ロシア宇宙主義概観
1900年代初頭のフョードロフの受容 (Komata 2016)
小俣智史 (2016)によれば...
1900年代初頭のフョードロフの受容 (Komata 2016) 
小俣智史 (2016)によれば...
- 1900年代初頭のフョードロフの受容に関わる用語
- ペテルソン: フョードロフの親友で、ドストエフスキイやトルストイにフョードロフの思想を紹介した。フョードロフの遺稿を『共同事業の哲学』として出版した。
- コジェヴニコフ: フョードロフの信頼する弟子で、『共同事業の哲学』の出版を勧めた。ノヴォセロフやブルガーコフらにフョードロフの思想を普及させた。仏教の研究でも知られた。
- フョードロフ: ペテルソンとコジェヴニコフの共通の師で、『共同事業の哲学』の著者。ドストエフスキイやトルストイに影響を与えた。
- 『共同事業の哲学』: フョードロフの遺稿をペテルソンとコジェヴニコフがまとめた書籍。フョードロフの思想の集大成である。
- ペテルソンとコジェヴニコフ
- フョードロフの思想の普及を目指した。ただし、その方向性は異なっていた。
- 共同事業の哲学の編集に協力した。
- ペテルソン:
- キリスト教を理性的なものとみなし、超理性的なものを否定した。
- フョードロフの思想の理性主義的側面を強調した。
- コジェヴニコフ:
- フョードロフの教説が超理性的な側面を否定しないと主張した。
- フョードロフの思想を穏健化し、一般的なキリスト教に合致させることを目指した。
- ペテルソンとトルベツコイ
- 両者の論争は、1912年から14年にかけて起こり、特に『哲学と心理学の諸問題』誌で注目された。
- トルべツコイ：
- フョードロフの思想における科学的方法と宗教的要素の関係を問題視し、議論の焦点とした。
- ペテルソン：
- フョードロフの科学的方法を支持し、その内容に同意したソロヴィヨフの手紙を引用した。
- フョードロフの思想:
- 復活説における唯物論的性格を示し、肉体的な復活を提案した。
- 復活説は、先祖の遺骸を集めてつなぎ合わせることで復活を達成する唯物論的アプローチを取っていた。
- キリスト教的であると考えられているが、その中には恩寵や神の働きを軽視する傾向がある。
- フョードロフ自身は、自らの思想がキリスト教に基づくものであると信じていたが、その点が外部に伝わらないことも理解していた。
- ペテルソンやトルベツコイの論争やフロロフスキイの批判によって、フョードロフの復活説や恩寵の問題が露呈され、議論の的となった。
小俣智史: "1900年代から1910年代にかけてのフョードロフ受容", 2016
はじめに
生前殆ど著作を発表することのなかったН.Ф.フョードロフの名は、その死後Н.П.ペテルソンとВ.А.コジェヴニコフにより遺稿がまとめられ、論集「共同事業の哲学(Философия обшегодела)』の第1巻が1906年、第2巻が1913年に出版されたことにより、漸く巷間に知られるようになった。しかしその後、ソヴィエト時代を通じてその名はユーラシア主義者や亡命ロシア人思想家たちの著作に垣間見られる程度で、一般的には忘れ去られていたといえる。この状況が変化するのは、ロシアでフョードロフの思想が掘り起こされた1980年代のことであり、90年代以降にはフョードロフは<口シア・コスミズム>の基礎を置いた思想家として扱われるまでになった[1]。
こうした事情から、フョードロフ研究は『共同事業の哲学』第1巻が世に出てからすでに100年が経った現在においても十分な蓄積があるとは言えない状況にあり、いまだ考察の余地が多く残されている。そのことは、本稿において扱うフョードロフ受容の問題ひとつをとってみてもあてはまる。フョードロフ受容史については近年、Б.К.クノーレが「フョードロフ運動」という概念を用いて説明を行うなど研究が進んでいるが[2]、その対象は主に1920年代に活動したН.А.セトニツキイやА.К.ゴルスキイに偏る傾向がある。
このことの弊害は、一例としてユーラシア主義左派におけるフョードロフ受容について考えてみれば明らかである[3]。1928年から29年にかけて発行されたユーラシア主義左派の機関紙『ユーラシア(Евразия)』の紙面でフョードロフが取り上げられた際、焦点となったのはフョードロフの思想を用いたキリスト教とマルクス主義との折衷可能性であった。しかし、そのことを独立した事象として考察の対象とすると、マルクス主義との類似性の間題が実際にはセトニツキイやユーラシア主義が登場するよりも早い時期にすでに顕在化していたという事実を上手く説明できない。例えば、後で詳しく述べることになるが、С.Н.ブルガーコフは1912年出版の『経済哲学（Философия хозяйства）』の註ですでにフョードロフと経済的唯物論との共通点を指摘している[4]。このことを踏まえるならば、フョードロフとマルクス主義との関連性を考察する際に『ユーラシア」紙をめぐる様相のみを念頭に置くのでは不十分であることは明らかであろう。
こうした事態は、20年代から現在に至るまでのフョードロフ受容を考察するためには、それ以前の事象を考慮する必要があるということを意味している。そこで本稿では、20年代のユーラシア主義以前、すなわち『共同事業の哲学』第一巻が出版された1906年前後から10年代にかけてフョードロフがどのように受けいれられていたのかという点について検討することで、そこに20年代およびその後のフョードロフ受容へとつながる傾向、具体的に言えば、フョードロフの理性主義的解釈とマルクス主義との類似性の指摘という二つの傾向を見出したい。フョードロフの理性主義的側面は、一方で20年代のフョードロフ主義者などにより強調されていったという指摘[5]もあるようにフョードロフを肯定する一つの論点であるが、他方で、伝統的なキリスト教とフョードロフの思想との対立を見出す人々にとっては、フョードロフ批判における一般的な論点でもある。またマルクスとフョードロフとの接点は、上述のように、キリスト教とポリシェヴィズムを結びつけようとしたユーラシア主義左派における論点の一つであった。これらの傾向がフョードロフをめぐる10年代までの論説に見られるということを示すことが本稿の目的である。
