忘却からの帰還〜Cosmism

Ashawnta Jackso (2017)によれば、人体冷凍保存のアイデアのもと、究極の革命的な道具である「不死」を提唱する「生物宇宙主義・不死主義者」というグループが1920年代にロシアにいた。

第一次世界大戦後のロシアの生活の多くは、皆さんの予想通り、暗いものだった。この国は戦争中に想像を絶する損失を被り、戦闘による死者数*は180万人にも上ると推定されている。死が空気中に漂っていた。

しかし、それと並んでそこに掲げられていたのは別のもの──革命だった。ますます多くのロシア人が、彼らの世界を作り変えたいと考えるようになっていた。それは、おそらく誰よりも、それが長くて困難なプロセスであることを知っていたにも関わらずだ。戦争がロシア人に教えたことは、人生は有限で儚いものだということだった。しかし、もし永遠に生きる方法があるとしたら？時間を止める方法は？世界を停止させて、より良いものに作り変えることはできないだろうか？戦後、この精神の中で、一握りの作家、芸術家、そしてアナーキストが、科学と神秘を結びつけた新興の理論であるcryonics（クライオニクス, 人体冷凍保存）についての14ページの詩を発表した。これは究極の革命的な道具である「不死」を提唱していた。

このグループは「Biocosmists-Immortalists（生物宇宙主義・不死主義者）」と自称し、人間には二つの基本的な権利があると考えていた：存在する権利と自由に動く権利──そしてこれらの権利には有効期限がないと考えていた。このグループは1922年の宣言である『Izvestiia（イズヴェスチヤ）』で、「不死、復活、若返り」が単なるアイデアでなく、彼らの新しい運動の基盤であると宣言した。死は革命への道での障害に過ぎなかったのだ。

『Revolutionary Experiments: The Quest for Immortality in Bolshevik Science（革命的実験：ボリシェヴィキ科学における不死の探求）』の著者である研究者Nikolai Krementsov（ニコライ・クレメンツォフ）によると、生物宇宙主義者・不死主義者たちは、死が「論理的に不合理で、倫理的に許されず、美的に醜い」という理由で死を廃止すると考えていたという。 死があなたを取り囲む中で生きることは、究極の抵抗行為だった。他の人が死にゆくとき、永遠に生きるのは、まさに革命だった。

その年の後半、グループのリーダーである詩人Alexander Iaroslavskii（アレクサンドル・ヤロスラフスキー）は、「Poem of Anabiosis（蘇生の詩）」と題された14ページの論争的な詩を発表し、生物宇宙主義者・不死主義者が具体的に考えていたことを説明した。彼らは地球を一種の中断状態に凍結させ、その間に世界の「生物学者、詩人、労働者たち」が地球を作り変える作業に取り組むことができるというのが彼らの計画だった：

Between Life and Death
Will ram a heavy wedge, A third door opens,
For the world, anabiosis.
[…]
And when all the work is done
And, when as a perfect toy, Earth—
Wake up, the living, again

生と死の間
重い楔を打ち込むだろう 第三の扉が開くだろう
世界のために、蘇生
[…]
そしてすべての作業が完了したら
そして、完璧なおもちゃとなった地球は――
目覚めよ、生者よ、再び

彼らは、凍結した昆虫や小動物に関する実験を行ったロシアの科学者、 Profirii Bakhmet'ev（プロフィリイ・バフメトエフ）の理論に基づいて宣言を作成した。これらの実験は、科学が実現可能であるように見せるものだった。アレクサンドル・ヤロスラフスキーは、「化学者、物理学者、エンジニア、建築家、詩人[…] 細菌学者および生物学者」と共に、彼と彼のグループは不死を通じて彼らの暗い戦後の状態を修復するだけでなく、失われたアトランティスの都市を再興し、気象を制御し、病気を撲滅し、シェイクスピアやソクラテスを含む過去の偉大な思想家たちを蘇らせると宣言した。彼らは世界を一日一日、一年一年、永遠に作り変えるつもりだった。

