ロシア右翼
ロシア文学規範は帝国主義に汚染されている
The Economistが2022年10月6日に掲載した記事「Yes, the Russian literary canon is tainted by imperialism」は、19世紀ロシア文学の名作にある帝国主義な考えを指摘しつつ、それらを読む価値を語る。以下全文訳：
エコノミスト: ロシア文学規範は帝国主義に汚染されている
Yes, the Russian literary canon is tainted by imperialism
That doesn’t mean you should stop reading it
(2022/10/06) in TheEconomist
ロシア文学規範は帝国主義に汚染されている
しかし、それらを読むなとは意味しない
西側の多くの人々に、フョードル・ドストエフスキーやレフ・トルストイなどの19世紀のロシア人作家の傑作は、畏敬の念を抱かせてきた。これらの作家は、信仰、権力、不正の普遍的な深遠さと格闘しながら、手を天国に伸ばしているように見えることがよくある。たとえば、英国の小説家D.H. Lawrenceは、ロシア文学は「the phenomenal coruscations of the souls of quite commonplace people（ごくありふれた人々の魂の驚異的なきらめき）」を探求したと述べている。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、これらの本を読むことの価値だけでなく、道徳にも疑問を投げかけている。
自著「Times Literary Supplement」で、ウクライナの作家Oksana Zabuzhkoは「主要なロシア人作家の作品についての西洋の読み方は、ロシアン人作家たちの帝国主義的態度を無視し、抜本的な道徳的相対主義と犯罪者への同情に甘んじていた」と力強く主張した. Zabuzhkoは、「文学はそれが書かれている社会と一体である。ロシア作家の本はウクライナにおけるロシアの戦車のカモフラージュ ネットである」と述べている。一方、ウクライナの哲学者Volodymyr Yermolenkoは、Foreign Policyで、ロシアの古典は「帝国主義の言説がぎっしり詰まっており、残虐」であると書いている。
古典的フィクションと今日の軍事侵略とを直接結びつけることを提唱することは、そう簡単なことではない。ウラジーミル・プーチンの侵略のきっかけとなった本は、「アンナ・カレーニナ」や「賭博者」よりも難解で極端なものだった。それでも、これらの批評家には一理ある。
ロシアで最も愛されている作家たちは、ロシアの社会問題を記録することで愛されている。 しかし、彼らの文章には危険な考えまでもが登場するという、不安をかき立てるものもある。当然のことながら、イギリスやアメリカの著名な作家たちにも同じことが言える。しかし、西洋の作品における帝国主義と偏見に敏感に反応してきた読者たちは、過去にロシア文学におけるそれらには目をつぶってきた。 彼らは、たとえば 19世紀のアメリカ西部のように、ウクライナの草原をねじれた見方でみることに慣れていない。
国民的詩人、アレクサンドル・プーシキンを例にとると、ロシア人はナシェ・フセ（「私たちのすべて」）と呼ぶことがあるが、これは彼の並外れたロシア語の使用と、皇帝の権力に直面して「小さな男」を擁護するという彼のコミットメントを反映している。プーシキンは、1825年に失敗したニコライ1世に対する蜂起に参加したデカブリストによって高く評価された彼の作品の反権威主義的な精神のためにｍ亡命して数年を過ごした。
しかし、プーシキンはまた、ロシア帝国の力を宣伝する愛国的な詩を書いた。エルモレンコ氏は、1830年から1831年にかけてのツァーリ支配に対するポーランドの蜂起に対応して書かれた「ロシアの誹謗中傷者たちへ」を引用している。この詩は、ヨーロッパの侵略と思われるものを非難し、「なぜロシアを呪いで脅すのか?」と言い、国の敵がロシアの地に足を踏み入れた場合、その目的を達成すると言明している。こうした感情は、今日のプーチンのレトリックを反映している。
プーシキンの帝国主義的傾向は、「コーカサスの囚人」にも現れている。この詩は、チェルケスの女性に救われる前にコーカサスで捕らえられた若いロシアの将校を描いています。エピローグで、ナレーターはロシアによるこの地域の暴力的な征服を祝い、「すべてがロシアの剣の対象である」と宣言する。ここでも、プーシキンの皇帝権力に対する批判は、その帝国主義には及んでいないようである。