そこで、本稿の第1章ではまずべテルソンとコジェヴニコフによるフョードロフ解釈の問題を扱う。ここでは両者の解釈を対立するものととらえ、その対立自体が後のフョードロフ受容を方向づけた要因のひとつであることを明らかにしたい。そして第2章では、先にも触れたブルガーコフによるフョードロフ解釈を扱う。この章では、ブルガーコフによるフョードロフ解釈、特にマルクス主義との共通性の指摘により、フョードロフをめぐる論説が新たな論点を得ることになるということを観察してみよう。
第1章ペテルソンとコジェヴニコフ
1-1.略伝
本題にとりかかる前に、まずは本章で扱うことになるヘテルソンとコジェヴニコフの生涯について略述しておく必要があるだろう。
ペテルソンは1844年にペンザ県のクラスノスラボック郡バラノフカ村に生まれ、ヤースナヤポリャーナの��.H.トルストイの学校で教師として勤務した後、モスクワ大学医学部で学んた[6]。在学中に革命サークルに加わって放校となった後、教師をしていた64年にフョードロフと出会い、以降およそ40年間の長きにわたり行動を共にする。自らが得たチェルトコーフ図書館[7]の司書の職をフョードロフに譲るなど、フョードロフの人生にも大きな影響を与えた。
フョードロフ研究においてペテルソンの存在が重要なものとなるのは、彼がФ.М.ドストエフスキイに宛てて書いた手紙による。この手紙自体は残されていないが、ドストエフスキイからの返事の手紙(1878年3月24日付)は後世のドストエフスキイ研究およびソロヴィヨフ研究においてフョードロフの名前を浮かび上がらせる一因となった。この手紙の中でドストエフスキイはフョードロフの思想について、「これらの思想には本質的に完全に賛成します」、「まるで自分の[思想]であるかのようにそれを読みました」[8]と書いている。また、トルストイにフョードロフの思想を紹介したのもペテルソンであった。その後もフョードロフとともに二人三脚で活動し、1903年にフョードロフが歿した後、コジェヴニコフと共に遺稿をまとめ、『共同事業の哲学』として出版した。1919年歿。
コジェヴニコフは1852年にタンボフ県の町コズロフに生まれ、モスクワ大学で聴講生として学んだ[9]。その後1880年から94年までは国外ですごしている。フョードロフとの出会いは1875年のことで、94年にはフョードロフに著作をまとめて出版するよう勧め、『共同事業の哲学』出版のきっかけをつくったとされる。フョードロフがその死の数時間前に遺稿をコジェヴニコフに渡したことからは、コジェヴニコフに対するフョードロフの信頼の高さがうかがえる。
コジェヴニコフは1900年頃からМ.А.ノヴォセロフ、Ф.Д.サマーリン、С.Н.ブルガーコフ、П.А.フロレンスキイらに接近していたことから、1906年の『共同事業の哲学』第1巻出版後にはこの方面への普及活動を担っていたと考えられる。これらの人間関係もあってか、1913年にはノヴォセロフやサマーリンとともにモスクワ宗教アカデミーの名誉会員に選ばれている。また死の前年には『キリスト教との比較における仏教(Буддизм в сравнении с христианством)』(1916年)を出版するなど仏教の研究でも知られていたため、Н.О.ロスキーの「ロシア哲学史』には小部分であるもののコジェヴニコフの項目が割かれており、仏教等の研究者として扱われている[10]。1917年歿。
1-2.ペテルソンとコジェヴニコフの見解の不一致
以上で略述したように、ペテルソンとコジェヴニコフはフョードロフに最も近しい立場にあったが、実際には、以下で述べるように、フョードロフの思想の解釈という点で両者の立場には隔たりがあった。この隔たりは『共同事業の哲学』出版後、フョードロフの思想がその特殊性(唯物論的な復活概念など)によって主として批判をもって迎えられたことにより鮮明になるのだが、その前兆は既に『共同事業の哲学』第1巻出版(1906年)の数年後にはあらわれている。以下ではこの点について二人の手紙を中心に見ていくことにしよう。
ペテルソンはコジェヴニコフに宛てた1909年7月4日付の手紙の中で、キリスト教における超理性的なものの存在について、「私はそのようなものを知らないし、キリスト教を最高度に理性的なものとみなしていますし、存在するものの中で理性こそが最も高きもの、最も偉大なものだと認めます」[11]、「もし現在まで我々が理性化できなかったことがキリスト教の内にあったならば、そのことが証明しているのはキリスト教の超理性性ではなくて、我々がまた真実の理性に到達していないということでしよう」[12]と述べている。ペテルソンはこのようにキリスト教の理性的解釈の傾向をもっていたのだが、それは彼自身の過去にも関係があった。
すでに述べたように、ペテルソンはフョードロフに出会うまで革命サークルで運動しており、フョードロフと出会ったことによりキリスト教へと転向した。このことについてはЕ.Н.トルべツコイに宛てた手紙(1913年7月29日、30日付)の中でペテルソン自身が、「私自身フョードロフを通じて不信心からキリスト教や福音書へと至ったのです、そしてほとんど完全な無信仰者であるわが国のインテリゲンツィアはフョードロフを通じてのみ信仰に至るだろうと考えています」[13]と述べている。ペテルソンはその自らの体験に基づいて、無神論者をも納得させるだけの理性的要素をもつキリスト教思想としてフョードロフの思想を理解している。また1907年10月3日付のコジェヴニコフへの手紙では、最後の審判を不可避なものとするような宗教が愛の宗教とは思われないこと、そしてその考えが最後の審判を恐れたという自らの幼児体験に依拠する信念であることを述べ、現在公式なものとされるキリスト教がこのような限られたもののみの救済を説く以上、それは「真のキリスト教ではない」[14]と主張している。このことからも、ペテルソンのキリスト教理解が伝統的キリスト教と異なること、そして彼自身がそのことを自覚していたことは明らかである。