『The Poem of Anabiosis（蘇生の詩）』は、クレメンツォフによれば、「蘇生の最初の文学的描写の一つ」であるが、確かに最後ではなかった。無数の夢想家が人生の一時停止ボタンを押すというアイディアで遊んできた。氷のような半死のアイディアは、ヤロスラフスキーの時代を遥かに超えて、我々自身の時代にまで人気のある想像力に入り込んでいる。それには、1931年のサイエンスフィクションの物語もあり、これは「クライオニクスの父」と呼ばれるRobert Ettinger（ロバート・エッティンジャー）に影響を与えました。しかし、ロシアのアナーキストによる詩としての革命宣言が、20世紀初頭にクライオニクスの可能性を考える機会を提供してくれた。

[ Ashawnta Jackson: "The 1922 Poem That Linked the Russian Revolution to Cryonics -- One group of anarchist artists planned on being around a long, long time." (2017/09/14) on Atlas Obscura ]

Rosenthal (1997)によれば、フョードロフは心理学的なプロセスの物理的な表現が電流を介して伝えられる可能性があると仮定していた。これに基づき、テレパシー研究を行う者たちがロシアにいた。彼らは、「生物宇宙主義者・不死主義者」と関わっていた。

Fedorov had already presumed that "nervous energy" was comparable to or even identical with electricity and that physical expressions of psychological processes could be transmitted by means of electric current.[23] In the 1920s and '30s the assumption of physically measurable brain radiation (the "brain radio") formed the basis for the pioneering studies of the Leningrad physiologist Leonid Vasiliev (1891-1966) in long-distance telepathy. In 1921 Vasiliev joined the Petrograd Institute for Brain Research, founded and directed by the noted physiological psychologist Vladimir Bekhterev (1857-1927). Bekhterev had a keen interest in hypnosis and mental suggestion, and was currently attempting, with the help of the animal trainer Vladimir Durov, to convey movement commands to trained dogs by mental suggestion. On Bekhterev's initiative a special commission was founded in 1922 to study the problem of mental suggestion. After Bekhterev's death, Vasiliev continued their research and later became one of the leading Soviet psychical researchers.[24]

フョードロフはすでに、「神経エネルギー」が電気と比較可能であり、またはそれと同一であると仮定し、心理学的なプロセスの物理的な表現が電流を介して伝えられる可能性があると仮定していた。1920〜1930年代には、物理的に計測可能な脳放射線（「脳ラジオ」）の仮定が、レニングラードの生理学者レオニード・ヴァシリエフ（1891-1966）による長距離テレパシーの先駆的な研究の基盤となった。1921年、ヴァシリエフは、著名な生理心理学者ウラジーミル・ベフテレフ（1857-1927）によって創設され、指導されたペトログラード脳研究所に参加した。ベフテレフは催眠状態と精神感応に強い興味を持っており、動物調教師ウラジーミル・デュロフの協力を得て、訓練された犬に心の働きかけによる動きの指示を伝えようとしていた。ベフテレフの提案により、1922年には精神感応の問題を研究するための特別委員会が設立された。ベフテレフの死後、ヴァシリエフはその研究を継続し、後には主要なソビエトの心霊研究者の一人となった。

In November 1922 we find Vasiliev's name among the contributors to a magazine called Bessmertie (Immortality). It was the organ of the Petrograd Biocosmists-Immortalists, who, under the motto "Immortalism and Interplan-etarianism," proclaimed two basic human rights: the right to exist (pravo na bytie) and the right of =impended movement ( pravo na peredvizhenie). In effect they postulated the immediate abolition of bondage to time and space: now that the social revolution had been accomplished, it was time to put the aboli-tion of death, the colonization of the universe, and the resurrection of the dead on the agenda.[25] This demand appeared at the time of Lenin's death to be an immediate necessity: "The consciousness of the workers and the oppressed all over the world," went the argument of the Biocosmists, "could never reconcile itself with the fact of Lenin's death."[26]

