注意点
今回はまだエロがありません。
どうでもいいような部分が多いですが、物語の関係上必要なのでご了承ください。




ブラックマジシャンは魔術師隊に配属されることになった。
朝礼終了後、フリード将軍に連れられ、マハードは魔術師隊のオフィスに向かう。
「緊張しているかね?」
「いいえ、こういったことには慣れています。ところで、将軍。」
「なんだね?」
「あの館を招待した理由は?」
その質問にフリード将軍は笑みを浮かべる。
「楽しい時間は過ごせたかね?」
「どういう意味です?」
「そのままの意味だがな」
「ええ、楽しめましたよ。彼女達はいつもあのようなことをしているのですか?」
マハードは毒づくように質問する。
「マハード、君にはいろいろと期待しているのだよ。だから、あの館を紹介したのだ。」
「本当にそれだけですか?」
「それじゃ、他にどんな理由があるというのだね?」
マハードは様々な理由を考えてみるものの、いずれも主観的な答えしか出てこなかった。
「まあ、深く考えるな。お前にはお前の役目がある。それを忘れるな。」
フリード将軍の言葉が発せられた後、魔術師隊のオフィスに到着する。
ノックをして、フリード将軍はオフィスに入り、マハードも続いて入る。
オフィスには5人の魔法使いがそれぞれの仕事をしていた。
「みんな、一旦、作業を中断してくれ。」
その言葉に全員がフリード将軍に対して敬礼をする。
「朝礼でも紹介したが、彼が本日からここに配属されるブラックマジシャンだ。」
マハードは一礼をする。
「…」
しかし、誰もまったくの無反応だった。
「カイクウ、私は部屋に戻るから、後は君に任せるぞ。」
「はい、わかりました…」
カイクウと呼ばれた修行僧のような男は少し緊張気味に返事をする。
「では失礼。」
フリード将軍はオフィスを後にする。
「ブラックマジシャン、こちらへ」
カイクウはブラックマジシャンを開いている机に案内する。
「ここがお主の席になる。」
「ありがとう…」
「そう硬くなるな。他の隊に比べたら、我々魔術師隊は気楽なものだぞ。はっはっはっ!」
カイクウは笑いながら説明する。
「カイクウ殿。新入りをあまりいじらないものだよ。それに我々はまだ彼に自己紹介をしていない。」
祈祷師のような男がカイクウを軽く注意する。
「そうだったな、これは失礼。拙僧、魔術師隊隊長、カイクウと申す。」
カイクウは左手だけの礼をする。
「私はジョウゲン。以後、お見知り置きを。」
祈祷師のような男も、カイクウと同じように礼をする。
すると、丸みを帯びた特徴的な帽子を被った女性が立ち上がり、
「私もご挨拶をさせて頂きます。私はドリアード。こちらの2人はピケルとクランです。さ、2人もご挨拶を。」
ドリアードは屈託のない笑顔をしながら、白い服の少女と黒い服の少女に挨拶を促す。
「白魔導士ピケルです…。よろしくです…」
ピケルと呼ばれた少女は少しおどおどしながら自己紹介する。
「黒魔導士クラン。まっ、よろしくっ」
クランと呼ばれた少女はピケルとは対照的に高圧的な態度で自己紹介をする。
5人全員の紹介が終了したので、今度はマハードが自己紹介をする。
「ブラックマジシャンです。よろしくお願いします。」
「よろしく。まあ、さっそくだが、まずは机とロッカーの整理をしてくれ。」
手始めにマハードは机の整理をすることとなる。
しかし、整理は思いの他時間がかかってしまったため、午前中は机の整理だけで終わってしまった。
決してマハードが鈍間ということではなく、むしろ皆が関心する程の手際の良さであった。
前の魔法使いの書類や必要のない私物などが大量にあったため、マハードといえども時間がかかってしまったのだ。