似たようなことがドストエフスキーにも言える。彼の本は頭脳殺人犯たちの心に入り込み、従来の道徳に疑問を投げかける。これらの殺人犯たちまた、植民地主義の考えを取り入れている。
ドストエフスキーが、人生の終わりに向かって制作したフィクションおよびノンフィクションのスケッチ作品集「作家の日記」には、ひどい例が現れる。1881年1月に書かれた一節で、彼はギョクテペ (現在のトルクメニスタンのGokdepe) でのロシア軍の勝利を祝っている。University of MichiganのOlga Maiorovaが指摘しているように、ドストエフスキーはその本の中で、ロシアがアジアへの征服を続け、「インドに至るまで」人々が「白い皇帝の無敵性を確信するようになる」ことを望んでいた。
ドストエフスキーのロシア排外主義は、軍国主義的な言葉よりも精神的な言葉で表現されることが多い。1850年代のシベリアでの長期流刑の後 (過激な知識人のペトラシェフスキー サークルとの関係の結果)、彼は敬虔な正教会のキリスト教徒になった。彼の考えでは、カトリック教徒やユダヤ人など、正教会の神を拒絶した人々は忌み嫌われていた。両方に対するドストエフスキーの長年の敵意は、彼の小説「白痴」に現れている。主人公のムイシュキン公爵は、カトリックをロシアが打ち負かさなければならない「非キリスト教徒」の惨劇と呼んでいる。「我々のキリスト」は、「西洋への拒絶として輝かなければならない」と彼は断言する。
地図と領土
作者は、ロシアは精神革命の先駆者になる運命にあると信じるようになった。それは、西洋の退廃を打ち破り、神の下で人類を団結させる救世主の力だった。繰り返しになるが、プーチンの反西洋的な暴言は中で、それは吐き気がするほど聞き覚えがある。これまでの読者は、ドストエフスキーを人間の心の最も暗く、最も秘密の範囲への崇高なガイドとして見てきた。今日、彼と他のロシアの作家は、代わりにドンバスで正面への道を指しているように見える。
故に、プーチンの軍隊の略奪を、はるか昔に亡くなった作者たちのせいにするのは不合理だが、彼らの作品のいくつかは、再び暴力に発展した騒々しい病状を実際に反映しており、それを助長しさえしている。しかし、これらの本が意味したり言ったりすることはそれだけではない。
多くのロシア人にとって最高の小説家であり、そして世界最高の小説家であるトルストイの作品を考えてみよう。1812年のナポレオンのロシア侵攻の記録である「戦争と平和」など、帝国主義の盲点がある。Rice UniversityのEwa Thompsonが言うように、この本は東ヨーロッパの植民地化された人々、特に、ロシアの大君主に対してしばしばナポレオンを支持した、ポーランド人の視点を無視している。
しかし、他の場所では、トルストイは軍国主義とあらゆる種類の暴力を否定している。彼の絶妙な後期小説「ハジ・ムラート 」は、ロシアの征服の中で家族を救おうとする白人の戦士の物語である。それは彼の窮状に同情し、皇帝の攻撃性を非難する。ルストイの作品における愛国心と平和主義の混合が示すように、文学は本質的にあいまいな媒体である。優れた本は、単一の意味や道徳に単純化できることはめったにない。性格、ナレーター、または実際の作者のいずれであっても、人間の欠陥を明らかにし、分析するのに最適である。
それは、「エフゲニー・オネーギン」や「スペードの女王」などのプーシキンの思いやりのある物語にも当てはまる。ロシアの哲学者であるミハイル・バフチンは、ドストエフスキーの小説を「ポリフォニー」と表現した。作者の救世主的な世界観はよく耳にするが、多くの場合、悪党、低俗者、愚者のせいだとされる。University College LondonのSarah Youngによれば、そうすることでドストエフスキーは自分の考えを最も厳しいテスト」にかける。読者は、彼の哲学を賞賛することよりも、それに挑戦することを勧められる。ドストエフスキーの作品を無視すれば、この機会を逸することになる。
プーチンのウクライナ侵攻を嫌う人が、ロシアの名作を捨てる必要はない。そのために捨てるには、美と知恵が多すぎる。それらを放棄することは、自傷行為でしかない。しかし、読者はより批判的な目でそれらを再訪し、帝国主義の感情に新たな感性を抱くかもしれない。最良の意味で、これは、学者がカノンの「脱植民地化」について話すとき (現在多くの人がそうしているように) 言及しているものある。
それは、政治的な理由で影響力のある作品を捨てる必要を意味しない。代わりに、新鮮な視点から文学にアプローチすることになる。それは、本の厄介な部分をそれらの側面だけに還元するのではなく、認めることを意味する。それは読書量を減らすことではなく、読書量を増やすことを意味する。
ロシア文学規範は帝国主義に汚染されている 
