窓に、軽い小石がぶつかるような音がした。
 時刻は夜更け。後輩達による宴も終わり、学生達は浴室で汗を落とし、各々
の寮で、部屋で、体を休めている時分だった。
 自室の窓打つ音に耳を傾けた、部屋の主である天上院明日香もそのご多分に
洩れず、汗を流し、少女らしい品のあるネグリジェに身を包み、もう眠ろうか
というその時に、窓の音に小首を傾げた。

 何であろうか。窓に、虫でもぶつかっているのだろうか。だとすれば気持ち
悪いが、追い払っておきたい。また、悪戯であるならば止めさせたい。何より
も、音の正体も確かめずに放っておくのは心地悪い。
 そう思って、明日香は気を引き締めるように一呼吸すると、さっと勢いをつ
けて、カーテンを開き――窓の向こうの人影に、眼を開いた。

 領内に生えた木々のうちのひとつ。自分と同じ目線だが、下を見ると口を開
きそうになる高さの上に、今現在、唯一のオシリスレッド寮生、結城十代の姿
があった。


 「どうしたの? 十代! こんな夜更けに――。
 まさか、また、何か異変が!?」

 少年の突然の来訪に、少女は顔色を変えて窓を開け、身を乗り出した。する
と、少年は苦笑いを浮かべながら、手を振り「違うって」と苦笑いをしながら、
答える。ならばどういうことなのかと眉を顰めていると「入っていいか?」と
問われたため、窓から身を離し、何の気なしに少年を招いた。十代はひょん、
と全く苦も無く、木を伝って、外から内へと滑り込んだ。

 「おー、さぶさぶ! やっぱ夜はいくらか冷えるな! サンキュな明日香!」
 「あんな高いところにいたら、冷えて当然でしょ! ……それで、一体どう
したの?」

 立ち話もどうかと思ったので、ベッドに腰掛けるように十代に勧める。自分
は椅子に腰掛け、話を促す。「いや……」と、十代は言葉を濁した。
 「? どうしたの? ――私で乗れる相談なら、幾らでも乗るわよ?」
 小首を傾げ、やや、不安になって十代のもとに近づいた。十代は先ほどから
きょろきょろと目線を動かして、落ち着き無い。そんなにも自分の部屋は珍し
いのだろうか。歯切れの悪い言葉を聞き取ろうと、椅子から立ち上がり、十代
の隣に、ぽすんと座った。ベッドがもうひとりぶん、少し沈んだ。

 「どうしたの? こんな夜更けに来るなんて、絶対、何かがあったからでしょう?
 十代、お願い、言って頂戴」

 やや、覗き込むようにして話を求める。十代はまた、慌てて顔を背けた。か
なり、あからさまに。
 絶対に、何かある。明日香はきっと眼を強めると、十代の頬に両手を添えて、
強引に自分の方へと向けた。こうなった十代を吐かせるには、こっちにも気合
が必要だと、ここ数年の経験で分かっていた。相手の目をじっと見つめる。
 「話して、十代」

 声を強め、有無も言わせぬ口調と眼光で促すと、「あー……」と、十代が唸
り、どうしたのか僅かに顔を赤らめて、俯いた。それでもじっと待っていると、
根負けしたように、
 「明日香、さっきの別れ際、俺に何か、言いたそうだったからさ……」
 と、ぽつりとこぼした。
 言葉に、今度は明日香が僅かに声を上げると、頬を赤らめ俯いた。
 自分は、告白し損ねたのだ。


 後輩達の催したデュエル大会の後、明日香は後輩や級友たちをうまくかわし、
オシリスレッドの前で十代を待った。そこで、今日は楽しかったことを、感謝
を、彼に伝えた。本当は、告白しようと思ったのだ。そこで。伝えようという
気持ちでいっぱいだった。けれども結局出来なかった。自分の進路の踏ん切り
はついても、こういう方面での踏ん切りは、どうも上手くつかないらしい。後
輩であるレイが、羨ましい。

