小ネタっぽい気がする遊アキ。エロなし。



アカデミアの授業が終わり、アキは制服のままでポッポタイムに向かった。今日は高等部だけが変則授業で早く終わったので、少し驚かせてやろうと思い付いたのだ。
「ふふ。遊星たちビックリするかしら」
ちょうど昼過ぎぐらいの時間だったので、サボリかなんて言われそうだと思いながら歩を進めた。
「遊星、みんな、いる?」
開いていたシャッターからガレージを覗く。が、誰もいない。Dホイールも整備中らしい遊星のものだけしか見当たらなかった。
「留守かしら…?でも戸締まりはされてないし…」
中に入ってテーブルに差し入れのお菓子と鞄を置き、ガレージを見回した。
「…あ」
ふとDホイールに接続されているパソコンに目をやると、近くのソファーに横になっている遊星がいた。さっきはちょうど陰になっていて見えなかったようだ。
「こんな所で寝ちゃって…また徹夜してたのかしら」
近くに寄ってみると気持ちよさそうに寝息を立てている。
なんだか悪い気がしたが、風邪を引くといけないと思い起こす事にした。
「遊星、起きて。遊星」
呼んでみたがぴくりともせず、体を揺すってみても少し身じろぎするぐらいだった。余程疲れているのかもしれない。
「…もう、私が泥棒だったらどうするのかしら?」
アキは苦笑すると仕方ないと近くにあったタオルケットをかけてやった。
デッキ調整でもしようかと思ったが、せっかくだからあまり見れない遊星の寝顔を眺めようとしゃがみこんだ。驚かすのは失敗したがこれはこれでいいかもしれない。
普段は何でもできるイメージもあってか少し大人っぽくみえるように思うが、こうして寝顔を見ているとむしろ子供っぽく見えた。
「…いつもはかっこいいけど、寝顔はなんだか可愛いわね」
アキは呟いて遊星の頭をそっと撫でる。思ったよりやわらかい髪なんだなと思っていると、軽く寝返りをうった遊星の腕が背に回された。
「きゃっ…!ゆ、遊星!?」
急に抱きしめられてアキはバランスを崩し、ちょうど横から覆い被さるような状態になった。お互いの顔が近くてアキは赤面したが、遊星はまだ寝息を立てている。
「…もうっ!ちょっと遊星っ!」
退こうとしたががっちりと抱きしめられていて身動きが取れない。
正直この体勢はキツいし、回された腕が微妙に尻に触れている。

全くこんな時にまで器用さを発揮しなくてもいいのに。
「遊星、いいかげんに…」
動こうとすると余計に力が入っているように思える。このまま寝入られたら適わない。アキは心の中でごめんねと呟くとすぅと息を吸い込んだ。
「遊星っ!!起きなさい!!」
耳元で叫んだのがよかったのか、遊星は一瞬顔をしかめてゆっくりと目を開けた。
「……アキ…か?どうしてここに……っ!?」
遊星は今の状況を理解すると、アキを離してがばっと起き上がった。
「すっ…すまない!わざとじゃ…いやそうじゃなくて、そのっ…!」
土下座せんとする勢いで慌てふためく遊星を見て、アキは思わず笑い出してしまった。



「せっかくビックリさせようと思ったのに、こっちがビックリしちゃったわ」
「…すまなかった」
並んでソファーに腰掛け、アキが先ほどの状況を説明すると遊星は再び頭を下げた。
「いいわよ気にしてないから。それに…」
アキは言いかけると遊星をそっと自分の方に倒した。
「寝不足なんでしょう?起こしておいてなんだけど、もう少し寝たほうがいいわ」
遊星はいきなりの事に一瞬ぽかんとした。
「あ、ありがとう…でも寝るなら部屋に」
行って寝るから、と言いかけて起きようとした遊星を、アキは再び自分の方に寝かせた。
「い、いいでしょ別に!さっき起こしちゃったお詫びよ、お詫び!」
アキは少し怒ったように口を尖らせる。なんだか顔が赤いように見えるので実は恥ずかしいのかもしれない。
「…そうか。ならお言葉に甘えるとしよう」
そんなアキを可愛いと思って遊星は少し笑い、目を閉じた。



「ただいまー…って、あれ?」
「遊星、予備のパーツはこれで…ん?」
「どうしたの?二人とも」
「何でもない。デュエルの特訓に行くぞクロウ。ブルーノも付き合え」
「ほぉー。お前でも読める空気なんてあったんだな?」
「なんだと!?」
「え?僕も?…ああ、なるほどってちょっと二人とも!付き合えって言うなら置いていかないでよ〜っ!」

ソファーで仲良く寝ている二人に気を遣い、三人はガレージのシャッターを閉めてブリッジの方へとDホイールを走らせた。
その事を二人が知るのは、三人がわざわざ夕方まで時間を潰して帰ってきてからだった。

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