲ませない、と、いつも鬼気迫る顔で俺に言っていたからでもあるし、
薬を飲んでしまいたいという想いが、実際の所ドロドロと俺の中に渦巻いていたからでもある。

鬱積した心の内を吐露して、俺は脱力してしまった。永琳に肩を支えられていなければ倒れてしまいそうだ。
永琳はゆっくりと俺の肩を抱き寄せ、頭を撫でてくれた。

「姫をそこまで想ってるなら……化けてでも出なさい。幽霊の方がまだマシよ。その気になれば成仏できるんだから」

俺は反論する気力も無く、ただひたすら泣いていた。

「この部屋のものは全て破棄するわ。
あなたの私物は後で出しておくから、今日はもう姫と一緒に居て差し上げて。……大切な時間なのよ。」

永琳は俺の頭を撫で、背中をポンポンと叩いた。
俺も少し、心が落ち着いてくる。しかし納得はまだしていない。

「永琳……本当に、駄目なんだ。輝夜を失う事と、死を失う事。
どう考えたって、輝夜と逢えなくなることの方が不幸なんだよ……それだけは、解ってくれ……」

永琳はしばらく押し黙った後、俺を抱えて椅子に座らせた。
そして何かを思案するかのように視線を外した後、俺の目線まで腰を落とし、思い切り顔を近づけて来た……。



彼の研究室が閉鎖された。
今では、薬草類をのんびり育てながら、
たまに手が足りないときだけ製薬や診療をするぐらいで、あとはほとんど私と居るようになった。
毎日居られる幸せ。この時しかない、という悲しみを背負った幸せ。
私も一緒に老いて、一緒に死んでゆけるなら、悲しくなんかないのかな?
この幸せを永久と錯覚できるのかな?
薬なんて飲まなきゃ良かったのかな?
でも薬を飲んだから彼に会えた。
解らない。
もしかしたら、逆に出会わなければ良かったのかもしれない。
そうしたら、毎日バカな暇つぶしばっかりやって、のんべんだらりと過ごしていることに何も感じなかったろうに。
でも、そんな日々でさえ、そこに彼が居たら……。満ち足りた永遠の夢を想像してしまう。
彼が、薬を飲みたいと言ってくれたら……。
もう、彼が今まで何をやっていたかは決定的なのに、私の口からは絶対に言えない……。
私の口から言ってしまえば、それを許容したことになってしまう。



「輝夜、何で泣いてるの……?」

二人で山奥の打ち捨てられた神社の境内に座り、月を見ていた。
秋と言うにはまだ暑い時候だったが、夜こうしている分には頃合いだった。
辺りからは、虫の音と、時折吹く風に揺すられる草の音しかしない。

「あ、あれ?あくびよあくび。眠くなっちゃった。うふふ」
「ひょっとして月が懐かしくなったとか」
「やーね、泣いてないってば。それに、月なんて良い思い出ぜんっぜん無いんだから」

輝夜は目尻に溜まった涙を指で拭いながら、笑顔を作っている。

「今の方が楽しいもん。月なんかどうだっていいわ」
「ん、そうか。」

男は少し微笑むと、それ以上深追いはせず、月の方に顔を戻した。
輝夜は、肩に寄り添う。

「……しばらくこうさせてもらえる?」
「気の済むまでどうぞ」

どれぐらいの時間が経ったか、10分程度なのか、何時間もなのか、輝夜が何かしら能力を使っているのいないのか、
いずれも定かではないが、生ぬるかった風がゆるやかに身体を冷やし始めた頃、ゆっくりと輝夜が肩から離れた。
目をやると、月明かりに照らされて、輝夜の頬をきらきらと左右一対の筋が輝いている。
青白く照らされた絶世の美女と謳われた顔に、それは息を飲む程に美しかった。
輝夜はその顔を見られていることを気にする風もなく、空を見ていた。

「……時がいくら永遠に続こうと、この須臾に勝る幸福なんて、もう存在しないわ。」

空を見ながら輝夜が言う。気が付けば、男の肩口は、滴った輝夜の涙で濡れていた。
男は何を言うでもなく、輝夜の手を床の上で握った。
輝夜は反対の手でその手を包むと、そっと、握られた方の手を抜き取り、両手を共に膝の上に載せた。