コジェヴニコフは1909年9月20日付の手紙においてペテルソンのこのようなキリスト教理解、すなわちキリスト教をもつばら理性的なものとしてのみ理解し超理性的なものの介在を排除するような傾向を非難する。
しかし、あなたはと言えば、ニコライ・フョードロヴィチの教説の運命にとって本質的に重要なこの問題に関して、きつばりとこう説明するのです。キリスト教自体の中に(フョードロフのキリスト教解釈とは関係なく)超理性的なものは何もない、「あなたはそんなものを何も知らないでしよう」と。そして同時に、ニコライ・フョードロヴィチによるキリスト教理解をキリスト教一般の正しい理解とみなし、eoipso[まさしくそのことにより〕、あなたはニコライ・フョードロヴィチの教説においても、何らかの超理性的なものが(キリスト教に)含まれる可能性を否定するのです[15]。
ここでコジェヴニコフは、ペテルソンがみずからのキリスト教の理性的理解を告白するだけでなく、それがそのまま正当なキリスト教理解であり、またさらにはフョードロフのキリスト教理解も同様であったと述べていることを問題視している。以下に明らかなように、この問題はこの時期コジェヴニコフを悩ませていた問題であった。
いわゆる正統キリスト教の哲学や神学においてそうであるように、非理性的なものと反理性的なもの、理性的なもの、超理性的なものの間にあるこの違いを私は認めます。そして、かねてより、またこの丸一年というもの特に、正統信仰的な考えをもち且つ一般に多くの点でニコライ・フョードロヴィチの教説に好意を抱いた人々にとって、今検討したばかりの問題、すなわちキリスト教はもつばら理性的なものとみなされるべきか、それとも超理性的なものともみなされるべきかという問題に関する危うさが、彼の教説をそっくりそのまま受けいれるにはきっと大きな障害となっているのだろうということを、悲しみながらも認めるケースがありました。[16]
また続く箇所でもコジェヴニコフは、フョードロフの教説に関心をもった人々が、「ニコライ・フョードロヴィチの教説は、それによって贖罪と神の恩寵の力による救済という超自然的・奇跡的原理がキリスト教排除されたり、それを奇跡的・神的なものから自然的・人間的プロセスへと変えたりするほどにキリスト教を理性化しようとする独創的な試み、彼なりの完全無欠な試みではないだろうか」[17]と危惧しているということを指摘し、ペテルソンの態度を戒めている。
ただ、それがペテルソンの勝手な解釈ではなく、フョードロフ自身の思想にも(特に遺稿には)そうした側面が見られることにコジェウニコフは気づいている。彼は同じ手紙の中で次のように述べている。
私はそれ[訳注:フョードロフの教説]が伝統的なキリスト教の教義と一致すると考えています。しかしそのためには、その内では(ニコライ・フョードロヴィチの教義の中では)それに関係することがらがすべて十分明らかになっているわけではないし、完全に言明されているわけでもないということを認める必要があります。そして、その内では、人類救済のプロセスに対する神の活動の参与が排除されているわけではないけれども、同じプロセスに対する人類の参与と比べて神の活動が十分明らかにされているわけではなく、しかるべき力を割いて表現されているわけでもないので、そのことが、神の行為を人間の行為に置き換え、神秘的なものを自然的なものに、超理性的なものを純粋に理性的なものに置き換える方向へとつながるような、思想家自身に無意識的な傾向としてニコライ・フョードロヴィチの教説を危ぶむ動機を多くの良心的で思慮深い人々に与えているのだということを意識する必要があります。[18]
このとき、コジェウニコフはフョードロフにキリスト教性を見出していないわけではないのだが、フョードロフ本人とその書き残したテクストには差異があることを指摘している。例えば、「ニコライ・フョードロヴィチはその人生においては完全にキリスト教的だったと考えています」[19]と述べてフョードロフ自身の人生がキリスト教を逸脱するようなものでなかったことを認めているが、その思想については、「私は彼がその教説においても非常に高いタイプのキリスト教徒だったと思いますが、それでも、そのタイプというのは初代キリスト教徒達の生活と教説により作り上げられた教会の、『正統的な』キリスト教徒のタイプとは一致しないと思います」[20]と述べて完全には賛成できない旨を明らかにしている。
ただし、このことはコジェウニコフがフョードロフのキリスト教理解に難があると考えていたということを示してはいるが、その欠点のゆえに彼がフョードロフの思想を拒否しようとしたことを意味しない。この点については続く箇所でも、「もしもニコライ・フョードロヴィチの教説がその超理性性の問題についてあなたの考えている通りであったなら、その場合には私自身としーてもそれを拒否したことでしよう」[21]と述べながらも、実際には間違っているのはペテルソンの方であると指摘している。コジェヴニコフは多年に亘るフョードロフとの個人的なっきあいを通じて、フョードロフがキリスト教的な思想家であること(その定義は一様でないが)について確信していた。ただ、書き残されているものを見る限りでは、キリスト教の理性化、キリスト教からの逸脱の危険性は明らかであり、そのことによりコジェヴニコフはジレンマに陥っている。
