人物
聖人あるいは変人フョードロフ
フョードロフの『共同事業の哲学』は、フョードロフ(1829-1903)の死後に、ペテルソンとコジェヴニコフが編集し、費用を負担して、「非売品」として著作権なしで480部が出版され、「非売品」の印が押され、図書館、一部の機関、希望者に無料で配布された(George Young, 2012, p.85)。第1巻は 1906年にヴェルニー市で小規模版で出版され、第2巻は 1913年にモスクワで出版された。 第3巻も出版準備中だったが、発売できなかった。資料の一部は、コレクション「エキュメニカル・アフェア」第1号（オデッサ、1914）および第2号（リガ、1934）に掲載された(Е. М. Титаренко (1998), p.206)。
日本で1947年に出版された訳本には、フョードロフの生涯について、訳者が付けたと思われる簡単な記述がある。その部分の出典は記載されていないが、内容は以下の通り：
聖人あるいは変人フョードロフ 
フョードロフの『共同事業の哲学』は、フョードロフ(1829-1903)の死後に、ペテルソンとコジェヴニコフが編集し、費用を負担して、「非売品」として著作権なしで480部が出版され、「非売品」の印が押され、図書館、一部の機関、希望者に無料で配布された(George Young, 2012, p.85)。第1巻は 1906年にヴェルニー市で小規模版で出版され、第2巻は 1913年にモスクワで出版された。 第3巻も出版準備中だったが、発売できなかった。資料の一部は、コレクション「エキュメニカル・アフェア」第1号（オデッサ、1914）および第2号（リガ、1934）に掲載された(Е. М. Титаренко (1998), p.206)。
日本で1947年に出版された訳本には、フョードロフの生涯について、訳者が付けたと思われる簡単な記述がある。その部分の出典は記載されていないが、内容は以下の通り：
エヌ・エフ・フェオドロフ小傳聖人で変人という面を強調しているが、創作・誇張されたものではなく、George Young (2012))も同様のことを書いている。
ニコライ・フェオドロヴィッチ・フェオドロフは、一九〇三年十二月十五日七十五歳の高齢を以てモスクワに於て他界した。モスクワのルミャンツェフスキー圖書館のカクログ係主任として默々たる思索生活を送った彼は、生前には殆んどその名を一般的に知られてゐなかったが、當時のロシャ思想界の巨人ドフトエフスキー、レフ・トルストイ、ウラヂミル・ソロヰョフの三人は、常に彼と相往復し、彼より無限の思想をくみとり、自分の思想を培養してゐた。謂はゞこの三偉人にとっては先師にもあたる存在であった。ドストエフスキーの小説の根本、トルストイの思索の足場、そしてウラヂミル・ソロヰョフの�茶暗�學の基盤には、何らかの形式で、フェオドロフの哲學が厳然として存在してゐる程、感化を與へたのである。
かくの如き偉大なる存在が、何故に有名にならなかったか、その祕密は彼の生涯が、全く非人間的であり、仙人的であったに他ならない。今簡單に彼の生涯を一督して見よう。
一八二八年春彼は。パペル・イワノウィッチ・ガカーリン公の子としてオデッサ市に誕生し、有名なるエヌ・エフ・クロパトキンとは再從弟であった。一八四九年タンポフスキ中學を卒業し、次いでオデッサ大學に學び、一八五二年原因不明の中途退學をしてゐる。一八五四年より一八六八年の間、オデッサをすてゝ地方學校の歴史地理の�鎧佞鬚弔箸瓩拭�この�鎧媽験茲遼�期に彼は、會てエル・エヌ・トルストイのやってゐたヤスノボリナの學校�鎧佞鬚弔箸瓩討陲織┘漫Δ戞璽謄襯愁鵑�同學校に赴任し來るに及び、彼と知己になった。而してペーテルソンは常時に哲學的著述をなしてゐたフェオドロフの偉才を發見し、秘かに彼の論文をドストエフスキーに迭附したのである。ドストエフスキーは彼の思想の深さに驚き交友を結び、一方トルストイにも亦、ペーテルソンを通じて識られるに至った。一八六八年彼はモスクワに轉じ、初めチェルトフスキー圖書館次長をつとめ、次いでルミツェフスキー圖書館の從事員として働らき、こゝで殆んど二十五年間勤務してゐる。こを定年に達してやめてから、死の直前まで外務省の圖書係に勤めた。彼が最も勉強したのはこのルミャンツフスキー圖書館時代であり、「共同事業の哲學』もこゝに動務する傍ら書かれたものである。
彼の日常生活は全く仙人的であり、文字通り蓬髮垢面、きたなりの雷で、月六留の小部屋をかりてすみ、部屋の中には寢臺も机も、寢具もなく、寢るときは床にごろ寢をし、食事はパンに脂肪の鹽漬、鹽漬の魚に茶ですまし、人はいつも彼が所謂食事をしてゐるのを見たことがないと云ってゐた。當時三十留の月給で、彼は金が剩って仕方がないと云ひ、どうして使ったらよいか知らなかった。夏も冬も外套をきて、オーバシューズをはいてゐた。全く奇人であった。勿論孤獨、終生獨身であった。彼の奇人振りにはトルストイも一驚を喫し、その日記に次の如く描寫してゐる。