「でも……私にとっては……うたかたの夢ね……。
儚いからこそ幸せなんていうのを、人は納得して生きてるものなのかしら?」

輝夜は男の方を向いた。

「ねぇ、私たち……」

そこまで言って、逡巡する。無表情を保ってはいたが、言葉を継ぐのが躊躇われていた。
とうとう、輝夜の唇がわなわなと震えながら動き始めた。

「わ、私たち……。わ……別れましょう。」

男が一瞬ビクンと背中を揺らす。

「あなたの人生、あなたの……歩幅と、合わせて……歩ける人との方が幸せよ。」
「輝夜?何を……」
「私の夢で……終わらないで……」

輝夜は端正な顔をしわくちゃにして、もう完全に泣き出してしまった。
両手を顔に当て、背中を丸めて泣いている。

「……何言ってるんだ?輝夜無しの人生なんてもう考えられない……」
「えぐっ……ひぐっ……。そんなの、私だってそうよ。
あなた無しで……でも、あなたは……。でも……いつか必ず、私の前から消える……。
そうしたら……永く続いた夢ほど、醒めたときの絶望が激しいのよ」

輝夜は俯きながら、両方の袖口で絶えず涙を拭っている。

「薬を……蓬莱の薬を飲めば良いのか……?」

ついに男の口からその言葉が出た。今度は輝夜が身体をビクンと揺らした。

「飲んで……欲しいわよ。飲んで欲しいけど!飲んでくれたらどれだけ良いかって思うけど!
……そんなことさせられるわけないじゃない……解って……。貴方を不幸にしたくない」

男は輝夜の背中に手を回して抱きしめると、無言で虚空を見つめ、何かを考えていた。

「ぐすっ…ぐすっ……うええぇぇええ」

ほとんど赤子のように泣きじゃくり始めた輝夜の頭を押さえ、胸元に押しつけると、
その間にもう片方の手で腰元の印籠から、何か液体の入ったガラスの筒を取りだした

「輝夜」

男はガラス筒の一端から蓋を外し、一気に口に含むと、そのまま輝夜に口づけた。

「んっ……ん……んん……」

いつもするように、長い時間をかけてお互いの唾液を交換した。
口を離すと、唇同士に糸が引いた。そして、何か舌が痺れるような感覚があった。

「……ひぐっ。……な……何?何を飲ませたの……?」
「輝夜……。俺にも、夢を見させてくれ。一緒じゃなきゃ生きいてもしょうがないぐらい愛した女と、一緒に死ぬなんて夢を。」
「……えっ、ちょ……毒!?まさかあなたも飲んだの!?吐いて!すぐ吐いて!」
「輝夜は、次に目覚めたら、俺の事はきっぱり忘れてる、いいね?」
「待ちなさいよ……そんなの、許さないわよ。あなたが幸せにならないと……これじゃ何のために……」
「だから何度言わせるんだ?輝夜と一緒じゃない幸せなんて無いんだって」

男は眠たそうな顔をして、輝夜にしなだれかかっている。
その目からは、いつの間にか涙が零れていた

「ばっ……ばかぁ…っ!バカバカバカバカバカあああ!!!!えーりーん!!助けて!!えーりいいいいん!!!」



人里からも永遠亭からも遠いここからは、どこにも声は届かない。
彼の方が大分多く飲んだようで、しかも生きる意志は無い。一刻を争う。
能力をフルに使いながら、なんとか彼が生きてるうちに永遠亭に着かなければ。
――しかも自分が生きたまま
背中に彼を背負い、近くにあったボロボロの麻紐でおまじない程度に腰を縛り付け、永遠亭に向かって飛び立った。

「しっかりして……お願い、死なないで」
「輝夜……輝夜……?永遠亭に向かってるの?」
「そうよ、助けるの。だから死なないで!」
「ハハ、元気だな……夢成らず、俺ばっかりだ。目がよく見えなくなってきた」
「あなたのそんな苟且の夢、成らせて堪るもんですか……!」