その日の午後、訓練として抜き打ちでの1vs1の模擬戦トーナメントが行われることとなった。
広場にはトーナメントを観ようと多くの団員が押し寄せた。
そして、口々に魔術師隊に配属されたブラックマジシャンの話題を口にしていた。
「あのブラックマジシャンという若造も所詮は弱い魔術師なんだろうな」
「役に立たない魔術師隊に配属されたんだ、たかが知れてるぜよ。」
ギャラリーはあることないことの話題で盛り上がっていた。
すると、片目に傷を負った戦士がマイクを持って中央に現れる。
「これより指名された者は前に出るように。」
戦士はポケットからメモ用紙を取り出し読み上げる。
「ギガサイバー」
「ダイ・グレファー」
「カラテマン」
「ミーネ」
「グスタフ」
「バスター・ブレイダー」
「ケイローン」
「カナン」
「マキュラ」
「ブラックマジシャン」
「又佐」
「SASUKE」
「ヤエ」
「テーヴァ」
「レイレイ」
「ゾンバイア。以上の16名は私の元に来るように。」
呼ばれた者は中央に移動する。
「ま、それなりにがんばれよ。ブラックマジシャン。」
「ああ…」
カイクウに期待されない言い方をされながら、マハードは広場の中央に向かう。

広場の様子を執務室の窓から剣の女王とフリード将軍は見ていた。
「ずいぶんとまた無茶な人選ですね。」
「そうか?」
「ええ。将軍の予想ではあの2人が決勝でぶつかると確信していますね。」
将軍は顎鬚を軽く触り微笑む。
「でなければ、あのような予言を信じると思うかね?」
「自分の目で見たものしか信じない。あなたは放浪時代からそうでしたね。」
「いやはや、性格とはなかなか直せないものだな。」
がははと将軍は笑いです。
「ところで、彼はどうだったね?」
「うふ。楽しめましたわ。」
「それはよかった。」

一方広場では組み合わせの抽選が行われていた。
マハードは抽選箱に手を入れて番号札を掴む。
「私は1番のようだ。」
トーナメント表を観ると、対戦相手はカラテマンであった。
しばらくして、全ての対戦の組み合わせが決定した。
それと同時に特設リングが手早く用意されていく。


広場は一気に熱気を帯びた歓声が響き渡る。
「それでは一回戦、カラテマンvsブラックマジシャンの試合を開始します。」
カラテマンとブラックマジシャンはバトル用の特設リングの両端に立つ。
「魔術師の落ちこぼれがっ!さっさと負けちまえよっ!」
「魔法使いなっていらねぇんだよ!」
ブラックマジシャンに対しての野次があちこちから向けられる。
「まあ、気にするなよ。どうせ、訓練という名の遊びなんだからさ。」
「そうだな。」
カイクウの励ましにもならない言葉に苦笑しながら答えるマハード。
カラテマンとマハードは2mの間合いで立ち、開始の合図を待つ。
マイクを持った片目の戦士がゴングを鳴らす。
「試合開始!」
その言葉と同時にマハードとカラテマンはそれぞれの構えをする。
「お主に恨みはないが〜、これも勝負の世界〜、我が拳で〜、敗北〜するが〜よい〜!とぅっ!!」
カラテマンは勢いのある跳躍でマハードに迫る。
「いざっ!!」
それに合わせてマハードも跳躍し、カラテマンに迫る。
「ナニッ!!」
マハードの魔法使いとは思えない行動にギャラリーは一斉に同じ言葉を発して目を見開きながら驚く。
「馬鹿な!?魔法使いが自ら格闘の間合いに入るだと!?何を考えているんだ…?」
ブラックマジシャンとカラテマンが太陽の光を遮った瞬間に2人は完全にゼロ距離になる。
その様子にギャラリーは完全に言葉が出ず、ただ固唾を呑んでその様子を見守っていた。
すると、ブラックマジシャンとカラテマンが立ち位置を入れ替えたかの如く、リングに下りてくる。
「お主…、ただの魔法使いではないな…」
「…」
「我が技もまだまだ修行が足りぬということか…」
そう言うとカラテマンは片膝をついてしまう。
その様子を見た片目の戦士は、
「第一回戦勝者はブラックマジシャン!!」
片目の戦士の言葉に広場には大きな歓声があがる。
マハードはその歓声を気にもせずリングを下りる。
そして、リングを下りたマハードにカイクウが声をかける。
「お主なかなかやるではないか!」
「それ程でもないです。」
「いや、まさか格闘家相手に自ら接近戦を挑むとは…。その度胸には恐れいったよ…」
「状況に応じて、戦術を立てているだけですよ。」


