住むことについてのこだわり
人間は住むことについていえば、とても不可解なこだわりをもっている。ことさら不毛な土地に執着したり、わざわざ飢えるために貧寒な土地を求めて住んだり、ほとんど正常な判断を絶する不可解な非合理な衝動をもった動物に思える。この理由はなかなか説明できない。でもたしかなことは、人間はかならずしも、物が豊かに手に入り、居心地のよい生活ができ、気候も温和でしのぎやすいところに住みつくとはかぎらないことだ。
そんなことをいうわたしも、大学をでてからこのかた、日暮里・谷中のあたりに前後四、五年、田端界隈に前後五年、御徒町に三年ほど、文京団子坂に十年以上、本駒込に十二年ほど住みついてきた。よくかんがえると、山手環状線の御徒町、上野、日暮里、田端、駒込駅の内側を出ないで、こだわりつづけたことになる。
(「こだわり住んだ街」1986.7「MACLUB」に掲載、「背景の記憶」1994.1.10宝島社に掲載された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
そんなことをいうわたしも、大学をでてからこのかた、日暮里・谷中のあたりに前後四、五年、田端界隈に前後五年、御徒町に三年ほど、文京団子坂に十年以上、本駒込に十二年ほど住みついてきた。よくかんがえると、山手環状線の御徒町、上野、日暮里、田端、駒込駅の内側を出ないで、こだわりつづけたことになる。
(「こだわり住んだ街」1986.7「MACLUB」に掲載、「背景の記憶」1994.1.10宝島社に掲載された)
- 誰もが意識するしないに拘わらず、こうしたこだわりをもっているのかもしれない。吉本さんの場合は、これらの街へのこだわりは、あの街を歩いてみるととてもよく判る気がしてくる。あの路地に、大衆の力強い何かを感じているのだろう。私もあの街を歩くとそんな雰囲気がとても好きになってしまっている。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 14:09:14 Modified by shomon