湿った空気が肌を舐める。
 異様な熱気が立ち込める室内。粘り気のある水音を立てながら、甘い吐息が耳に飛び込んでくる。
 ウィンは破けんばかりに激しく鼓動する心臓を抑えようと胸に手を当てた。露わになった乳房を歪ませ、治まる気配を見せない鼓動に息を荒げる。
 当然だ。
 目の前で、親友たちが異形と交わっているのだから。
「んんっ、あ、ああぁ!」
 半透明の、人型と化け物と交わっているのはエリアだ。寝そべった一体に跨りペニスを膣の中にくわえ込むばかりか、近づいた複数の同種たちのペニスを掴み、あるいは頬張り奉仕している。恥ずかしげもなく快楽を貪る姿はもはや娼婦のそれと同じ。
「ひぁ、らめぇ、あ、ああっ」
 複数の尻尾を揺らしたトカゲ型の化け物に犯されるヒータ。口では嫌がっているが、身体は更なる快楽を求め尻を高く突き上げている。それに気を良くしたのか、化け物の腰使いも一段と荒いように思えた。
「あぁ、もっとぉ……んんっ!」
 首のない、丸い胴体から頭が盛り上がったような化け物に犯されながら、アウスは最も忠実に快楽に溺れていた。化け物に持ち上げられる形で交わり、足を絡ませ自ら腰を振っている。
 三者三様に、化け物たちとの乱交を楽しんでいた。記憶の中にある無邪気な少女の面影などなく、ただ雄と交わる事だけに夢中な雌でしかない。
 その様を見てウィンは思う。
 もう、自分の知っている彼女たちは居ないのだ、と。
 目の前に赤い化け物がやってくる。六本の腕を持ち、赤い体液を滴らせる、かなり凶暴そうな化け物であった。
 三人に連れられて、廃屋に入りさえしなければ、こんな化け物になど生涯あう事などなかっただろう。
 しかし、ウィンはここに来てしまった。
 それ以上でも以下でもない。
「い、いやっ」
 気付けば良かったのだ。
 廃屋に向かう際の三人の表情が、快楽を期待する雌のそれだった事に。
「来ないで!」
 逃げ出せばよかったのだ。
 廃屋の中で、いきなり全裸になった親友たちから。
 しかしそれらも後の祭り。後悔先に立たず。
 六本腕の化け物はウィンの手足を捕まえると持ち上げる。華奢な身体はいとも容易く中に浮き、ウィンの身体は衆目の的となる。
 太ももを持ち上げ、腕を拘束した化け物の腕。残りの二本はウィンを愛でるために使われた。一本は乳房を揉み、一本はウィンの陰唇を濡らし始める。
「うぁ……いやぁ……」
 悲しみと、屈辱と、形容しがたい感情が押し寄せてウィンの言葉を奪う。今のウィンにはただ泣きじゃくり、恥辱に耐えるしかない。
「ウィンご開帳〜」
 口の端から精液を零したエリアが、心底楽しそうに声を上げた。
「そんなに怖がらなくていいよ〜。痛いのは最初だけだからぁ」
 跨っていた化け物から退く。陰唇からは注がれたばかりの精液が零れ、粘液まみれの床に落ちる。
「ホープさん、時間だよ」
 エリアが一言そう言うとホープと呼ばれた半透明の化け物たちはこぞって立ち去っていく。そして、人一人入れる程度の青い三角錐を運んでくる。
「ウィンもそんなに硬くならないの。みんな優しいんだから、ね」
 エリアが片目を閉じて見せると、それに呼応するように三角錐の中に目玉が浮き上がる。それも一つではなく複数だ。
 大きな口と鋭い牙も見え、目を見開いていると、
「そんなに驚かないの。傷ついちゃうでしょ」
 そう言うと、三角錐に背を向け、
「ソリッドさんはシャイなんだから、ね?」
 エリアの身体が三角錐――ソリッドに取り込まれていく。言葉を発する間もなく透明な三角錐に閉じ込められたエリアは、早速ソリッドに貪られる。
