「万丈目サンダー!」
声が勢い良く響き万丈目は十代の協力もあり、見事に塞王の呪縛から解放された。
その晩、黒い制服に身を包んだ万丈目はオシリス寮にある『万丈目ルーム』を尋ねた。
中に入ると釣った魚を船盛りで楽しんでいる。十代、翔、剣山の3人が居た。
「コラ! 貴様等人の部屋で何をやっている?」
「ゲ! 万丈目!」
「『さん』だ! もしくは『先輩』を付けろ!」
「明日香さんが今、不在なのは万丈目君も知っているッスよね? だから……」
「ああ。だが俺の愛の力で必ず天上院君は元に戻す!」
完全に自分の都合の言い様に事実を捻じ曲げている万丈目に一同は呆れていたが、
十代は万丈目が手に持っている物に気付き、話をそっちに振った。
「お前、何だよそれ?」
「ん? ああ、これか……まぁ曲がりなりにも俺を救ってくれたのは貴様だからな。
この万丈目サンダー義は重んじるタイプだ」
包みを解き中から現れたのは一升瓶に中身がタップリと入った日本酒であった。
「それって……」
「フ……これこそ秘蔵『雷殺し』! 効くぞこれは……」
「ダメッスよ! 僕等、高校生なのにそんな……」
「やかましい! 『酒は百薬の長』と言う言葉があるだろ!
これも修行だ! 今夜は飲むぞ貴様等!」
「よーし! とことん飲むザウルス!」
「行くぜー!」
翔の静止も無視して一同は完全に宴会モードに突入した。
刺身をつまみにガブガブと飲んで行き、
こうなったらもう翔も場の空気に飲まれる事しか出来ず、
1時間も経つ頃には全員、出来上がっており、
万丈目は『先輩として揉んでやる!』と言う理由から剣山と非公式のデュエルまで始めた。
十代はそれを見て大盛り上がりしていた。
現在、ライフは剣山1600。万丈目2100。ライフ上では万丈目が有利だが、
剣山の場には『暗黒トリケラトプス』に『エレメント・ザウルス』の2体が居り、
万丈目のフィールドには何も無い状態であった。
「次のターンで決めるザウルス!」
「舐めるなよ青二才が! 俺のターンドロー!
魔法カード『早すぎた埋葬』を発動!
これにより俺は800のライフを支払い墓地から
『プロミネンス・ドラゴン』を特殊召還する!」
「それがどうした! 攻撃力では俺の恐竜さんの方が上ザウルス!」
「甘いわ! 更に速攻魔法『地獄の暴走召還』を発動!
このカードの効果により俺はデッキと墓地のプロミネンスを更に2体特殊召還!
ターンエンドだ」
攻撃をせずターンエンドをした事に剣山は勝利を確信したが、
自分のライフが残り100の状態になっているのを見て驚愕した。
「な、何で?」
「剣山君、聞いて。
プロミネンスはターンエンド時に相手に500のライフダメージを与える。
今、万丈目君の場には3体、だから1500のダメージを食らったの」
「フン。勉強はしている様だな。更に先輩が優しく状況を説明すると、
プロミネンスが場に出ている場合、
相手はこのカード以外の炎族を攻撃する事が出来無い、
だが今は互いにプロミネンスを守っているロック状態だ。
勝ちは決まったな! ワハハハハ!」
「舐めるなドン! 俺は諦めないザウルス! ドロー!」

剣山は恐竜DNAを全開にしてドローした。
引いたカードを見て剣山は口元に軽い笑みを浮かべた。
「行くドン! 魔法カード『アースクェイク』! この効果により全員守備表示!
更に『暗黒トリケラトプス』と『エレメント・ザウルス』を生贄に
『ダークティラノ』を攻撃表示で召還!」
「それがどうした守備表示でもプロミネンスを攻撃する事は出来無いぞ」
「『ダークティラノ』は相手フィールド上に守備表示モンスターしか居ない場合、
プレイヤーにダイレクトアタックが出来るドン!