1922年11月、ヴァシリエフの名前は「ベスメルティエ」（不死）と呼ばれる雑誌の寄稿者の中に見られた。これはペトログラードの生物宇宙主義者・不死主義者の機関誌で、"不死主義と惑星間主義"のモットーのもと、「存在する権利（право на бытие）」と「中断された移動の権利（право на передвижение）」という二つの基本的な人権を宣言した。実際には、時間と空間への縛りを即座に廃止することを主張した。社会革命が達成された今、死の廃止、宇宙の植民地化、死者の復活を議題に置くべきだと述べた。この要求はレーニンの死の時には即座の必要性と見なされていた。「生物宇宙主義者たちの主張によれば、世界中の労働者と抑圧された人々の意識は、レーニンの死という事実と決して調和することはできなかった」というのがその論拠だった。

The Biocosmists, a rather small group of anarchists and poets, had first become prominent in Moscow around 192o under the leadership of Aleksandr Sviatogor (pseudonym of A. F. Agienko, whose dates are unknown); in 1922 a Petrograd group seceded under the leadership of Aleksandr Iaroslaysky (1897—ca. 1930). In their struggle against death and for the conquest of space the Biocosmists tried to recruit such prominent scientists as the Viennese phys-iologist Eugen Steinach (1861-1944), who concentrated on experiments on the revitalization and rejuvenation of organisms; Albert Einstein, whose theory of relativity promised "the domination and reversion of time" and whose famous equation, E = mc2, became a sort of universal formula of almost magical power; and finally the cosmist thinker and pioneer of space rocketry Konstan-tin Tsiolkovsky, who lived in Kaluga.

生物宇宙主義者たちは、比較的小さな一群のアナーキストと詩人で、最初に1920年ごろにアレクサンドル・スヴャトゴール（A. F. アギエンコのペンネームで、生没年不詳）の指導のもとモスクワで注目され始め、1922年にはアレクサンドル・ヤロスライスキー（1897-1930）の指導のもとにペトログラードのグループが分派した。死と宇宙の征服への闘いで、生物宇宙主義者たちはウィーンの生理学者ウージン・シュタイナッハ（1861-1944）や、生物の活性化と若返りに焦点を当てた実験を行った科学者を募ろうとした。アインシュタインもまた、相対性理論が「時間の支配と逆転」を約束し、有名な方程式E = mc2が一種のほぼ魔法の力を持つ普遍の公式になったことから、生物宇宙主義者たちに勧誘された一人だった。最後に、カルーガに住む、宇宙ロケット技術の先駆者で宇宙主義者の思想家であるコンスタンチン・ツィオルコフスキーも誘われた。

[23] Fedorov, Filosofia obshchego dela, 1:328,331.
[24] An extensive report on the research program on mental suggestion in the 192os and '3os can be found in L. L. Vasil'ev, Eksperimentar nye issledovaniia myslennogo vnusheniia (Lenin-grad, 1962); see also his Tainstvennye iavleniia chelovecheskoi psikhiki (Moscow, 1959; 2d S., 1963; 3d ed., 1964) and Vnushenie na rasstoianiia: Zametki fiziologa (Moscow, 1962). All these books have been translated into English and several other languages.
[25] A. Iaroslayskii, "Kosmicheskii Maksimalizm," Bessmertie (Petrograd), November 25, 1922, p. 2; cf. "Deklarativnaia rezoliutsiia," Izvestiia VTsIK, January 4, 1922, p. 3. For more on the Biocosmists, see Michael Hagemeister, "Die 'Biokosmisten'—Anarchismus and Maxi-malismus in der friihen Sowjetzeit," in Studia slavica in honorem viri doctissimi Olexa Horbatsch, S. G. Freidhof et al., vol. 1, pt. 1 (Munich, 1983), pp. 61-76; idem, Nikolaj Fedorov, pp. 300-317.
[26] A. Sviatogor et al., "Golos anarkhistov", Izvestiia TsIK SSSR, January 27, 1924, p.5


[ Bernice Glatzer Rosenthal; "The Occult in Russian and Soviet Culture", Cornell University Press, 1997 ]

---

---