それからというもの、マハードは2回戦、3回戦を勝ち、決勝戦に駒を進めた。
彼の戦いにギャラリーは魅了されていく。
当初のブラックマジシャンは大穴ということもあってか非常に倍率が高かったが、
新参者であり、魔術師隊のブラックマジシャンに賭けるものは誰もいなかった。
そのため、彼が決勝にまで残ったことにより大負けする者が続出してしまうという事態になった。
「くそう…。なんなんだあのブラックマジシャンて野郎はよ…、おかげで大損じゃねぇかよ…」
「今週の生活費があああああ…!」
広場には賭けに負けた者の悲鳴がこだましていた。すると、
「さあさあ負けた者でもまだチャンスはあるぞ!決勝戦、ブラックマジシャンvsバスター・ブレイダー!どっちに賭ける?」
賭博屋の言葉で一斉に負けたギャラリーは一斉に詰め掛ける。
「ブラックマジシャンだ!」
「いやいやバスター・ブレイダーに賭けるぞ!!」
賭けはほぼ半々になった。

満を持して、遂に決勝戦の幕が開く。
「これより決勝戦を開始します。ブラックマジシャン、バスター・ブレイダーの両名はリングへ!」
2人はリング中央に進んでいく。
「お前のような強者と戦えるとはな。」
バスター・ブレイダーは中央につくとマハードに対してうれしそうに話す。
「それはお互い様とうことだな。」
マハードもうれしそうに話す。
「なら、遠慮はいらんな。本気で戦わせてもらおう。」
2人はそれぞれの構えをする。
「決勝戦!試合開始!」
試合開始のゴングと同時にマハードは仕掛ける。
「魔導覇っ!」
黒い炎の弾丸がバスター・ブレイダーに向かって飛んでいく。
「甘いっ!」
バスター・ブレイダーは軽やかに交わして反撃に移る。
「はああああっ!!」
バスター・ブレイダーの大剣がマハードに向かって振り下ろされる。
しかし、大剣が切ったのはマハードではなく、"?"の文字が付いた黒い帽子であった。
「やるな…」
いつの間にかマハードはバスター・ブレイダーの背後に回っていた。
しかし、バスター・ブレイダーもすぐに背後への回転切りを繰り出す。
「くっ…」
思わぬ攻撃をマハードは紙一重で回避する。
激しい戦いに広場に集まったギャラリーは完全に声が出なかった。
時には剣と杖がぶつかり、それぞれの技が華麗に放たれる。
その様子は一種の芸術作品のような光景であった。
しかし、一瞬の隙を許したマハードは体勢を崩す。
「しまった!」
バスター・ブレイダーはその隙を逃さずに渾身の一撃をマハードに繰り出す。
「……」
その瞬間、広場は静寂に包まれる。


「…」
「…」
マハードの肩にバスター・ブレイダーの大剣がほんの数センチ上で静止していた。
2人は無言の状態にあった。
「なぜ…、止めた…?」
「そなたがナイフを止めたからだ…」
バスター・ブレイダーの言葉に審判である片目の戦士は我が目を疑った。
バスター・ブレイダーのすぐ頭上に数え切れない程のナイフが静止していたのである。
「そこまで!!この勝負は引き分けとし、両名の同時優勝とする!!」
彼の言葉に会場は一気に大きな歓声に包まれる。
2人はそれぞれ武器を納める。
「よい戦いであった。ブラックマジシャン、また手合わせする時を楽しみにしているぞ。」
「私もその時を楽しみにしている、バスター・ブレイダー。」
2人はリングを降りる。
周りからは2人を賞賛する声が響き渡り、ブラックマジシャンに対する自警団員の評価が大きく変わった瞬間でもあった。

