深夜。
仲間たちと散々に遊び歩いていたダルクは、家に帰るなりこそこそと隠れるようにして自室へと向かう。
見つかってはならぬ相手がいるから。
過保護過ぎる恋人が、きっとまた泣く。
そんな危惧を抱きながら、ダルクは自室のドアを開けて―――

「お帰りなさい、ダルク君?」
「が、ガールさんっ!?」

薄手のシャツ一枚に、その豊満極まる肢体を包む美女がいた。
ニコニコを通り越す笑顔には、黒魔術師の弟子であることを痛感させるだけの魔力も見栄隠れする。
しかし、しかしである。
金髪も、豊満な胸も、美しい微笑みも、今のダルクには目に入ることはない。

「ガールさんじゃなくて。マナって呼んでって、言ってるでしょ?」
「さ、さようならっ!」

脱兎の如く、離脱を図るダルク。
しかしこのような深夜にダルクを歓迎するなど、少なくともダルクの知己にはそういない。
ライナかエリアかウィンかヒータかアウスか、はたまたアーカナイト先生やノースウェムコ先生にお願い?
いやいや、里の中に限ってしまえばガールさんに見つかるのは時間の問題だ。
インゼクターやヴェルズの人たち?
そうだ、僕は闇を司る霊使いなんだ、闇に紛れて行き場を探せば―――

「逃がさない、からねっ!」
「わひゃっ!」

ダルクが間の抜けた声を出して、床に叩きつけられる。
ダルクが目を開けると、そこには修羅と化したガールがいた。

「ねぇ、どうして………?」

床に叩きつけられたダルクの上に馬乗りになりながら、ガールが問う。

「どうして、て……」
「どうして、私とキスもしてくれないの……?」
「ふぇっ!?」

ポロポロと溢れる涙を拭いもせず、ガールはダルクの上で哀しげな顔のまま。

「ダルク君からキスしてくれたこともないし、えっちもお風呂もデートも全部私からおねだりしてなんだよ……?」
「……いや、その、あの……」
「やっぱり、他の女の子のほうがいいの?私じゃ足りないの?」
「足りないっていうか、むしろ僕がガールさんに不釣り合いっていうか……」

天然ジゴロとして知られるダルクが、困惑しながら美女に笑う。

「僕、頭悪いですし、力もないですし。だから、友達やノースウェムコ先生に頼んで特訓をしてもらって――」
「いいよ?」
「あ、いいんですか」
「ダルク君は、そのままでいいから」

にぃと笑い、ガールがダルクにしなだれかかった。

続かない。

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