気付けば涙は止まっていた。何しろ泣いて余計な体力を消耗してる場合ではなかった。
少ないとは言え、毒は身体に回り始め、彼の重みを支えながら飛ぶだけで精一杯だった。
手足が痺れてきた。血の気が引き、意識がもうろうとしてくる。息苦しい。
本当なら早く死んで楽になっちゃおう、なんてことを考えるところだけど、
今はなんとしても生きなければならない。ここで私が死ねば、当然彼も地面に叩き付けられて死ぬ。

「死、死んじゃダメって……大変ね……ふふ……。ねぇ、まだ平気よね?」
「………すぅ……………」

生きてはいる。でも息の間隔が長い……というより、今止まった……!

「待って!逝かないで!」

急いで地面に降りて、口から息を吹き込む。
永琳に嫌々だけど教わっておいて良かった。初めて実践する相手が彼というのは、嬉しいやら悲しいやら……。

「ん……ふぅぅぅ……ぷはぁ……ふぅぅぅ……ぷはっ……お願い……お願い…」

息が戻る見込みは無い。こうなればとにかく急いで戻らないと。

その時、私の身体にも想像以上に毒が回っている事に気がついた。
飛ぼうと身体を起こすと、視界がぐわんと揺れる。身体が言うことをきかない。

「と……飛べない……くっ……そんな……嫌……嫌ァァァァァァ!!!!」



こんな夜更けに女の悲鳴……賊か、妖怪か。
この辺りの不届きはどうなるか知らない新参でも現れたろうか。
急いで家を出て、空から辺りを見渡す。

「……ぁぁぁ……けて……れか……」

微かに声が聞こえる。耳を澄まし、聞こえた方向へと近づいていく。
しかし、心なしかあのバカの声に似てるような……アイツだったら、助けるのは嬲られるのを鑑賞した後でだな。
……いや、やっぱり全員焼くだけだ。私にはそんな趣味は無い。

地面に近づくにつれ、人影が見えてきた。一人……いや、二人。
やっぱりアイツだ。そしてそのツレ。賊も妖怪も見あたらないが、どうも手負いのようだ。

「も………こう?…妹紅なの!?」
「何だやっぱりお前か。来て損したな」

輝夜はツレを抱えて、身体を引きずりながら地を這うように進んで居た。
服は土まみれのボロボロで、とてもじゃないが、お姫様なんてナリじゃなかった。
私の姿を見ると、安心したかのようにその場にへたり込んだ。

「助けて……お願い、助けて……」
「な、何で私がお前を助けなきゃいけないんだよ」
「私はいいから、彼を…助けてあげて……永遠亭に連れてって……」
「おい、話が見えないぞ。第一なんでこんなボロボロに……ッ!コイツ、息がない!」
「お願い……お願い……」

輝夜はいつもとは打って変わった態度で、ひたすら懇願し、それからツレに息を送り始めた。
こいつらがそういう仲なのは知ってるから、濃密な接吻を見せつけられてる気分だ……。

「クソッ、後でちゃんと説明しろよ」

二人を辛うじて繋いでいる麻縄から輝夜を引き抜こうとする。

「やめて!ダメなの……私も行かないと……」
「は?二人も支えられるかよ!」
「死ぬ気で飛べば大丈夫よ、お願い……」
「クソッ、人を何だと……。本当に飛んでる途中で死んだら後で10回ぐらい殺す!」
「ダメよ、死ぬなら着いてからでお願い。……ちゅぶ……ふぅぅぅぅぅ……そうよ、死んじゃダメ」

輝夜は話の途中にも男の口から息を送り込んで居る。
納得は行かないが、問答している時間も無さそうだ。麻縄の結び目を解いて3人を囲って縛り直す。

「飛ばすよ、落ちるなよ!」

まったく迷惑な話だ。そしてこうやって結局助けてやってる私も、随分とお人好しになったもんだな……。



何やら兎達が騒がしい。
戸を開けて外を見ると、一団になって飛んでくる者達が……姫と彼……と妹紅?
明らかに尋常ではない。彼が脱力しているのが遠くからでも解る。
慌てて外に出てよく見ると、姫も自分の力では飛んでいないようだった。妹紅が物凄い形相で二人を支えている。