The Economistが2022年10月6日に掲載した記事「Yes, the Russian literary canon is tainted by imperialism」は、19世紀ロシア文学の名作にある帝国主義な考えを指摘しつつ、それらを読む価値を語る。以下全文訳：
エコノミスト: ロシア文学規範は帝国主義に汚染されている
Yes, the Russian literary canon is tainted by imperialism
That doesn’t mean you should stop reading it
(2022/10/06) in TheEconomist
ロシア文学規範は帝国主義に汚染されている
しかし、それらを読むなとは意味しない
西側の多くの人々に、フョードル・ドストエフスキーやレフ・トルストイなどの19世紀のロシア人作家の傑作は、畏敬の念を抱かせてきた。これらの作家は、信仰、権力、不正の普遍的な深遠さと格闘しながら、手を天国に伸ばしているように見えることがよくある。たとえば、英国の小説家D.H. Lawrenceは、ロシア文学は「the phenomenal coruscations of the souls of quite commonplace people（ごくありふれた人々の魂の驚異的なきらめき）」を探求したと述べている。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、これらの本を読むことの価値だけでなく、道徳にも疑問を投げかけている。
自著「Times Literary Supplement」で、ウクライナの作家Oksana Zabuzhkoは「主要なロシア人作家の作品についての西洋の読み方は、ロシアン人作家たちの帝国主義的態度を無視し、抜本的な道徳的相対主義と犯罪者への同情に甘んじていた」と力強く主張した. Zabuzhkoは、「文学はそれが書かれている社会と一体である。ロシア作家の本はウクライナにおけるロシアの戦車のカモフラージュ ネットである」と述べている。一方、ウクライナの哲学者Volodymyr Yermolenkoは、Foreign Policyで、ロシアの古典は「帝国主義の言説がぎっしり詰まっており、残虐」であると書いている。
古典的フィクションと今日の軍事侵略とを直接結びつけることを提唱することは、そう簡単なことではない。ウラジーミル・プーチンの侵略のきっかけとなった本は、「アンナ・カレーニナ」や「賭博者」よりも難解で極端なものだった。それでも、これらの批評家には一理ある。
ロシアで最も愛されている作家たちは、ロシアの社会問題を記録することで愛されている。 しかし、彼らの文章には危険な考えまでもが登場するという、不安をかき立てるものもある。当然のことながら、イギリスやアメリカの著名な作家たちにも同じことが言える。しかし、西洋の作品における帝国主義と偏見に敏感に反応してきた読者たちは、過去にロシア文学におけるそれらには目をつぶってきた。 彼らは、たとえば 19世紀のアメリカ西部のように、ウクライナの草原をねじれた見方でみることに慣れていない。
国民的詩人、アレクサンドル・プーシキンを例にとると、ロシア人はナシェ・フセ（「私たちのすべて」）と呼ぶことがあるが、これは彼の並外れたロシア語の使用と、皇帝の権力に直面して「小さな男」を擁護するという彼のコミットメントを反映している。プーシキンは、1825年に失敗したニコライ1世に対する蜂起に参加したデカブリストによって高く評価された彼の作品の反権威主義的な精神のためにｍ亡命して数年を過ごした。
しかし、プーシキンはまた、ロシア帝国の力を宣伝する愛国的な詩を書いた。エルモレンコ氏は、1830年から1831年にかけてのツァーリ支配に対するポーランドの蜂起に対応して書かれた「ロシアの誹謗中傷者たちへ」を引用している。この詩は、ヨーロッパの侵略と思われるものを非難し、「なぜロシアを呪いで脅すのか?」と言い、国の敵がロシアの地に足を踏み入れた場合、その目的を達成すると言明している。こうした感情は、今日のプーチンのレトリックを反映している。
プーシキンの帝国主義的傾向は、「コーカサスの囚人」にも現れている。この詩は、チェルケスの女性に救われる前にコーカサスで捕らえられた若いロシアの将校を描いています。エピローグで、ナレーターはロシアによるこの地域の暴力的な征服を祝い、「すべてがロシアの剣の対象である」と宣言する。ここでも、プーシキンの皇帝権力に対する批判は、その帝国主義には及んでいないようである。
似たようなことがドストエフスキーにも言える。彼の本は頭脳殺人犯たちの心に入り込み、従来の道徳に疑問を投げかける。これらの殺人犯たちまた、植民地主義の考えを取り入れている。