 告白できなかった。その時点で、自分の恋は終わったかなと、そう思った。
もうこんなチャンスはきっと来ないだろう。それでも十代の、久々の、屈託の
無い笑顔を見て――不思議と、安堵した。これで良かったのだと、そう思った。

 自分は彼に負けないくらい輝いて、素晴らしいデュエルをしてみせる。そう
思ったのだ。
 だのに、これでは――。

 どうしろというのだ。折角、自分の気持ちにもある程度のけじめをつけたと
いうのに。ここでリターンマッチをしろ、というには余りに手札が少なすぎた。
加えて戦略も、経験も無い。沈黙が、落ちた。

 「なぁ、明日香」
 十代の声が、小さく響いた。びくりと、肩が揺れた。恐る恐る顔を上げると、
ちょっと困ったような、照れたような顔をして、相変わらず、あさっての方向
を彼は見ていた。

 「俺、明日香のこと、好きだぜ」
 目を、見開いた。
 「上手くいえないけれど、その、好きだと思うんだ。俺」

 嬉しさがじわじわと湧き上がると同時に、深い悲しみがドロドロと明日香の
胸に染みづいて行った。
 彼の言う「好き」と、自分にとっての「好き」とが、同じであろう、筈もな
かった。何せ相手はあの、結城十代なのだ。幼かったからとはいえ、レイが女
の子とさっぱり気づかず、一緒に風呂に入ろうとまでした輩なのだ。朴念仁な
のだ。

 きっと、十代は、明日香が異性として彼を捉えていることなんて、全く、気
づいていないのだろう。それを思うと自分がまるで道化で、馬鹿みたいで、惨
めに思えた。隣に座っている十代がなんだか憎らしくて、彼は悪くないのに、
無性に引っぱたいてやりたい衝動に襲われ、ちらりと、見た。

 ――十代は相変わらず屈託のない笑顔で、微笑んでくれて。
 自分が完全にサレンダーしてしまっていることを、明日香は悟った。


 ひとつ、ため息を吐く。なんでこんなに重いため息なんだろう、と、どこか
冷静に嘆きながら。
 「……私も、十代のこと、好きよ」
 十代の顔は、見ない。これ以上、見るのは怖い。

 「でも、私の『好き』と、十代の『好き』とは違うわ……」
 一瞬だけ、十代を見た。不思議そうな、顔をしていた。滅入る気持ちを奮い
たてながら、言葉を続ける。

 「私は、十代のことを、異性として好きだと思っている。出来る限り、あな
たとずっと一緒に居たいし、他の女の子と親しくしていると、嫉妬する。
……今日、それに気づいたわ。……十代、わたしッ!……
 あなたと触れると嬉しいし、あなたとデュエルをするのが、とても楽しい!
 あなたの笑顔が好きで、あなたが楽しそうにデュエルする姿を見るのが、と
ても好き! ……時々、勝手なことして腹が立つこともあるけれど、でも、やっ
ぱり好きだわ。
 十代、わたし、あなたが好き」

十代の顔を見つめて、ふっと、笑んだ。瞼の奥がじんとした。
 「ごめんね。でも、わたし、あなたが好きなの……」
 涙がこみ上げてくるのを感じた。情けない。弱弱しい、と、己の心を叱咤す
る。それでも涙は奥からどんどん零れ落ち、明日香はつい、しゃくりあげた。

 十代が立ち上がる気配がする。ベッドのたわみが、戻る。顔は上げられない。
足音が遠ざかる。
 ――嫌われた――

 ひくっつ、うくっ、と、涙が頬を濡らしていった。悲しい。ひどく、悲しい。
あの異世界に飛ばされたときの悲しみなんて、今の比じゃない。
 縮こまるようにして泣いていると耳元で、声がした。


 「……なんか、俺、明日香のこと、悲しませてばかりだな」
 滲む視界を開くと、眼前にはティッシュがあった。何が言いたいのかと十代
を見上げると、「ほら」とティッシュ箱を差し出される。
 「涙を拭いて鼻かめよ。くしゃくしゃだぞ、明日香」
 どうやらティッシュ箱を取りに行っていたらしかった。予想が外れたことに
気恥ずかしさが押し寄せ、「悪かったわね!」と、語気荒くティッシュを奪った。