「うあ、あぁん! あ、あっ」
 手足をソリッドの肉体に呑まれ、股間、乳房をウィンに見せ付けるかのように曝け出し、交わりの激しさを誇示してきた。
 異形に犯される親友から、ウィンは眼を逸らせなかった。

 それどころか、うらやましくさえ思う。激しく犯されながら、恍惚と快楽を享受できるエリアが、うらやましい。
「んぁ!」
 突然の侵入者に、ウィンは身体を仰け反らせる。
 六本腕の化け物が、太い指を膣に滑らせてきたのだ。何者の侵入も許した事のない秘部は、異物の進入に過敏に反応した。
 声を出してはいけない。
 そんなふうに思ったが、それもまた仕様のない事。
「だ、だめだって、そんな……んんっ!」
 眼を向けてみれば、ホープに輪姦されているヒータがいた。エリアとは違い、立った状態で後ろを取られ、口にペニスを咥えている。両手で残りのペニスを扱き、前後から焦らすような腰使いで責められている。
 ペニスを咥えているせいで喘ぎ声もくぐもっている。が、それを楽しんでいる雰囲気はありありと伝わってきた。
「んっ!」
 ウィンの胸を揉みしだく腕。陰唇を弄ぶ事に飽きたらしく、六本腕の化け物は乳房をもみ、乳首を弾く。電流を流したような鋭い快感に、ウィンの身体は熱を帯びていく。やがて、頭もうまく回らなくなっていった。
 化け物に弄ばれる屈辱よりも、雌の快楽を求める心が大きくなっていく。
 それに気付いたウィンは否定しようと抵抗を試みる。
 が、
「ああぁ、はぁ……んんっ」
 触手のようなもので全身を包まれたアウスの悦びに溢れた声音に誘われ、ウィンを襲う快楽が津波の如く押し寄せる。
「んん! ぷはぁ、はぁ……はぁ……」
 ホープたちから解放されたヒータの身体は、精液の白とトカゲの体液の紫で汚されていた。未練があるのか、一匹のホープがヒータの上に覆いかぶさり、犯す。
 肉と肉がぶつかり、粘液が糸を引くいやらしい音を響かせた後、腰の動きが止まる。
 痙攣したように数度動いた後、ホープはヒータから離れた。
 エリアとヒータ。二人の少女を犯して満足したのか、ホープたちは廃屋の闇へと消えていった。
 入れ変わりに入ってきたのは、一際大きな化け物だった。
 銀色の身体。蟻の頭から人間の上半身が生えたような姿。見た目の雰囲気から女性のように思えたが、思考の定かでないウィンにそれを判断する事は出来なかった。
 六本腕の化け物に自由を奪われ、甘い刺激を与え続けられたウィン。陰唇からは蜜が糸を引いて流れ落ちる。
 ほんの少し背中を押されれば、ウィンの理性ははじけ飛ぶ。
 限界にあるウィンの意識を、銀色の化け物が揺さぶる。二対の腕を伸ばし、一対をウィンの頬にあて、もう一対で身体を舐めるように触れてきた。
「んぁ……クイーン、様ぁ」
 恍惚としたアウスの声が耳に入る。クイーンと呼ばれた化け物は、ウィンから腕を離し、背中を向けてしまう。
(何……して……)
 クイーンの尻から触手――管が伸びた。すぼんだつぼみのような先端がウィンを狙い、陰唇に宛がわれる。
 この管は一体なんなのか。
 湧き出た疑問は、すぐに解ける事となる。
「あっ、ふぁ!」
 管はウィンの膣に侵入し、純潔を引き裂いた。接続部から血が滴り、痛みに目尻から涙がこぼれる。
 しかし、それらは問題ではなかった。
 正確に言えば、それらよりもはるかに大きな問題が目の前に現れ、怪我された事を悲しむ余裕がないというべきか。