これなら特殊効果も無意味ザウルス! 『レックスボンバー』!」
巨大な恐竜の尾は勢い良く万丈目を襲い、万丈目のライフは0となった。
剣山は十代、翔と共に喜んでいたが、万丈目に悔しがる様子は無かった。
「良い気になるなよ、今の俺は例えるなら病み上がりだ。
こんな俺にそこまで苦戦したのでは先が思いやられるぞ」
「ムカー! 負けた癖に癪に障る! 丸藤先輩!」
「よし今度は僕が相手だ!」
ここで良い感じに酒が回った翔が万丈目の相手に名乗りを上げた。
いきり立ってデュエルディスクを起動させ、今度は翔と万丈目のデュエルが始まり、
十代と剣山は適当なエールを送って両者を応援した。
「お前等最高かー?」
「最高ですー!」
「俺は楽しいぞー!」
「俺達もでーす!」
「万丈目サンダー!」
「サンダー!」
デュエルが翔の勝利で幕を閉じる頃には全員出来上がっており、
男同士のバカ騒ぎは雷殺しが底を付くまで続いた。
(何なのよ? このモヤモヤとした気持ちは……)
その頃、ホワイト寮で明日香は1人憂鬱な気分で居た。
『去る者は追わない、来る者は受け入れる』と言うのが結社のモットーであるが、
結社を去った万丈目はとても生き生きとした表情であり、
初めは見下していたが明日香は今の状況を疑問に感じていた。
「天上院君、少し時間を良いかな?」
そう言い入って来たのは、1番後に入社したが最も結社への忠誠が高い、
三沢であった。手には極上の白ワインとグラスを2つ持っていた。
「何の用?」
「結社を去った愚か者に付いて少し話がしたくてね、
勿論、只とは言わないこれでどうだ?」
「良いわ、聞きましょう」
明日香と三沢は三沢の部屋へ移動し、椅子に腰掛け、
小さなテーブルの上にワインを置き2つ分のグラスに注ぐと
三沢は嬉々とした様子で話し始めた。
「しかし今回は驚いたな」
「ええ、まさか退会者が出るなんて予想もしていなかったわ」
「だが退会して正解だな」
三沢は優雅にワインを嗜みながらゆっくりと語り始めた。
「昔はどうか分からないが、今のあれは最下層のオシリスに居付き、
清潔さの欠片も無い制服へ身を包んだ屑だ。そんな奴は此方から願い下げだ」
「まぁ……そうね……」
「それに馴れ合いがお似合いな奴だ」

初めの内は三沢の話を黙って聞いていた明日香だが
『馴れ合い』と言うキーワードが出た所で顔色が変った。
「どう言う意味よそれ?」
「人生は出会いと別れが多々、ある物だ、
何時までも仲良しこよしが通用する世界では無い、
奴は結局、孤独に耐え切れず十代達の元に消えて行った負け犬だ。
まぁ何時までも結社には入ろうとしないバカの巣窟に1匹戻った所で関係無い。
何れ全ては白に染まり上がるのだからな!」
三沢は酒がある程度、回った所で高らかに笑った。
理由は分からないが明日香は話を聞いた瞬間に心のモヤモヤが
一層強くなる感覚に囚われ、
何とか逃れ様と目の前にあるワインに手を伸ばし勢い良く飲み干した。
「お、良い飲みっぷりだな」
「三沢君、もう一杯貰えるかしら?」
「勿論だ」
三沢が言われるがままに明日香のグラスにワインを注いで行った。
明日香はそれを凄まじい勢いで飲んで行き瞬く間に瓶の中身は無くなって行った。
「もう一杯〜」
既に明日香はベロベロで呂律が回っていない状態であった。
予想外の事態に三沢は落ち着きを無くしかけていた。
「もう、それしか持ち合わせていない」
「嘘吐け! そこにあるのは何なのよ!」
明日香が指差した先には観賞用として飾られた赤ワインがあったが三沢は
それを体で制して止め様とした。
「ダメだ! 本来は捨てるべき筈だが、高過ぎて出来無い物だ! それに我々は……」