 「……しょうがないじゃない。だって、あなたに関することが、一番嬉しく
て、一番悲しいんですもの」
 言って、使ったティッシュをぽぉんとゴミ箱に放り投げた。行儀が悪いから
余りやらないというのに、きれいなカーブを描いて、ティッシュは中に収まった。
 ぐずぐず、と鼻を鳴らせていると、ふいにベッドが沈み、体温が、高まった。

 一体何なんだろうと思った。この状況は、隣に座った十代が、後ろ抱えるよ
うにして、明日香のことを抱きしめている。しかも、かなり、苦しく。ぎゅう
ぎゅうする。
 「あの……十代!?」
 「明日香、お前、勘違いしてただろ?」
 くつくつ、という声が響く、首筋に十代の息がかかる。鼓動が、高まる。
 「オレだって男だし、一応、これでも、恋愛感情っていうのは、あるんだぜ?」
 「ちょ……十代!!」
 「どうして分からないかな、明日香って、男の純情ってやつが」
 唇が首に当てられる。ちゅう、という音が響いた。吐息が洩れる。触れられ
ている、部位が熱い。

 「万丈目や翔はどうか知らないが、少なくとも俺は、お前のこと、こうした
いって思ってる」
 声と共に、明日香の視界はひっくり返った。


 ベッドに押し倒した明日香は、目を丸くして十代を見つめた。……呆気にと
られた、という方が正しいかもしれない。風呂の入浴剤のせいなのかどうかは
知らないが、この部屋に入ってからというもの、明日香からひどく良い香りが
していた。甘く、柔らかく、それでいて清涼感があって、そのまま顔をうずめ
たくなる。

 自分から湧き上がる感情を、必死で気を逸らそうとしていたが、ネグリジェ
姿、滅多に見られない泣き顔に、お互いに両想いとまできたら、跳ね除ける気
持ちも失せる。大体、明日香は勝手だと、十代は思う。

 勝手にひとのことを子ども扱いして、恋愛感情さえ持っていないのだとひとを
見なす。確かに、数年前はそうかも知れないが、今は別だ。婚約の意味が分か
らない子どもじゃない。いつまでも今と昔を一緒にして貰っては困る。それに、
告白をして恥ずかしいのは、男も女も同じだ。男だって純情というものはある
し、想いが伝わらなかったら悲しい。自分の勝手な思い込みだったら、恥ずか
しい。

 それでも告白したりするのは、一緒になりたいからだ。男だから、勿論欲望
だってあるが、その欲望だって、自分が好きになったひとと遂げたい。
 明日香が好きだ。そりゃあ、容姿だとか、成績が良いところだとか、男勝り
な性格だとか、良いところは沢山あるが、なによりもデュエルを愛する明日香
が好きだ。自信をもって手札を切る、明日香が好きだ。デュエルの楽しさを再
認識させてくれた、明日香が好きだ。

 自分の気持ちは告げた。相手の気持ちも確認した。ここまで来たら、もう絶
対逃がさないと、覇王だった男は思う。何が何でも、明日香は絶対自分のもの
にする。歩む場所が違っても、必ず最後には、自分と連れ添って歩いてくれる。
そんな、本当の意味で、十代のものにしてみせる。

 「十代……」
 明日香は見上げてくる。驚きと、やや、怯えの混じった目で。
 「明日香、勘違いしているみたいだから、もっかい言う。
 俺、明日香のこと、好きだ。異性として。本当に。
 ……受け入れて、くれるか……?」

 押さえつけた腕が、僅かに震えているのが分かる。頷けば、これから何が起
こるのか予期しているのだろう。明日香の唇がわななき、小さく、
「……ええ……」と響いて首肯した。