 ウィンとクイーンを繋ぐ管。その中を、何かがうごめいている。球体状ではあるが、時折心臓の鼓動にも似た動きを見せる。
 それらが、管を伝いウィンに迫っていた。
 意識は急速に現実へと帰り、必死の抵抗を試みる。が、手足を掴む力は強く逃げ出す事は愚か満足に動く事すら構わない。
 管の隆起は陰唇にまで達し、膣内を通り子宮へと辿り着く。
 一つ、二つと正体不明の物体を流し込まれ、ウィンは血の気が引いた。そして、容赦なく注がれる異物の感触を腹に感じ、声を失う。
 管が引き抜かれる。ゼラチンのような粘液が膣から噴き出す。
 ウィンの腹は、命を宿したように膨れ上がっていた。実際、命を宿しているのだろう。自身に降りかかった異常事態に打ちひしがれながら、ウィンはふと思い出す。

虫の中には、違う種の身体に卵を産み付ける者がいるらしい、と。
 腕を掴んでいた指が滑り胸を揉みあげる。赤い粘液に身体を汚しながら、身体が前に倒れる。腰を持ち上げられる姿勢を取らされながらも、ウィンはもはや諦観していた。
 化け物の子を孕まされてしまうのだ。
 それはもはや確定事項。覆しようがない。
「んんっ!」
 熱く火照った男根が、ウィンを貫く。硬くなったペニスに肉壁を押し上げられる感覚。それは次第に気持ちよさを持ち始める。
 初めは遠慮がちな腰使い。しかし、ウィンが痛がらないとわかると徐々に激しさを増してく。化け物の腰が尻を叩く。陰唇を無理矢理こじ開けられる快楽が、ウィンを徐々に乱していく。
「はぁ、あ、んっ、はっ」
 膝が震える。身体に力が入らない。
 口はだらしなく開き、唾液が零れる。子宮の中に詰められた化け物の子種が、突かれる度に揺れ動く。
 ウィンの腰が、無意識のうちの動く。更なる快楽を求めて自ら動き出したのだ。それに応じてウィンを深くえぐる化け物。
 一度委ねてしまえば、何の苦もない。
 今はただ、身体を貫く快楽に溺れていたかった。


 快楽だけが身体に刻まれていく。
 子宮をこじ開けられる度、胸を無茶苦茶に揉みしだかれる度、精液を喉に注がれる度、彼女たちは悦びに喘いだ。
「ああぁ、あ、んんっ」
 彼女たちは互いの痴態を見せあいながら、競うように乱れていく。
「んっ、あ、いいよっ、だして!」
 エリアはイリダンに身を捧げ、身体を持ち上げられながら交わっている。
「ひぁ、あ、あ、だめぇ」
 アウスはノーブルに足を開かされ、横向きの姿勢で犯される。激しい腰使いに大きな乳房が波を打つ。
「やっ、あ、んんっ!」
 ウィンはミリディスに群がられ、快楽の箇所を無数に責められている。身をよじる事も出来ず、泣きながら悦ぶ。
「ら、や、あん、めぇ」
 ヒータはグルスに覆い被さられ、獣の姿勢で貪られる。巨体から繰り出される激しい交わりが、ヒータの顔を雌のそれへと変えた。
 四人の少女が異形と交わり、雌の悦びに酔いしれる。
 やがて、エリアはイリダンから離れる。蒼い体液を胸につけ、それを名残おしそうに指で救い、自らの口へと運ぶ。膣からは白濁液が溢れ、ひくひくと痙攣している。
「ああっ、んんん」
 全身を精液まみれにされたウィンは、四つん這いになってエリアに近づく。そして、粘液によって艶めかしい光沢を放つエリアの身体にのしかかり、脚を絡める。
「良かったでしょ……ワームさんとのエッチ」
 交わり続けて息の上がったウィンを仰向けにし、エリアは彼女の乳首を軽く噛む。力を加えるたびに妖しい声でなくウィン。
「お母さんなんだから、うつ伏せに寝たらだめでしょ?」
 大きく膨れたウィンの腹を擦り、エリアは耳元で囁く。
