概要

シーア海戦とは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ693年11月、ベルザフィリス国軍とアル国軍の間に起きた海戦である。

戦闘に至るまでの背景


▲693年11月における勢力図

アル国、バルド国、シャリアル国による、ルーディア包囲網という苦境の中、ベルザフィリス国は、ヴァーグリア国との同盟に向かって動き始めていた。
ヴァーグリア国とルーディアといえば、かつて先王ディアルと共にシーザルス国に居た時、彼女が制止したのも聞かずディアルは出兵し、アニスの戦いで敗北した経緯がある。
思えばその事があったからこそベルザフィリス国は生まれたのだが、そのヴァーグリア国に国主ルーディア自らが同盟を申し込む為に赴くのも、奇妙な縁としか言いようがなかった。

ルーディアは最低限の共を連れ、国主不在を悟らせない様に細心の注意を払って山道を進み、10月16日にヴァーグリア国に到着。
国主から外交における全ての責任を託されたヴァーグリア国軍師ガリアルーディアと面会する。
この時の会見は、ヴァーグリア国の資料に残っている。
最初にルーディアは、言葉を選びながら、乱世の終結に自らが乗り出す事、その邪魔をしないでほしいことを告げようとする。
しかし、ガリアは突如剣を抜くと、ルーディアの喉元に突きつけ「北を平定するには、南の我らを封じ込めたいのだろう、我らは中途半端な弁論より正面から牙を剥く奴に好意を持つ」とルーディアに迫った。
これに覚悟を決めた独眼竜は、剣を突きつけられたまま堂々と「天下は私達が統一します、南をあなた達が治めてください」と、ガリアに言い返した。

包囲網によって、自分たちの未来すらわからないこの段階で、ルーディアは、いずれベルザフィリス国とヴァーグリア国で南北それぞれの覇者となり、不戦条約をもってこの大陸に平和をもたらそうと提案したのだ。
この、大胆不敵な未来予想図に、しばらく沈黙を守ったガリアだったが、笑いながら剣を納め、ベルザフィリス国とヴァーグリア国の同盟に応じた。

この頃、ヴァーグリア周囲の国は、戦乱とまではいかないまでも、各地で火種を抱えていた。
それらの国に使者を送り、多少強引な介入ではあったが、ヴァーグリア国は各地の戦いを鎮静化させていく。

一方で、帰国したルーディアベルザフィリス国も、本格的に包囲網との戦いに取り掛かることとなる。
アル国が誇るルッダリザ艦隊の脅威もあり、ベルザフィリス国でも急ぎ艦隊が再編され、ムーン艦隊(旗艦ガルーダ)、ザルド艦隊(旗艦ワイバーン)が戦力の中心となっていたが、元々アル国から奪取した艦艇と、急ごしらえで作られた艦艇に対して、アル国は最強を誇るルッダリザ艦隊(旗艦ドラゴンファントム)の他にもサイリオン艦隊(旗艦グリフォン)、ガイナルス艦隊(旗艦サーペント)と、数でも勝っていた。

だが、アル国の綻びが僅かずつだが形となって現れる。
艦隊司令として召集されたフェザリアードは、各地に散っていた自らの子飼いの将ゼスセルシアザーブを呼び寄せて万全の態勢をとるが、彼らが乗艦するのは、ルッダリザ艦隊ではなく、サイリオン艦隊であった。
無敵の艦隊に最強の海将をつければ、ベルザフィリス国との海戦に負ける可能性は限りなく低かったが、アル国首脳部は艦隊の性能だけで勝利できると確信し、政変に批判的だったフェザリアードではなく、ザグルスの親族であり、自分達の息のかかったネイゲイ将軍にルッダリザ艦隊の指揮権を与えていた。

なお、ここから始まる一連の海戦で、ベルザフィリス国艦隊の総指揮官はイェーガが執り行っている。
これはアルディア著の正伝蜉蝣戦記にも記されているが、後世になってから創作された蜉蝣戦記の外伝「鳴鳳の海将」が正史と混同されるほど有名になる。
この物語では、ヒサヴェヌアが艦隊の総指揮をとり、イェーガは副官として登場し、ヒサヴェヌアと生死を共にする一兵卒ライドル、エザグス、オリア、バイズ、エレーナ、リィザが登場人物として各地で活躍する。
しかし今回は正史に重きを置き、彼らの存在は最後に少しだけ触れることとする。

両軍の戦力

攻撃側守備側

アル国軍
軍勢
ベルザフィリス国軍
総兵力13900兵力総兵力11700
ネイゲイ総指揮イェーガ
軍師
主要参戦者

フェザリアード

ゼス

ザーブ

セルシア

ネイゲイ

イェーガ

ベイン




戦闘経緯



11月22日、シーア海域においてベルザフィリス国とアル国の艦隊が激突。
この時、ベルザフィリス国が取った戦法は、ムーン艦隊を正面からルッダリザ艦隊にぶつけ、敵が火力に奢って正面から押し込んだところを誘い込み、側面から伏せておいたベインが率いる機動力に優れるザルド艦隊に突撃させ三方向から包囲殲滅するというものであった。

ネイゲイは、権力者に媚びる才能には長けていたが、戦場での指揮は素人以下ともいえた。
自分の派閥で手柄を独占するべく海戦の専門家たちを次々と左遷させ、自身の部下を重要な場所に就けていた。
その為、イェーガの罠を見破ることもなく、艦隊の運用方法もデタラメに隊列を乱しながらムーン艦隊を攻撃し、イェーガの思惑通り包囲されることとなる。
こうして作戦は的中し、ルッダリザ艦隊を完全に包囲し、沈黙させたかに思えたが、フェザリアードには読まれていた。



彼は自らのサイリオン艦隊を決戦から遠ざけ、戦局が膠着した頃を見計らってベルザフィリス国軍を側面から攻撃し、まずはザルド艦隊の右翼部分を削る。
ルッダリザ艦隊フェザリアードが指揮していると思い込んでいたベルザフィリス国軍は、完全に裏をかかれた。

ここで、ネイゲイが、フェザリアードと呼応して動けば、ベルザフィリス国艦隊は海の藻屑となっていたが、混乱したネイゲイは、副将の進言を無視して、自分だけでも戦場から脱出しようと艦列を乱しながら撤退していく。

これにより、混戦に持ち込んだベルザフィリス国軍は、アル国のゼスの乗艦を撃墜することに成功するが、それ以上の攻勢は不可能となり、被害を出しながらも後退していく。

戦いの結末

戦力で劣っていたベルザフィリス国の、一か八かの決戦は、戦場においては敗北で終わった。
だが、ネイゲイは、このまま進軍を続ければ、フェザリアードに全ての戦功を奪われると焦り、全艦隊を引き返させエンパイアコスモス要塞へ向かい、艦隊を再編成させる。
彼の愚行が、奇跡の逆転への伏線となっていき、海戦の決着は、エンパイアコスモスの戦いへとなだれ込むこととなる。


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