「姫!誰かにやられたんですか!」

妹紅が地面に滑り込むように降りてきた。妹紅の口から嗚咽が漏れる。
3人分の体重で地面に身体を打ち付けられ、突っ伏したまま苦しそうに肩で息をしている。

「はぁ……はぁ……カハッ!……ほら、急げ!」

慌てて駆け寄り、3人を巻いていた麻縄をほどいた。

「い、イナバ?永琳呼んで……、たすけて……」

姫は立ち上がることもできず、震える腕で上半身を支え、辛うじて顔を上げている。やはり何かされている。
姫の服はボロボロなものの、目立った外傷は特に無い。
症状としては……毒。
おそらく妹紅がやったわけはないだろう。
妹紅はその場に大の字になって、酷く苦しそうに呼吸をしている。
ほとんど彼女一人で二人を運んできてくれたようだ。

「彼……が、毒を」

やはり毒。しかも二人で?
心中……姫は不死だというのに。

「……脈は……あります。でも、これでは、もう……」

顔色が悪い。かなり重度の酸欠状態だ。これでは一命をとりとめようと、ずっと目を覚まさないかも知れない。
それも、助かることすら奇跡だろう。
師匠を呼びに行こうと屋敷の方を見ると、もう師匠はこちらに来る所だった。

「うどんげ、どうなってるの?」
「はい、○○さんが姫と一緒に毒を……」

師匠が屈んで彼と姫の容態を確認しはじめると、姫が声を振り絞り、師匠に語りかけ始めた。

「………らい」
「何ですって?」
「ほうらい…つくっ……て」
「姫?それはしないと貴方が……」
「もう……いいの。無理だから……彼無しは無理だから……ねえ、お願い。お願い!」

蓬莱の薬。私でも飲むかと言われたら十年ぐらい迷うだろう。
本来なら、単に「作れない」で終わる話だった。
蓬莱の薬は、師匠の技術と姫の力を持ってしても、そう易々と作れるものではないらしいからだ。
材料の準備、下ごしらえにそれなりの時間がかかる。まして、一分でも惜しいこの状況では確実に無理だ。
しかし……。

「姫、本当にいいんですね?」
「うん……」
「……優曇華、ちょっと彼の研究室の机の上の瓶持ってきてくれるかしら。これ鍵ね。」

私は思わず生唾を飲み込んだ。彼の研究室は処分された筈なのに……。
はい、と軽く返事をして、小走りに彼の研究室へ向かう。

中のものは実のところほとんどそのままだった。
しかし違いもある。机の丁度真ん中にある瓶、これが異様な存在感を放っていた。

「まさか……やっぱり……でも、完成してたなんて……」

瓶を持ち上げながら、もう一度生唾をゴクリと飲み込む。
これを使う瞬間は、勿論見たことがない。
とにかく急いで戻らなければ。こういう時に私は転びそうで怖い……。
慎重に、しかし小走りに戻った。

「師匠、持ってきました」
「ご苦労様。姫、お願いします……」
「……うん」

震える姫の手から、薬にその力が込められる。……完成だ。

「本当に、いいんですね?」
「うん」

その間も、健気に息を送り続ける姫。彼の顔色は益々悪くなり、もはや、死体に接吻しているかのようだった。
姫の顔色も相当悪く、目の焦点も合っていない。とっくに限界の筈だった。
不死身とはいえ、瀕死ならばそれなりに苦しいだろう。

「ひとつだけお訊ねします。この薬は誰の為に飲ませるんですか?」
「……私の為よ」
「ならばもはや何も言いません。……どうぞ」
「ありがと、えーりん、れいせん……妹紅も」

姫は薬を受け取ると、少しずつ口に含み、数回に分けて口移しで彼に飲ませ始めた。

「○○……ずっと一緒に……永遠に……愛し合いましょう」

その時、ようやく息の整ってきた妹紅が起き上がり、二人の様子に気づいた。
あぐらをかき、私に話しかける。

「ふぅ……間に合ったのか?アイツ、長いこと息してなかったのに」
「大丈夫……です。きっと」
「きっと、か。……なあ、私は事情を知らないんだ。なんだってアイツら死にかけてたんだ。」
「彼が毒を盛ったのよ。見たところ、姫より大分多く飲んだみたいね」

