麻原彰晃の欠陥
わたしはオウム真理教の教祖麻原彰晃を、その著作から判断して優れたヨーガの修行者だとおもってきたし、いまもおもっている。この人が失策を演ずるとしたら穴(欠陥)はただひとつ、文明の歴史をすべて何者かの陰謀としてとらえる退化した史観や社会観にあるとおもう。これはエコロジストにたいするわたしの考えとおなじだ。優れたヨーガの修行者がかならずしも文明や社会や歴史や現在の世界情況の優れた分析や実行者とはかぎらない、ヨーガの修行者だから、俗世間のことに関心をもつべきでないなどとはいわないが、人はしばしば不得手な穴(欠陥)を拡大して誤るものだとはいえそうな気がする。わたしにもしこたま愚かな経験があるからだ。
(「情況との対話第27回−サリン考−」徳間書店「サンサーラ」1995年6月号)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「情況との対話第27回−サリン考−」徳間書店「サンサーラ」1995年6月号)
- この麻原の欠陥の指摘はかなり決定的なものと思われる。ヨガの先生としてなら、多分優秀な存在だっただろうに、麻原は何故か世界を明確に分析でき、歴史を自らの思うとおりに流れるものと錯覚したときに、彼が今直面してしまった現状をひきよせてしまったとも言えるのではないだろうか。ただこれはひとり麻原のみにあるのではなく、エコロジスト、環境保護主義者、清貧の思想の持主等々に多く感じてしまう傾向である。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 15:26:12 Modified by shomon