ここで注意しておきたいのは、フョードロフの「書き残されたもの」、つまり『共同事業の哲学』のみが問題だという論法を用いながらもコジェヴニコフ自身のコメントが矛盾する場合もあるということである。同じ手紙では、かってフョードロフと話した折に受けた印象を、「彼にとって恩寵の働きとは救済のプロセスにおける基礎的なものというよりはむしろ補助的なものだった」[22]としている。また後のフロレンスキイへの手紙(1913年9月頃のものとされる)ではより明確に、「ニコライ・フョードロヴィチの教説における(人類自身による)人類救済の自然的方法の過大評価と恩寵的方法の知識の過小評価は、私の目には明らかです。それは出版されたものの内容においてのみならず、出版されなかったものや書かれなかったものの内容、そして彼と話をした時の言葉の響きにおいても明らかです」[23]と述べて、上述の問題がそもそもフョードロフ自身の態度によるものであることを示している。このように、コジェヴニコフは『共同事業の哲学』だけでなく、フョードロフの会話や手紙などからも、キリスト教からの逸脱につながる可能性を感じていた。ただ、それはフョードロフの思想内容において恩寵が完全に無視されているということではなく、「補助的」に「過小評価」されているというニュアンスの問題でもあった。
では、ペテルソンと一線を画するコジェヴニコフはフョードロフの思想をどのように扱おうとしたのだろうか。ペテルソン宛ての1913年8月20日付の手紙の中で、コジェヴニコフは次のように自説を展開している。
なぜなら、述べられていることをさらに熟考しておしすすめ、出来の不十分な点を補い、先生の書いた文字に基づくのではなく彼の精神に基づいて、書き留められたもののみを根拠とするのではなく、彼の書いたものや手紙、彼との話、彼の行状、彼の性格、彼の共感と反感を総合したものに基づいて補い発展させ、すなわち『共同事業の哲学』の第1巻と第2巻におけるニコライ・フョードロヴィチがすべてではなく、彼の教説は彼が書き残したものすべてでさえも汲み尽されることがなく、拡充・補足が可能であると認めるならば、もしそのようにするならば、彼の教説の正しい理解という第二のパースペクティヴが、徐々に、その発展や拡充の度合いに応じて、可能になるからです。そしてそのどちらにも、自然科学、彼の課題の解決の科学的方法と恩寵の道・方法との結合の可能性に関する説明がまず第一に含まれなければなりません。[24]
ここでコジェヴニコフが提案した方法とは、伝統的キリスト教に反するフョードロフの思想の性格を緩和し、それを伝統的キリスト教に合致するものへと変えることであった。このことは、コジェウニコフ自らフョードロフの思想を解説した著作『ニコライ・フョードロヴィチ・フョードロフーーー出版された著作と出版されなかった著作、往復書簡および個人的な会話に基づくその教説の余又述の試み（Николай Фелдоровиц Федоров: Опыт изложения его уцения по изданным и неизданным проиведениям, переписке и лицным беседам）』[25](1908年)において、フョードロフの説く死者の復活や自然の統御の道徳的必要性、キリスト教的正当性などが強調される一方で、その復活説の具体的な記述が避けられていることからも明らかであろう[26]。こうしたコジェウニコフの立場についてA.B.シュルガイヤは、「コジェヴニコフに関して言えば、彼がフョードロフの中心的思想に批判的な態度をとっていたことはこれまで考慮されてこなかった。それどころか、時として彼はフョードロフの弟子、信奉者たったと誤って紹介されている」[27]と指摘している。
ペテルソンとともに『共同事業の哲学』を編集し、フョードロフの思想の普及に多大な功績のあったコジェヴニコフがフョードロフの思想を修正しようという意図をもっていたという事実は、フョードロフ受容を考察する上で注目に値する。また、そのことはペテルソンによる活動と比較することで、興味深いコントラストを示す。ペテルソンはフョードロフの思想の理性主義的側面を強調したが、一方コジェヴニコフはその穏健化を志向し、一般的、伝統的なキリスト教に帰順させる方策を探っていた。このように、フョードロフの思想を普及させるという最終的な目的において一致していた二人は、その具体的方法においては相対する立場をとったのである。
1-3.ペテルソンとトルべツコイの論争
上述の問題は、『共同事業の哲学』第2巻出版の前後、特に1912年から14年にかけてさまざまなかたちで顕在化することになった。とりわけ『哲学と心理学の諸問題(Вопросы философии и психологии)』誌を舞台にしたペテルソンとトルべツコイの論争は、その論点と行き着いた結末においてこれらの論争の中でも特に注目に値する例といえる。この論争の主題はソロヴィヨフとフョードロフの影響関係の有無にあったが、その論の過程で両者はフョードロフの復活説の具体性・科学性に言及していく。以下ではこの論争をについて検討してみたい。
ことのはじまりは『哲学と心理学の諸問題』誌の第114号(1912年)所収のЕ.Н.トルべツコイの論文『ソロヴィヨフの生の課題と生の把握の全世界的危機(Жизненнаца задаца Соловьева и всемирный кризис жизнеронимания)』において、フョードロフとソロウィョフの影響関係が論じられたことにあった(この論文は1年後に出版された『ソロウィョフの世界観(Миросозерцание Вл.С.Соловьева)』に収められた)。そこでトルべツコイは、『共同事業の哲学』第1巻が出版され当時その名が広まりつつあったフョードロフに言及し、「その思想の何と奇妙な理性主義的愚かさ、復活から秘密のペールを剥ぎとろうという何と理解しがたい志向だろうか、死に勝利するための自然的、科学的な方法に対する何というナイープな信仰だろうか!」[28]と述べている。