私が口を開く前に師匠が答えた。
師匠は気のせいか、心持ち笑みを浮かべているように見える。

「毒?心中のつもりで?……バカだな、輝夜は死なないのに」
「割り切れない想いってのもあるものよ」
「……そういうもんかね。しかしあれだけ息止まってて経って大丈夫ってのも凄いな。」

妹紅はハッと息を飲みながら、素早く師匠の方へと振り向いた。

「永琳、もしかして、今飲ませたアレは……」
「そうよ。蓬莱の薬。」
「やっぱりそうか。……前にアイツ、飲ませないって言ってたのに」

妹紅は、頬杖をついて、薬を飲み終えて人工呼吸を続けている二人の様子をじっと見ている。
師匠とは違い、こちらは仏頂面だ。

「……納得ずくならいいんだけど。あの様子じゃ多分違うだろ」
「いいえ、これは彼が望んだことでもあるのよ」
「え……?蓬莱人と心中しようとしたり、かと思えば不死になろうとしたり、訳の分かんないヤツだな」
「割り切れなかったから、割らないことにしたのよ」
「私はなぞなぞがしたいんじゃないんだよ……」

姫達の方を見ると、姫が彼に覆い被さるように接吻をしたまま、二人とも動かなくなっていた。
どうやら二人とも事切れたらしい……。




何か深い深い眠りについていたような気がする。
頬に伝わる暖かい感触で目が覚めた、同時に唇にも柔らかな感触があった。
まだ瞼は開けていない。
瞼に差す光が揺れているようで、視界が白くなったり黒くなったりしている。概ね、黒い。

ゆっくりと目をあけると、輝夜が俺の上に被さり、頬に手を当てながら接吻をしている。
その先には、いつもの寝室の天井が見えた。
俺が目を覚ましたのに気がつくと、輝夜は口を離してそのまま俺を見下ろしている。

「おはよう、輝夜」
「ふふっ、おはようですって」

輝夜は何故かクスクスと笑い出した。

「何が可笑しいんだよ」
「ううん。お・は・よ。」
「変なの」

俺がふくれていると、輝夜はまた軽くキスをしてきた。
そして顔を離すと、また俺の顔を見つめて居る。

「どうした……?」
「もう、昨日あれだけの事があったのよ。もうちょっと何か無いの?」
「昨日?……ああ!!」
「え、ひょっとして忘れてたの?解ったかしら?」

俺は、輝夜に別れ話を持ちかけられて、薬を飲みたいと言ってもダメで、毒を……。
生きているということは、輝夜が助けてくれたということか。

「結局助かっちゃったんだな」
「ふふ、助かってないわよ。ここは、常世の国」

ここで、話は何となく飲み込めた。
わざとらしく辺りをきょろきょろと見回してから、輝夜の方を向き直して髪を撫でた。

「常世ってのは随分見慣れた景色なんだな」
「そうよ、あなたと私の世界だもの。ここにはあなたと私の見慣れた物しかないわよ」
「……そうか。」

この幻想郷に居る限り、常世というのが仮に本当にそういう世界なのだとしたら、
恐らく昨晩飲まされたであろう薬が効いていようが居まいが、結局は同じ事だ。
まあ、彼岸やら冥界やらの様子を見ると、どうもそれは無さそうだが。

「俺はお姫さまのキスで、そんな世界に生まれ変わっちゃったのか?」
「そうよ。今日は新しいあなたの誕生日。」
「じゃあお祝いしてくれよ」

俺は上から見つめる輝夜を強引に抱き寄せ、身体を反転させて上からの姿勢になった。
輝夜の首筋から耳にかけて匂いを嗅ぎ、舌でちろちろとねぶる。
そして手ははだけた胸元から着物の中へと滑り込ませ、小さな輝夜の乳房を弄ぶ。

「ひぁ……あ……待って、まだ話が」
「輝夜、飲ませたんだろ?」
「ええ……」
「別れようとまで言ったお前が、何で?」
「……私の前からあんな去り方しようとするなんてズルいわよ。」