ドストエフスキーが、人生の終わりに向かって制作したフィクションおよびノンフィクションのスケッチ作品集「作家の日記」には、ひどい例が現れる。1881年1月に書かれた一節で、彼はギョクテペ (現在のトルクメニスタンのGokdepe) でのロシア軍の勝利を祝っている。University of MichiganのOlga Maiorovaが指摘しているように、ドストエフスキーはその本の中で、ロシアがアジアへの征服を続け、「インドに至るまで」人々が「白い皇帝の無敵性を確信するようになる」ことを望んでいた。
ドストエフスキーのロシア排外主義は、軍国主義的な言葉よりも精神的な言葉で表現されることが多い。1850年代のシベリアでの長期流刑の後 (過激な知識人のペトラシェフスキー サークルとの関係の結果)、彼は敬虔な正教会のキリスト教徒になった。彼の考えでは、カトリック教徒やユダヤ人など、正教会の神を拒絶した人々は忌み嫌われていた。両方に対するドストエフスキーの長年の敵意は、彼の小説「白痴」に現れている。主人公のムイシュキン公爵は、カトリックをロシアが打ち負かさなければならない「非キリスト教徒」の惨劇と呼んでいる。「我々のキリスト」は、「西洋への拒絶として輝かなければならない」と彼は断言する。
地図と領土
作者は、ロシアは精神革命の先駆者になる運命にあると信じるようになった。それは、西洋の退廃を打ち破り、神の下で人類を団結させる救世主の力だった。繰り返しになるが、プーチンの反西洋的な暴言は中で、それは吐き気がするほど聞き覚えがある。これまでの読者は、ドストエフスキーを人間の心の最も暗く、最も秘密の範囲への崇高なガイドとして見てきた。今日、彼と他のロシアの作家は、代わりにドンバスで正面への道を指しているように見える。
故に、プーチンの軍隊の略奪を、はるか昔に亡くなった作者たちのせいにするのは不合理だが、彼らの作品のいくつかは、再び暴力に発展した騒々しい病状を実際に反映しており、それを助長しさえしている。しかし、これらの本が意味したり言ったりすることはそれだけではない。
多くのロシア人にとって最高の小説家であり、そして世界最高の小説家であるトルストイの作品を考えてみよう。1812年のナポレオンのロシア侵攻の記録である「戦争と平和」など、帝国主義の盲点がある。Rice UniversityのEwa Thompsonが言うように、この本は東ヨーロッパの植民地化された人々、特に、ロシアの大君主に対してしばしばナポレオンを支持した、ポーランド人の視点を無視している。
しかし、他の場所では、トルストイは軍国主義とあらゆる種類の暴力を否定している。彼の絶妙な後期小説「ハジ・ムラート 」は、ロシアの征服の中で家族を救おうとする白人の戦士の物語である。それは彼の窮状に同情し、皇帝の攻撃性を非難する。ルストイの作品における愛国心と平和主義の混合が示すように、文学は本質的にあいまいな媒体である。優れた本は、単一の意味や道徳に単純化できることはめったにない。性格、ナレーター、または実際の作者のいずれであっても、人間の欠陥を明らかにし、分析するのに最適である。
それは、「エフゲニー・オネーギン」や「スペードの女王」などのプーシキンの思いやりのある物語にも当てはまる。ロシアの哲学者であるミハイル・バフチンは、ドストエフスキーの小説を「ポリフォニー」と表現した。作者の救世主的な世界観はよく耳にするが、多くの場合、悪党、低俗者、愚者のせいだとされる。University College LondonのSarah Youngによれば、そうすることでドストエフスキーは自分の考えを最も厳しいテスト」にかける。読者は、彼の哲学を賞賛することよりも、それに挑戦することを勧められる。ドストエフスキーの作品を無視すれば、この機会を逸することになる。
プーチンのウクライナ侵攻を嫌う人が、ロシアの名作を捨てる必要はない。そのために捨てるには、美と知恵が多すぎる。それらを放棄することは、自傷行為でしかない。しかし、読者はより批判的な目でそれらを再訪し、帝国主義の感情に新たな感性を抱くかもしれない。最良の意味で、これは、学者がカノンの「脱植民地化」について話すとき (現在多くの人がそうしているように) 言及しているものある。
それは、政治的な理由で影響力のある作品を捨てる必要を意味しない。代わりに、新鮮な視点から文学にアプローチすることになる。それは、本の厄介な部分をそれらの側面だけに還元するのではなく、認めることを意味する。それは読書量を減らすことではなく、読書量を増やすことを意味する。
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