デュエルアカデミアに夜が来た。

「ゆま」

絶望の時間だった。


「入って」

軋むドアを開け、少年が短く命令する。
冷たい声色。少年がそんな声を出すことをおそらく誰も知らない。彼女、タッグパートナーである宮田ゆま以外は。
ゆまは俯いたまま動けないでいた。これから起こる残酷な儀式に脅え、スカートの裾をきつく握りしめる姿は哀れだったが、
少年は同情するどころか

「早く」

と追い打ちのように促す。その一言にぴしりと鞭打たれ、
ゆまは観念したようにゆっくりと暗い部屋へ足を踏み入れていった。

後ろ手にドアを閉めると、少年は目深に被っていた帽子を外した。
ゆまはまだ項垂れている。

「脱いで」
「……ぁ」
「何?」
「……ぅ、あぅ、あうぅ……」

とうとうゆまは堪え切れずに泣き出した。肩を震わせ、ぽろぽろ涙を零して、
その場に座り込んで嗚咽を漏らす。「いや、いやぁ……や、です……」
少年は歩み寄り、しゃがんで顔の位置を合わせた。
「きみはどうしてそんなにききわけが悪いのさ」優しく諭しながらその細い首に手をかけた。
ひっ、とゆまが息を呑んだのを合図に力を込める。

「あ……げぇ…ッ、うっ…ぐ、ぁ…」

「いやいやってそればっかりだ。自分がどんなにみっともないか、わからないの?」

床に体を組み伏せて跨る。片手で首を絞め、もう片方でズボンのファスナーを下ろす。
手慣れた様子で一連の動作をこなす少年は、無表情のまま勃起していた。
更に顔を近付け、唇を奪う。口内を舌で掻き回し、犯し、時間をかけて嬲り、それからようやく指を離してやる。
「がはっ!はぁ…はぁ……っふ、げほッ、うう……っ!」
荒い咳を繰り返して懸命に酸素を取り戻そうとしたのもつかの間、今度は頭を鷲掴みにされ股間に顔を押し付けられる。


「咥えろ」


眼前に迫る少年の性器が怖い、感情のない声が怖い、首に残る手の痕が怖い、いつの間にか窓から差し込んでいた月の光が怖い。
世界が全部闇に沈んでしまったらどんなにかいいだろうと、
ゆまは毎晩、毎晩、同じ祈りを捧げていた。
(それがだめならせめて私を、誰でもいい、どこか暗い場所へ連れて行ってくれたら……)

ゆまは知らない。
かつてそうしようとした者がいとも容易く、目の前で自分に口淫を強いる少年に敗れたことは。



生徒を含めた島に存在する殆どの人間が、彼と組んだ経験があると言う。
タッグデュエルを行う機会は一昨年のタッグフォース大会、今年度前半のデスデュエル、
そしてこの卒業デュエル以外にはなかったはずなのに。
しかも皆口を揃えてこういうのだ、
「あんなにいい奴はそういない」と。
パートナーと呼吸を合わせ、思わず滾るような素晴らしい闘いを展開させる腕前と、
寡黙だが穏やかな人柄を誰もが褒め称える。
この、目の前の、赤い帽子の少年を。


少年はまったく仕方がないなとでも言いたげに息を吐くと、跪いていたゆまを立たせ、スカートの中に手を伸ばした。
指を引っかけられた下着が、そのまま音もなく足首に落ちる。
その合間にゆまは上着を奪われ、上はノンスリーブのハイネックインナー、下はマイクロミニスカートのみの姿になる。
少年の言いつけによりブラジャーの着用は禁じられ、インナーのサイズも最少のSサイズに変更させられたため、
柔らかな乳房の形だけでなくその先端までもがくっきりと浮かび上がっていた。
興奮したの、と侮蔑の表情で少年が尋ねる。「あれだけ嫌がってたくせにさぁ、これだもんな……」
「ち、が……ひっく、ちがい、ますぅ……」
「何が違うんだよ」
乳房をゆっくり手で包み、親指でぴん、と乳首を弾く。「じゃあこれ、どういうこと」
「やっ……」
「乳首立たせて、アソコ濡らして。言いなよ、自分は淫乱ですって」
インナーを上にずらされ、剥き出しになった乳首を甘噛みされる。不意に全身を襲う衝撃に仰け反ってゆまは嬌声を上げた。
たっぷり唾液を絡め大きな水音を立てて吸ったかと思えば湿りを帯びた割れ目を指腹で愛撫する。
上から下から責め苛まれてがくがくと膝を震わせ喘ぐばかりのゆまに最早抵抗する力がないとわかると、
粗末な三段ベッドの下段に乱暴な手つきでうつ伏せに寝かせた。

隠し持っていた細い縄で後ろ手に縛り上げる。鬱血もお構いなしのきつさにゆまが洩らした悲鳴は背中を蹴られくぐもった呻きに変わった。
さてこれからどうしようか。抑揚のない口調のままの少年。「そうだな……散歩はこの間出かけたし、バイブって気分じゃないし……ああ」
何か思い付いたようにポケットからPDAを取り出す。「そういや、オシリスレッドは大体がまだ童貞なんだよなあ」
「え……?」
「だから今夜は、ここにレッドを全員呼んでパーティでも開こうかと思うんだ。
知ってた?君けっこうモテてるんだよ、あいつらに」


これは事実だった。モデルのような体型の美少女ばかりが集う(意図的に集められたのかもしれない)
ブルー女子の中でもゆまのどこか幼い顔立ちとアンバランスな巨乳は男子の密かな評判で、
夕飯時に粗食をつつきながらの猥談にもちょくちょく名前は挙がっていた。
「やっぱどうせなら、あーゆースレてなさそうな女子と一発ヤりてーよなー!」
「案外イケるんじゃねえの、ちょっとぽやぽやしてるし」
「わかる。なーんかガードゆるそうっつか、騙されてホイホイついてっちゃいそうな感じ?」

女にも勝利にも日々の食事にも恵まれない鬱憤を下世話な話で紛らわす彼等に、餌を与えたらどうなるだろうか。
「きっと大喜びするだろうね。たっぷり可愛がってもらえるんじゃないか?」
「いや、い、いやです、おねがい、そんな、いやあ……」
ゆまの脳裏で、大勢の男の子が自分を取り囲み見下ろす光景が見えた。
家畜のように繋がれて、穴という穴を貫かれ精液まみれになった惨めな自分を、きっとみんなで笑い者にするのだ、
売春婦、肉便器、

「淫乱」

髪の毛を掴まれる。「淫乱!この淫乱女!……だけど僕はもう君を許そうと思う」
少年は突然、台本でも読むかのように一息に呟いた。「安心しなよ。今夜が最後だから。
明日の朝になったら、僕と君はデュエル場に行く。そしてアモンとアムナエルの二人とデュエルをして勝つ。
そうしたらみんなの称賛を浴びて、僕と君はずっといっしょにいようと誓う。

そして君は全部忘れて僕から離れ、僕はまた一人でやり直すのさ」

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