トルべツコイにとって、フョードロフの思想がキリスト教的であるか否かを問題にすることは、ソロヴィヨフが「キリスト教があらわれたその時以来あなたの『計画は人間の精神がキリストの道を歩む最初の運動です」[29]と認めている以上、難しいことであった。そこで、トルべツコイはまずフョードロフの思想を目的と方法の2点に区別した。「全般的復活という最終目的の理解において二人の思想家は似ている。しかし、この目的を達成するための科学的方法・手段に関する後者〔フョードロフ]の夢想は、ソロヴィヨフの世界観に如何なる小さな痕跡をも残していない」[30]と述べて、目的についてはソロヴィヨフに似ているという評価を下して留保した上で、トルベツコイはソロヴィヨフとフョードロフの方法における差異を指摘し、フョードロフが提示した復活の方法を批判した。
このトルべツコイの論文に対するべテルソンの反論は同誌の第118号(1913年)に掲載され、トルベツコイからの返答も同時に掲載された。ソロヴィフヨをフョードロフから引き離そうとするトルべコイツに対して、両者の影響関係に固執するべテルソンは、ソロヴィヨフが1882年1月12日付のフョードロフ宛ての手紙の中でその内容について褒め称えたフョードロフの原稿(その原稿のロ述筆記役を務めたのがペテルソンであった)に言及する。その意図は、原稿の内容を根拠にして、ソロヴィヨフがフョードロフの目的だけでなく、その科学的方法についてもフョードロフに同意したと主張することにあった。
この原稿の内容全体は、地球という未たどのような力で動いているかわからないこの我らの船の運動のコントロールをはじめとして、それを用いることで人間が世界の魂、世界の理性、世界の統治者となることができ、またそうならねはならないところの自然的・科学的方法を指し示すものであった。[・司このことからわかるのは、少なくとも原稿を読み終えた直後には、ソロヴィヨフもフョードロフのリアリズムに魅了されていたということである。ソロヴィヨフが読み終えた原稿の内容は、ソロヴィヨフが、計画実現への実践的な第一歩と述べるにあたり、自然的・科学的方法ではなく何らかの神秘的な道筋、神秘的な行為を念頭に置いていたのだと認める可能性を排除するものである。[31]
こうした成行きの結果、トルベツコイは『哲学と心理学の諸問題』誌での再反論において、ソロヴィヨフが読んだ原稿の内容については保留し、フョードロフとソロヴィヨフの方法における差異に焦点を絞って次のように反論を行った。「80年代後半から度々私はフョードロフについてソロヴィヨフと話さねばならなくなった。彼はフョードロフによって提起された目的については非常に大きな共感を抱いて語っていたが、その場合でも、彼の主張した死者の復活の自然科学的な方法には甚だ懐疑的な態度を示していたことを、私はよく覚えている」[32]。ではペテルソン説への反論として、フョードロフの方法に対する批判の色合いがより強められ、それがソロヴィヨフとの会話の記憶という確実性の高い証拠によって補強されている。
そして、このトルベツコイによるフョードロフ的方法への批判は、そのキリスト教性を問うという新たな局面に至る。「ソロヴィヨフは宗教を科学に対置している。そして、科学ではなく、正統信仰と教会こそが復活へと至る実践的な道筋、現実的な道筋を示すのだと考えている。それとは反対に、フョードロフにとってこうした対立は存在しない。すなわち、彼にとっては宗教的な道筋とはまさしく科学的な道筋のことであるのだ」[33]というトルベツコイの言葉には、科学と宗教(もしくは科学とキリスト教)という対立の構図が前提となり、フョードロフとソロヴィヨフの対立の構図がくフョードロフ=科学>とくソロヴィヨフ=キリスト教>というかたちの構図に発展してゆくさまが見られる。またトルベツコイは続く箇所でも「それゆえに、ソロヴィヨフはその手紙の中でフョードロフに対して、神人の復活事業は人間の一方的な働きではなく、完全なる神と完全なる人間の協力・共同の事業と理解されなければならないと注意を与えている。それゆえに、彼はこの事業には恩寵という奇跡的現象が不可欠だと主張しているのだ」[34]と述べ、科学と宗教の対立の構図に加えて、科学と恩寵という構図を提示している。
既に述べたように、この論争の主題はフョードロフとソロヴィヨフの影響関係の有無にあった。しかし、本論にとってこの論争において注目すべき点は、ペテルソンがフョードロフの思想における「自然的・科学的方法」、「リアリズム」を強調し、それに対してトルベツコイがフョードロフの思想のこうした側面を宗教(キリスト教)や神の恩寵、奇跡と対立するものとする言明を行ったことにある。このことにより、最もコジェヴニコフが恐れていたくフョードロフ対キリスト教〉という構図が明るみに出ることとなった。こうした事態を招いたペテルソンの姿勢に対して、コジェヴニコフはペテルソンへの手紙(1913年8月10日付)で、「現在では事業は台無しになってしまいました。この状況でも『フョードロフか福音書か』を繰り返しはじめるなら、得なことはないでしよう」[35]と苦言を呈している。また、同時期のフロレンスキイへの手紙の中にも、同様にペテルソンへの不満を見出すことができる。
ペテルソンは気配りに欠けわがままなので、まるでニコライ・フョードロヴィチによって彼が述べることのできたことはすべて述べられており、それは独自の神の啓示であると主張して譲りません。そしてその意味でニコライ・フョードロヴィチの書き残したものをも彼は神聖視しています。本質的なことはすべてニコライ・フョードロヴィチによってすでに述べられており、述べられたことはすべて明白で非の打ちどころがないというこの確信をベテルソンはトルべッコイとの往復書簡でも述べました。そんなわけで、トルべッコイは「そのような場合には福音書とフョードロフのどちらかを選ばなければならなくなるが、私(エヴゲーニイ・ニコラエヴィチ・トルべツコイ)は迷いなく福音書を選びます!」とジレンマを彼に突きつけたわけです。[36]