「ウッサイわね……お酒は飲む為に存在するのよ!」
明日香は乱暴に三沢を引き剥がし、赤ワインを取ると、
乱暴にコルクを引き抜き、そのままラッパ飲みで飲み始めた。
有り難味も何も無いやり方に三沢は慌てて静止しようとした。
「何て事を! 君はワインと言う物を何も分かっていないのか!」
「ウッサイ!」
止め様とした瞬間、明日香のハイキックが三沢の顔面を捕らえ、
三沢はそのまま横に倒れ込んだ。
目が座り完全に出来上がった明日香は倒れ込んだ三沢の鳩尾に
足を置き啖呵を切り始めた。
「偉そうな事ばっか言わないでよ! 友達多くて何が悪いって言うのよ!」
「俺は馴れ合いが悪いと言っているだけで……」
「馴れ合い? 私から言わせたらこの腐れ結社の方がずっと馴れ合いよ!」
「何て事を!」
三沢が反撃に転じ様と明日香の足を退かし行動を起こそうとしたが、
明日香は素早く三沢から離れ、
クローゼットの中にある大量のOCGモンスター同人誌を三沢に投げ掛けた。
同人誌の雪崩に飲まれ三沢の意識は遠い所へと行った。
「何が……白の結社よ……何が運命の導きよ……
私の大好きなあの人は……そんな物……今、行くからね〜」

明日香は白目を向いて気を失っている三沢を無視して、
覚束無い足取りでホワイト寮を出た。
万丈目ルームでの宴も雷殺しが切れると同時に終了し、
一同はその場で爆睡していた。
十代は中心で大の字になって静かに寝息を立てていたが、
何か刺す様な痛みが頬に伝わるのを感じ、ゆっくりと目を覚ますと、
そこには白の制服で身を包んだ明日香が居り、自分の頬を両手で引っ張ていた。
「お前、一体!」
「黙って。始めるわよ」
十代が目を覚ますと同時に手を離し、明日香は十代の唇に自分の唇を押し当て、
そのまま強引に自分の舌を十代の口内に捻じ込んだ。
突然の事で何が何やら理解が出来なかったが、
明日香が与えてくれる感覚に酔い痴れる事しか出来無い自分を情けなく感じながらも
行為に溺れて行った。舌と唇が離れると同時に十代は反撃に出た。
「何の真似だよ一体?」
「私も辞めて来た」
「ハァ? 何をだよ?」
「白の結社」
淡々と語る明日香に十代は呆然とした。
引っ掛かるのも解除するのも楽そうな万丈目でさえ、
あれ程の苦労をしたのにナイーブで扱いに難しい明日香が簡単に抜け出せた事に愕然とした。
「何でお前……」
「あんなカルトな集団の集まりにこれ以上居たくなかったから」
「お前、もう正気なのか?」
「当たり前でしょ。出なければここに居ないわ」
「でも何でこんな……」
「したかったからしただけよ」
ここで十代は明日香のもう1つの異変に感付いた。
先程まではキスで気付かなかったが、明日香の体からは酒の臭いが漂っていた。
「お前酔ってやがるな!」
「それは十代だって同じでしょ」
「今ので覚めたよ! 退け!」
「嫌よ。今ので完全に火が点いたから」
そう言い明日香は十代の下半身に体を移動させ、
ズボンとトランクスを同時に下ろしてまだ通常の状態である十代の物を空気に曝した。
「何すんだよ!」
「こうするのよ」
そう言い明日香は十代の物を口に含んで物をかわいがる様に舌で転がした。
「ぐぬぅ……明日香……」
「気持ち良いでしょ」

明日香の舌で十代の物は見る見る男を証明し始め、
口が離れる頃には立派になって十代の眼前に帰って来た。
見慣れた筈なのだが状況が状況の為、
呆然とした眼差しで十代はそれを見つめる事しか出来なかった。
「もう良いわね」
出来る状態なのを確認すると明日香は自分が着ていた制服に手を掛け脱ぎ始めた。
下着のみの状態になりそれも脱ごうとした所で十代はある異変に気付いた。
「アニ……キ……」
―やべ!