 その瞬間、ウィンは小さいながらも苦しみの声を漏らす。予感がし見やってみると、陰唇から水が滴っている。
「あれ? もう赤ちゃん生まれるの?」
 隣で横たわっていると、アウスを犯し終えたらしきノーブルがエリアを求めてきた。
 ウィンの出産を見届けたかったが、ノーブルとの情事も捨てがたい。
「……隣で見てるから」
 エリアはノーブルに向けて尻をつき出し指で陰唇を広げる。吸い込まれうように、ノーブルはエリアと繋がった。
 前戯もなしに犯してくる。しかしイリダンの精液が愛液の代わりとなり、エリアの快楽を十二分に引き立てる。
「あ、ぁああぁっ!」
 ウィンの叫びと共に、腹に張りがなくなる。
 そして。ウィンの股から丸い物体が転がる。アグリィという、ワームの子供。豚のような鳴き声を漏らしていると、それをホープが持ち上げ、どこかに連れていく。
 クイーンの元に連れて行くのだろう。
「あ、ん、んぁ、はぅ」
 アウスを犯した後だというのに、ノーブルの半身はいきり立っていた。鋼のように硬い陰茎に犯され、エリアはあまりの快楽に狂いそうになる。
 出産を終えたウィンの元にもホープたちが集まり、そり立つ陰茎を穴という穴にねじ込んだ。それを苦しげに、そして嬉しそうな声を漏らすウィン。
 見やれば、アウスはルクイエに押し倒され、ヒータはミリディスに侵入されている。
 皆、快楽を楽しんでいた。
 エリアは、親友たちが気持ちよくなっている事を心から喜んだ。

「もう許してください」
 アウスはエリアの足元で土下座する。
 事の発端は、アウスがエリアの陵辱漫画を描いた事。弱みを握られたアウスはエリアに服従するしかなかったのだが、
「これ以上は勘弁してください」
 我慢にも限界というものがある。これ以上は筆を取れない。
「えぇ〜? まだ色々描いて欲しいんだけどなぁ〜」
 せっかく捕まえたかもを逃がすつもりはないらしい。エリアは水商売の女のような甘えた声音で返してくる。
「アウスが闇の呪縛されたりとか、アウスが魔力の枷されたりとか、アウスが精神操作されたりとか――」
「全部私かよ!?」
「いいじゃーん。空想の話なんだから」
 けらけらと楽しげな顔を見せるエリア。アウスを弄んで楽しんでいるようだ。天子のような笑顔が今は悪魔のほくそえみにしか見えない。
 言い返せない自分が情けなく、何とかして言い返そうと考える。
 そして、
「……だったら、私がエリアの陵辱漫画描いてたのだって、空想の話だけど?」
 渾身のカウンターを見舞う。
 エリアは言葉に迷ったように視線を逸らし、しばらく呻いた後、
「……わかった。もうこれでお終い」
 ぽん、と手を叩きそれで手打ちだと示してくる。相変わらずの笑顔だったが、今は本当の天使のように思えた。
「今まで描いた奴は私がもらうね」
 机の上に出ている原稿を手に取り、胸に抱く。
 そして、そのまま踵を返して部屋から出て行こうとする。
 思えば長かった。苦痛に耐えてよく頑張ったと自分を褒めてやりたいくらいだ。そして、これからは不用意に陵辱漫画など描くものかと心に誓うアウスであった。
 ドアノブを廻し扉を開けるエリア。だが、廊下に出ようとしない。
 肩越しにアウスを見やる。その目は、酷くいやらしい目つきをしていた。
「みんなー! アウスがこんなの描いてるよ〜」
 アウスは声にならない叫びを上げ、エリアを捕まえるため疾走した。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

どなたでも編集できます