この論争は、上述のようにそれ以前の手紙のやりとりからも感じられるべテルソンとコジェヴニコフの立場の違いをより鮮明なものにした。ペテルソンは論争の中でのこととはいえフョードロフの思想の「自然的・科学的方法」を前面に出すことで、その特徴を示そうとした。それに対してコジェヴニコフはフョードロフの思想の特異性を明確にすることの危険性を感じ、その特異性を中和する方向性を模索していた。この相違は、ペテルソンとトルべッコイとの論争をはじめとして当時強くなりはじめたフョードロフへの批判に対処しなければならないという窮状に際して明確になったといえる。
コジェヴニコフが危惧したように、ペテルソンとトルべッコイの論争が帰着した図式は後のフョードロフ批判の文脈にも受け継がれることになる。その一例としては、Г.В.フロロフスキイによるフョードロフ批判を挙げることができるだろう37。フロロフスキイは『ロシア神学の道（Пути русского богословя）』(1937年)においてフョードロフの思想における人為的事業の比重の高さを、「神の行為を彼は人間の行為と対置している。彼は恩寵と労働とを対置している」[38]と表現している。無論、フロロフスキイの批判は20年代後半のユーラシア主義左派におけるフョードロフ主義の顛末も念頭に置きながら書かれていることは予想に難くない。しかしながら、この論点自体はトルべッコイによってすでに提起されたものの繰り返しであったといえる。
1-4.フョードロフにおける理性と恩寵
こうした批判が起きる背景としてフョードロフの思想そのものに上述のような傾向があることは否定できない。トルべッコイが批判の対象としたフョードロフの復活説の唯物論的性格は、『共同事業の哲学』第1巻所収の論文『兄弟的関係つまり親族的関係について、非兄弟的、非親族的、すなわち非平和的な世界の状態の原因について、そして親族的関係の復元の手段についての問題（Вопрос о брагстве или родстве о паицинах небратского неродственного т.е. немирного состяния мира и о средствах к восстановлению родства）』の第4章に顕著にあらわれている[39]。ここでフョードロフは肉体的な復活について、次のように述べている。
}話が魂の不死のことになると、思慮深い人々は懐疑的になり、厳密な証拠を要求する。一体なぜ、死に言及すると哲学者達は子供じみた迷信・軽信に陥り、そのことにより活動範囲を狭めてしまうのだろうか?このとき腐敗は、もはやそれ以上の実験を許さないような兆候とみなされる。しかしながら、しかるべき人に思い出してもらわなければならないのは、腐敗が超自然的現象ではなく、粒子が飛散したといっても有限な空間の外には出られないということであり、また有機体が機械であり、胆汁が肝臓に属しているように意識がその機械に属しているということなのだ。機械を集めよ、そしてそれに意識を帰還させよ![40]
先祖の遺骸が腐敗によって原子や分子のように世界に飛散しており、それを集めてつなぎあわせることで復活を達成できるのではないかというフョードロフの復活説は明らかに唯物論的性格を示すものである。この点についてН.А.ベルジャーエフは「彼[フョードロフ]は、正教を信仰するキリスト教徒ではあるが、まるで生粋の唯物論者のように思索している。フョードロフのアキレス腱は、まったく素朴な、彼の宗教的唯物論にある」[41]と述べているが、それは妥当な指摘だと言える。
また、ペテルソンとトルべツコイの論争やフロロフスキイの批判において露わになったように、この問題は復活や救済における恩寵の軽視、人間の働きへの傾斜という事態と関連している。とはいえ、フョードロフの説く人類共同の事業の計画の中で神の働きが完全に排除されていると考えるのは誤りであろう。むしろ、フョードロフはその著作でしばしば神の意志に言及している。
この[フョードロフの]説を知り、その多くの点を支持する幾人かの人々が、この説とキリスト教がどれほど一致するのか、そこには対立がなかろうかという疑念により混乱させられたという事態は、もちろん、彼[フョードロフ]の知るところではなかった。彼自身はちょうどその正反対、すなわちそのような対立がないはかりか、むしろ完全な一致があるのだと固く確信していた[・司けれども、彼は、彼の説について十分に知らなかったり偏見にとらわれた先入観をもっていたりする場合には、彼の説の上述のような点を正しく解釈できないかもしれないということを認めていた。そして、そのような危険性が常に彼を深く悲しませ、時には彼を本当に憤らせていたと証言することができるのは、私一人だけではない。[44]
このコジェヴニコフの証言によれば、フョードロフは自らの思想がキリスト教に基づくものであることを信じて疑わなかったが、それが伝わらないことも薄々理解していたと考えられる。このように、ペテルソンが強調しコジェヴニコフを悩ませた問題、フョードロフの思想における唯物論的復活説や恩寵の欠如といった問題は、その原因をフョードロフ自身にまで遡ることのできる問題であった。
[1] く口シア・コスミズム>については以下を参照。Русский космизм: Антология философской мысли / Сост. С.Г. Семеновой, А. Г Гачевой. М., 1993. 邦訳は以下の通りだが全訳ではない。S.G.セミョーノウア、A.G.ガーチエヴァ編著(西中村浩訳)『ロシアの宇宙精神』せりか書房、1997年。
[2] Кнорре Б.К. В поисках бессмертия: Федоровское религиозно-философское движение: История и современность. М., 2008.
