親鸞
親鸞は好きですし、この人は偉い人なんじゃないかという気はするんです。それは修行していくと悟りを開けるのだなんていうことを、自分自身が信じていないというところがあるでしょう。自分が信じられないならば、ほかの人も信じられないに違いないというところから始めているところがあるでしょう。そのときの風潮をピタッと押えて、そこから考えを進めているところがあるでしょう。それはやっぱり重要なんじゃないか、この人の優秀なところなんじゃないかな、という気がするんですね。はじめから、もう仏教というのは命題としていえばこう悟りを開いて生死の感じを超越するんだというのはだいたい分かっているわけでしょう。しかし、こんなものは信じられないよというふうに、実感的に自分もなっちゃっているし、人もなっちゃってる。そこからどうするんだということをはじめてるところがいいんじゃないでしょうか。言葉は仏教の用語を使ってますけれども、これはおおきな射程があるんじゃないかなと思います。
(「歎異抄について」1979.6鮎川信夫との対談「現代思想」に掲載「歎異抄の現在性」として「思想と幻想」1981.7.15.思潮社に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「歎異抄について」1979.6鮎川信夫との対談「現代思想」に掲載「歎異抄の現在性」として「思想と幻想」1981.7.15.思潮社に収録された)
- これが当時の他の宗教家との大きな違いであると思える。そして今も私たちをひきつけるところであるように思える。思えば親鸞には真宗教団のことなどは、どうでもよかったのではないだろうか。それがある矛盾であるともいえるのだが。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 13:37:28 Modified by shomon