そして、これがブラックマジシャンとバスター・ブレイダーの運命の出会いであった。

模擬戦後、マハードは執務室に呼び出される。
「どうだったね?」
「どうもこうもありませんよ…。将軍の意思が反映されているようにしか思えません。」
マハードはがっくりな様子で返事をする。
「まあそう言うな。いい経験ができただろ。」
「ええ。」
「うむ、これからもよろしく頼むよ、マハード。」

それから今日の自警団の魔術師隊の業務は一通り終了し、帰り支度をしている中、
「ねぇねぇ、ブラックマジシャンさんてすごく強いんですね〜!」
ピケルはまだ興奮が冷めていない様子ではしゃいでいた。
「まぁ、魔法使いならあれくらいできて当然よね。」
クランは腕組みをしながら少し照れくさそうな様子でピケルに言う。
「うむ。あのような強き魔術師はなかなかいないぞ。」
ジョウゲンは私物の巻物で知っている魔法使いと比較をしていた。
「あのバスター・ブレイダーと互角に戦える奴はそうそういない。拙僧の眼力ではまだまだ彼は強くなるだろう。」
カイクウは書類を整理整頓しながら話す。
「ドリアード、君の意見は?」
「…」
カイクウはドリアードに意見を聞こうとするが、彼女はまったく反応がなかった。


「ドリアード?どうした?」
「えっ?あっ…、何でしょうか?」
「あ、いや、君は彼のことをどう思うか意見を聞きたくてな。」
主旨を理解いたドリアードは目を瞑って考えた後、
「申し分のない強さだと思います。」
「そうだな。彼ならうまくやっていけるだろう。」
それからすぐにマハードがオフィスに戻ってくる。
「おお、おつかれさん。」
「うむ。なかなかよい試合であったぞ。」
「ブラックマジシャンさんかっこよかったです〜!」
「ま、新米にしてはなかなかやるじゃない。」
カイクウ、ジョウゲン、ピケル、クランの4人はマハードに近づきほめ言葉を言う。
「ちょっと…、あんまり詰め寄られても…」
少しおののくマハードはこちらを睨み付けるドリアードに気づく。
「…」
(一体何なんだ?)
すると、ドリアードは鞄を持って、
「それでは私はお先に失礼します。」
そう言ってオフィスから退出する。
「おお、おつかれさん。」
マハードは横目でドリアードの後ろ姿を追っていた。
(なんなんだ?様子がまるで違ったぞ…)

それからマハードは同僚の質問攻めから解放された後、ロビーに着く。
「マハード!」
デーモン・テイマーが手を振りながらやってくる。
「今帰りか?」
「えぇ。あなたも?」
「ああ。」
「それじゃ一緒に帰りましょう。」
2人は一緒に自警団の敷地から出て行く。
「今日の試合すごかったわね。」
「その話か…」
「嫌そうな顔ね。」
「当たり前だ…。何回この話をすれば終わるんだよ…」
愚痴をこぼすマハード。おそらく、神官時代の彼からは考えれられないことであろう。
「そう。初日からたいへんだったわね。」
「まったくだ…」
「それでも、あのバスター・ブレイダーを相手に引き分けるのはなかなかできないことよ。」
「彼はそんなに強いのか?」
デーモンテイマーは得意気な様子で話しだす。
「単純な戦闘能力で考えたら、この自警団の中ではトップクラスの強さよ。」
「…」
「それに彼は“竜破壊の剣士”の異名を持っているわ。」
「竜破壊の剣士?」
「ドラゴンが相手だとさらに彼の戦闘力は高くなるわ。しかも、多ければ多いほど強くなると言われているからね。」
「なるほど、それで竜破壊の剣士か。」
「でも、あなたと彼の様子だと、いい関係を築けたようね。安心したわ。」
それから2人はまっすぐ剣の女王の館に帰るのであった。
そして、事件はそれから3日後に起きたのであった。

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