[3] ユーラシア主義左派におけるフョードロフ受容の様相については以下の拙論にて論じた。小俣智史「ユーラシア主義左派におけるフョードロフ主義ーー『ユーラシア』紙をめぐって」『ロシア文化研究』(早稲田大学ロシア文学会)第17号、2010年、1-15頁。
[4] ブルガーコフにこうした見解のあることはセトニツキイも知っていた。『ユーラシア』紙第3号(1928年12月8日付)に匿名で掲載された論文『ロシアからの手紙(Письма из России)』でセトニツキイは「ニコライ・フョードロフの著作の中には現在のあらゆる焦眉の問題に対して直接的で明確な回答を見出すことができる」と述べ、その回答が共産主義者たちの回答よりも大胆であるため、「セルゲイ・ブルガーコフにとってフョードロフがマルクスやレーニンよりも恐ろしく、ラディカルであることは偶然ではない」と述べている。См.: Сетницкий Н.А. Письма из России lI Из истории ф илософско-эстетической мысли 1920-1930-х годов. Вып. 1. Н.А. Сетницкий. М., 2003. С. 260. また『経済哲学』の3年後(1915年)のヘルジャーエフのフョードロフ評にも同様にマルクシズムとフョードロフの近似性の指摘が見られる。См.: Бердяев Н.А. Религия воскрешения («Философия общего дела» Н.Ф. Федорова) // Н.Ф. Федоров: Pro et contra: В 2 кн. Книга первая / Сост, вст. ст. А.Г. Гачевой, С.Г. Семеновой. СПб., 2004. С. 432. ただし、ここでベルジャーエフは能動性や事業(дело) といった言葉に注目しているのみで、ブルガーコフのような自然哲学的観点からの指摘ではない。その意味では、結局空疎なスローガンとなってしまったユーラシア主義左派における事例にも近しいと言えよう。
[5] クノーレはセトニッキイやゴルスキイを中心とする20年代のフョードロフ主義の特徴を、宗教性を否定しない理性主義とみなしている。См.: Кнорре. В поисках бессмертия. С. 132-133.
[6] ペテルソンについての略伝は主に以下の資料に依った。スヴェトラーナ・セミョーノヴァ(安岡治子・亀山郁夫訳)『フョードロフ伝』水声社、1998年、57-58頁。Н.Ф. Федоров: Рго et contra: B 2 кн. Книга пе .C.994-996.
[7] チェルトコーフ図書館の蔵書は1874年にルミャンツェフ博物館に移管された。これに伴い、フョードロフもルミャンツェフ図書館（旧レーニン図書館、現ロシア国立図書館)に奉職することになった。
[8] Достоевский Ф.М. Полное собрание сочинений: В 30 гг. Т. 30. Кн. 1. Ленинград, 1988. С. 14 [] 内は訳注。
[9] コジェヴニコフの略伝は主に次の資料に基づく。 Кожевниковы Д.А., А.Д. Владимир Александрович Кожевников // Коэiсевников В.А. Опыт изложения учения Н. Ф. Федорова по изданным и неизданным произведениям, переписке и личным беседам / Сост., общ. ред. и вступит. статья Д.А. и А.Д. Кожевниковых. М., 2004. ただし、生年を1850年とする説もある。 См.: Лосский Н.О. История русской философии. М., 2007. С. 393.
[10] Лосский. История русской философии. С. 393-395. コジェヴニコフの項目にはフョードロフの名前は出てこないが、フョードロフの項には『共同事業の哲学』の出版に携わったことが記されている。См.: Там же. С. 98.
[11] Письмо Н.П. Петерсона В.А. Кожевникову от 4 июля 1909 г // Н.Ф. Федоров: Pro et contra: В 2 кн. Книга вторая / Сост., вст. ст. А.Г. Гачевой, С.Г. Семеновой. СПб., 2008. С. 49.