輝夜は視線を反らし、あからさまに不機嫌そうな顔をしだした。

「あなたが居なくなって、私の知らないところで元気にしてて、忘れた頃にいつの間にか死んでるってのが理想だったのに」
「あんだけ泣きじゃくってたのに……忘れられる?」
「……忘れられるわけないじゃない。」

輝夜は視線を俺に戻した。今では少し笑顔が漏れている。
そして俺の肩に手を掛け俺の身体を抱き寄せると、腕の下からぎゅっと抱きついてきた。
俺も輝夜の頭を抱え込むように抱いてやる。

「時間が経てば、気持ちの整理がつくかと思ったけど……あんなんじゃ1000年はムリね。」
「俺なら死ぬまでムリだな。いや、死んでもかもね」
「ふふ、もう死ぬことも叶わないわよ。私のせいで不老不死なんてなっちゃったんだよ?」
「うん」
「恨むなら恨んで下さいな……」

俺は起き上がり、輝夜の身体の下に腕を潜り込ませ、立ち上がりながら勢い良く身体を抱え上げた。
輝夜は突然のことに驚いて、腕をじたばたさせた。

「きゃ、わわ、何……?」

その体勢のまま輝夜の顔を見つめると輝夜もこちらを見つめ返してきた。
顔を近づけると、輝夜の方も寄ってきて、どちらともなくキスになった。
体勢のせいか、キスだけでいつもより顔を紅く染めている。

「お供しますよ、お姫様。常しえに。」
「……うふふ、ばか」

輝夜は目の端に少し涙を溜め、それを指で拭いながら笑みを漏らした。
それから、俺の首にしがみついて、もう一度キスをせがんだ。
俺はそれに応え、濃厚な口付けを交わしながら、布団の上に優しく輝夜を下ろした。

少しはだけた着物から、輝夜の小さな乳房が見える。
それを掴み上げるようにじっくりと揉みしだく。

「んっ……」
「この可愛いおっぱいも、永遠に可愛いままなんだな……」
「バカッ。でも貴方、こういう方がスキなんでしょ?」
「輝夜のだから好きなんだよ」
「ふふっ、どっかで聞いたわよそれ」

輝夜は俺の軽く押しのけ、起き上がって服を脱ぎ始めた。
俺も寝間着を脱ぎ捨て、その場に腰掛ける。
輝夜は俺の物を掴んで、自分の股へと導きながらその上に跨った。

「ん……私の好きな、貴方のも愛させてね」
「それはどう取ればいいのかな?」
「ご随意に」

二人で顔を見合わせて笑う。そして、長いキスをした。
やがて、そのままの体勢で輝夜が横にスライドするように腰を動かし始めた。
俺もそれに応えるように腰を動かす。
くちゅくちゅという音と、二人の息づかいだけが部屋に響いていた。

「んっんっ……むぅ……ンッ♪」

輝夜の身体が段々と紅に染まり、珠のような汗が吹き出てくる。
一旦口を離すと、輝夜は腰を動かすのも止めた。

「ふふ……こんなに静かにするの、久しぶりじゃない?」
「激しいのがお好みだった?」
「ううん……。幸せすぎて……今は、こうしてるだけで軽くイッちゃってる」
「じゃあ激しくしたらどうなっちゃうかな」
「待って……お願い、しばらくこうさせて」

輝夜は俺にぎゅっと抱きついて、そのまま動きを止めている。
大きな鼓動の音が胸を伝ってくる。暫くそのままの体勢で居ても、それは収まらなかった。
その間中、輝夜の中は別の生き物のように蠢き、俺のモノを強く刺激していた。