突如、翔が夢心地のまま覚醒しかかっていたのである。
十代は慌ててジャケットで明日香を包み、ジャケット事明日香を抱え込み、
ズボンを強引に引き上げるとその場を立ち去ろうとしたが翔はそれを引き止めた。
「何すか、それ?」
「見ての通り、俺のジャケットだよ!」
「何処、行くんすか?」
「外の空気に当たって来る!」
十代は逃げる様に明日香を抱き抱え自分の部屋へと戻って行った。
「やかましいぞ……」
翔とのやり取りを聞いていた万丈目も目を覚まし、辺りを見回したが、
どう言う訳か脱ぎ散らかされている白の結社の女性用制服に目が行った。
手に取り確かめたがすぐに捨てた。
「コスプレは程々にしろよ……」
それだけを言うと万丈目は再び夢の世界へと旅立って行った。
今、持っていた物が自分が最も愛しい人の物だとは知らずに。
十代は慌てて中へと入って行き、乱暴にドアを閉めると、
その場でへたり込み荒い息遣いで酸素を体に取り入れた。
明日香の方は十代を気にする事無く悪戯めいた笑みを浮かべ
十代のジャケットから顔を出し、そのまま十代の顔を猫の様に舐め出した。
「止めろよ、お前……」
「フフフ、体の方はそう言う反応はしていないわよ」
明日香の言う通り、先程の騒動で畏縮し掛かった十代の物は再び硬度を取り戻していた。
明日香は甘える様に十代へと抱き着き、十代の腕の中でブラジャーを外し、
続いてショーツも下ろして行った。
生まれて始めて見る女性の裸に十代は呆然としていたが
軽く明日香に鼻を噛まれて正気を取り戻した。
「十代も全部、脱いで。ベッド行こう」
言われるがままに十代は明日香を自分のベッドへと押し倒し、
自分の制服を脱ぎ捨て瞬く間に明日香と同じ状態となった。
自分の下に居る明日香を十代は急激に愛しく感じ、
胸へと体を移動させ両手でやんわりと揉み始めた。
「んふぅ……良いよ十代……」
行為により明日香は甘い吐息を零し、それが十代は最高に嬉しかった。
舌先で乳頭を弄びながら、手を恥部に伸ばした瞬間であった。
恥毛を掻き分けた先に感じた物は既に大洪水を起こし、
十代を誘っている明日香であった。

「もう限界だから、お願い……」
蚊の鳴く様な声で明日香は十代に言った。
十代自身も物が限界にまで膨れ上がっており、
我慢が出来ず明日香の恥部へと押し当て、そのまま明日香の中に押し入れた。
「ひぐぅ……あはぁ!」
多少、明日香が苦しそうな声を上げたが、それ以外に目立った変化は見られなかった。
十代は漫画であるようなドタバタとした状態を予想していたが、
思っていた以上に現実は淡白である事を知り、
多くの安堵感と僅かな喪失感を味わっていた。
だが、それは中で蠢く肉の感覚にあっという間に掻き消され快楽を求める為、
十代は動こうとした。
「い、良いか明日香?」
「聞かないでよバカ」
明日香は手でシーツを掴み目を瞑り快楽に耐えている状態であった。
了解を貰い十代はゆっくりと腰を動かして行き、
自身と明日香に快楽を与えて行った。ゆっくりと響く卑猥な音にも2人は興奮し、
快楽のボルテージを高めて行った。
「す、凄い十代のが出たり入ったりして気持ち良いよ……」
明日香は今の感想を率直に述べ、
十代に更なる行為を求めた。十代はそれに応える様に腰を強く打ち付けて行った。
その過程で上下に激しく揺れる豊満な胸に興奮を覚え、
手でそれを弄ると同時に下の方も締め上げ、十代に限界を感じさせた。
「ひゃあ! らめ! 十代!」
「もう俺出そう……」
十代は目を閉じ必死に耐え抜いている状態であるというのが分かり、
明日香はこの状態から早く十代を解放しようとした。
「良いよ出して! 私もイクから一杯出して!」
「うあぅ! 明日香出すぞ!」
声と同時に大量の精液が明日香の中に解き放たれた。
自分の中に十代が入り込むのを感じ、
明日香は幸せそうな笑みを浮かべ十代を抱き締めた。
「まだまだ、これからよ次は私の番だからね」
「ああ、明日香となら何回だって良いよ」
そう言うと同時に2人は体の位置を変え、
今度は明日香が上となって深いキスを始め、唾液を交換し合い、
十代の物が明日香の中で再び硬度を取り戻すのに時間は必要無かった。
物が出来る状態なのを見極めると明日香はゆっくりと腰を動かして行った。
「明日香……」
「もう1度ね十代」
淫靡な笑みを浮かべると同時に明日香は腰を動かして行き行為を再開させた。
こうして2人の甘い時間はまだまだ続いて行った。