[12] Там же. 強調は引用元による。
[13] Письмо Н.П. Петерсона Е.Н. Трубецкому от 29-30 июля 1913 г // Там же. С. 202.
[14] Письмо Н.П. Петерсона В.А. Кожевникову от 3 октября 1907 г // Там же. С. 39.
[15] Письмо В.А. Кожевникова Н.П. Петерсону от 20 сентября 1909 г // Там же. С. 56. 強調は引用元による。
[16] Там же. С. 54. 強調は引用元による。
[17] Там же. С. 55 強調は引用元による。
[18] Там же. С. 57
[19] Там же. С. 55 強調は引用元による。
[20] Там же. С. 56 強調は引用元による。
[21] Там же.
[22] Там же. 強調は引用元による。
[23] Письмо В.А. Кожевникова П.А. Флоренскому (написанное в начале сентября 1913 г) // Там же. С. 207.
[24] Письмо В.А. Кожевникова Н.П. Петерсону от 20 августа 1913 г. /I Там же. С. 96-97. 強調は引用元による。
[25] Кожевников В.А. Николай Федорович Федоров: Опыт изложения его учения по изданным и неизданным произведениям, переписке и личным беседам. С приложением писем Ф.М. Достоевского, В.С. Соловьева, А.А. Шеншина (Фета) и Л.Н. Толстого о Н.Ф. Федорове и его учении. М., 1908. この本の内容自体は1904年から1906年にかけて『ロシアの古文書(Русский архив)』に掲載された。本稿では近年出版された以下の資料を用いる。Кожевников В.А. Опыт изложения учения Н.Ф. Федорова по изданным и неизданным произведениям, переписке и личным беседам / Сост., общ. ред. и вступит. статья Д.А. и А.Д. Кожевниковых. М.: Мысль, 2004.
[26] この点については、А.Г.ガーチエヴァによる«Рто et сощта»第1巻の解説に以下のような指摘がある。「この本のあらゆる箇所で世界における人間の課題としての復活に言及し、この思想がフョードロフの哲学の中枢を構成していると何度も強調しておきながら、万人の共同事業を説いた哲学者の預言的思惟が意図していた実践的な復活の方法を、コジェヴニコフはどの箇所でも明らかにしなかった」、「統御と復活の方法に関する沈黙はコジェヴニコフにとって完全に意識的なものだった」(Комментарии /l Н.Ф. Федоров: Pro et contra. Книга первая. С. 1036.)
[27]Переписка П.А. Флоренского и В.А. Кожевникова (предисловие А.В. Шургаия) // Вопросы философии. 1991. 6. С. 91.
[28] Трубецкой Е.Н. Миросозерцание Вл. С. Соловьева. М., 1913. С. 83. 強調は引用元による。
[29] Письмо В.С. Соловьева Н.Ф. Федорову от 12 января 1882 г // Н.Ф. Федоров: Рго et contra. Книга первая. С. 100.
[30] Трубецкой. Миросозерцание Вл. С. Соловьева. С. 84.
[31] Петерсон Н.П. Заметка по поводу статии кн. Е. Трубецкого-«Жизненная задача Соловьева и всемирный кризис жизнепонимания»-в «Вопросах философии и психологии», сентябрь-октябрь 1912 года // Вопросы философии и психологии. 1913. М 118. С. 406-407.
[32] Трубецкой Е.Н. Несколько слов о Соловьеве и Федорове (Ответ Н.П. Петерсону) // Вопросы философии и психологии. 1913. М 118. С. 413-414. 強調は引用元による。
[33] Там же. С. 415. 強調は引用元による。
[34] Там же. С. 419. 強調は引用元による。
[35] Письмо В.А. Кожевникова Н.П. Петерсону от 10 августа 1913 г // Н.Ф. Федоров: Pro et contra. Книга вторая. С. 93.
[36] Письмо В.А. Кожевникова П.А. Флоренскому (написанное в начале сентября 1913 г) // Там же. С. 207.
[37] フロロフスキイのフョードロフ批判については次の先行研究がある。飯島康夫「フロロフスキーのフョードロフ思想批判について」『ロシア思想史研究』第4号、成文社、2007年、413-426頁。また、フロロフスキイによる批判の論点は恩寵と人為の対立のみにとどまらないことも注記しておく。
[38] Флоровский Г.В. Пути русского богословия. Париж, 1937: Репринт, Вильнюс, 1991. С. 326-327.
[39] そうした世界内在的復活の背景に最後の審判に対する独自の解釈が潜んでいる可能性についてはすでに拙論で扱った。詳しくは以下を参照。小俣智史「Hゆ.フョードロフの終末論」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第53輯第2分冊(2007年度)、2008年、201-213頁。また、この節で述べていることがらはすでに拙論で扱った内容と重複するものがあることをあらかじめ断わっておく。
[40] Федоров Н.Ф. Вопрос о братстве, или родстве, о причинах небратского, неродственного, т. е. немирного, состояния мира и о средствах к восстановлению родства (Записка от неученых к ученым, духовным и светским, к верующим и неверующим) // Федоров Н.Ф. Собрание сочинений. В 4 т Т 1. М., 1995. С. 258.
[41] Бердяев. Религия воскрешения. С. 464-465. []内は訳注。
[42] Федоров. Вопрос о братстве. С. 94.
[43] Федоров. Вопрос о братстве. С. 255.
[44] Кожевников. Опыт изложения учения Н.Ф. Федорова. С. 391. []内は訳注。
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