「貴方の、おっきくなってきたよ……出そう?」
「ああ……」
「ン……ああ、私もイッちゃ……」
「輝夜、出る!」
「……ン〜〜……!!」

精を吐き出した瞬間、輝夜はぎゅっと強く抱きしめてきた。
段々と力が抜けてくると、輝夜は切なそうな吐息を吐きだした。身体が小刻みに震えている。

「うふふ、お祝いしてあげる筈なのに、私が愉しんじゃった」
「俺も良かったよ、お姫様」
「もうっ……」

輝夜は照れながらも、またキスをせがんで顔を近づけて来た。
世話の焼けるお姫様だ。

「ん……。ねぇ、アレ、また今度やって……?」
「アレって?抱っこ?」

黙って首を縦に振る。

「気に入った?」
「……大事にされてるって感じがして嬉しい」
「じゃあ、今度みんなの前で思いっきり大事って事をアピールしてあげるよ」
「え、ええ?!二人っきりのときだけにしてよ!貴方だってからかわれるわよ」
「駄目だよ、もう次はみんなの前って決めてるんだ」
「何でそんな意地悪するの?」

輝夜は口を膨らませて、男の腹を何度も小突いた。

「意地悪じゃないよ。次やるのは、結婚式でだ」
「あっ………」

輝夜は小突くのを止め、あっけにとられたような顔をしている。

「結婚……そういえば、私たち、してないのね……」
「あれだけ貰ってくれって言っておいて、忘れてたのか?」
「だって、もう夫婦みたいなもんだったし、でも最近はごちゃごちゃと頭の中が色んなことで一杯で……」
「もういいだろ?ごちゃごちゃももうカタがついたろ?……本当の夫婦になろう」

輝夜は頭をぽんと俺の胸に当てた後、俺の身体から離れて、目の前に正座した。
そして、きりりとした表情を見せ、俺の方を真っ直ぐに見据えた。
俺も思わず、正座とまでは行かないが、あぐらをかいたまま背筋をしゃんと伸ばして向かい合った。
裸のままではあったが、そこには凜とした女性の姿があった。

「不束者ですが、宜しくお願い致します。」

指先を揃え、深々とお辞儀をして、ゆっくりと頭を上げた。

「……旦那様♪」

そして、飛びかかってきた。
背筋の伸びていた俺はそのまま後ろに倒れ、床の間の段差の角に強かに頭を打った。
と言うところで記憶は途絶えている……。




「ああああ!血が!血じゃないモノが!」

寝室から姫の声が。
朝から早速致していた様子だったのに、何事かと見に行くと、頭から血を流して倒れている彼と、慌てふためく姫の姿が。

「ああ、永琳、どうしよう、どうしよう……」
「落ち着いて下さい。薬は効いてる筈ですよ。とりあえず畳に血が流れないようにだけはしておいて下さい」
「あ、うん……そっか、そうだよね。大丈夫なんだった。あー良かった……。畳……あちゃあ、もうダメね」
「全く……。早速喧嘩でもしたんですか?」

姫は服を纏いながら、身体をくねらせた。

「喧嘩どころか……プロポーズされちゃった♪」
「え!それはそれは……。で、どうしてこうなってるんです?」
「ううう〜〜。いいじゃない!もう、あっちいってて!私が看てるから!」
「はいはい……」

大方、嬉しくて飛びついて勢い余ってというところだろう。
本当に、世話の焼けるお人。

「あ、姫。勿論承諾したんですよね?」
「勿論って……勿論よ!」
「ふふ……。それじゃあ、式の用意をしないといけませんね」
「え、それは彼とも話し合って、ちょっと、永琳、どこ行……ああ、血が布団まで……!」





「はーい、こっち向いて!はい笑顔笑顔!ナイスですねー。もう一枚。はいOK!」

二人は文に写真を撮ってもらっていた。
男は袴を着て、輝夜は花嫁衣装に身を包んでいる。

「あのかぐや姫、ついに結婚!かぁ。」

文が苦笑いをする。

「タイトルとしては面白いけど、相手も何もかもみんな知ってるから、あんまり売れなそうですね」
「普通に祝ってよ、全く……。それより、綺麗に撮っておいてね」
「そりゃ、ベストは尽くしますよー……」
「良いデキだったら、保存用に、余り分みんな買い取ってあげる」
「え?!よっしゃ!それじゃこの射命丸文、渾身の記事をお届けしちゃいますよ!」