『・・・ニコライ・フェオドロウィッチは聖人だ。小さな部屋。きまじめさ。俸給はいらない。衣類はない。寢臺はない。』
トルストイは屡々フェオドロフと爭論してゐたが、それでも彼はフェオドロフに師をとってゐたと云はれてゐる。有名なドストエフスキーの『カラマゾフ兄弟」、トルストイの「戦爭と平和』ソロヰョフの「�耽溶澄拇�の代表作の底に流れる思想は、總てフェオドロフの思想と云って差支へない。然しながら彼は世間に名の出ることを極力嫌った。雜誌等への寄稿は、時には無署名の場合すらあった。寫眞の如きも生涯殆んど撮らず、卷頭の肖像はエル・オパステルナックが漸くにして晝いた唯一のものである。
[ フェオドロフ （高橋輝正 訳）: "共同事業の哲学", 白水社, 1943 ]
During his long life in Moscow, Fedorov lived alone, frequently changing addresses, but usually renting a small, closet-sized room for around six rubles a month [27]. He slept on a humpback trunk, sometimes bare, sometimes covered with newspapers, placing under his head not a pillow but some hard object, usually a book The only coat he wore every day, summer or winter, was more rag than coat, and strangers easily mistook him for a beggar on the streets. He had no furniture, and each time he moved to new quarters he gave away whatever objects the room had accumulated. He spent nothing on entertainment, diversion, or any conveniences, and he refused to take cabs even in the coldest winter months. He drank only tea, ate hard rolls, sometimes accompanied by a piece of old cheese or salt fish, and lived for months without a hot meal.
モスクワでの長い生活の間、フョードロフは一人暮らしをし、頻繁に住所を変えたが、通常はクローゼットほどの小さな部屋を月に約6ルーブルで借りていた。 彼はザトウクジラのトランクの上で、時には裸で、時には新聞紙で覆い、頭の下に枕ではなく何か硬いもの、通常は本を置いて寝た。夏でも冬でも、彼が毎日着ていた唯一のコートは、コートというよりもぼろ布だった。そして見知らぬ人みは、彼は路上で物乞いとすぐに間違えられた。 彼には家具がなかったので、新しい部屋に移動するたびに、部屋に溜まっていた物をすべて手放した。彼は娯楽や気晴らし、便利なものには一切お金を使わず、最も寒い冬の時期でもタクシーに乗るのを拒否した。 彼はお茶だけを飲み、硬いロールパンを食べ、時には古いチーズや塩魚を添えて、何か月も温かい食事を摂らずに暮らした。
[27] Valery Borisov, who leads Fedorov excursions in Moscow, has listed at least twenty addresses for Fedorov over the years. V. Borisov, "Adresa Fedorova," in Filosofoa bessmertiia i voskresheniia, ed. S. G. Semen ova, A. G. Gacheva, and M. V. Skorokhodov (Moscow: Nasledie, 1996), 2:251-55.
[ George Young; "The Russian COsmists: The Esoteric Futurism of Nikolai Fedorov and His Followers", 2012, p.69]
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