それを合図に、被さった。


 首筋に軽くくちづけを落とした後、なめらかな頬に触れ、頬と、瞼に落とし
た。唇にはゆっくりと、何度も、舐めるように、食べるように。舌を入れた瞬
間、眼を見開いて身体を硬くしたが、手でなだめる様に身体をさすってやると、
やがて徐々に、明日香も舌を動かして、十代の舌を受け入れていった。

 唾液がこぼれる。明日香の細やかな首筋が、十代の唾液を飲み込もうと軽く
上下した。
 そのさまをやわらかい目で見つめると、今度は喉元から胸へと、くちづけを
下ろして行くと同時に、手触りの良い、薄青のネグリジェを脱がしてゆく。下
着は、白いレースに、淡いブルーのリボンがついたものだった。上品でいて清
楚で、明日香によく似合っていた。身体は普段の服からも想像がつくように、
明日香の身体は、細くてしなやかだ。それでいて、胸はふくよかで、女性らし
さを余す事無くもっている。

 ちょっとした感動をもって眺めていると、
 「……ちょっと、十代!」
 と声がかかった。
 「あまりジロジロ見ないでよ! 恥ずかしいじゃない!」
 眦を上げて告げてくる明日香も、頬を染めながらでは可愛らしいだけである。
だが、そんなことを言おうものなら、また怒られるのが落ちなので、

 「悪い、綺麗だから感動してた」
 と正直に告げた。……なおさら恥ずかしいわよ、バカ……。という明日香の
呟きは、聞こえないことに、した。

 胸のホックを外すと、ふるり、とバストが揺れた。それだけで下腹部が熱く
なる感覚があったが、ゆっくりと胸にも触れてゆく。柔らかい。温かい。
 一言で言えば、心地好い。自然、唇が吸い寄せられて、ちろり、と桃の頂き
をなめた。
 「っぁん!」
 猫の鳴くような、甘い声の音に驚いて顔を上げると、明日香自身も己の声に
驚いたのか、顔を真っ赤にして口を押さえていた。にやり、と笑みを浮かべる。
 「明日香、声、聞かせろよ」
 「……ッかじゃないの! そんな、変な声ッ! ――ッゃん!」

 ちゅ! と強く頂きを吸う。優しく揉みながら、頂だけを指で弾いたり、撫
でたりする。ふにゅふにゅと、明日香の胸は十代の手の中で暴れ、頬を真っ赤
にしながら、必死で声を噛み殺そうと無駄にあがいた。手は、ゆっくりと移動
してゆく、ショーツごしに秘所へと触れてみると、くちり、と濡れているのこ
とが指で分かった。本人もそれが分かるのだろう。耳元でそれを告げると、泣
きそうな顔で、

 「……わざわざ言わないでよ、ばかぁ……」と応えられた。
 泣き出しそうな明日香は、可愛らしいのだから仕方ない。

 ショーツの隙間から指を差し入れ、ゆっくりと内側を撫ぜる。これだけでも、
恐らく自慰の経験すらないのだろう。必死に声を出すまいと目じりに涙を湛え
ながら、腕や身体を震わせている。そうした痴態を限りなく優しい眼で見つめ
た後、やや強く、指を押し込んだ。びくん! と明日香はひとつ大きく身体を
震わせ、ベッドに落ちた。下着を全て剥ぎ取り、自身の服も脱ぎ捨てる。

 明日香が朦朧としているうちに、膝を割り、立てさせ、秘所へと頭を沈める。
 「……っちょ! じゅ、十代待ってッ! き、汚いッ!」
 「汚くねーよ。風呂も、入ったんだろ?」

 そういう問題じゃ……! という声は、途切れ途切れとなって聞こえなかっ
た。ぴしゃ、ぺしゃ、という音とともに、明日香からはどんどん愛液が溢れて
くる。
 「イイか? 明日香?」
 「…………ッ!!」
 揶揄するように問いかけると、小動物のような目でこちらを見て来て、やや
躊躇った後に、頷いた。嬉しくなって、また、くちづけを交わす。互いに舌を
絡めながら、十代は指で、明日香の秘所を嬲る。もう片手で近くに脱ぎ捨てた
服を手繰り寄せ、ポケットから避妊具を取り出す。明日香がそれに気づき、視
線を寄せた。コンドーム。と答えると、……呆れた。という声が返ってきた。