文は表情をぱぁっと明るくして、飛び立って行った。

「ちょっと!まだ式やってないってば!……もう。まあそのうち戻ってくるかな」
「おいおい、そんな約束して大丈夫か?あの天狗、増刷とかしかねないぞ」
「そこまでガメつくはないと思うわよ。ここの巫女みたくは」
「ちょっとおー、聞こえてるわよ」

霊夢が顔を覗かせた。式を取り仕切るため、普段より若干豪勢な装いをしている。
不機嫌そうな顔をしていたが、それは作っていただけの表情で、すぐにクスクスと笑い出した。

「まあ、会場にウチを選んだ賢明さに免じて赦してあげるわ」
「ふふ、今日は宜しく頼むわよ」
「任しときなさいよ。ところで……」

霊夢は輝夜の腕を引っ張って、耳元でヒソヒソと囁きだした。

「ごちそうとお酒はたっぷり用意してるんでしょうね」
「期待して置いて。私も準備手伝ったんだから」
「え、あんたが!?」
「何よその言い草。私料理上手なんだからね?しっかり花嫁修業したんだから、ねー♪」
「うう、なんか憎たらしい……」
「ああ、憎たらしいったらありゃしないな」

妹紅だった。輝夜を色々な角度からじろじろと見回している。

「幸せそうなマヌケ面しやがって……」
「ふふふ、今日は褒め言葉と取っておくわ。……妹紅には感謝してる」
「え……感謝?……お前の口が言ったのか?」
「俺もだ。妹紅には凄く感謝してる」
「んー、えーと……参ったな。冷やかしに来たってのに」
「妹紅も早く良い人探してウチで式挙げてよね。そうだ、あんたら探してやって仲人したら?」
「わー、いいから!いいから!!」

妹紅は顔を紅くして外に駆け出して行ってしまった。



会場となる神社周辺では、永遠亭の住人達が忙しく式と、それに続く大宴会の準備を進めていた。
普段患者として世話になっている里の人間達も手伝って、準備は瞬く間に進んでいく。
その中心で、永琳は指示を飛ばしてる。その表情は晴れやかだ。

「ご機嫌ね、えーりん」
「あら、てゐ。」

丁度作業も終わる頃、足下から声を掛ける兎がいた。てゐだった。

「万事、うまくいったって所?」
「ふふ、お陰様でね」
「私は何もしてないよ。張っては居たけど、結局妹紅が全部やってくれたし。
まさかあんな遠くでやるなんてね。私じゃ運べないよ。」
「あら、謙遜してるの?あの二人があれだけ幸せそうなのは、あなたの力もあるんじゃないの?」
「さぁー?どうだろうね。イシシッ」
「ご褒美は何が良いかしら。……貴方も薬飲む?」
「要らない要らない!冗談キツいよ全く。……アイツちゃんと解ってるのかな。薬飲んだって事がどういう事か」
「解らないなら解らないで、いいじゃない。そうしたら、いつもの幸せな朝が、いつまでもいつまでも来るだけなんだから」
「ふーん……。でも、花嫁姿が見たいって理由で利用されたって知ったらどう思うだろうね」
「あら、ちゃんと言ってあったわよ?姫と結婚してくれるなら薬作成に協力するって話だもの」
「それは伝わってない気がする……」


「始めるわよー!縁者は中入ってー!」

霊夢が声をかける。
死さえ別てない、二人の挙式が始まる。

※※※
FIN


3スレ>>112 ロダicyanecyo_0255.txt


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このページへのコメント

尊すぎる

0
Posted by 名無し(ID:Q3YFfQL+zQ) 2018年09月30日(日) 02:19:55 返信

尊すぎる

0
Posted by 名無し(ID:Q3YFfQL+zQ) 2018年09月30日(日) 02:19:55 返信

ウオオオオアアアア\( 'ω')/アアアアアッッッッ!!!!!
('∀`)スンヴァラッッスィィィィィィィ

0
Posted by U.N.オーエンぽい奴 2016年10月21日(金) 10:35:21 返信

おい俺はエロ小説読みに来たんだよ。どうしてくれんだ感動しちまったじゃねぇか。

0
Posted by あの人 2016年05月04日(水) 17:24:01 返信

それなりに良いと思います

0
Posted by ファーディープ 2016年01月02日(土) 11:36:11 返信

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