その後、何度、交わったか分からないが、朝日が挿す頃、十代は目を覚ました。
自分の隣には明日香が生まれたままの姿でシーツを共にしていた。
未だ十代は夢心地であるが、隣に居た明日香が目を覚ました所で少し覚醒し始めた。
「おはよう明日香」
明日香は自分の置かれている状況が理解出来ず、
目を白黒させ現状を理解しようとした。この状況に十代は慌てて耳を塞いだが、
予想とは反して明日香は顔を赤らめシーツに潜り込んだ。
ここで十代は気を利かしてベッドから出て自分の服を着始め、
明日香に背を向けた状態で問い掛けた。
「昨日の事は覚えている?」
「一応……」
「俺はこれから何をすれば良い」
「服持ってきて、その代わり、あの白制服以外で」
「え?」
明日香の突拍子も無い発言に十代は思わず振り返ったが、
それと同時に枕が飛んで行き、
体をシーツで必死になって隠している明日香が目に入った。
「こっち見ないでよエッチ!」
その言葉と同時に十代は慌てて体を戻した。だが明日香の要求に頭を悩ませていた。
「そんな事言われてもだな……」
「十代の代え用意してよ」
「今クリーニングに出している最中」
「何とかならないの?」
「そうは言ってもだな……翔だとサイズが合わないし、
剣山のは男しか着られないし、
万丈目の酸っぱい制服着させる訳にも……ん? 待てよ」
ここで十代は何かを思い付いたらしく明日香を置いて1人部屋を出た。
1人取り残された明日香は不安でたまらなかったが、
十代がレッド寮の制服を持って来たと同時にそれは解消された。
「それって……」
「これは本来、万丈目の奴に支給された制服。
でもあいつ着ないから、袖1回も通していない状態だから問題無いぞ」
「ありがとう十代……」
それだけを言うと明日香は十代から制服を受け取り、
十代が背を向けると同時に着始めた。
「じゅ、十代もう良いわよ」
声と同時に十代は振り返った。
そこに居たのはレッド寮の制服に身を包んで恥ずかしそうに頬を赤らめている
明日香の姿であった。普段、見られない服装に十代の心はトキメキを感じていたが、
枕が飛び、顔面に当たった所でそれは掻き消された。
「ほら! もう良いから出よう!」

照れ隠しの行動だと言う事はすぐに分かったが、
言われるがままに明日香と十代は部屋を出た。
出た先では翔、剣山、万丈目の3人が気だるそうな表情で
眼の下に隈を作った状態で、汚い小型の鍋で粥を作っている様子が目に入った。
明らかに全員、二日酔いの症状が出ている事は明白であった。
3人は2人に気付くと手招きをした。
「アニキ、明日香さん。おはようッス」
「こっち来てお粥食べるドン」
「ところで天上院君。その格好は? 何故、十代の部屋から?」
思考が曖昧な翔と剣山に対して万丈目だけは比較的まともさを保っていた。
突然の問い掛けに2人は慌てて言葉を探し、明日香の口から言い訳は発せられた。
「これはね、私も白の結社を脱退したのよ……
だからあの制服、着たくないから、代わりでこれを……」
「それは良い事だ。けど何故、十代の部屋から?」
「それは貴方達が占領していたから……代わりに……」
「貴様等! 天上院君に迷惑を掛けるな!」
殆ど何の言い訳にもなっていないが、
今の万丈目を納得させるには十分の物であった。
怒鳴られた翔と剣山は軽く愚痴を零しながら粥の調子を見ており、
煮立った所で夫々の茶碗に分け与えて行った。
完全に自分達に興味が無くなったのを見て十代と明日香はほっと胸を撫で下ろし
粥を食べ始めた。
「これ美味しいわね」
二日酔いの体に粥は優しく浸透して行き、一同の心を和ませて行った。
「当然、この『雷鳴米』は幾等でも箸が進む本当に美味い米だからな、
それはそうと白だけでは物足りないだろ、卵と梅干あるけど使うか?」
「あ、じゃあ僕、卵」
「俺もお願いザウルス」
翔と剣山は卵を万丈目から貰い、おじやの状態にして食べて行った。
「俺は梅干」
「私も十代と同じで良いわ」
「醤油使う?」
「使う、使う」
十代と明日香は梅干を貰い、味に変化を与え楽しんだ。醤油も出回り、
そこには嘗ての仲間達の美しい友情があった。
一方、その頃、
すっかり忘れられた三沢は同人誌の中で白目を向いている所を
他の教団員に発見され、暫くの間は白い目で見られたと言う。

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