 「……よく、使うの?」
 「……初めてだよ。この間クラスの男子らが保険の授業で集められて、配ら
れたんだ。男なら、知っておけってさ」
 「……初めてなのに、持って来たの?」
 「……オトコなんだよ。悪いか……」
 悪くないわ、と明日香は答えて、くすりと笑った。

 「わたしも初めてですもの。ちゃんと出来るか分からないけれど、頑張るから。
 ……十代、来て……」

 それから、袋を歯で破く音、僅かな間を置いた後に、入ってきた。
 明日香は必死で十代にしがみ付いた。痛みは重い。じわじわと広がってくる。
剣が身体にずぶずぶと突き刺さって行く。十代は必死に明日香にキスをしたり、
胸や耳に触れて和らげたり、言葉をかけて明日香を励ます。時間をかけ、剣は
ゆっくりと鞘に収まり、鞘はゆっくりと剣を包み込んだ。

 互いに身体が密着していた。十代は明日香を潰さないようにと、腕で己の身
体を支えている。痛むか? と声がかかった。拍子に、十代の汗が、明日香に
落ちた。

 「痛いわ……。
 ……十代は?」
 「――ごめん、おれ……キモチ、いい……」
 本当に申し訳なさそうに、照れくさそうに言うので、なんだか少し笑ってし
まった。それで少し、勇気が出てきた。

 「いいわ。動いて」
 「え? でも明日香、お前……!」
 「いいのよ。十代が喜んでくれると、私も何だか嬉しいの。だから、いいの。
動いて!」
 分かった。という声と共に、十代は動いた。ぐじゃ、ぐじゃ、という音が響
く。胸の頂が、十代に触れる。潰れる。十代! 十代! とうわ言のように彼
の名を呼んでいると、唇が寄せられてくちづけを与えたらた。上下し、顔が近
づくたびに、舌を絡める。唾液が落ちる。汗が、涙が、肉が、性が、交じり合
い、僅かな震えとともに、十代は果てた。


 「拭いた方がいいから」という十代の言葉で、動けない明日香を十代はタオ
ルで清めた。トイレと洗面だけじゃなくて、風呂も室内にあれば良かったのに
な。という言葉に、一緒に入る気じゃないでしょうね、と釘を刺した。たはは
は、と笑われた。レッド寮に足を踏み入れる真似は決してするまい、と心に誓った。

 「でも、いいよな。こういうの」
 「身体を拭くのが?」
 「ちげーよ! ……いや、これもこれで楽しいけれど、明日香といれるのが
だよ!」
 「そう?」
 「ああ、辛い目あわせて悪かったけど、嬉しかった。なんていうか、俺のこ
と、思ってくれているのが分かったし……」

 やや、気恥ずかしそうにして、十代は手を休めずに、明日香の身を清める。真面目な顔でそうされると、されている方としては、気恥ずかしさより不思議な感覚になってくる。

 「ねぇ、十代。もしも、もしも、よ
 もしも、私が皆と離れて、何処か遠くに行って、離れ離れになっちゃったら、
どうする?」

 今回のことは、後悔していない。留学も、やめる気はない。行く行くは訪れ
ることだと思い、思い切って明日香は十代に問いかけた。「んぁ?」と、十代
は手を止め、明日香を見つめた。
 「なんでだ?」
 「それは……たとえば、だけど、聞いちゃダメ?」

 小首を傾げて問いかけると、「んー」という声が返った。そうして、あんま
り関係ないなぁ、と十代は言った。
 「どうして?」
 「だって、明日香が何処にいても、俺が逢いに行けば、それって済む話だろ?
 俺は明日香が何処に居たって、迎えに行くぜ?」

 言葉に、明日香はぷっと吹き出して、十代の頬にキスをした。



*END*

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