三角関係の恋愛
その次の段階にくる恋愛は、三角関係の恋愛です。恋愛というのは対幻想であって、その恋愛が一時的な気まぐれの恋愛であろうと強烈な恋愛であろうと、いずれにせよ、一人の男性と一人の女性、あるいは一人の男性と一人の男性、あるいは一人の女性と一人の女性のあいだ、つまり一対一のあいだにしか起こりえないのですけれど、三角関係というのは三者の間に起こるので、これは矛盾なわけです。つまり、恋愛における矛盾、あるいは矛盾としての恋愛です。三人というのは、共同性のいちばん原型にある関係で、恋愛感情とか男女の恋愛という対幻想とはぜんぜんちがいます。本来ならばちがうはずなんです。ですから、三角関係における恋愛というのは大なり小なりごまかしであるか、二重操作であるか、あるいは一方の対幻想の場面ではもう隠しておく、そういうでしか成りたたないのです。しかし、この種の恋愛はしばしば起こります。
(「恋愛について」1988.03.04東京日仏会館での講演。「人生とは何か」2004.02.10弓立社に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「恋愛について」1988.03.04東京日仏会館での講演。「人生とは何か」2004.02.10弓立社に収録された)
- 一対一の対幻想の場面の中で、どうしても三人のうち一人はやがて排除されてしまうと思います。これは必然なことと思われます。だから、その当事者にとっては、苦しく辛い体験になるのだと思います。おそらく、誰もがこの体験、これに近い体験は味わっているのだと思います。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 14:16:57 Modified by shomon